【2019年最新版】おすすめCPUの選び方とベンチマーク性能比較 Intel,AMDを横断的にランキング評価

ウェブサイト閲覧やYoutubeの視聴、プログラミング(ソフトウェア開発)、動画エンコード、Excel、Wordなどパソコンの用途は様々です。

また深層学習や金融時系列分析といったかなり本格的にコンピュータを使うハイパフォーマンスコンピューティングといった用途もあります。

そのような用途ごとの観点から、どのCPUがおすすめかというランキングを作りました。

またCPUは毎年新しいものが発売されるという非常に進歩と陳腐化が著しい分野です。

そこでどんなに年数がたって技術が進歩しても根本的に変わらない部分をこのページの後半に記載しました。

今後Intelからは毎年次々に新しい世代のCPUが出てくるでしょうが、どれだけ新しいものが出てきても変えることのできない普遍的なことを知っておけば今後新しく出てくるCPUを評価する上で役に立ちます。

インデックス:

CPUの性能比較はカタログスペックやピーク性能ではなく、実効性能(Effective Flops performance)で比較するのが重要

プロセッサ性能比較では1秒間あたりに浮動小数点演算を何回実行できるかという指標であるFlops(floating point operations per second)を使うのが一般的です。1秒間で小数の掛け算・割り算を多くできるCPUの性能が高いだろうという考え方でこの指標が使われています。

これは国際的なスパコンの性能比較でも昔から使われており、コンピュータ・アーキテクチャ分野で現在でも使われる古典的な比較方法だと言えます。

グラフィックボードの性能比較でも倍精度と単精度のFlopsで比較するのが一般的です。大学などの学術的な研究分野でもこのFlops値で性能を競い合っています。

そしてこのFlops性能には、カタログスペックをフルに活かせたと仮定した”理論的”なピーク性能Flops(peak flops)と、理論的な性能より実際使うときにどのくらい速いかという”実際的”なFlops値として、実効性能Flops(effective flops)というものがあります。当然後者の実効性能Flopsで比較すべきです。”effective flops”という用語は私が考えたものではなくIntelも使っている用語です。

また、日本の”京”や米国の”Sequoia”などの大型スパコンのように世界に1台しかないものなら1つのベンチマーク結果だけでいいでしょうが、個人が使うようなパソコン用のCPUではたった1つのベンチマークではあてにできません。CPUを購入した人の数だけパソコンがあるわけですから、それぞれの人の環境での実効性能の平均値をとるなり中央値を取るなりして、誰が使っても高い性能が引き出せるCPUなのかどうかを判断する必要があります。そのCPUの実効性能が高くなるように最適化されて組まれたパソコンでたまたま良いベンチマーク結果がでても、その結果だけでは購入の参考になりません。

CPUの性能というのは環境によって大きく差がでるものもあれば、差が出ないCPUもあります。これは統計量でいう分散とその平方根である標準偏差にあたります。

分散が小さければそのプロセッサはどんな環境でも同じ性能を叩き出すということです。分散が大きければパソコンを組むときの構成によって大きく影響を受けたり、ソフトウェア環境の影響を受けて、ユーザーそれぞれで大きくCPU性能に違いが出てしまうことになります。当然分散が小さければ散らばり具合が小さいということなので、環境によって性能が左右されないCPUということで分散が小さいほうが望ましいです。

このようにCPU選びでは、カタログスペックや理論性能ではなく実効性能を参考にすることが第一点目として必要であり、さらにその実効性能のサンプルを多数集めてその平均値(または中央値)、散らばり具合(分散)を見て、平均が高くかつ散らばり具合が小さいCPUを選ぶことが重要です。本記事では多数のサンプルの平均をとった実効性能と、その散らばり具合がわかるようにしています。

 

以下、3つのカテゴリに分けてランキングを掲載していきます。

第1:大多数の人におすすめな一般向けであるデスクトップPC用のCPU(Intel Core i7,i5,i3 | AMD Ryzen 7,5,3 | Intel Pentium | Intel Celeronなど)
一般家庭でネット閲覧とYoutube再生やWordでの文書作成、家計簿や会計ソフトの利用、Amazon Prime Videoでの映画視聴等の一般的な用途におすすめなCPU。ほとんどの方にはこのカテゴリのCPUがおすすめです。

第2:コア数が多いハイエンドデスクトップPCとエントリーワークステーション用のCPU(Intel Core i9-X, Core i7-X | AMD Ryzen 9,Threadripper)
深層学習(ディープラーニング)をコプロセッサではなくホストプロセッサで並列実行したい場合や、金融分析などをやる場合におすすめです。信頼性よりもコア数やマルチスレッド並列処理性能重視用です。

第3:故障検知機能がついていて金融機関・行政機関のワークステーション・サーバーでも採用されているCPU(Intel Xeon)
メモリエラーの検知・訂正機能で高い信頼性を確保したい場合におすすめです。演算結果のミスがどうしても許されないようなミッションクリティカル度が高い用途で使います。

Intel Core i7 i5 i3,Pentium,Celeron,
AMD Ryzen 7,Ryzen 5:
Web閲覧、Excel/Word、ゲーム、Youtube動画作成、プログラミングなどのデスクトップPC用CPU

いわゆる普通のパソコンとして使うならCoreシリーズがベストです。並列性が高くコア数が必要な非常に重い科学技術計算や、メモリエラーによる計算の誤りが許されない高い信頼性を要求される分野では記事後半で取り上げるXeonシリーズも選択肢に入ります。

家庭用PCとしてブラウザを使ったWeb閲覧やYoutube動画再生をしたり、Wordでレポートを作成したり、ゲームをするのに最適なプロセッサがこのカテゴリになります。グラフィックボードを別途購入しなくてもCPU内部にグラフィック機能を搭載していてPCモニタで画面表示できるのがこのカテゴリのCPUです。ただし例外としてAMD RyzenはCPU内部に内蔵グラフィクスを搭載しておらず、Intel CoreでもCore i5 9400Fのように内蔵グラフィクスが無効化されているモデルがあり別途グラフィックボードが必要ですが一部このカテゴリに含めています。

2018年に発売された第9世代Intel Coreプロセッサが今のところベストです。2017年後半に発売された第8世代Intel Core Coffee Lakeプロセッサと比較すると第9世代Intel Coreは+12%の性能向上に留まっています。

第8世代Intel Core Coffee Lakeは第7世代Intel Core Kaby Lakeと比較して+30%も性能向上していました。

第5世代Broadwellから第6世代Skylake、第6世代Skylakeから第7世代Kaby Lakeへの性能向上は+15%しかありませんでした。近年は年間平均して+22%の性能向上があったので、それに比べると見劣りしていました。

そのため第8世代Coffee Lakeプロセッサが1年で+30%の性能向上というのは過去の平均を上回っているペースになっていましたが、第9世代Intel Coreでは+12%に留まったため年平均+20.6%程度の性能向上になっています。

またAMD Ryzenの第2世代であるRyzen 7 2700XなどはIntel Core i5 9600Kと比較して大幅に性能で負けています。価格面ではRyzenのほうが安いです。しかしRyzenにはオンボードグラフィックス(内蔵グラフィクス)が付いていないので、別途グラフィックボードが必要ない事務作業用途ならIntel Coreがおすすめです。

1位 Core i9 9900K BOX

2018年10月27日発売。第9世代Intel Coreプロセッサのフラッグシップモデルです。マイクロアーキテクチャ面ではCoffee Lakeを改良したCofee Lake Refreshであり抜本的な刷新ではありません。歩留まり率を向上させたことで8コアを高い動作周波数で稼働できるようにしたものです。

Core i9 9900Kは3.6GHz~5.0GHzの動作周波数です。Core i7 8700Kに比べると基本動作周波数が0.1GHz下がっていますが、マイクロアーキテクチャの改良により1コア単体での性能も向上しています。

オーバークロックをしない定格動作のTurboBoost機能では、アクティブコアが2コアまでなら最大5.0GHzで動作します。アクティブコアが4~5コアのときは最大4.8GHz、6~8コアのときは最大4.7GHzです。オーバークロックをすれば全8コアを5.0GHzで動作させることも可能です。PUBGのように1コアに大きな負担がかかるバトロワ系FPSではアクティブコアが少ないため5.0GHz動作可能です。1コアに大きな負担がかかるゲームでは9900Kは最適です。

Core i7 8700Kの後継はCore i7 9700Kになると思われがちですがCore i7 9700Kは8コア8スレッドでありハイパースレッディングが無効化された微妙なプロセッサになります。Core i7 8700Kの後継品は事実上このCore i9 9900Kです。

2017年に発売されたCore i9シリーズはCore-Xシリーズに該当しチップ上に内蔵グラフィクスをそもそも搭載していません(無効化ではなく最初からチップ上に回路が存在しない)。しかし2018年発売のCore i9 9900Kは内蔵グラフィクス(Intel UHD Graphics 630)が搭載されているため拡張グラボ無しでも4K@60fpsトリプルディスプレイ可能です。

L3共有キャッシュは16MBです。1コアあたり2MBになります。Core i7 8700KやCore i7 8086Kでは6コアで12MBのL3共有キャッシュだったため、1コアあたりのキャッシュサイズは変わっていません。全体的なキャッシュサイズはコア数が2つ増えたことにより増加しました。

このCore i9 9900Kの弱点は価格の高さです。Core i7 9700Kは8700Kの価格を踏襲しましたがCore i9 9900Kは1万円ほどさらに高額になりました。

対応マザーボードについてはZ370等の300シリーズマザーボードならBIOSアップデートで第9世代Core i9 9900Kに対応します。既に300シリーズマザーボードを保有している場合はわざわざZ390を新規購入する必要はありません。

2017年に発売された第1世代RyzenではRyzen Threadripper 1900Xというモデルがあったのですが2018年の第2世代では消えてしまいました。第2世代Ryzenでは2800Xも2900Xも発売されなかったためとりあえず同じ2018年のRyzen 7 2700Xと比較します。お互い8コア16スレッド同士の比較である点はフェアです。しかしCore i9 9900Kには内蔵グラフィクスが搭載されていて、内蔵グラフィクス非搭載のRyzen 7 2700Xと比較して9900Kにハンデがあるという前提条件の違いがあります。

結果は+21%もCore i9 9900KがRyzen 7 2700Xを上回っています。両方とも2018年発売の8コア16スレッドプロセッサです。しかもCore i9 9900Kは内蔵グラフィクスを搭載しているためその分だけ汎用コアに回せるチップ面積が小さい制約があります。それにもかかわらず内蔵グラフィクスを搭載せず全チップ面積を汎用コアにまわせるRyzen 7 2700Xがこれだけの大差で下されています。

実はCore i9 9900Kは同じ2018年に発売されたRyzen Threadripper 2950Xも上回っています。

コア数はRyzen Threadripper 2950Xは9900Kの2倍の16コアもあります。にもかかわらず+3%だけ9900Kが上回ってしまうことからして、同じ2018年発売でも1コアあたりの性能の違いがここまで実際の用途では大きく響いてくるということです。

2位 Core i9 9900KF BOX

2019年3月発売。この9900KFはCore i9 9900Kの内蔵グラフィクス(iGPU)を無効化したものです。チップ上には内蔵グラフィクスの回路が実装されていますが、その回路が実行されないように設定されているだけです。

なぜこのように内蔵グラフィクスを無効化するかというと、内蔵グラフィクスのグラフィックコアを実行するとその部分で電力消費が発生してしまうためです。その分だけ汎用コア(8コア16スレッドのホストプロセッサ)に割り当てることのできる電力量が減少し、これが性能低下の要因になります。つまり内蔵グラフィクスを搭載していると汎用コアにとっては足かせとなってしまうわけです。

よって、その足かせを取り除くためにこのCore i9 9900KFでは内蔵グラフィクスが無効化されています。

この9900KFではCPU内部のグラフィクス機能が無効化されているため、別途グラフィックボードを用意しないと画面が映りません。これは内蔵グラフィクスを無効化どころか最初からチップ上に搭載してないRyzenと同じです。よって「ゲームをやらないから内蔵グラフィクスだけで十分」というユーザはこの”KF”ではなくCore i9 9900Kを購入したほうが得します。

また、内蔵グラフィクス(Intel UHD Graphics)を使って動画エンコードを行うよう最適化されたソフトウェアを使う場合は、たとえ別途グラボを用意していたとしてもIntel UHD Graphics搭載の9900Kのほうが有利な場合があります。その場合も”KF”ではなく9900Kのほうがメリットがあります。しかしこれは主に動画作成を行うユーザに限られるので稀なケースです。

「消費電力を全て汎用コアに割り当ててホストプロセッサ部分の性能を最大限に引き出したい」という人は、たとえゲームをやらなくてもグラボを別途用意しグラフィック処理はグラボに任せた上で、9900Kではなく9900KFを採用することでCPU本来の性能をより引き出せます。

しかし保証外のオーバークロックをせず定格内で保証範囲内の使用にとどまるなら性能差は出ません。

保証外のオーバークロックをする人向けのプロセッサとしてはおすすめです。

3位 Core i9 9900KS

2019年5月に発表された第9世代Intel Core Coffee Lake Refreshのデスクトップ向けプロセッサです。マイクロアーキテクチャはCore i9 9900Kと全く同じなので8コア16スレッド。共有キャッシュサイズも同じです。

改善されたのは動作クロックで、Core i9 9900KSのベースクロックは4.0GHzもあります。2018年に発売された9900Kが3.6GHzなのでベースクロックだけでも+11%向上しています。

ベースクロックで4.0GHzの大台に載ったのは通常版だと2017年1月発売のCore i7 7700K以来です。特別版も含めれば2018年のCore i7 8086K以来です。

2015年発売のCore i7 6700Kはベースクロック4.0GHzで、2017年1月発売のCore i7 7700Kが4.2GHz、2017年11月発売のCore i7 8700Kが3.7GHzで、この8700Kで4.0GHzの大台を割ってしまいました。

8700Kの動作クロックが下がってしまったのはコア数がそれまでの4コアから6コアに増えたからです。そして2018年発売のCore i9 9900K、Core i7 9700Kは+2コアで8コアになったため、ベースクロックが3.6GHzとなりさらに0.1GHz下がりました。

今回の9900KSでベースクロックが4.0GHzの大台に乗ったことは、FPSゲームで高いフレームレートを求めているゲーマーには朗報になります。ゲームではコア数の多さよりも高い動作クロックが必要だからです。

もう一つ9900KSで改善された点があり、それは8コア全てを定格動作で同時に5.0GHzまで自動的にクロックが上昇するようになりました。定格外で保証外のオーバークロックをせずに、定格内の保証範囲内の動作で全8コアが同時に5.0GHzになります。2018年発売の9900Kでは8コアのうち5.0GHzまでクロックが上昇するのは2コアまでに限られていました。全8コア同時だと4.7GHzが9900Kの限界でした。それが9900KSだと全8コア同時に5.0GHzまで自動的に保証範囲内で動作クロックを上げてくれます。

特にゲームと動画エンコードを同時に1台のPCで実行しているTwitchやYoutubeのストリーマーにとっては非常に恩恵が大きいです。配信をせずゲーム単独であっても、裏でゲーム以外のアプリケーションを起動してバッググラウンドタスクを動かしている場合は9900Kだと5.0GHzまで動作クロックが上がらない場合があります。9900KSだと裏で何を動かしていても5.0GHzまで動作クロックが上昇するので、ゲームのフレームレート性能を追求するユーザにとって9900Kよりも大きなメリットがあります。

しかし数が多く出てメインストリームになることは無いCPUなので入手のしやすい9900Kが総合的に上です。

4位 Core i7 9700K BOX

2018年10月27日発売。第9世代Coffee Lake Refreshプロセッサです。第8世代まではCore i7 8700Kのグレード7のプロセッサがデスクトップ向けCore-Sシリーズの中ではフラッグシップモデルでしたが、第9世代のCore i7 9700Kはハイパースレッディングが無効化されている微妙な仕上がりになっています。

Core i7 9700Kの動作周波数は3.6GHz~4.9GHzです。ターボ・ブースト・テクノロジー動作時の最大動作周波数が、Core i9 9900Kの5.0GHzよりも0.1GHz低くなっています。

キャッシュサイズについてもCore i9 9900Kより劣っています。Core i9 9900Kでは1コアあたり2MBで合計16MBのL3共有キャッシュが搭載されていますが、Core i7 9700Kでは合計12MBであり、1コアあたりのL3共有キャッシュサイズは1.5MBとなっています。

1世代前のCore i7 8700Kでは6コアにもかかわらず12MBのL3供給キャッシュがあったので、1コアあたりのキャッシュサイズは2MBでした。

もしCore i7 9700Kも8コア16スレッドだったら多少動作周波数が低くても大半の人はCore i7 9700Kを買うと想像できます。今までのCore i7 8700KやCore i7 7700Kの購入層をCore i7 9700Kではなく高価なCore i9 9900Kへ流すためにあえてCore i7 9700Kのハイパースレッディングを無効化してCore i7 9700Kが設定されたことになります。

1コアあたりの性能ではCore i9 9900KよりもCore i7 9700Kのほうが若干上回っています。これはハイパースレッディングが無効化されているためです。

ハイパースレッディングというのはIntelの技術用語ですが、学術上(講学上)の一般化された概念では「同時マルチスレッディング」といいます。

同時マルチスレッディングの考え方は、使用されず余っている演算器を他のスレッドに使わせてあげて演算器の使用効率を向上させることで、時分割の平行(concurrent)ではなく並列(parallel)でスループットを向上させるものです。例えばスレッドAが加減算器(足し算引き算)を使っている間、乗算器(掛け算)は空き状態になってしまいます。これは使われていない乗算器がもったないです。

そこで同時マルチスレッディングでは、スレッドAが加減算器(足し算引き算)を使い、別のスレッドBが乗算器(掛け算)を必要としている場合、スレッドAが使っていない乗算器をスレッドBにも使わせてあげることで「同時に」スレッドAとスレッドBを1つのコアに割り当ててスループットを向上させます。これは同時マルチスレッディングが綺麗に機能しているパターンです。

しかし、スレッドAでもスレッドBでも乗算器を使う(掛け算をする)命令が多数含まれている場合、スレッドBが乗算器を使っている間はその乗算器が空くまでスレッドAは待たされてしまうことになります。CPU側から見るとスレッドAもスレッドBも公平に扱ってスレッドAとスレッドBに交互に乗算器を使わせてあげるように差配します。つまりスレッドAが非常に重いゲームのスレッドだった場合、スレッドAから見ればスレッドBが存在するせいで乗算器の取り合いが起こりスレッドAの実行速度が落ちることを意味します。

一方で同時マルチスレッディングが無効=ハイパースレッディングが無効だと、スレッドAがOSによってコアに割り当てられている間は1コアの演算器を丸々スレッドAが独占できます。このことが、1つのスレッドが非常に重くなるゲーム(特にPUBGのようなゲーム)用途においてハイパースレッディングを無効化した9700Kのほうがフレームレートが伸びる理由です。

しかし多くのスレッドが同時に実行される中では当然Core i9 9900Kのほうが性能が上です。

PUBGのようなタイプのゲームでは同時に稼働するスレッド数が少なく1コアに非常に大きな負荷がかかる性質があります。そのようなゲーム単独で実行する場合はハイパースレッディングに対応していないCore i7 9700Kで十分です。TwitchやYoutube動画配信用のエンコードを同時にやるのなら9900Kが有利ですが、配信せずゲームをやるだけの用途ならCore i9 9900KよりもCore i7 9700Kのほうが積極的に採用されています。

この9700Kと同じ2018年に発売されたRyzen 7 2700Xと比較してみます。

+14%、Core i7 9700KがRyzen 7 2700Xを上回っています。型番をみても分かる通りこの両者はお互いにカウンターパートですが、9700Kは内蔵グラフィクスを搭載しているハンデがありながらも、内蔵グラフィクスを搭載していないRyzen 7 2700Xを上回る性能でありおすすめです。Ryzen 7 2700Xが優れているのは価格の安さなので価格の安さを優先するならRyzen 7 2700Xを選択することになります。

またこのCore i7 9700Kは同じ2018年発売のRyzen Threadripper 2920Xの性能も上回っています。

このように+3%だけCore i7 9700Kのほうが上です。内蔵グラフィクスを搭載しなければならないハンデがありながらも、内蔵グラフィクス非搭載のRyzen Threadripper 2920X(12コア)に勝ってしまいました。

5位 Core i7 9700KF BOX

2019年3月発売。9700Kの内蔵グラフィクス(iGPU)を無効化したものです。チップ上から内蔵グラフィクスを削ったものではありません。9700Kと同じチップを用いて、単に設定で内蔵グラフィクスを無効化してあるだけです。

この無効化によって、内蔵グラフィクスに割り当てられていた消費電力をすべて汎用コアに回せるようになります。そのため定格外でオーバークロックするのなら汎用コアの性能は9700Kよりもこちらの9700KFのほうが上です。

ゲームをやらず別途グラボが必要ない人だったり、オーバークロックをしないのだったら9700Kがおすすめです。

定格内の動作クロック周波数仕様は同じなので、基本的に同程度の性能になっています。

この9700KFを有効活用するには保証外の定格外オーバークロックをするくらいの用途がないと意味がないので万人におすすめできるのは9700Kです。

6位 Core i7 8086K Limited Edition BOX

2018年6月8日(金曜日)発売。2018年6月5日(火曜日)に発表されたCPUです。Core i7 8700K(3.7GHz~4.7GHz)の基本動作周波数と最大動作周波数を、ともに大幅に引き上げて4.0GHz~5.0GHzとしたもので、それ以外の技術的仕様はまったく同じです。内蔵グラフィクス(iGPU)であるIntel UHD Graphics 630を搭載しており、共有キャッシュサイズは1コアあたり2MBの合計12MBです。

マイクロアーキテクチャはそのままで、ウェーハから切り取ったチップの中で動作周波数を高くだせる適合品だけを8086Kとして高額価格で販売しています。8086Kも第8世代Coffee Lakeマイクロアーキテクチャ採用であり、マザーボードもチップセット300番台(Z390,Z370,H370,B360,H310)のもので動作します。

当初この8086Kは単なる噂程度の話としてまともに取り上げられていませんでしたが実際に発売されました。なぜ噂扱いされていたかというと、「4.0GHzの基本動作周波数と5.0GHzの最大動作周波数という自己責任のオーバークロックレベルの動作をIntelお墨付きの保証範囲内の定格動作として提供できるわけがない」と思われていたからです。しかもこの8086Kの動作周波数でもTDPは95Wであり、このTDP値のままで動作周波数だけを引き上げることは無理だと思われていたことも単なる噂扱いされていた要因でした。

8086Kと同じ14nmプロセスのCore i7 7700Kでは4.2GHz~4.7GHzの動作周波数を実現していましたがこれは4コアCPUでした。続くCore i7 8700Kでは6コアになりましたが、動作周波数は3.7GHz~4.7GHzに引き下げられました。コアを増やしたことで消費電力が増え発熱量も増えてしまったため動作周波数を引き下げたわけです。そして8086Kでも14nmプロセスでしかもアーキテクチャは変更されていないとなると、同じ6コアTDP95Wで4.0GHz~5.0GHzを実現できるわけがないと見られていたことになります。しかしIntelは技術的改良で実際にリリースまで持ってきました。

CPUには1コアあたりの性能を優先する考え方と、Ryzenのようにコア数をとにかく増やしてスレッドレベル並列処理を優先する考え方の2通りのコンセプトがありますが、この8086Kは1コアあたりの性能の高さを最優先するコンセプトを採用したCPUの急先鋒です。

この8086Kはゲーム用途を強く意識しています。PUBGのようなゲームでは各オブジェクトの処理をたった1つのコアで実行しています。処理する対象のオブジェクトを1つのスレッド内で次々に切替えて実行しているため、1つのスレッドにだけ多大な計算負荷がかかります。このスレッドは分割できない(並列化できない)ため、結果的に1つのコアに大きな負荷がかかってしまいます。

このようなゲームでは1コアあたりの性能が低いRyzenのようなCPUより動作周波数が極めて高い8086Kが有利になります。

動作周波数が低い8700Kと比較すると8086Kのほうが+3%高速です。

また2018年に発売された第2世代RyzenのフラッグシップモデルRyzen 7 2700Xと、同じく2018年に発売された8086Kを比較すると圧倒的な差がつきます。

+12%もCore i7 8086Kのほうが高速です。コア数が2つ多いRyzen 7 2700Xはその分だけ1コアあたりの性能を犠牲にしておりここまでの性能差がついています。

そしてこのCore i7 8086Kは同じ2018年に発売されたRyzen Threadripper 2920Xにも勝っています。

+1%だけですがCore i7 8086KがRyzen Threadripper 2920Xを上回る性能です。しかもRyzen Threadripper 2920Xには内蔵グラフィクスが搭載されておらず、Ryzenの多数のコアを使い切る用途がほぼ存在しないため、大多数の人が必要としている用途ではCore i7 8086Kが最適です。

7位 Core i7 8700K BOX

米国時間2017年9月24日(日曜日)にIntelの第8世代Coffee LakeプロセッサであるCore i7 8700Kが発表されました。発売は2017年10月の予定です。

半導体回路の最小スケールを表すプロセスルールは14nmであり第6世代Skylake, 第7世代Kaby Lakeから変わっていません。しかし14nm++と改善がほどこされており、マイクロアーキテクチャレベルの論理回路を半導体回路に落とし込む際の最適化が実施されています。

1コアあたりの動作周波数は7700Kよりダウンしています。コア数が7700Kの4コアから、7800Kでは6コアに増えたためです。

しかし動作周波数の低下がありながら、1コアあたりの性能は8700Kの方が上回っています。単コアでも8700Kの方が上回っているのに、8700Kでは2コア増えて6コアになっているわけですから全体での性能も当然7700Kを上回っています。

Core i7 8700Kと同じ2017年に発売されたRyzen 7 1700Xと比較してみます。

このように+21%もCore i7 8700Kが上回る性能です。これは圧倒的大差と言ってもいいほどの性能差です。

さらにCore i7 8700Kがすごいのは、同じく2017年に発売された第1世代Ryzenの最高峰モデルRyzen Threadripper 1950Xを+1%上回っていることです。

しかもRyzen Threadripper 1950Xの約1/3の価格で8700Kが買えてしまいます。

それに加えてCore i7 8700Kには内蔵グラフィクスが搭載されています。当然Ryzen Threadripperに内蔵グラフィクスは搭載されていませんので、グラフィックボードを必要としない事務作業用途ならCore i7 8700Kがおすすめです。

8位 Core i5 9600KF BOX

2019年3月発売。Core i5 9600Kに搭載されている内蔵グラフィクス(iGPU:Integrated GPU)を無効化したのがこの9600KFです。内蔵グラフィクスとはCPU内部に搭載されているグラフィック機能であり、グラフィックボードほどの性能はないものの4K@60fpsで3画面接続でWordやExcelを編集したりYoutube再生をできるくらいのグラフィック性能のある機能です。

よってIntel Coreプロセッサでは別途グラフィックボードを購入しなくてもPCディスプレイで画面が映ります。これが当たり前と思っているユーザは多いでしょう。しかしこのように別途グラフィックボードを用意せずに画面が映るのは、Intelが「大口顧客の企業等のゲームをやらないユーザ」のためにCPU内部に内蔵グラフィクス(広義のオンボードグラフィクス)をあえて搭載してグラフィックボード無しでもパソコンが使えるようにしてくれているためです。

実はAMD Ryzenプロセッサには内蔵グラフィクスが搭載されていません。そのためRyzenでは別途グラフィックボードを用意しないと画面に何も映らないのです。その点Intel Coreは内蔵グラフィクスを常に搭載し、ゲームをやる必要がなくグラフィックボードが不要なビジネス用途で広く採用されています。

Ryzenが内蔵グラフィクスを搭載しなかったのは、内蔵グラフィクスを搭載するとそれが足かせになり、本来のCPUコア(汎用コア)の性能が落ちてしまうためです。Ryzenでは内蔵グラフィクスを搭載してしまうとその部分に消費電力を奪われてしまい汎用コアの性能が落ちてしまいます。また内蔵グラフィクスをRyzenに用意してしまうと限りあるチップ面積のうち半分近くを内蔵グラフィクスに割当てなければならないため、汎用コアように割当てることのできるトランジスタ数が減ってしまいます。そうなるとIntel Coreプロセッサに追いつけないということで、Ryzenでは内蔵グラフィクスの回路がごっそり削られて非搭載になっています。

これは第2世代Ryzen Gという内蔵グラフィクスを搭載したRyzen APUが4コア止まりだったことにも現れています。内蔵グラフィクス非搭載の第2世代Ryzenは8コアですが、内蔵グラフィクスを搭載した第2世代Ryzen Gは半分の4コア止まりとなりました。このことからも内蔵グラフィクスの存在がいかにAMD Ryzenにとって足手まといかわかります。

一方でIntel Coreはいままでビジネス用途でも使えるように内蔵グラフィクスを搭載してきました。

しかし、グラフィックボードを別途用意しているユーザにとっては内蔵グラフィクス非搭載のほうが汎用コア(6コア)の性能が引き出せるため、そのようなユーザのために内蔵グラフィクスを無効化したCPUが発売されました。それがこのCore i5 9600KFです。

実際はチップ上に内蔵グラフィクスの回路が実装されており、設定によってその内蔵グラフィクスを無効化しているだけなのですが、無効化するとその回路には電流が流れないため全ての消費電力を汎用コア(6コア)に割り当てることができ、Core i5 9600Kよりも性能が高くなるわけです。

このように9600″KF”のほうが9600″K”より性能が高くなっています。

よってグラフィックボードを別途用意している人はこの9600KFのほうが汎用コアの性能が高くなるため、ゲームでのfps(フレームレート毎秒)を高くすることができます。

一方で、グラフィックボードを用意しない場合はCore i5 9600KFでは画面出力ができないため、わざわざ別途グラフィックボードを買うくらいならCore i5 9600Kのほうが得になる場合があります。ゲームをやらず簡単な事務作業用途ならCore i5 9600Kがいいですし、ゲームをやらなくても科学技術計算をしていて高いCPU性能が必要な場合は9600KFのほうが有利です。それぞれのユーザのニーズによって選択することが重要です。

9位 Core i5 9600K BOX

2018年10月19日発売。第9世代Coffee Lake RefreshのCore i5 9600Kは、第8世代のCore i5 8600Kとほぼ同じです。若干動作周波数が上がった程度とみればいいでしょう。6コア6スレッドである点も同じです。

Core i5 9600Kの動作周波数は3.7GHz~4.6GHzです。1世代前のCore i5 8600Kが3.6GHz~4.3GHzだったことを踏まえると、基本動作クロック周波数がCore i5 9600Kは0.1GHz増加し、ターボ・ブースト時の最大動作周波数が0.3GHz上昇していることになります。

L3共有キャッシュサイズは全く同じ9MBです。Core i5 9600Kも1世代前のCore i5 8600Kもコア数がともに6コアであるため、1コアあたりのキャッシュサイズも1.5MBで全く同じです。

10位 Core i7 9700F

2019年6月7日発売。8コア8スレッドでL3共有キャッシュサイズ12MB。9700Fのクロックは4.0GHz~4.7GHzで、Core i7 9700K(3.6GHz~4.9GHz)から意図的に引き下げたモデルです。また内蔵グラフィクス(iGPU:integrated GPU)も意図的に無効化してあるので、Core i7 9700Fでは別途グラボを用意しないとディスプレイ出力ができません。

まず9700Kと9700KFの違いから説明すると、9700KFでは内蔵グラフィックスが無効化されているのに加えて、vPro等の(PCを大量調達する)法人向けで重宝される機能が無効化されています。つまり9700Kは企業で大量採用するのに適格なCPUですが、9700KFは少ない台数で用いる個人用途を想定しています。

そして9700Fは9700KFのクロックを引き下げたものです。9700Fは9700KFと同じチップを使っているのですが、9700KF用のチップのうちクロック周波数が上がらなかったチップを9700Fとしています。そのかわり9700KFより安くなっています。

9700Fでも9700Kと同様に優秀なのがキャッシュ(cache)です。キャッシュはAMD Ryzenのように技術力が低いプロセッサだと4コアで1つのL3共有キャッシュを用意して、もう4コアで1つのL3共有キャッシュを用意するといったキャッシュヒット率の下がってしまう非効率な実装をしています。

一方でIntel Coreは8コアで1つのL3共有キャッシュを持っているためどのコアにスレッドが割当てられてもRyzenのようにキャッシュミスになりません。

多数のコアで1つのキャッシュを共有するためには連想度(アソシアティブ)を向上させなくてはならない上に、キャッシュコヒーレンシ(一貫性)の確保も複雑になります。よってRyzenでは4コアずつL3共有キャッシュを用意する妥協案を採用しているわけですがIntel Coreでは8コア単独でL3共有キャッシュを持つことができています。

11位 Ryzen 7 3800X

8コア16スレッドで動作クロック3.9GHz~4.5GHzの第3世代Ryzenプロセッサです。IOチップを除けば、8コアが乗ったダイを1枚だけ使ったワンチップ構成になっています。2チップで12コアを実現しているRyzen 9 3900Xと異なる点です。

Core i9 9900K(最大5.0GHz)やCore i7 9700K(最大4.9GHz)と同じ8コアですが、動作クロックがRyzen 7 3800Xでは低すぎるので微妙なプロセッサとなっており、6コアのIntel Coreプロセッサにもベンチマークで勝てない結果となってしまっています。

つまりCore i7やCore i9のほうが高性能です。

第3世代Ryzenにとって不利になってしまったのは、動作クロックが思うほど伸びなかったことです。最低でも5.0GHzに届いて欲しいというのがRyzenユーザの要望だったらしいですが、実際は大きく下回る4.5GHz止まりとなりました。AMDの公式発表によれば12nmプロセスから7nmプロセスの移行によって半導体回路の性能向上(伝搬遅延の短縮化)は達成できず12nmと同じ性能に留まったようです。そのかわりトランジスタ数あたりの消費電力は下がったため今までの8コアのRyzenより低消費電力になっています。

16コアの第3世代RyzenはRyzen 7 3800Xで採用されているダイを2枚搭載して16コアにしたものよりは低性能になります。Ryzen 7 3700Xのチップを2枚搭載して16コアを実現しないと製造原価が高くなりすぎてしまうためです。

2019年発売の第3世代Ryzenの中で最もゲーム用途に向いているのは6コアの第3世代Ryzenですが、8コア以上だとこのRyzen 7 3800Xが最もゲーム用途に向いています。ベースクロックが3.9GHzもあるからです。Ryzen 9 3900Xは汎用コアが2チップ構成になっておりキャッシュミス等でチップ間の通信が発生すると多大なオーバーヘッド(無駄な処理)が発生し処理が遅くなります。そのためキャッシュを有効活用したいならRyzen 7 3800Xのほうがおすすめです。

12位 Core i7 8700

Core i7 8700KやCore i5 8600Kと比較すると、Core i7 8700は性能で完全に劣ります。8700の存在意義がどこにあるかというと消費電力です。TDP65Wしかありません。8700K,8600KのようにTDP95WもあるとLe Grand Macho+ケースファン回転でもギリギリなところで正直夏場はかなりあやういのですが、65WのCPUなら適当にケースファンを低速回転させてれば十分冷却できてしまいます。通気性のいいメッシュタイプの穴だらけのケースだったらケースファンすら回さずLe Grand Macho単品でもOKでありノイズゼロの無音PCが出来上がります。無音PCを求める人には8700は価値があります。

13位 Core i3 9350KF

2019年3月発売。Core i3 9350KFはCore i3 8350K(第8世代CoffeeLake)の後継モデルという位置づけですが、ターボ・ブースト・テクノロジー2.0に対応、内蔵グラフィクスが無効化になっている等の変更点があります。

8350Kから変化していない点は、基本動作周波数が4.0GHz、TDP91W、共有キャッシュ8MBです。このキャッシュは4コアで共有しています。8MBを分割してそれぞれのコアに割り当てているのではありません。各全てのコアから見ると8MBのキャッシュ容量があるように見えるようになっています。コアごとに分割したキャッシュでは、同じメモリアドレスのデータを各キャッシュそれぞれで「重複して」保持することが起こります。この場合キャッシュコヒーレンシ(coherency)管理を行わなければなりません。特にマルチコアではこのキャッシュコヒーレンシ管理のために、L1やL2キャッシュに乗っているデータをどのように他のコアのデータと一貫性を持たせるかのアルゴリズムが重要になります。特に複数のコアでバリア同期をとるために使っているデータの場合は重要です。その実現のために教科書的ないくつかの方法がありますが、Intelはそのアルゴリズムを公開しておらず、それをsmart cacheと名付けて秘匿しています。

ここまでは9350KFでも8350Kでも同様です。

9350KFになって変更されたのはターボ・ブースト・テクノロジー2.0に対応したことです。3.0には対応していません。8350Kではターボ・ブースト・テクノロジーに非対応だったので動作周波数が4.0GHzを超えて上がることはありませんでした(明示的に定格外のオーバークロックをしない場合)。しかし9350KFではターボ・ブースト・テクノロジー2.0に対応したため、オーバークロックをしなくても自動的に「定格内」で動作周波数が最大4.6GHzまで上昇します。この4.6GHzは全てのコアが同時に4.6GHzを意味するのではありません。「4つのコアの動作状況によって、少なくとも1コアが4.6GHzに達する場合が存在する」という意味です。ターボ・ブースト・テクノロジー3.0では全てのコアが同じ動作周波数で動作することを「保証(Guarantee)」していますが、ターボ・ブースト・テクノロジー2.0では4.6GHzの達成は「Best Effort」です。

そしてCore i3 9350KFではオンボードグラフィクス(iGPU:Integrated Graphics Processing Unit、内蔵グラフィクス)を無効化してあります。チップ上の半導体回路としては内蔵グラフィクスが搭載されているのですが、あえて無効化してあります。なぜ無効化されているのかといえば、この9350KFを使用するユーザは別途グラボを用意していることが想定されているからです。この9350KFはコア数こそ4コアで少ないですが1コアあたりの性能は極めて高いです。そのため1コアに大きな負担がかかるゲーム用途に適しています。そのような用途のユーザならグラフィックボードは別途自前で用意するだろうということで、この9350KFは内蔵グラフィクスが無効化されています。無効化することはメリットもあります。なぜなら内蔵グラフィクス部分の回路に電流が流れなくなるため、汎用コアに消費電力を割くことができるからです。TDP91Wの熱許容量をすべて汎用コアに割くことができるので、内蔵グラフィクスが有効化されているプロセッサより汎用コアの性能が向上します。

このCore i3 9350KFはTDP65W級のCore i7 9700やCore i5 9600、Core i5 9400F、Core i7 8700、Core i5 8600よりも1コアあたりの性能は高性能です。TDP91Wの高発熱量を4つのコアに割り振っているため、1コアあたりの性能に特化したプロセッサです。単にゲームをやるだけならおすすめできるのはCore i3 9350KFです。ただし、同時に動画配信用の動画エンコードも1台のPCでやるというのなら、コア数が多い9900KFや9700KFがおすすめです。

14位 Ryzen 5 3600X

Ryzen 5 3600X(6コア12スレッド、3.8GHz~4.4GHz、TDP95W)は、Ryzen 7 3700X(8コア16スレッド、3.6GHz~4.4GHz、TDP65W)よりも高性能です。

Ryzen 7 3700Xは、Ryzen 7 3800Xほどの動作クロックが出なかったチップをそのまま捨ててしまうのはもったいないので、動作クロックを引き下げて動作するようにした上で販売されたものだからです。

Ryzen 5 3600Xは非常に重要なプロセッサで、これはRyzen 9 3900Xにも使われているのと同じダイを搭載しています。このRyzen 5 3600Xの6コアダイを2つ連結して12コアにしているのがRyzen 9 3900Xだからです。

つまり、ゲーム等のスレッドレベル並列性を必要としない用途ならこのRyzen 5 3600Xを買ったほうがお得な上に、1つのコアあたりに割り当てることができる電力も大きいので有利です。

逆にRyzen 9 3900Xになってしまうと、TDP105Wしかないため12コア1つあたりに割り当てることのできる電力量が少なくなります。そうなると1コアあたりの性能が高く出ません。

もともとRyzen 5 3600Xのチップを2つ使って実現されているのがRyzen 9 3900Xなので、下地の出来自体としてはRyzen 5 3600Xと同じです。12コアを使い切れるスレッドレベル並列性が高い特殊な用途ならRyzen 9 3900XやRyzen Threadripperのほうがいいですが、そこまで並列性が高くないゲームのような用途だったらRyzen 5 3600Xのほうがむしろ有利になります。

15位 Core i5 8600K

2017年発売のIntel第8世代CPUです。第7世代Kaby LakeのCore i7 7700Kを買うくらいなら、第8世代Coffee LakeのCore i5 8600Kを買うことをおすすめします。

7700Kで用いる2xxシリーズチップセットと、8600Kで用いる3xxシリーズチップセットの間で互換性がないことも第8世代をおすすめする理由です。3xxチップセットを買っておけば後から8700Kに乗り換えることも、8700にして無音PCを作ることも可能です。

性能面でも第8世代Core i5 8600Kは第7世代の7700Kを超えています。しかも価格面では7700Kよりも8600Kの方が圧倒的に安くなるでしょう。

8600Kはハイパースレッディング非対応なので6コア6スレッドです。またキャッシュサイズが少し小さくなり、動作周波数も8700Kより0.1GHz低くなります。絶対性能を求めるなら8700K、コスパを求めるなら8600Kといったところです。

16位 Ryzen 7 3700X

第3世代Ryzenプロセッサのラインナップの中の1つです。8コア16スレッドの上位モデルであるRyzen 7 3800Xの動作クロックを引き下げたものです。Ryzen 7 3700Xのクロックは3.6GHz~4.4GHzであり、Ryzen 7 3800Xの3.9GHz~4.5GHzと比較すると減少しています。

特にベースクロックの落ち込みが激しく、Ryzen 7 3700Xを基準にするとRyzen 7 3800Xのベースクロックは+8%増。Ryzen 7 3800Xから見ると、Ryzen 7 3700Xのベースクロックは-7.6%です。ブースト時の最大動作クロックは0.1GHz差ありますが大したことありません。そもそもこの4.4GHzという最大クロックは8コアのうちほんの一部のコアが一時的に達成するだけなので、クロックの高さはベースクロックが重要です。

動作クロックが低い分だけ消費電力(単位時間あたりの発熱量)が減少しており公称TDP65Wです。

このRyzen 7 3700Xは高いクロックを実現できなかった「劣ったダイ」を用いた製品です。ウェーハから切り取ったダイはクロックを上昇させても動作するダイと、クロックを上昇させるとソフトエラーで動作しなくなる瑕疵ある「劣ったダイ」が存在します。瑕疵のあるダイを捨ててしまうと、そのダイの製造原価を他のダイの製造原価に転嫁しなければならないので歩留まりが極端に悪化し最終的な売価も上昇します。

そのため動作クロック上がらないダイもこのようにRyzen 7 3700Xとして製品化して売られています。価格を気にしないのなら全てにおいてRyzen 7 3800Xのほうが優れているのでそちらがおすすめです。

そしてスレッドレベル並列性がある特殊な用途向けのRyzen 9 3950Xはこの3700Xの劣ったダイを2枚搭載して価格の高騰を抑えています。3800Xの8コア用ダイを使ってしまうとあまりにも価格が高くなりすぎてしまうというAMDユーザ向けのマーケティング上の都合です。実際にベースクロックはRyzen 7 3700Xよりも低くなっています。

17位 Core i5 9500

このCore i5 9500無印は、Core i5 9600無印と動作クロック以外に違いはありません。単純にCore i5 9600の動作クロック3.1GHz~4.6GHzを引き下げて、3.0GHz~4.4GHzにしたものをCore i5 9500として売っているだけです。9600の動作クロック3.1GHz~4.6GHzまで動作クロックを上昇させることができなかったチップを、動作クロックを引き下げて9500として売っているということです。

動作クロック以外は全く同じです。同時マルチスレッディングが無効化されていることも、SIMD演算器の性能も同じでキャッシュサイズも同じですし、vProが有効化されている点もCore i5 9500とCore i5 9600は同じです。vProが有効化されているとリモートでWindowsUpdateを一斉適用できるようになるので、官公庁や大企業ならCore i5 9500でも十分使い物になります。これよりワンランク下のCore i5 9400だとvProが無効化されてしまっているので、官公庁や大企業で採用するなら9400よりCore i5 9500のほうがおすすめです。

18位 Core i5 9500F

Core i5 9500Fの動作クロックは3.0GHz~4.4GHzでありCore i5 9500無印と全く同じです。違いはオンボードグラフィックス(iGPU:integrated GPU)がこちらの9500Fでは無効化されているということです。そのためこの9500Fは微妙なCPUです。このCore i5 9500帯のCPUを使う人はゲーマーというよりも、家庭内でネットブラウザを使ったりWordExcelをやる程度のPCを想定している人が購入するCPUです。ゲーマーは高動作クロックのCPUを求める傾向があるのであまりこのCore i5 9500帯のCPUは買いません。ゲーマーはさらに別途グラフィックボードを購入しますが、ゲームをやらない限りはグラフィックボードは不要でCPU上に搭載されたオンボードグラフィックスで十分です。そうなるとオンボードグラフィックスが無効化されてしまっているCore i5 9500Fはあまりメリットがありません。Core i5 9500Fは追加でグラフィックボードを購入することが必須だからです。そのため、このCore i5 9500Fを買うくらいなら”F”ではないCore i5 9500のほうがおすすめです。Core i5 9500ならグラフィックボードがなくても普通にパソコンモニタが映り4K@60fps描画もできるくらい優秀です。

19位 Ryzen 7 2700X

2018年4月19日発売の第2世代Ryzenプロセッサ。第1世代Ryzen 7 1700Xと同じ8コア16スレッドですが、動作周波数が3.7GHz~4.3GHzであり上昇しています。TDPは105Wなのですべてのコアが同時に4.3GHzになるわけではありません。TDP105Wの範囲内で一部のコアの動作周波数を4.3GHzまで上げることになります。キャッシュサイズは16MBです。

2018年のRyzen 7 2700Xを同じグレード7の2018年発売のCore i7 9700Xと比較してみます。

+14%もCore i7 9700Kが勝利してしまっています。

次に同じ8コア16スレッドの条件で比較してみます。本来Ryzen 7 2700Xと比較すべきは同じ2018年に発売され8コア16スレッドのCore i9 9900Kであるためです。Core i9 9900Kには内蔵グラフィクスが搭載されている一方で、Ryzen 7 2700Xには内蔵グラフィクス非搭載であるためIntel側にハンデがありフェアな比較ではないのですが、Ryzen側が有利になる条件下であえて比較してみます。

Ryzen側が有利になる条件下であっても+21%の圧倒的大差でCore i9 9900KがRyzen 7 2700Xに勝っています。

次にコア数を減らして6コアのCore i5 9600Kと比較してみます。

これでもまだIntel Core i5 9600KがRyzen 7 2700Xに勝利しています。

発売が1年古い2017年発売のIntel Coreと比較する場合は、8700Kを持ち出すまでもなくCore i5 8600Kでも十分です。

このようにCore i5 8600KがRyzen 7 2700Xに+2%勝利しています。第一世代Ryzenのときもそうでしたが、本来Ryzen 1800Xと比較すべきは内蔵グラフィクス非搭載のCore i7 7800Xなのですが、Core i7 8700Kでも十分勝ててしまっていました。

今回の第2世代Ryzenも同じであり、Ryzen 7 2700Xと比較すべきはCore i7 9700Kであるにもかかわらず、それよりもワンランク下であるCore i5 9600KでもRyzen 7 2700Xに勝ててしまったことになります。

このような結果になったのは6コアのCore i5 9600Kのほうが8コアのRyzen 7 2700Xよりも1コアあたりの性能が高いからです。並列性が高いアプリケーションは限られているので、多くの用途では1コアあたりの性能が高いIntel Coreプロセッサのほうが有利です。

20位 Core i7 7700K BOX

2017年に発売された第7世代Intel Coreプロセッサです。このCPUは第6世代Intel Core Skylake-S用のZ170やH170などのチップセットを積んだマザーボードでも使いまわしができます。

すでに6700Kを持っている人なら7700Kを買ってきて付け替えてマザーボードのBIOSアップデートをするだけで済んでしまいます。現時点で6700Kを持っておらず、これからCPUを買う人なら1コアあたりの性能が高い7700Kの方がいいでしょう。以下のように7700Kの方が+8%ほど性能が高いです。

サーバーではなくデスクトップ作業PCとして使うなら7700Kのように1コアあたりの性能の高さは重要です。

21位 Core i5 8600 BOX

2018年4月3日発売。TDP65Wである点はCore i7 8700と同様であり、1コアあたりの演算器の数(SIMD演算器含む)については8700と同じです。違う点はCore i5 8600は6コア6スレッドとなっておりコア数が少ない部分です。

基本動作周波数は3.1GHzでありTurboBoost時には最大4.3GHzまで動作周波数が上昇します。しかし全てのコアが同時に4.3GHzになるのではありません。TDP65Wの範囲内で、動作周波数を上げても消費電力が上がりすぎない範囲内で一部のコアが最大で4.3GHzまで動作周波数が上がるという仕組みです。共有キャッシュサイズは8MBです。

CPUは加減算器、乗算器(掛け算)、除算器(割り算)のような演算器を複数搭載しており、データレベルの依存性がなければ同時に演算を実行することができます。しかし全ての演算器を同時に使い切るほどの命令レベル並列性を持ったアプリケーション(コンピュータプログラム)は実際問題としてほとんど存在しません。

そこで複数のスレッド(プロセス内のスレッド)のうち、加算器使うスレッドを実行している間に余っている乗算器を他のスレッドに使わせてあげるという方式で演算器が余らないよう(暇な遊びの演算器ができるだけ減るよう)にするのが同時マルチスレッディング(Intelの実装ではハイパースレッディングと呼ぶ)という機構であり、これを実装しているプロセッサがCore i7シリーズです。Core i5はこの同時マルチスレッディング機構を実装していません。

よってあまりスレッドレベルの並列性がなかったり、たとえスレッドが複数あっても各スレッドが必要とする演算器の重複度が高い場合には、Core i7 8700とCore i5 8600の間での性能差はほとんどありません。

逆に、Core i7 8700のように同時マルチスレッディングを搭載してしまっていると、高速化したいスレッド(例えばゲームのFPSを高めたいスレッド)と同じコアに別のアプリケーションのスレッドが同時に割り当てられてしまい、1つのコアをゲームとその他のアプリケーションのスレッドで計算資源(演算器)を分け合わなければなりません。そうなると優先度の高いゲーム用のスレッドの実行が遅くなってしまいます。そういった意味では、ゲームのような高負荷のスレッドがコアに割り当てられている間は1コアを丸ごと1つのスレッドで独占することのできる「同時マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が無効化されているCPU」のほうが高い性能を発揮することがあります。よってゲーマーからはあえて同時マルチスレッディングを無効化してあるCPUが好まれることがあります。

そういった意味ではこのCore i5 8600はゲーム向きです。

22位 Ryzen 5 3600

2019年7月発売。6コア12スレッドで動作クロックは3.6GHz~4.2GHz。上位モデルのRyzen 5 3600X(3.8GHz~4.4GHz)からクロックを引き下げたモデルです。

チップのモノ自体はRyzen 5 3600Xと全く同じです。しかし、製造する過程で動作クロックの上がらなかった瑕疵のあるチップをそのまま捨てるのはもったいないので、チップが動作するレベルまでクロックを引き下げて売られているのがRyzen 5 3600です。これはRyzen 7 3800XとRyzen 7 3700Xとの関係と全く同じです。

ベースクロックは3.6GHzであり、Ryzen 5 3600Xから0.2GHz引き下げられていますが、比率にするとそこまで大きくありません。Ryzen 5 3600からみてもRyzen 5 3600Xは+5.5%なので、Ryzen 7 3700X→Ryzen 7 3800Xの+8%と比べるとベースクロックの性能差は小さくなっています。

公称TDPは65Wですがクロック4.2GHzの水準までブーストが働くともっと消費電力(単位時間あたりの発熱量)は増えます。またこのブーストクロックは全コア同時ではなく6コアのうち一部のみが一時的に4.2GHzになるだけです。常時全コア4.2GHzにするには定格動作では無理なので手動でオーバークロックしなければなりません。

23位 Core i5 9400 BOX

このCore i5 9400の位置づけを理解するためには、Core i5 9600KとCore i5 9600無印の関係を理解する必要があります。9600Kと9600無印の違いは「動作クロック」だけです。CPUはシリコンウェーハから切り取ったダイ上の半導体回路によって動作しています。このチップはすべて同じ品質で動作するわけではありません。中には全く動作しないダイもあれば、非常に高い動作クロックでも動作する「優良品」もあります。そしてその「優良品」のダイを使って動作クロックを引き上げたのがCore i5 9600Kです。そこまで動作クロックが上がらないけれども、動作クロックを下げれば正常に動作するものとして売られているのがCore i5 9600無印です。つまりこの両者の違いは動作クロックだけで、他の機能は全く同じです。

ではCore i5 9400は何が違うかと言うと、「Core i5 9600無印からさらに動作クロックを引き下げ」、「vPro等の主に法人向けの機能を無効化」したものです。動作クロックに関しては「Core i5 9600無印ほどの動作クロックはでないけれども正常に動作するチップを使って動作クロックを引き下げて売られている」のがCore i5 9400ということになります。

そして動作クロック以外の違いもあります。それが「9400ではvProが無効化されている」ということです。vProを搭載したCPUだと、たとえば官公庁や企業等の組織内で動作している数千台以上のPCのWindowsUpdateをリモートで一括適用することができます。vProが無効化されているとこれができません。

ここでは法人向けの機能と書きましたが、それが意味するところは「大量にPCを動作させており一括してWindowsUpdateをリモート実施する必要がある」という部分です。たとえ個人でもWindowsUpdateすべきPCを大量に動作させているならvProが有効化されている9600のほうがメリットがあります。

個人のゲーマーだとPCは持っていても3~5台程度でしょう。自作PCマニアでも、実際に日頃から動作させているPCは極わずかで、ほとんどはパーツをバラしてお蔵入りしていることがほとんどでしょうから個人用途でvPro使用が発生することはほぼありません。実際に自作PCユーザ向けの記事なのにvPro部分に焦点をあててレビューしてる人は出版系大手メディアでも個人メディアでも皆無です。

そういった点を考慮すると、「大規模な官公庁や企業ならCore i5 9400の採用はせず、vProが有効化されているCore i5 9600,9500のCPUを選んだほうがいい」ということです。たとえ企業でも一つ一つWindowsUpdateできる程度の台数ならvProが無効化されている9400でもいいでしょう。自宅で使う個人用ならなおさら9400でも何の問題もないです。

またこのCore i5 9400からオンボードグラフィックス(iGPU)を無効化したCore i5 9400Fもあります。”F”ではない9400無印を私はおすすめします。なぜならCore i5 9400を選ぶ人はゲーマーだけでなく一般事務用途の人が多いからです。そういった人はゲーム用グラボなんか不要でオンボードグラフィックスで十分ですから、グラボに余計な予算を使わずにすむ9400無印のほうが9400Fよりおすすめです。動作クロックは9400無印も2.9GHz~4.1GHz、9400Fも2.9GHz~4.1GHzで同じです。

24位 Core i5 9400F BOX

2019年2月発売。iGPU回路を無効化することで事実上内蔵グラフィクス非搭載になっているプロセッサです。つまりグラボ必須です。6コア6スレッドありCore i5 8400の高動作周波数版という位置づけです。TDP65Wでオーバークロックはできません。2.9GHz~4.1GHzで動作しますが、すべてのコアが同時に4.1GHzで動作するわけではないので注意が必要です。

動作周波数がさほど高くないので、1コアあたりの性能が要求されるゲーム用としては微妙です。コア数が少ないので動画エンコードやRAW現像のようなスレッドレベル並列性が高い用途でも微妙です。そうなるとウェブブラウジングやWord・Excelのような事務作業用レベルの性能ですが、そのような用途ならグラフィクスはiGPUの性能でも十分なので、iGPUが無効化されている9400Fはその点からは好ましくありません。iGPU無効版は、Core i9 9900Kのような高クロックプロセッサにおいてiGPUに割く電力をゼロにしてその余剰を汎用コアに割くことでオーバークロックを狙う場合に有用なものです。Core i5 9400は初めから消費電力が少なく、iGPUが有効化されていても汎用コアに割り当てられる電力が減るわけではありません。iGPU無効版のメリットは少ないため、”F”ではないCore i5 9400無印のほうがおすすめです。

25位 Ryzen 5 2600X

2018年4月19日発売の第2世代(Pinnacle Ridge)Ryzenプロセッサです。6コア12スレッドで、動作周波数は3.6GHz~4.2GHz。TDP95Wの範囲内で、一部のコアの動作周波数を最大で4.2GHzまで上昇させることができます。このプロセッサはRyzen 7 2700(8コア16スレッド、3.2GHz~4.1GHz)よりも、多くの用途において高性能になります。コア数はRyzen 5 2600Xのほうが少ないものの動作周波数はRyzen 5 2600Xのほうが高いので、スレッドレベルの並列化をしていないシングルスレッドのアプリケーションにおいてはRyzen 7 2700よりもRyzen 5 2600Xのほうが高速です。

TDPで比較してみてもRyzen 7 2700は65Wしかない一方で、Ryzen 5 2600Xは95Wもあります。そういった意味ではこのRyzen 5 2600Xは同じ2018年発売のCore i5 9600Kと第一義的には比較することになります。

このように+12%もCore i5 9600KがRyzen 5 2600Xに圧勝してしまいます。

さらに言えばCore i3 8350KにもCore i5 9600KはiGPU(オンボードグラフィックス)搭載なのでグラボを購入しなくてもトリプルディスプレイにできます。Ryzen 5 2600Xは内蔵グラフィクスを搭載していないのでグラボ購入が必須です。

カタログスペックを見るとCore i5 9600Kはハイパースレッディング非搭載ですから、同時マルチスレッディングを搭載しているRyzen 5 2600Xのほうが一見有利です。しかしそれでもCore i5 9600Kが性能で上回ってしまったのは、アウトオブオーダー実行による命令レベル並列処理・SIMD演算拡張命令(SSE4.1,4.2,AVX2)によるデータレベル並列処理においてIntel CoreがRyzenより上だからです。

Core i5 9600KもRyzen 5 2600Xもコア数が同じであるため、これは単純に1コアあたりの性能がどちらのほうが優秀なのかという問題に行き着きます。同じコア数で同じ2018年発売という条件で、Intel CoreがRyzenに勝利したのはひとえに演算回路がIntelのほうが優秀だからということです。

さらに言えばCore i5 9600KはiGPU(内蔵グラフィクス)のためのチップ面積を割り当てる必要があり、汎用コア(6コア)に使えるチップ面積が限られています。一方でRyzen 5 2600Xはオンボードグラフィックス非搭載なので汎用コア用に全チップ面積を割り当てることができます。そのような状況下でも、Core i5 9600KにRyzen 5 2600Xが負けてしまったのは単純に技術力でIntelに追いついていないということです。

26位 Core i3 8350K

2017年発売のIntel 第8世代Coffee Lakeプロセッサです。第8世代のCore i3シリーズの中では最高峰になりますが、Core i3にもかかわらず性能がRyzen 5 1600を上回り、Ryzen 7 1700と拮抗しているのは特筆すべきことです。またRyzen 7 1700はオンボードグラフィックスが載っていないため、汎用コアとグラフィックコアを総合してCore i3 8350Kの勝利です。

27位 Core i5 8500 BOX

2018年4月3日発売。Core i5 8600から動作周波数を落としたものです。6コア6スレッドである点、ハイパースレッディングを実装していないという点、キャッシュサイズが8MBである点はCore i5 8600と同じです。

基本動作周波数は3.0GHzであり、8600の3.1GHzから0.1GHz低くなっています。TurboBoost時の最大動作周波数は4.1GHzであり8600の4.3GHzから0.2GHz低くなっています。動作周波数は低くなっていますが最大発熱量のTDPは65Wで変わっていません。

これはたとえ4.1GHzの動作周波数であってもTDP65Wには簡単に到達してしまうからです。このCore i5 8500であってもすべてのコアを同時に4.1GHzにすることはできません。8600の場合は最大動作周波数が4.3GHzだったので、1つのコアを4.3GHzにしてしまうと他のコアは動作周波数を低くせざるを得ませんでしたが、8500では最大動作周波数が4.1GHzになっているので比較的均等に各コアの動作周波数を設定することができコアごとの性能差がでにくくなっています。1コアあたりの性能が大して必要なく、複数のタスク(アプリケーションプロセス)間の負荷差が小さく、各タスクに均等に計算資源を割り当てたい場合はCore i5 8500を選択してもCore i5 8600とほとんど性能差はありません。

28位 Core i5 7600K BOX

実はCore i5 7600KはRyzenシリーズの最上位Ryzen 7 1800Xに勝っています。しかも6700Kにも勝っています。さらには内蔵グラフィクスがCore i5には搭載されておりRyzenには搭載されていません。

Ryzenを買うならcore i5の方がおすすめです。

29位 Ryzen 7 1800X BOX

2017年3月発売。第1世代Ryzen(Summit Ridge)の最高峰として発売されたフラッグシップモデルです。

2017年発売のRyzen 7 1800Xは同じ2017年発売のCore i7 8700Kと比較することになりますが、少しずつIntel Core側のグレードを落としていっていったいどのあたりまでならRyzen 7 1800Xに勝てるのか見ていきます。まずは8700Kからです。

+16%もRyzen 7 1800Xに6コアのCore i7 8700Kが勝っています。動作クロック周波数が3.7GHz~と高いことと、パイプラインをスムーズに流すためのキャッシュ機構と命令レベル並列処理技術がCore i7 8700Kが上回っているためです。

では次にCore i5 8600Kと比較してみます。8700Kと比較してハイパースレッディングが無効化されており動作クロック周波数も低くなっています。

Core i5であっても+9%もRyzen 7 1800Xを上回っています。しかも内蔵グラフィクスを搭載しているというハンデがCore i5にありながらもこの結果です。

次は同じ2017年発売のCore i3 8350KとRyzen 7 1800Xを比較してみます。コア数は4コアしかなくRyzen 7 1800Xの半分です。

このようにCore i3 8350KとRyzen 7 1800Xが互角です。Ryzen 7 1800Xは同じ2017年に発売されたCore i3と互角の性能だということです。しかもCore i3は内蔵グラフィクスが搭載されています。ベースクロック周波数が4.0GHzもあるため1コアあたりの性能が高く、コア数が4コアしかなくても8コアのRyzen 7 1800Xと互角になってしまいました。

30位 Core i5 8400

2017年発売。第8世代Core i5シリーズの中では最も性能が低く安いものですが6コアあります。動作周波数が2.8GHzであり低めなので1コアあたりの性能をさほど要求しない用途で低消費電力(低発熱)を狙い静音・無音PCを作るにはおすすめです。最大動作周波数は4.0GHzですが、6コアすべてが同時に4.0GHzになることはありません。TDPは65Wなので、このTDP値を超えない範囲で各コアの動作周波数を調節しながら最大で4.0GHzになるコアもでてくるということです。キャッシュサイズは9MBあります。

31位 Core i7 6700K BOX

2015年発売。第6世代Skylakeマイクロアーキテクチャ採用プロセッサです。先代の第5世代BroadwellマイクロアーキテクチャはHaswellマイクロアーキテクチャの焼き直し品でした。

しかし2015年の第6世代からはマイクロアーキテクチャが抜本的に変更されSkylakeマイクロアーキテクチャになっています。そしてこのSkylakeマイクロアーキテクチャは、第7世代のKaby Lake、第8世代のCoffee Lake、第9世代のCoffee Lake Refreshでも採用され続けます。

性能は7700Kの方が+8%ほど高いです。

Broadwellマイクロアーキテクチャ以前のCore i7はオーバークロックしない限り、末尾にKがついている製品と、Kがついていない無印の製品の性能差はありませんでした。つまり末尾がKのアンロックCPUを買っておきながら、オーバークロックしないのは単なる宝の持ち腐れだったのです。

しかし第6世代のSkylake Core i7ではオーバークロックしなくても、末尾文字(suffix)のCPUのほうが高性能になっています。

オーバークロックしなくても定格動作クロック周波数が4.0GHzもあり、さらに条件が揃えば自動的に定格動作の範囲内で4.2GHzに動作クロック周波数を上げてくれます。

さらに性能のわりには消費電力が少ないのでCPUクーラーのファン回転数をかなり抑えることができます。よってほぼ無音の環境ができます。

当然ながら内蔵グラフィクス搭載です。グラフィックボードを用意しなくてもトリプルディスプレイ可能です。

32位 Core i7 8700T

2018年4月3日発売。動作周波数を下げることによってTDP35Wの低発熱に抑えたCPUです。あまり知られていないことですが、Core i7 8700KもCore i7 8700も、そしてこのCore i7 8700Tも基本的に演算回路やパイプラインの深さは同じです。

スペックは6コア12スレッド、キャッシュ12MBで8700Kや8700と同じであることがわかります。それ以外にも演算器の数や、そしてアウトオブオーダー実行のための命令レベル並列性抽出の深さ(どれだけの数の命令をreservation stationに入れて並列性を検出するか)も同じです。

8700Tと8700Kや8700とは何が違うかと言うと動作周波数です。本質的な違いはここだけです。

動作周波数を上げると矩形波としてのクロック信号を生成するためにどうしても高周波成分が必要になります。この高周波成分は回路が長くなると劣化しやすく、電圧を高くしないとクロックの立ち上がりが緩やかになってしまい順序回路が正常に動作しなくなります。そのためクロック数を上げるためには同時に電圧も上げる必要があります。

そしてCPU内部の演算回路は8700Kでも8700Tでも同じなのでCPU回路の抵抗(負荷)は8700Kでも8700でも8700Tでも同じです。抵抗値が同じなら、クロック数を上げるために電圧を上げると電流も正比例して増大することになります。逆にクロック数を下げると電圧を下げることができ、同時に電流も正比例して下げることができます。

そこで今回のCore i7 8700T(基本動作周波数2.4GHz)については消費電力が以下のように計算できます。Core i7 8700は基本動作周波数が3.2GHzなので、これを8700Tの2.4GHzまで落とすとなると、2.4/3.2=0.75でつまり8700の75%まで8700Tは動作周波数が下がっていることになります。

これによって電圧も75%に下げることができます。CPU自体の中身は8700でも8700Tでも同じですから抵抗値は同じです。よって電流も75%に下げることができます。

そうすると電力は0.75×0.75=0.5625で、8700の56.25%まで8700Tの消費電力を下げることができます。Core i7 8700の消費電力の56.25%がCore i7 8700Tの消費電力になるということです。

そしてCore i7 8700のTDPは65Wですから、65W×56.25%=36.56Wとなり、Core i7 8700TのTDP35Wとほぼ一致していることがわかります。

このように動作周波数を下げると電圧も電流も下げることができ、引下げの2乗に比例して消費電力を下げることができるので動作周波数の引き下げというのはTDPを下げることに非常に大きく貢献します。

8700や8700Kにある6コアやハイパースレッディングによる論理コア12を維持しつつ、動作周波数だけを下げることでTDP35Wの低消費電力CPUを提供するというのが8700Tのコンセプトです。

33位 Core i3 9100F

このCore i3 9100Fは動作クロック3.6GHz~4.2GHzです。動作クロックだけを見ると上位CPUに見えますが、第9世代Intel Coreプロセッサの中で最も下位のモデルCore i3 9100Fです。実はCore i3は世代を重ねるごとに飛躍的に性能が向上してきており、コア数が4コアと少なくても1コアあたりの性能が高いためFPSゲーマーにも選択されているCPUです。

「Core i3シリーズは低性能」という先入観は初代~第6世代までのIntel Core i3の性能の低さをつぶさにみてきた高齢世代に多いようです。 Core i3は第7世代、第8世代、第9世代で飛躍的に性能が向上しました。

実はこの4コアCore i3 9100Fは8コアのRyzen 7 2700と同レベルの性能です。

Core i3 9350KFが相手ならまだしも、TDP65WでCore i3で一番下のCore i3 9100FがRyzen 7 2700と同じ性能だと知ったら第2世代Ryzenを買ってしまった人は落胆です。

特にゲームのフレームレート性能ならCore i3 9100FがRyzen 7 2700に圧勝しています。このベンチマークでほぼ互角の性能になっているのは、Ryzen 7 2700の8コアを活かせるスレッドレベル並列性が高い用途も織り込んでいるからです。動画エンコード等の並列性が高い用途ならRyzen 7 2700がCore i3 9100Fより上です。ゲームやブラウジング、WordExcelのように1コアあたりの性能が要求される汎用用途ならCore i3 9100Fが上です。

Ryzen 7 2700がCore i3に敗北してしまった要因はRyzen 7 2700の動作クロックが3.2GHz~4.1GHzしかないからです。しかもIntel Coreのマイクロアーキテクチャのほうが優れているため、動作クロック以上に差がついてしまっています。よってコア数が2倍の8コアあるRyzen 7 2700がコア数4コアのCore i3 9100Fに負けてしまっているわけです。このCPUは両者ともに内蔵グラフィックス(iGPU)を搭載していないため、別途グラフィックボードを購入しないとディスプレイが映らないという点は共通しています。Ryzen 7 2700と互角の性能、しかもゲーミング性能でもCore i3 9100Fのほうが上となったら、「業界2位のAMDを応援したい」という感情面での判官びいきをしない限りはCore i3 9100Fが合理的な選択になります。

34位 Ryzen 7 2700

2018年度発売の第2世代Ryzenプロセッサです。2700Xと動作周波数以外のスペックは同じであり、8コア16スレッドでありキャッシュ16MBです。基本動作周波数を3.2GHzまで下げて、最大動作周波数を4.1GHzまで下げたことによりTDPは65Wまで下がっており、2700Xよりも大幅に低発熱(低消費電力)になっています。

なぜ動作周波数を下げたものをラインナップするかというと、TDPを下げて低発熱にすることで静音PCや無音ファンレスPCを作るという需要があることもありますが、最も重要なのは動作周波数を下げることで歩留まりを改善し安くプロセッサを販売できるからです。動作周波数を高くすると電圧を高くしなければならず、高周波回路ゆえに正常に作動しない回路がどうしても出てきます。たとえ2700Xの3.7~4.3GHzの動作周波数で合格しなくても、2700の3.2~4.1GHzの動作周波数なら合格するチップが出てくるので、そういったものをRyzen 7 2700として売れば1製品あたりの製造原価を低く抑えることができるため安く供給できるわけです。

この2018年度発売のRyzen 7 2700と比較すべきカウンターパートのIntelプロセッサはCore i7 9700です。しかしCore i7 9700を持ち出すまでもなくそれより3グレード下で2018年度発売のCore i5 9400Fでも十分です。

このようにRyzen 7 2700相手でもCore i5 9400が+1%勝利しています。Core i5 9400Fのベースクロック周波数は2.9GHzでありRyzen 7 2700の3.2GHzベースクロック周波数よりも低いです。しかもTDPは65Wで同じです。さらにコア数はRyzen 7 2700が8コア16スレッドに対して、Core i5 9400Fは6コア6スレッドであり同時マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が無効化されています。カタログスペックだけ見ればCore i5 9400Fが完敗しそうですが、それでもCore i5 9400FがRyzen 7 2700に勝利したのはアウトオブオーダー実行による命令レベル並列性抽出の技術、パイプラインをスムーズに流すための技術、データレベル並列処理を高速化するSSE4.1,SSE4.2,AVX2命令などのSIMD拡張命令がCore i5 9400Fのほうが優秀だからです。

コア数が多いCPUは多くのプロセスを同時に動作させるか、1つのプロセス内で明示的にスレッドを複数生成しない限りスレッドレベル並列性が生まれないため、Ryzen 7 2700のようなコア数を使いこなせません。一方で命令レベル並列性やデータレベル並列性は1スレッドのみのアプリケーションにも存在するため、その部分を高速化するのに長けているIntel Coreが勝利したという格好です。

35位 Ryzen 5 2600

2018年度発売の6コア12スレッドのプロセッサです。2018年度に発売された個人向け第2世代Ryzen Zen+アーキテクチャ採用プロセッサの中では最も低スペックであり最も廉価なものになります。PCメーカーに納入されているプロセッサだとこれより下位にRyzen 5 2500Xというものが存在します。

このプロセッサは純粋にRyzen 5 2600Xよりクロック周波数が低い版で3.4GHzのベースクロック周波数を持ちます。正確に言えばRyzen 5 2600の設計が最初にあり、その2600をベースにクロック周波数を上げたものがRyzen 5 2600Xです。

クロック周波数を上げること自体は設定で簡単にできてしまうのですが、クロック周波数を上げるとなると電圧も上げなくてはならなくなり、ウェーハから切り取った大量のチップのうち回路が正常に動作するチップと正常に動作しないチップがでてきます。高いクロック周波数では正常に動作しないチップであっても、クロック周波数を下げれば正常に動作するチップが存在するので、そのようなチップはクロック周波数が低い版として売ることによって製造原価を引き下げることができ価格を安くできます。そのようにクロック周波数を低く抑えたものがRyzen 5 2600であり2600Xより安くなっているわけです。プロセッサの中身自体は一緒ですがクロック周波数が異なり発熱量(消費電力量)も異なります。

このプロセッサのTDPは65Wですが、同じTDP65WのIntel Coreプロセッサに比べるとどうしても性能が低くなってしまいます。消費電力あたりの性能を高めることに関してはIntelに一日の長があるためです。

本来、このRyzen 5 2600はIntelのCore i5 9600と比較するべきものです。ともにTDPは65Wでありグレードは6です。しかし当然ですが、Intel CoreよりもAMD Ryzenは性能が低くなりがちなので、同じグレードのプロセッサで比較するとIntel Coreが圧倒的に勝ってしまいます。そこでグレードを2つ下げた上で同じ2018年度発売のCore i5 9400Fと比較します。

同じ6コアプロセッサで、Core i5 9400Fはハイパースレッディング(同時マルチスレッディング)に対応していない上に2.9GHzしかベースクロック周波数がありませんが+5%だけCore i5 9400Fが勝利しています。両方ともコア数が一緒なのでこれは単純に1コアあたりの性能の違いです。クロック周波数が高いほど1コアあたりの性能は高くなりますが、Intel Coreはアウトオブオーダー実行とスーパースカラの組合せによる命令レベル並列処理や、SSE・AVX2拡張命令(SIMD演算命令)で256bit幅SIMD演算器(FMA)×2を使うデータレベル並列処理が優秀なのでクロック周波数が低くても、1クロック(サイクル)あたりの演算回数が多いためIntel Core i5 9400Fのほうが上になります。

しかもIntel CoreプロセッサはiGPU(内蔵グラフィクス)を搭載しているためグラボ無しでも4K 60fpsのトリプルディスプレイにできます。しかしRyzen 5 2600はオンボードグラフィックスを搭載していないため別途グラボを用意しなければなりません。RyzenはiGPUを削減することにより汎用コアのチップ面積を増やしIntelになんとか太刀打ちしようとしているのがRyzenのコンセプトなので、内蔵グラフィクスが付属しているIntel Coreのほうが優秀です。

36位 Ryzen 7 1700X BOX

2017年3月発売。Ryzen 7 1700XはRyzen 7 1800Xとの対比で位置づけを捉えることが重要です。半導体チップを作る際、円形のウェーハから切り取ったダイ(チップ)には確率的に優劣が存在します。そのうちクロック周波数を高くできる優秀なダイを使ったのがRyzen 7 1800Xです。一方でクロック周波数が上がらない劣ったダイを使ったのがこのRyzen 7 1700Xです。

ともに8コア16スレッドであり、違いはクロック周波数の高低だけになります。つまり予算があるなら価格以外のすべての面においてRyzen 7 1800XがRyzen 7 1700Xよりも優れています。

ではこのRyzen 7 1700XをIntel Coreと比較してみます。同じ2017年に発売されたCore i7 8700Kと比較します。型番的にはカウンターパートなのですがCore i7 8700Kは6コアであり2コア少ないことと、内蔵グラフィクスをIntel Coreでは搭載しているため内蔵グラフィクスを搭載しないないRyzenより前提条件は不利です。

しかしこのように+21%もCore i7 8700KがRyzen 7 1700Xを上回っています。これはCore i7 8700Kのベースクロック周波数が0.4GHz高いことと、マイクロアーキテクチャにおいて第8世代Coffee Lakeが、第1世代RyzenのZenマイクロアーキテクチャより優れており1コアあたりの性能がIntel Coreのほうが高いためです。

37位 Core i7 4790K BOX

2014年発売。一時期は一世を風靡したプロセッサでしたが2017年頃から人気が落ちてきました。どんなに消費電力が高くてもいいからとにかく性能を最優先したということで一時は大人気だったCPUです。2017年に第7世代のKaby Lakeマイクロアーキテクチャ採用プロセッサがでてきたことによって、このCore i7 4790Kという第4世代のHaswellマイクロアーキテクチャ採用プロセッサはCore i5 7600にすら負ける結果になりました。この4790Kを買うなら、新しいCore i5(しかも定格外オーバークロック非対応で倍率ロックされている無印タイプで十分)を買ったほうが高速だということです。

このCPUの汎用コアの性能は6700Kと同等です。

そのため2015年にSkylakeマイクロアーキテクチャ採用のプロセッサが登場しても、4790Kから乗り換える人はほぼいませんでした。しかし第7世代Kaby Lakeマイクロアーキテクチャになってから消費電力を無視してもさすがに勝てなくなってきたので、少しずつ4790Kから脱却しているユーザが増えているようです。

この4790KのHaswellマイクロアーキテクチャ世代と、Skylakeマイクロアーキテクチャ世代での違いはマイクロアーキテクチャレベルでの改良も当然実施されているのですが、半導体プロセスの改善も実施されました。そのため消費電力の観点からは圧倒的に4790Kが不利です。

マイクロアーキテクチャ改良の観点だと、Skylake以降は内蔵グラフィクスの高速化が重視され内蔵グラフィクスのチップ面積比率が増加しています。

CPUのチップ面積は限られているので、その面積を何に使うのかというリソースの割り振りが重要になります。汎用コア部分は4790Kと6700Kの性能が同等になるようになっていますが、内蔵グラフィクス性能は6700Kの方が格段に高くなっています。そのため2015年にSkylakeの乗り換える4790Kユーザが多かったわけですが2017年には汎用コア性能でも負けてしまったことになります。

さらに重要なことは、この4790KのHaswellマイクロアーキテクチャで対応するメモリの規格はDDR3であり、DDR4よりも遅いものになっています。ただしPCI Expressのリビジョンは3でありSkylake世代と同等です。

プロセッサの演算性能だけを測るベンチマークのように扱うデータサイズが大きくないものでは4790Kが速くても、実際の用途では思うほど速くないのは、パソコンの実際的応用(実アプリケーションの振舞い)でボトルネックになるメモリアクセスがHaswell世代では遅いためです。第6世代Skylake以上で対応しているDDR4との差が現れています。

しかも4790Kの生産が終わり流通量が減っていく中で2014年当初より高いプレミアムが付いていしまっている現状では、適正な価格で他に良いCPUがいくらでも出ているので積極的に購入するモデルではありません。

38位 Core i5 6600K BOX

2015年発売。同時マルチスレッディングが不要ならこの6600Kでもいいでしょう。

6700Kと同じ4コアですが同時マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が無効化されているため、OSが同時にコアに割り当てることができるのは4スレッドまでです。

これは各スレッド(プロセス)から見ると、そのスレッドがコアに割当てられている間は他のスレッドとの演算器の奪い合いが発生しないため1つのスレッドの処理速度は平均的にみれば向上します。そのかわり他のスレッドの処理を同時に実行できないためOS上で動作しているアプリケーション(プロセス内部のスレッド)のスループットという観点からは遅くなります。

つまり限られた少数のスレッドを集中的に処理するなら6700Kより6600Kが高速になる場合があります。ただし、6600Kはベースクロック周波数が6700Kより低いため、明示的に定格外のオーバークロックをすることは必要です。

後継モデルと比較しておくと、2017年初に発売されたCore i5 7600Kとの性能差は10%程度です。

この性能向上はマイクロアーキテクチャの改良によるものではありません。第6世代も第7世代Kaby Lakeも狭義のマイクロアーキテクチャはSkylakeだからです。つまりこの+9%という性能向上は単にベースクロック周波数の向上のみによって達成されています。ベースクロック周波数が+0.3GHz向上しているので、0.3/3.5=0.085となり、+9%とほぼ一致しています。

39位 Ryzen 5 1600X BOX

このRyzen 5 1600Xは2017年に発売された6コア12スレッドプロセッサです。これよりも8コア16スレッドのRyzen 7 1700が高速だと思われがちですが実際は逆です。

コア数が6しかないながらも+2%、8コアのRyzen 7 1700に勝っています。理由はベースクロック周波数がRyzen 5 1600Xの方が高いからです。コア数ではRyzen 5の方が劣りますが、ベースクロック周波数が高いため1コアあたりの性能はRyzen 5 1600Xの方が上です。マルチコアプロセッサを活用できるアプリケーションは一般用途ではそこまで多くないので、普通に使う分なら1コアあたりの性能が高いRyzen 5 1600Xの方が、1コアあたりの性能が低いRyzen 7 1700に勝つことになります。

そしてこのRyzen 5 1600Xはチップの優秀さという意味ではRyzen 7 1800Xと同等です。第1世代Ryzenの8コアのラインナップでは、1800Xで最も良いチップ(ダイ)を用いて、次が1700X、それより劣ったチップが1700のように振り分けられています。つまりRyzen 7 1700は残り物に近いです。

一方でRyzen 5 1600Xは、Ryzen 7 1800Xで使っている8コアのチップを用いて8コアそれぞれのクロック周波数を引き上げてみて、クロック周波数が上がりにくかったものから順に2つのコアを無効化して6コアにしたものです。そのためベースクロック周波数がRyzen 7 1800Xと同じ3.6GHzになっています。8コアすべてのクロック周波数を高くしなければならないRyzen 7 1800X用のチップよりは下位となりますが、そのうち6つのコアのクロック周波数を高くできることは保証されているためRyzen 5 1600Xはそれなりに優秀な個体を用いたプロセッサです。Ryzen 7 1700XやRyzen 7 1700よりもRyzen 5 1600Xで使用しているチップは優秀です。

Intel Coreとも比較しておきます。同じ2017年に発売された第8世代Core i5 8600Kと比較します。ベースクロック周波数は同じですがCore i5 8600Kは同時マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が無効化されています。この点はRyzen 5 1600Xが有利です。またCore i5 8600Kには内蔵グラフィクスが搭載されていますがRyzen 5 1600Xには搭載されていません。この点でもRyzen 5 1600Xが有利です。

しかし結果はこのように+17%もCore i5 8600KがRyzen 5 1600Xよりも高速です。

またRyzen 7と同じくRyzen 5にも内蔵グラフィクスは付いていないので、内蔵グラフィクスを搭載しつつも汎用コアの性能で勝ってしまったCore i5 8600Kは全面勝利と言えます。

40位 Core i7 7700 BOX

オーバークロックするとしたらsuffixが”K”の7700K、しないとしたら7700というイメージがありますがそのような考え方は今は昔となりつつあります。

オーバークロックしない定格動作範囲内でも7700Kの方が高性能です。

7700と7700Kはオーバークロックするかしないかにかかわらず、ベースクロック周波数が7700Kの方が高いので保証範囲内の定格動作でも7700Kが高速になります。

41位 Core i5 7600 BOX

Core i5 7600はIntel 第7世代Kaby Lakeプロセッサで2017年1月に発売されたものです。

42位 Ryzen 7 1700 BOX

2017年発売。Ryzen 7 1700X(ベースクロック周波数3.4GHz)からさらにクロック周波数を引き下げて3.0GHzにしたCPUです。そのかわりTDPが65Wになっており低発熱になっています。

第1世代Ryzenではサフィックス(末尾文字)が”X”であっても無印であっても倍率ロックが解除されています。つまり保証外で自由にオーバークロック可能です。

では1700Xとこの1700無印は何が違うかと言うと、1800Xと1700Xとの関係と同じで「1700Xレベルまでクロック周波数が上がらない個体(チップ)を1700として売っている」という関係にあります。つまり1700Xが1700より完全に上位です。ただし消費電力の低さを重視するならTDP65Wの1700ということになりますが、RyzenではTDP65Wとは思えないほど高発熱なのでTDP65WだからといってIntel Coreのようにファンレスにできたりはしません。

同じTDP65Wで2017年発売の第8世代Intel Core i7 8700と比較してみます。コア数はCore i7 8700が6コアで少ないですがベースクロック周波数は8700が+0.2GHz上です。

+20%の圧倒的大差でCore i7 8700がRyzen 7 1700を上回る性能になってしまいます。ベースクロック周波数が高いのも要因ですが、マイクロアーキテクチャが第8世代Coffee LakeがZenアーキテクチャより優れているのが最も大きい要因です。

またRyzen 7 1700よりもRyzen 5 1600Xの方が性能が高いです。

ベースクロック周波数が高い1600Xのほうが1コアあたりの性能が高いために実効性能が高くなっています。コア数といったみかけの数字よりも、実際のパソコン操作の快適性を優先するのならRyzen 5 1600Xの方がおすすめです。

43位 Core i7 5775C BOX

2013年発売の第4世代Haswell、2014年発売の第5世代Broadwellで使われたsocket1150に対応するCPUの中では最高峰のCPUです。

2015年には第6世代Skylakeプロセッサが発売されましたがそれまでのつなぎとして発売されたBroadwell-Hプロセッサです。

とはいえSkylakeより下ですし、当然Kaby LakeやCoffee Lakeよりも下です。昔買ったsocket1150マザーボードを既に持っている人が、パソコンの性能をあげたいけれどもマザーボードごと取り替えるまではしたくないということでこのCPUを買うことが多いようです。

これからパソコンを組む人はSocket1151対応のマザーボードとCPUを買ったほうが高性能です。あえて積極的に選ぶCPUではありません。

44位 Ryzen 5 1600 BOX

2017年発売。Ryzen 5 1600はRyzen 5 1600Xのベースクロック周波数3.6GHzを3.2GHzまで落とし、単位時間あたりの発熱量を低下させたものです。

実際にはRyzen 5 1600Xとして売るためのクロック周波数まで上がらなかった質の低い個体(チップ)を、正常に動作するクロック周波数まで落としたものとして売られているのがRyzen 5 1600です。

同じ2017年に発売されたCore i5 8600と比較してみます。両者の違いはベースクロック周波数に関してはRyzen 5 1600のほうが+0.1GHz高く有利です。またCore i5 8600は同時マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が無効化されているためこの観点からもRyzen 5 1600が有利です。さらにCore i5 8600ではチップ上に内蔵グラフィクスが搭載されいるため、チップに内蔵グラフィクスを搭載していないRyzen 5 1600のほうが有利です。

結果はCore i5 8600が+16%もRyzen 5 1600に勝利しており、圧倒的不利な前提条件でもここまでの大差がついてしまいました。この差はクロック周波数では説明できません。クロック周波数はCore i5 8600のほうが低いからです。この差はRyzen 5 1600では3コアで1つのL3共有キャッシュを持っており、3コアと3コアで2ブロックに分割されてしまっているため、せっかく片方のL3共有キャッシュに載っているデータであってももう片方のL3共有キャッシュには存在せずキャッシュミスとなってしまい、このキャッシュミスペナルティが大きすぎるためです。またSIMD演算器の性能がIntel Core i5 8600はRyzen 5 1600の2倍(+100%)の性能があることにも起因しています。

45位 Core i3 8300 BOX

2018年4月3日発売。4コア4スレッドで、基本動作周波数が3.7GHzのCPUです。TurboBoostに対応していないのでこれ以上動作周波数は上がりません。とはいっても十分高い動作周波数であり、Core i5 8400の2.8GHzより0.9GHzも高くなっています。キャッシュサイズは8MBであり、Core i3 8300より1MB少なくなっています。

時間あたりの最大発熱量であるTDPは62Wであり、これはすべての4コアが3.7GHzで動作しているときの熱熱量と言っていいです。

用途によってはCore i5 8400よりこちらの方が性能が出る場合があります。動作周波数が3.7GHzと高めであるため確実に4コアとも3.7GHz出すことができます。一方でCore i5 8400は全ての6コアを同時に3.7GHzにすることはできません。Core i5 8400のTDPは65Wであり、65Wの範囲内で6コア全てを3.7GHzで動かすことはできないからです。

動作させるプロセス数(アプリケーション数)が少なく、そのプロセスの中に複数スレッドがなく、またその1つ1つのアプリケーションが高いCPU性能を要求するものだったらCore i3 8300のほうが相性がいいです。4コア4スレッドとコア数を少なめにしているぶんだけ、1コアあたりの性能はCore i3 8300のほうが引き出しやすくなっています。

46位 Core i5 7600T BOX

2017年1月発売。TDPが35Wの低消費電力CPUです。デスクトップ用CPUでTDP35Wはかなり低いレベルです。ここまで来ると大きめのヒートシンクを付ければケースファンのみで冷却できるようになります。

47位 Core i5 7500 BOX

Core i5 7500はRyzen 5 1600に実効性能で勝利しています。Core i5 7600ではなくその一段回下のCore i5 7500でも勝利していることは特筆すべきことです。さらにCore i5 7500にはオンボードグラフィックスが付いていて、Ryzen 5 1600には付いていません。Core i5 7500の方がおすすめです。

48位 Core i7 6700 BOX

サフィックスが”K”のUnlockedモデルCore i7 6700Kよりも低消費電力にしたい場合はこの6700がおすすめです。6700Kより性能は劣りますが、PCI Express 3.0やDDR4といった第6世代Skylakeマイクロアーキテクチャで提供されている機能は使用できます。

また6700Kもこの6700もそうですが、ハイパースレッディング(同時マルチスレッディング)に対応しており同時に8スレッド実行できます。

4つある各コアには、割り算をするための除算器、足し算をするための加算器などのハードウェアを備えています。

しかし、ソフトウェア(プロセス中のスレッド)が同時に使用するのはどれか1つの演算器だけだという事実があります。例えば割り算をやっている途中に同時に足し算もやるケースはほぼ発生しません。

割り算をやっている間は、足し算や掛け算をするためのハードウェアは何もしてない暇な遊び状態になっています。

この使われていないハードウェアを使ってしまおうというのが同時マルチスレッディングです。例えばWordが加算演算器を使用をしている間、同時にExcelは除算演算器を使ってハードウェア使用率を高めることで処理を高速化できます(スループットの向上)。これが同時マルチスレッディング対応でないCore i5だと、Wordのプロセス(スレッド)がコアに割当てられている間はExcelのプロセス(スレッド)がそのコアの演算器を使用することができません。

実際にはハードウェアは4コア分しかありませんが、空いている演算器は別のソフトウェアに使わせてあげることで事実上8つもコアがあるようにOS側から「見える」ようになっています。これがi7シリーズのメリットです。

第7世代の7700Kと比較してみます。

7700Kの方が24%も性能が高くなっています。6700と7700Kは5千円程度しか差がありませんから、このくらい大きな性能差がでるのなら私は7700Kを選ぶことをおすすめします。

49位 Ryzen 3 2200G BOX

2018年2月13日発売。動作周波数は3.5GHzで4コアであり、多コア化がアイデンティティのRyzenにしては大人しいコア数です。これはAPUというオンボードグラフィクスを搭載したCPUであり、汎用コアに割り当てることのできるチップ面積が減ったためです。

PUBGというゲームではRyzenのコア数を使いこなすだけの並列性がなく、Ryzenはゲーム用途にもかかわらず各PCメーカーのPUBGモデルはIntel Core i7を採用するという憂き目にあっていました。

そのためか第2世代のRyzenは1コアあたりの性能を重視しているようです。第1世代のRyzenは高々3.7GHzの動作周波数しかありませんでしたが、第2世代ではRyzen 3ですら3.5GHzになっています。しかし1コアあたりの性能ではIntelに勝つのは難しいでしょう。ソフトウェア(アプリケーション)の並列性を前提として、1コアあたりの性能でまけてもコア数では負けないという方向性だったRyzenは第2世代ではIntel Coreと同じコア数になってしまったため差異を出せず苦戦しています。

このようにCore i3 8100に負けています。Ryzen 3 2200Gよりも+8%もCore i3 8100が勝利しています。本来ならばRyzen 3 2200Gと比較すべきはCore i3 8200ですが、Core i3 8200は発売予定がないため、より低スペックなCore i3 8100と比較する分にはRyzen 3 2200Gが有利になるだけなので問題ないでしょう。

このようにRyzen 3 2200Gにとって有利な条件で比較してもこの結果ですし、実際に2018年2月13日の発売日から一週間程度は注目されていましたが2018年3月になってからRyzen G熱は相当下火になってきています。

50位 Ryzen 3 1300X BOX

2017年度発売。Ryzen 5 1400と同じ4コアですが同時マルチスレッディングが無効化されているため4コア4スレッドになっています。そのかわりクロック周波数はRyzen 5 1400より引き上げられています。そのため末尾文字(suffix)が”X”になっている高クロックモデルになっています。

これは意外と優秀なCPUです。Ryzen 5 1600を買うならこのRyzen 3 1300Xがいいでしょう。なぜならこのRyzen 3 1300Xの動作周波数は3.5GHz~3.7GHzもあり、2017年度に発売された第1世代Ryzenシリーズの中でもトップクラスの高さです。コア数は4コア4スレッドであり決してコア数は多くありませんが、このことが逆に功を奏しています。コア数を4コアに抑えてクロック周波数を上げたことにより、1コアあたりの性能が重要であるほとんどのアプリケーションが恩恵を受けることができるため性能が高くなっています。下手にRyzen 5を買うよりこちらの方が望ましいです。クロック周波数が高く、動画エンコードのような並列性の高い用途以外でも性能が出るようになっているCPUです。

同じ2017年度に発売されたCore i3 8350Kと比較してみます。ともに同時マルチスレッディングが無効化された4コア4スレッドのプロセッサです。クロック周波数はCore i3 8350Kが4.0GHzもありますが、Core i3 8350KはTurboBoostが無効化されているため定格動作ではこの4.0GHzからクロック周波数が上がることはありません。一方でRyzen 3 1300Xは最大で3.7GHzまでクロック周波数が上がるためそこまでRyzen 3のクロック周波数が低いわけではありません。

結果は+22%もCore i3 8350KがRyzen 3 1300Xを上回ります。かなりの圧倒的な差です。これはクロック周波数だけの差だけでは説明がつかない性能差です。Ryzen 3 1300Xは同じ4コアプロセッサですが、2コア+2コアの構成になっておりL3キャッシュが共有されていません。一方でCore i3 8350Kは4コアでL3キャッシュを共有しておりキャッシュヒット率が高いです。これがこの性能差につながっています。

51位 Ryzen 5 1500X BOX

2017年発売。6コアRyzen 5 1600Xのコア数をさらに追加で2コア分無効化したものです。

Ryzenで採用されたZenアーキテクチャでは、4コアとL3共有キャッシュで一つの構成要素になっておりこれをCCXとAMDは呼んでいます。このCCXが1枚のチップに2基存在するため、合計8コアを実現しているのがRyzenです。

そしてこのRyzen 5 1500Xは、CCXに存在する4コアのうち2コアを無効化しています。そうすると2基のCCXで4コアになります。

なぜわざわざコアを無効化してしまうかというと、すべてのコアが等しく性能が高いとは限らないからです。半導体の製造上はどうしても確率的に正常に動作しない部分がでてきてしまいます。そこでクロック周波数がなかなか上がらない質の低いコアを無効化して、クロック周波数を上げても正常に動作するコアだけを残すようにします。そうすれば本来不良品として捨ててしまうはずのチップを売り物として出すことができます。それがRyzen 5 1500Xです。

このRyzen 5 1500XをIntel Coreと比較してみます。同じ2017年発売の第8世代Intel Coreと比較します。しかしこのRyzen 5 1500Xに相当するCore i5 8500Kのようなプロセッサは存在しません。かといってCore i5 8600Kと比較してしまうと、グレードが上のIntel Core側に有利になりすぎてしまいます。

そこでCore i3 8350Kと比較してみます。同じ4コアですし、Ryzen 5と本来比較すべきCore i5より下位のCore i3と比較するならRyzen側にとって不利な前提条件にはならないからです。

しかし結果はIntel Core i3 8350KがRyzen 5 1500Xに+22%も勝利しています。まずCore i3 8350Kの勝因は主に2つあります。1つはクロック周波数が4.0GHzであり、Ryzen 5 1500Xの3.5GHzよりも大幅に高いことです。

もう一つの勝因は、Intel Coreのマイクロアーキテクチャが優秀であることです。アウトオブオーダー実行とスーパースカラを組み合わせた命令レベル並列処理における並列性抽出度が優れていること、SIMD演算器が充実しており少ないサイクル数で一度に複数のデータに対して演算を施すことができること、パイプラインで命令をスムーズに流しスループットを向上させるため分岐予測やキャッシュ機構が優秀であることがマイクロアーキテクチャが優秀な理由として挙げられます。つまり技術的にIntelの方が優秀だということです。しかも内蔵グラフィクスのIntel HD Graphicsもついてくるのですから、Intel Core i3 8350Kはかなり優秀なプロセッサに仕上がっています。ただし一つ弱点があり、それはCore i3 8350KのほうがRyzen 5 1500Xより高額だということです。価格の安さを重視したい場合はRyzenがいいでしょう。

52位 Ryzen 5 2400G BOX

2018年2月13日発売。オンボードグラフィクス(内蔵グラフィクス)をCPUチップ上に搭載したAMD APUです。内蔵グラフィクスをRyzenでも搭載したことによって、Intel Coreと対等に比較できるようになったRyzenプロセッサです。第1世代のRyzen 1000シリーズ(Summit Ridge)プロセッサは内蔵グラフィクスを搭載せずに、その空いたチップ面積を汎用コアに割り当てていたため、内蔵グラフィクスをCPU上に搭載したことによって汎用コア用のチップ面積が限られているIntel Core側にハンデがありました。そのハンデがありながらもIntel Coreは、第1世代Ryzenプロセッサに勝利していたわけですが、今回の第2世代Ryzen Gでは内蔵グラフィクスが搭載されたので、これでようやくIntel Coreと対等に比較できるようになります。

しかし第1世代Ryzen 1000シリーズでは内蔵グラフィクス無しというRyzen側に有利だったにもかかわらず、第1世代Ryzen(Summit Ridge)はIntel Coreに性能で大幅に負けていたので、今回の第2世代Ryzen Gプロセッサは内蔵グラフィクスを搭載してしまったことにより、内蔵グラフィクスを搭載していない第1世代Ryzenよりもさらに不利になっています。

同じ4コア同士のプロセッサで比較してみます。2018年に発売された第2世代Ryzen Gは同じく2018年に発売された第9世代Intel Coreと比較すべきものですが、第2世代Ryzen Gで採用されているマイクロアーキテクチャはZen世代であり中身は第1世代Ryzenプロセッサです。そこで第1世代Ryzenプロセッサが発売された2017年と同じ年に発売された第8世代Intel Coreプロセッサと比較してみます。

このようにIntel第8世代CoffeeLake Coreプロセッサの最低スペックモデルであるCore i3 8100にすら負けています。+5%もCore i3 8100の方が上です。詳しくはこちらに掲載しています。

53位 Core i7 7700T BOX

ファンレスパソコンを組む人には非常におすすめできるCPUです。TDPが35Wしかないので、Le Grand Machoレベルの巨大ヒートシンクを取り付ければCPUファンは勿論、ケースファンすら省いても余裕です。

もしくはPCケース側面までCヒートパイプでCPUの熱を伝搬させて冷却するというタイプのPCケースに取り付けても余裕で冷やせます。

Corsairからもケースに穴がたくさんあいている冷却重視のケースがでていますし、ThermaltakeからもCore V21のような開放的なケースがでているので、それらのケースに入れてLe Grand Machoを取り付ければCPUクーラーの干渉なしでファンレスパソコンが組めます。干渉がないので拡張カードも挿せます。Intelはオンボードグラフィクスが優秀なのでグラフィックボード無しでPCI ExpressタイプのSSDを挿してもいいでしょうし、台湾のPalit社から出ているNVIDIA GeForce GTX 1050 Tiを採用したファンレスグラフィックボードを挿せばファンレスでそれなりに高いグラフィック性能まで得ることができます。

54位 Core i7 6700T

2015年9月発売のTDP35Wの低消費電力CPUです。これはCore i7 6700Kや6700の動作周波数を下げて低消費電力化をはかったモデルです。末尾文字(suffix)としてTがついていても、違いは動作周波数と消費電力だけであり、もの自体は6700Kそのものです。

CPUにおいて消費電力を下げる手法は簡単であり、電圧を下げるだけです。電圧を下げるためには動作周波数を下げなければなりません。よってこの6700Tでは動作周波数が2.8GHz~3.6GHzと低く抑えられているわけです。

動作周波数が低くなっているだけであり、6700Kと同じでデータレベル並列性で数値計算を高速化するSIMD演算命令もしっかり装備されています。動作周波数と消費電力の違いだけになります。ファンレスPCを組む人には非常に重宝するCPUです。

55位 Ryzen 3 1200 BOX

2017年7月発売。Ryzen 3 1300Xのベースクロック周波数3.5GHzからさらにクロック周波数を引き下げたものです。つまりRyzen 3 1300Xとして売るほどまでクロック周波数が上がらなかった不適合品を、正常動作するレベルまでクロック周波数を引き下げて売っているのがこのRyzen 3 1200です。クロック周波数を引き下げているのでRyzen 3 1300Xより低消費電力になっています。

同じ2017年度に発売された第8世代Intel Core i3 8100と比較してみます。Intel Coreには8200といった型番が存在しないため、Intel Coreプロセッサの中で最も低性能なCore i3 8100と比較する分にはRyzen 3 1200にとっては不利にならないので、あえて型番が下のCore i3 8100と比較してみます。

同時マルチスレッディング非対応であることは、Ryzen 3 1200でもCore i3 8100でも共通です。ベースクロック周波数はRyzen 3 1200が3.1GHz、Core i3 8100が3.6GHzでありCore i3が有利です。しかしRyzen 3 1200はブーストクロック周波数が最大3.4GHzまで上昇します。Core i3 8100はTurboBoost非対応なので3.6GHz固定です。なのでクロック周波数にはそこまで優劣は存在しません。

結果は+13%もCore i3 8100がRyzen 3 1200の性能を上回っています。しかもこのTDP65WのRyzen 3やCore i3のような低消費電力CPUを購入するユーザー層はゲーム用ではなく事務作業用を想定している場合が多いので、内蔵グラフィクスを搭載しているCore i3 8100になおさら軍配が上がります。

56位 Core i3 7300 BOX

2017年1月発売のTDP51Wプロセッサです。2コアしかありませんが第7世代Kaby Lakeだけあって、4コアの第6世代SkylakeCore i5 6400に性能で勝利しています。

Core i3シリーズと言えどRyzen 5 1400に性能と価格両面で勝利しているところも特筆すべき点です。

57位 Ryzen 5 1400 BOX

2017年度発売。第1世代で採用された8コアのチップのうち4コア分を無効化したCPUです。

Ryzenプロセッサは1枚のチップ(ダイ)に2基のCCXというブロックが存在します。CCXの定義は「L3共有キャッシュを共有するコアの集合」です。CCXは4コアあるため、CCXが2基で合計8コアを実現しているのがRyzenです。

このRyzen 5 1400はその8コアのうち4コア分を無効化したものですが、それは片方のCCXを全て無効化したものではありません。

片方のCCXに存在する4コアのうち2コア分を無効化し、もう片方のCCXに存在する4コアのうち2コア分を無効化して、合計4コアのプロセッサに仕上げています。

なぜあえてコアを無効化するのかと言えば良品率(歩留まり)を向上させて、不良品として捨てずに売れるようにするためです。例えば8コアのうち4コア分が正常に動作しなくてもそれらを無効化すれば残り4コアが正常に動作するものとして販売できます。それがRyzen 5 1400です。

また正常に動作するコアが8コアあったとしても、クロック周波数がほとんど上がらないコアが確率的に発生してしまいます。そこでCCXに存在する4コアのうちクロック周波数が上がらないコアから順に2コアだけ無効化します。そのようにすることで、クロック周波数が上がらないコアが存在したとしても、クロック周波数が上がるコアだけ残して売り物とすることができます。

このRyzen 5 1400は2017年度に発売されたものなので同じ2017年度発売のCore i3 8100と比較してみます。Core i3 8100では同時マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が無効化されているためその点はRyzen 5 1400に有利です。一方でクロック周波数はRyzen 5 1400が3.2GHzで、Core i3 8100が3.6GHz一見Ryzen 5 1400側に不利に見えます。しかしCore i3 8100はTurboBoostが無効化されているためクロック周波数3.6GHzで一定です。その点Ryzen 5 1400はブーストクロック周波数3.4GHzまで届くので差はそこまで大きくありません。また型番をみてもわかる通りRyzen 5とCore i3なので、カタログスペックだけをみれば明らかにCore i3が不利です。

しかし結果はCore i3 8100がRyzen 5 1400に+16%も勝ってしまいます。Ryzen 5 1400の主な敗因はL3共有キャッシュです。Ryzen 5 1400は8つのコアのうち4つを無効化して4コアにする際に、1つのCCXを丸ごと無効化するのではなく、各CCXそれぞれで2コアずつ無効化しています。

つまりRyzen 5 1400は2コアで1つのL3共有キャッシュを持っていることになります。つまりCCX0に属するコア0とコア1と、CCX1に属するコア2とコア3の4つのコアで見た場合、コア0に割当てられていたスレッドがアクセスしていたデータがCCX0のキャッシュに存在しても、そのスレッドがOSによってコア3に割当てられてしまうとCCX1のキャッシュにはデータが存在しないため”キャッシュミス”となってしまいます。このキャッシュミスの頻発によるキャッシュミスペナルティがパイプラインをスムーズに流してIPCを向上させることを妨げており、Intel Coreと比較してなかなか1コアあたりの性能が上がらない主因です。しかもCore i3 8100には内蔵グラフィクスも搭載されているのでCore i3 8100がおすすめです。

58位 Pentium Gold G5600 BOX

2018年4月3日発売。まずはこのPentium GoldとCore(i7,i5,i3)との違いはどこにあるかというところから説明します。他サイトでよくありがちな解説は、Core>Pentiumの順で技術が高度だから、価格も性能もCore>Pentiumだという説明です。しかしこれは全く説明なっていないのがわかります。なぜなら「どの部分に違いがあって価格が異なるのか、それによってなぜ性能が変わるのか」といった部分に言及していないからです。

まずIntel Coreプロセッサは命令セットの拡張としてIntel AVX2に対応しています。命令セットというのは加算を行うAddやメモリからレジスタへのロードを行うLoadのような命令の集合であり、この命令セットがそのプロセッサのアーキテクチャを外側からみた仕様を決定づけます。AddやLoadなどは基本的なので必ずプロセッサなら搭載している命令ですが、これに特殊な命令を追加してプロセッサの高速化を行う手法があります。これがSingle Instruction Multiple Data(SIMD)演算命令というもので、1つの命令で複数のデータを一括で演算して結果をレジスタに格納する命令です。Intel AVX2もこのSIMD演算命令の一つです。

このSIMD演算命令をどの程度追加するかどうかでそのプロセッサの性能が変わってきます。当然半導体ダイ(チップ)上の論理回路が複雑化するので、チップ面積の増加、回路中の絶縁の失敗などで歩留まりが悪くなり価格が高くなります。

Intel CoreにはAVX2拡張命令が搭載されていますが、Pentium GoldではSSE4.1,SSE4.2までしか対応していません。AVX2は動画エンコード処理をSIMD演算命令によって、たった1命令で多数のデータを同時に計算処理します。そのため1クロックあたりに処理する命令数が増加し、動画エンコード処理速度が向上します。

逆に言えばAVX2命令を使わないようなアプリケーション(応用)を使う場合はPentium Goldでも十分だということになります。

このプロセッサは2コア4スレッドでありハイパースレッディングに対応しており、その点はCoreシリーズよりも引けを取りません。しかしキャッシュサイズが4MBであり、Coreシリーズで最も低性能なCore i3 8100の6MBよりも少ないです。メモリアクセスが多く、そのメモリアクセスに空間的局所性と時間的局所性がある場合はCore i3のほうが有利です。動作周波数は3.9GHzもあり、Core i3 8100の3.6GHzよりも高いため、AVX命令を使わずスレッドレベルの並列性がないアプリケーションならこのPentium Gold G5600のほうが高速になります。

59位 Core i5 4460 BOX

第4世代Haswellプロセッサです。Haswell向けのsocket1150マザーボードを持っている人が、換装用として購入しているため今でも一定数の需要があるようです。

これからマザーボードからすべて一新してパソコンを組んだり購入しようとしている人が買うCPUではありません。

今買うならsocket1151のマザーボードとCPUを買うべきです。1151を買っておけば、Skylake、Kaby Lakeプロセッサ全てに対応します。

古いCPUを買う必要のある特殊な事情のある人が買うCPUだと言えます。

60位 Pentium Gold G5500 BOX

2018年4月3日発売。このプロセッサより上位の「Pentium Gold G5600」において、Intel CoreとPentiumの違いを記載したので、次はこの「Pentium Gold G5500」と「G5600」の違いを説明します。

両者のスペックを比較してみると両方とも2コア4スレッドでキャッシュサイズも4MBで同じですが動作周波数だけが異なります。G5500は3.8GHzでG5600は3.9GHzです。違いはそこだけです。

クロック数を上げるのは簡単でありプロセッサの論理回路(ワイヤードロジック)を変更する必要はありません。しかしそれだけの差なのに価格では大きく差がでています。

動作周波数を上げるためには電圧を上げる必要があります。そうすると絶縁が不十分になり正常に動作しないプロセッサが出てきます。要は不良品です。

半導体のチップを作る際はダイに露光処理によって回路パターンを焼き付けますが、その際に回路の絶縁が不十分になる箇所がどうしてもでてきてしまいます。そのようなチップで電圧を上げると導通してしまい正常に論理回路が動作しません。しかしそんなプロセッサでも、電圧を下げて使えば絶縁でき「適合品」として販売できます。電圧を下げるためには動作周波数も下げなければならないので必然的に、電圧を下げる=動作周波数を下げることになります。

このように動作周波数を下げて電圧を下げると動作するチップ数が増えるため歩留まりが良くなり、販売できるチップ数が増えることによって1プロセッサあたりの価格を下げることができます。

このように、G5600としては合格しなかったチップがG5500の動作周波数なら合格することがあるため、それをG5500として販売することで価格が安くなっているわけです。

61位 Pentium Gold G5400 BOX

2018年4月3日発売。G5500に記載したのと同様の理由で、G5500よりも動作周波数を下げることにより電圧を下げて、さらに歩留まりを良くすることで価格を更に下げたプロセッサです。G5500では動作周波数が3.8GHzでしたが、さらに0.1GHz下げてG5400では3.7GHzになっています。それ以外のスペックは全く同じです。動作周波数は低くてもいいから、安いプロセッサが欲しいという場合の選択肢になります。

62位 Pentium Dual-Core G4560 BOX

Core i3より下位と位置づけられているPentiumプロセッサですが、動画エンコードをやらない限りはPentiumで十分です。通常使用ならWord,ExcelもこのPentiumで十分です。

しかし、Excel VBAで株価を使って回帰分析やオプションプライシングのためのモンテカルロシミュレーションをやるとすると、たとえExcel使用であってもCore i3どころかCore i7レベルが必要です。

また私の経験上、Firefoxなどのブラウザである程度アドインを入れて、タブを数十個開くレベルで本格的にウェブから情報収集する際はたとえウェブ閲覧程度であってもCore i7 6700Kが必要になります。6700K+SSDでもブラウザを酷使すると重くなるので、要はどの程度本格的にPCを使い込むかどうかでPentiumかCoreかを決めればいいでしょう。

このPentium G4560は第7世代のプロセッサですが、第6世代のCore i3とまず比較してみます。

Coreプロセッサだけあって一世代前でもCore i3が+6%勝っています。

Pentium G4560は第7世代Kabylakeなので、第7世代のCore i3とも比較しておきます。

Core i3の方が+11%上回っています。実効性能としてはゲーム用途は+7ポイントであるものの、一般事務としてのデスクトップ用途では+8ポイントとなっているため、事務目的で使うからといってPentiumが最適というわけではなくCore i3でも十分快適になるということです。事務用途だからこそ私はCoreシリーズの方をおすすめします。

63位 Celeron G4920 BOX

2018年4月3日発売。このCeleronプロセッサはPentium Gold 5400の下位品ですが、異なる点は動作周波数がPentiumより低いことと、Celeronのほうがキャッシュサイズが小さい(2MB)であることと、Celeronはハイパースレッディングに対応していないということです。またCeleronプロセッサには、CoreアーキテクチャのCeleronと、AtomアーキテクチャのCeleron2つ存在します。このCeleron G4920はCoreアーキテクチャ(Coffee Lake世代)のCeleronであり、AtomアーキテクチャのCeleronよりも大幅に高性能です。

昔はPentiumプロセッサはアウトオブオーダー実行(投機的実行も同じカテゴリの技術)に対応し、Celeronはインオーダー実行であるという違いがありましたが、現在はCeleronプロセッサでもアウトオブオーダー実行で命令レベル並列処理をしています。この点はPentiumでもCeleronでも共通です。

動作周波数についてはPentiumの項目でも解説しましたが、動作周波数が低くしたほうが電圧を下げることができ、検査で正常作動するチップが増えるため歩留まりが良くなり製品の価格を安くできます。これが動作周波数が低いプロセッサほど価格が安くなる理由です。よってCeleron G4920は3.2GHzまで下げることによって、Pentium Gold 5400の3.7GHzよりも歩留まりを改善し価格を安くしています。しかし動作周波数が低いと、ゲームなどの1コアあたりの性能が要求される用途では難しくなります。

キャッシュサイズが2MBと小さいこともCeleronの特徴であり、Pentium Gold 5400の4MBの半分しかありません。ただしキャッシュが大きいからといって高速化できるとは限りません。キャッシュというのは、「最近使ったデータはすぐ再びアクセスする」という時間的局所性ババアと、「使ったデータと同じ配列(データ構造)にあるデータは再びアクセスされやすい」という空間的局所性がある場合に高速化できる機構です。この2つの局所性がない場合はキャッシュがあってもなくても変わらないどころか、キャッシュミスの判定のためにむしろキャッシュがあるほうが遅くなります。このようなキャッシュはExcelなどの計算処理では大きな効果を発揮しますが、ウェブブラウジングのような次から次へと別のページを読込み用途では不向きです。さらに言えばウェブサイトのデータは2MBのキャッシュサイズに収まるほど小さくありません。またゲームのようにマップデータを次から次へとストレージ(SSD)からメモリへ読み込み続けるような用途でもキャッシュは意味をなしません。キャッシュが効果を発揮するのは、メモリ上にある特定のデータを何度も読書する場合です。

またCeleronにはなく、Pentiumプロセッサに搭載されているハイパースレッディングという技術は、余った演算器を他のスレッド(大雑把に言えばアプリケーション)に使わせてあげることによって、ハードウェア的には2コアしかなくてもOSから見れば4コアあるように見せることができるものです。ハイパースレッディングを搭載することによるデメリットは、回路が複雑化して歩留まりが悪くなり価格が高くなることくらいです。ハイパースレッディングは無いよりかは有る方がいいです。

そのためこのCeleronはスレッドレベルの並列性が大きい用途(アプリケーション)ではあまり高速化ができません。スレッドレベルの並列性が大きい用途としては、ゲーム、動画エンコード、Excelの数値計算(全セルの再計算のときに有利)、大量にタブを開くウェブブラウジングです。特に多くの人にとって使うだろう用途はウェブブラウジングです。最近のブラウザなら複数のタブを同時に開くような操作をすると、ハイパースレッディングによる論理コアにスレッドを割り当てて、自動的にスレッドを並列化してくれます。

また拡張命令(SIMD演算命令)はSSE4.1,SSE4.2を搭載しており、この点はPentiumと同じです。

64位 AMD A10-7860K BOX

2016年3月発売のCPUです。IntelでいうところのCore i3やPentiumに相当するものですが、性能は圧倒的にPentiumの方が上です。

AMD A10-7870Kよりも+31%という圧倒的大差でIntel Pentium G4560が勝利しています。

ただしPentiumより下位のCeleronにはA10-7860Kが勝っています。

Pentiumが圧勝した理由は、Intel第7世代からPentiumプロセッサもハイバースレッディング(スーパースレッディング)に対応したからです。これによってスレッドレベル並列性を取り出しやすくなりました。

発売日に9ヶ月ほど差があるとはいえ、ほぼA10の半額で手に入るPentiumでここまで性能差がでるのならPentium一択だと言えます。またオンボードグラフィックスはA10もPentiumも搭載していますが、Pentiumの方が高性能です。

65位 Celeron G4900 BOX

2018年4月3日発売。Celeron G4920と動作周波数以外の部分について全く同じものです。このCeleron G4900の動作周波数は3.1GHzであり、G4920の3.2GHzよりも0.1GHz低くなっています。動作周波数を低くすることで、生産したチップのうち正常動作するチップの率を増やし、製造コストを回収しやすくなることでプロセッサの販売価格を下げたものがこのG4900です。動作周波数が低いぶんだけ性能も落ちますが、価格の安さが必要な場合はこちらでもいいでしょう。

Intel Core i9-X、Core i7-X、AMD Ryzen 9,Threadripper:
デスクトップとワークステーションの中間であるハイエンドデスクトップ・エントリーワークステーション用モデル
故障検知は不要だがとにかく多いコア数が必要な場合
Xeonより動作周波数が高く、コア数はデスクトップ用Coreより多い

Cascade Lake-X、Skylake-X、Kaby Lake-X、Broadwell-Eなどの”X”や”E”が末尾の文字(suffix)になっているプロセッサが該当します。内蔵グラフィクスを搭載している通常のデスクトップ向けはCoffee Lake Refresh-S、Coffee Lake-S、Skylake-S、Kaby Lake-Sのように末尾に”S”が付いたモデルですが、末尾の文字が”X”のものは内蔵グラフィクスを搭載していない代わりにコア数が多いです。またメモリチャネル数も4チャネル以上ある上に、キャッシュの連想度も上がっておりキャッシュ機構が強化されています。

位置づけとしては、故障検知が付いていて企業や行政機関が業務用として使うような高信頼性を確保できて且つコア数が多いXeonプロセッサほどまでは必要ないけれども、普通のデスクトッププロセッサよりは多くのコア数が欲しいときに選択します。

AMDだとRyzen Threadripper(Ryzen 9)が該当します。

普通のデスクトップ向けのCore  i7,i5,i3と比較して、このハイエンド向けCore i9-X,i7-XやAMD Ryzen 9,ThreadripperのデメリットとしてはオンボードグラフィックスがCPUに内蔵されていないことです。画面を映すには別途グラフィックボードを購入して用意することが必須です。

またIntel Core-Xでは全てのコアを1枚のチップに収めるシングルダイ構成ですが、AMD Ryzenの場合は少ないコア数のチップを2枚~4枚集めてコア数を増やすマルチダイ構成になっているCPUが多いのも特徴です。複数のチップ構成になっているとチップ間の通信オーバーヘッド(レイテンシ)が大きいため理想は1枚のチップに全てのコアを実現する構成です。しかし1チップ構成は高価になるため、価格を安くするために2チップ以上を連結したものが多いです。

極めてスレッドレベル並列性が高い深層学習(ディープラーニング)や金融分析などの分野で、より多くのコア数が要求される用途でおすすめです。

深層学習をコプロセッサ(GPUなど)を用いて並列化するのはプログラミングが面倒になります。できればホストプロセッサ(OSを起動できOSが認識し管理するCPU)で並列化できるに越したことはありません。そういったときにこのハイエンドデスクトップ向けCPUは便利です。故障検知などの信頼性よりもとにかくコア数を増やして並列処理をしたいときにおすすめです。

1位 Core i9 9980XE Extreme Edition BOX

2018年11月発売。18コア36スレッドであり、2017年に発売された1世代前のCore i9 7980XE(2.6GHz~4.4GHz)の動作周波数を向上させたプロセッサです。TDPは165Wで同じです。TDPが同じでも動作周波数が向上したのは半導体製造技術の向上で歩留まりが改善したためです。動作周波数は3.0GHz~4.5GHzです。1世代前のCore i9 7980XEと比較して、Core i9 9980XEでは基本動作周波数が0.4GHz、最大動作周波数が0.1GHz向上しています。1世代前のCore i9 7980XEと比較して、Core i9 9980XEは+15%の性能向上です。

18コアのうち17コアに負荷がかかっていたとしても、少なくとも1コアをかならず4.5GHzで動作させることができます。このプロセッサで対応しているTurbo Boost Max Technology3.0は最大動作周波数(このプロセッサの場合は4.5GHz)で動作するコアが少なくとも1コア存在することを「保証」しています。努力目標(best-effort)ではなく保証(guarantee)であることが、best-effortどまりだったTurbo Boost 2.0と異なるところです。

L3共有キャッシュは24.75MBで1コアあたり1.375MBあります。これは1世代前のCore i9 7980XEから変更ありません。

変更点としては第9世代デスクトップ向けCoffee Lake-S Refreshと同様で、Thermal Interface Materialが以前のグリスからソルダリング(ハンダ付け)に変更されていることです。Intelプロセッサはもとから発熱量(消費電力)あたりの性能はAMD Ryzen Threadripperより優れていますが、今回ソルダリング仕様になったことで冷却でも有利になっています。

ただ最大動作周波数が4.5GHzであることからゲーム用には不向きです。ゲーム用なら最大動作周波数が5.0GHzあるCore i9 9900KかCore i7 8086Kのほうが最適です。

2位 Core i9 9960X BOX

2018年11月発売。このCore i9 9960Xは16コア32スレッドのプロセッサです。1世代前2017年発売のCore i9 7960X(2.8GHz~4.4GHz)から動作周波数を引き上げたものです。L3共有キャッシュの容量は22MB、1コアあたりのキャッシュサイズは1.375MBであり1世代前と同じです。

このCore i9 9960Xは基本動作周波数3.1GHz、最大動作周波数が4.5GHzであり、1世代前のCore i9 7960Xと比較して基本動作周波数は0.3GHz、最大動作周波数は0.1GHz増加しています。性能はCore i9 7960Xと比較してCore i9 9960Xでは+10%の性能向上です。

TDPも1世代前と同じ165Wであり、発熱量を維持しながら動作周波数を向上させたプロセッサになっています。冷却面では有利になっており、以前の熱伝導グリスに代わってSolder(ハンダ)のThermal Interface Materialを採用しています。

3位 Core i9 9940X BOX

2018年11月発売。Core i9 9940Xも1世代前のCore i9 7940Xと同じで14コア28スレッドです。キャッシュサイズも19.25MB、TDPも165Wを維持しています。

向上したのは動作周波数です。このCore i9 9940X(3.3GHz~4.5GHz)は1世代前のCore i9 7940X(3.1GHz~4.4GHz)と比較して、基本動作周波数は0.2GHz、最大動作周波数は0.1GHz上昇しており+6%ほど性能向上しています。Thermal Interface Materialが熱伝導グリスからソルダリングに変更されている点も他モデルと同様です。

4位 Core i9 9920X BOX

2018年11月発売。12コア24スレッドです。このCore i9 9920Xは、今回発売された第9世代Core-Xプロセッサの中で、1世代前と比較して最も性能向上したプロセッサであり、さらに価格あたりの性能でみても最もメリットの大きいプロセッサになっています。

まずこのCore i9 9920XはTDPが165Wであり、1世代前のCore i9 7920Xの140Wから25Wも増加しています。この発熱量(消費電力量)の許容値の増加が性能の向上に直結しています。

このCore i9 9920Xより上位の9980XE,9960X,9940Xは1世代前とTDPもL3共有キャッシュサイズも同じであり変更がありませんでした。しかしこのCore i9 9920XはTDPもキャッシュサイズも変更されており、さらに動作周波数の向上率も非常に高いものになっています。

このCore i9 9920XのL3共有キャッシュサイズは19.25MBであり、1世代前の16.5MBから大きく向上しています。Core i9 9920Xの1コアあたりキャッシュサイズは1.6MBであり、上位モデルのCore i9 9980XEの1.375MBよりも大きくなっています。1世代前のCore i9 7920Xの1コアあたりキャッシュサイズは1.375MBなのでやはり大きくなっています。

決定的に大きな差となっているのが動作周波数です。Core i9 9920X(3.5GHz~4.5GHz)は1世代前のCore i9 7920X(2.9GHz~4.4GHz)と比較して、基本動作周波数は0.6GHzも上昇し最大動作周波数は0.1GHz上昇しており、+20%もCore i9 9920Xのほうが性能が向上しています。

このように動作周波数を大きく上昇させることができた要因はTDPが140Wから165Wに上昇したことです。これにより第2世代Ryzen Threadripper 2990WXよりも高い実効性能を有しています。

5位 Ryzen Threadripper 2990WX BOX

2018年8月13日発売。第2世代Ryzen Treadripperのフラッグシップモデルで、32コア64スレッドのプロセッサです。動作周波数は3.0GHz~4.2GHzでTDPは250Wです。このフラッグシップモデルが第2世代Ryzen Threadripperの中で一番最初に発売されました。

さらにコア数を削減した24コアor12コアモデルは2018年10月発売であり、低性能なCPUほど後に出ます。

この2990WXは2950Xと本質的に同じチップです。2990WXも2950Xも4枚のダイ(ウェーハから切り取ったチップ)を搭載しています。4枚のダイをスター型ネットワーク(完全グラフ)で接続しています。

半導体ダイ上に少しでもエラーがあるとそのダイ上の半導体回路はすべて不合格品となるためダイ全体を無効化して電子回路として使えないようにします。

4枚のダイのうち2枚のみを有効化したものが2950Xです。さらに4枚すべてが合格品となり4枚すべてを有効化したものが2990WXです。

つまり2990WXとしては不合格だけど、2950Xとしては販売できるものはダイの有効化無効化操作によって製品化しています。

半導体チップ製造においては歩留まりの低さは価格の高さに直結するため、このようにダイが不合格品であっても無効化して性能を下げて販売することによって、不合格品の製造原価全てを合格品の製造原価に転嫁しなくても良いようにし、全体的な価格を下げています。

チップ上の4ダイのうち正常に動作しないダイが1~2あった場合は、そのうち2つを無効化してRyzen TR 2950X(2018年8月31日発売)として販売しています。不良のダイが1のみで3つ正常に動作するダイがあっても2つ無効化してあります。つまり正常に動作するダイも無効化している可能性があるのが2950Xです。

6位 Core i9 7960X BOX

2017年10月25日発売。16コア搭載したIntel Skylake-Xプロセッサです。

このプロセッサは2017年に発売された第1世代Ryzen Threadripper 1950X(16コア)よりも高性能です。

同じ16コア同士のプロセッサで比較してCore i9 7960Xのほうが+12%も、Ryzen Threadripper 1950Xより上回っているということは、1コアあたりの性能がCore i9 7960Xのほうが上回っていることを意味します。同じ2017年に発売された同じ16コアでもRyzenがここまで引き離されているのはIntelにマイクロアーキテクチャの技術力で劣っているからです。

7位 Ryzen Threadripper 2970WX BOX

Ryzen Threadripper 2990WXから少し遅れて発売された24コアプロセッサです。

このプロセッサは下図の「CCX」あたり3コアとなっており、CCXが合計8基あるため計24コアとなっています。2970WXでは2990WXと同様にすべてのダイが有効化されています。2970WXのうち2つのダイを無効化し歩留まりを向上させたものがRyzen Threadripper 2920Xです。

結論から言うとこの24コアのRyzen Threadripper 2970WXは同じ2018年に発売された16コアCore i9 9960Xに負けています。

Ryzen特有の性質ですが、コア数が多い反面1コアあたりの性能を大きく犠牲にしているため、1コアあたりの性能が高いCore i9 9900Kに負けてしまっています。しかもRyzen Threadripper 2970WXはTDP250Wであり、Core i9 9900KはTDP95W。電力あたりの性能でも大きくRyzen Threadripperが負けています。さらにCore i9 9900Kは内蔵グラフィックス(iGPU)を搭載しているため、iGPUを搭載せず汎用コアにチップ面積を割いているRyzen Threadripperのように「グラボを挿さないと画面が映らない」といったことが起こりません。

性能がほぼ互角であるならピーキーなRyzen Threadripper 2970WXよりも、様々な用途で幅広く性能を発揮できるCore i9 9900Kがおすすめです。

8位 Core i9 9900X BOX

2018年11月発売。10コア20スレッドのプロセッサであり、1世代前のCore i9 7900Xとコア数は同じです。しかしL3共有キャッシュサイズとTDPが大きくなっており高性能化が図られています。TDPが大きくなったことにより動作周波数も上昇しています。しかし基本動作周波数が少し上昇した程度で大きな性能向上は見られません。少し予算を積んで9920Xを選んだほうがいいです。

Core i9 9900X(3.5GHz~4.5GHz)は1世代前のCore i9 7900X(3.3GHz~4.5GHz)から基本動作周波数が0.2GHz上昇しました。最大動作周波数は変化なしです。つまりたった+6%しか1世代前のCore i9 7900Xから性能向上していないことになります。ただし、Core i9 9900XのTDPは165Wであり1世代前のCore i9 7900Xの140Wから上がっているため各コアは比較的高い動作周波数で稼働します。

L3共有キャッシュも大容量化されています。1世代前のCore i9 7900Xでは13.75MBでしたが、Core i9 9900Xでは19.25MBであり、上位モデルの9920Xや9940Xと同じL3キャッシュサイズです。1コアあたりのキャッシュサイズは、7900Xの1.375MBから9900Xの1.925MBまで増えて+40%も大容量化しています。

しかしこのプロセッサはあまりうまみのない選択肢です。少し予算を積んで9920Xにするか、そうでもなかったらiGPUが付属しているCore i9 9900Kのほうがおすすめです。

9位 Core i9 7980XE Extreme Edition BOX

2017年10月25日発売のIntel Skylake-Xプロセッサです。18コアも搭載しているフラッグシップモデルですが基本動作周波数が2.6GHzしかないため、16コアで2.8GHzのCore i9 7960Xのほうが高性能です。

たった+1%ですがCore i9 7960Xが上回っています。

もしくはCore i9 9900Kのほうが高性能になる見込みなので9900Kのほうがいいでしょう。9900Kならオンボードグラフィクス(iGPU)も付属するので対費用効果も高いです。

10位 Core i9 9820X BOX

2018年11月発売。このCore i9 9820Xは10コア20スレッドであり、1世代前のCore i9 78220Xの8コア16スレッドからコア数が増えました。そのかわり動作周波数は低下しているため、ゲーム用途には全く向かないプロセッサです。

動作周波数についてはCore i9 9820X(3.3GHz~4.2GHz)であり、1世代前のCore i9 7820X(3.6GHz~4.5GHz)と比較して基本動作周波数は0.3GHz低下、最大動作周波数も0.3GHz低下しています。これはコア数が増えたことによるもので、TDPは1世代前の7820Xの140Wから今回の9820Xの165Wまで余裕ができているものの動作周波数は下げざるを得なかったようです。

動作周波数が下がっているもののコア数が2コア増えたことによって、Core i9 9820XはCore i9 7820Xよりも+14%ほど性能向上しています。

しかしこれはCore i9 9900Kの3.6GHz~5.0GHzと比較して見劣りします。iGPU付属(グラボ無しでトリプルディスプレイ4K@60fps可能)な上にTDPも低いので9900Kのほうがおすすめです。

11位 Core i9 7940X BOX

2017年10月25日発売。14コア搭載したIntel Skylake-Xプロセッサです。

この14コアのCore i9 7940Xは、同じ2017年に発売された16コアのRyzen Threadripper 1950Xよりも高性能です。

1コアの性能ではCore i9のほうが上であるために、14コアと2コア少ないにもかかわらず勝利しています。

12位 Ryzen Threadripper 2950X BOX

2018年8月31日発売。動作クロック3.5~4.4GHz。先に発売されたRyzen Threadripper 2990WXと全くチップそのものは同じです。異なるのは、4つのダイのうち4つすべてが有効化されているか、4つのうち2つが無効化されているかどうかです。このRyzen Threadripper 2950Xは16コア32スレッドのCPUですが、この2950Xは第3世代Ryzen(Matisse)16コア32スレッドよりも高性能です。この2950Xは高価だと考えるのなら、第3世代Ryzen16コアがこの2950Xの劣化版なので、性能が低い第3世代Ryzen16コアが安く手に入ります。

4つのダイのうち2つ無効化されているものがこの2950Xです。なぜわざわざ無効化するのかといえば、4つのダイ全てが検査に合格するわけではないのでそのうち2つを無効化することによって歩留まりを向上させ、合格品を増やすことによって製造原価を引き下げて販売価格を安くできるからです。2990WXとしては販売できないものの、2950Xとしては販売できるものが選ばれています。

このRyzen Threadripper 2950Xは16コア32スレッドですが、同じ2018年に発売されたCore i9 9960Xというプロセッサに負けています。

このように+6%、Core i9 9960Xが勝利しています。

同じ16コア同士でも同じ2018年に発売されたCore i9にThreadripper 2950Xが負けてしまったのは、1コアあたりの性能を向上させる技術でAMDはIntelに大きく水を開けられているからです。1コアあたりの性能ではIntelに敵わないから、コア数をとにかく増やす方法で追いつこうとしたのがAMD Ryzenのコンセプトですが、このようにコア数が同じプロセッサ同士でIntelとAMDプロセッサを勝負させると毎回Intel Coreが勝ってしまいます。

さらに14コアのCore i9 9940XでもRyzen Threadripper 2950Xに勝ってしまっています。これもRyzen Threadripper 2950Xと同じ2018年発売のものです。

14コアのCore i9 9940XがRyzen Threadripper 2950Xよりも+4%高速です。コア数が14コアにもかかわらず、同じ2018年発売の16コアのRyzen Threadripper 2950Xが負けてしまっているのはRyzenの1コアあたりの性能が低いためです。

またこのRyzen Threadripper 2950Xは同じ2018年発売のCore i9 9900Kにも負けてしまっています。

16コアのRyzenが8コアのIntel Coreに負けてしまっているわけです。しかしこれは2017年発売第1世代Ryzen 7 1800Xの8コアが、2017年発売6コアIntel Core i7 8700Kに負けていたことからすると自然な帰結です。

13位 Ryzen 9 3950X

2019年9月発売。16コア32スレッドかつ動作クロック3.5MHz~4.7GHzのプロセッサです。Zen2アーキテクチャを採用した製品の中では最高峰のフラッグシップモデルになっています。

このRyzen 9 3950XはRyzen 7 3700X(8コア12スレッド、3.6GHz~4.4GHz)に搭載されているチップを2つ搭載し連結した製品です。Ryzen Threadripper 2950Xと同じように2枚のダイを連結して16コアを実現しています。1枚で実現できなかったのはTSMC 7nmプロセスの不良品率が高い(歩留まりが悪い)からです。小さい面積のものを2枚とすれば片方が不良品でも、もう片方は良品ならば製品化できます。しかし大きな面積1枚になるとその一部に不良があるだけで全体が不良品になってしまうため、不良品率を下げるために2枚チップ構成となっています。

Ryzen Threadripper 2950XはTDP180Wだったので、このRyzen 9 3950X(TDP105W)は大きく低消費電力化されています。これは製造プロセスを7nmまで微細化したことによるものです。汎用コアが2チップ構成である点もRyzen Threadripper 2950Xと同じで、内蔵グラフィクス非搭載で別途グラボが必要である点もRyzen Threadripper 2950Xと同じです。

つまり16コア32スレッドのCPUは8コアのチップが2枚も必要なので、8コアの歩留まりの悪さにより良品のチップ量を確保できず7月発売の他の第3世代Ryzenと比較して発売が遅れてしまいました。2019年7月発売の12コアのRyzen 9 3900Xは6コアのチップ×2枚で構成されており、8コアのうちあえて2コアを無効化した6コアは良品率が高いため12コアのRyzen 9 3900X用に2枚分の6コアチップを大量確保するのは容易でした。そのためこのように16コアと12コアで発売時期に差が出てきてしまった格好です。

ベースクロックはRyzen 7 3700Xの3.6GHzから0.1GHz引き下げた3.5GHzになっていますが、これはTDP65WのRyzen 7 3700Xのベースクロック3.6GHzのままで2枚分のチップを用意してしまうとRyzen 9 3950XのTDPを105Wの範囲内に抑えることができないからです。ベースクロックを3.5GHzまで下げることによりTDP105Wに抑えてあります。

そしてベースクロックを引き下げたその引き換えとしてブーストクロックは4.7GHzまで上がっています。このブーストクロックは全コア同時ではなく、負荷の低い他のコアが3.5GHzと低いクロックで動作しているときに1~2コアのみが4.7GHzに到達するブーストクロックです。

TDP105Wという数値は全コアを低負荷の3.5GHzで動作させたときのTDPなので、どれか1コアでも3.5GHzからクロックが上昇してしまうとTDP105Wを超えるようになっています。

Ryzen 9 3950Xの予定価格はRyzen 9 3700X(329ドル)の2倍以上の749ドルになっています。第3世代Ryzenの8コア16スレッドは2モデルラインナップされており、Ryzen 7 3800X(399ドル)、Ryzen 7 3700X(329ドル)の2つです。16コアを作るとしたら本来ならRyzen 7 3800Xで使われている優秀な個体を使いたいところです。しかしRyzen 7 3800Xに搭載されているダイを使って16コアを実現しようとすると800ドル(国内だと消費税込約10万円)になってしまうため、より安く性能の低いRyzen 7 3700Xを使わざるを得なかった事情があります。

また8コアのRyzen 7 3800Xは第3世代Ryzenの中で最も歩留まりが悪い(良品率が低い)チップで12コアのRyzen 9 3900Xよりも歩留まりが悪いです。12コアのRyzen 9 3900Xは6コアのチップ×2枚なのでむしろ歩留まりは良いくらいです。そうなるとRyzen 9 3950X用どころかRyzen 7 3800X用のチップ量確保も難しいため、3800Xに比べたら歩留まりが良好で量を確保できるRyzen 7 3700X用のチップを2枚採用することになりました。

注意すべき点はRyzen 9 3950XはRyzen 7 3700Xを2つ連結したものなので1コアあたりの性能はどんなに高くてもRyzen 7 3700Xと同じだということです。Ryzen 7 3700Xより高いシングルスレッド性能は出ません。よって8コアのRyzen 7 3700Xを使ってPUBG等のFPSゲームのフレームレート性能に満足できないとしたら、16コアのRyzen 9 3950Xを買っても同じように満足できないことになります。それどころかRyzen 7 3700Xは8コアでTDP65Wの発熱許容量(消費電力)を独占できるため、TDP105Wを16コアで分け合わなければならないRyzen 3950Xよりも1コアあたりの性能の高さだったらRyzen 7 3700Xのほうが有利です。

これがRyzen 9 3950Xになってしまうと16コアでTDP105Wの発熱許容量の範囲内に収めなければならず必然的に1コアあたりが使える消費電力量も減少します。つまりゲームのフレームレートを高くしたいのならRyzen 9 3950Xはむしろ不利であり、Ryzen 7 3700Xのほうが有利になってしまう逆転現象になっています。

もしゲーム用途を考えているのなら、8コアのRyzen 7 3800Xのほうがベースクロック3.9GHzで高いのでそちらのほうがフレームレート性能が高いです。さらには手動でオーバークロックするのならRyzen 5 3600Xが第3世代Ryzenの中でゲーム用途で最も優秀です。TDP95Wを6コアで使い切れる上にRyzen 5 3600Xはクロックが上がる優秀なチップを選んだものなので、「コア数は少ないけれども1コアあたりの性能の高さを狙う」なら第3世代Ryzenの中ではRyzen 5 3600Xが最も高性能になっています。

一方でRyzen 9 3950Xの元となっているRyzen 7 3700Xについては、1コアあたりの性能ではRyzen 7 3800XをもってしてもIntel Coreにまだまだ勝てていないため、Ryzen 7 3800Xより下のRyzen 7 3700Xを2つ接続したRyzen 9 3950XだとなおさらIntel Core相手に不利になってしまいます。同じ16コアのIntel Core-XだとSIMD演算命令が512bit幅FMA×2も搭載されており、256bitFMA×2しかないRyzen 9 3950Xと比べて2倍も浮動小数点演算性能が上でオーバースペックな上に高価なので、「性能が低くても安く16コアを手に入れたい」場合はRyzen 9 3950Xがいいでしょう。

14位 Core i9 7920X BOX

2017年9月発売。12コアの第7世代Skylake-Xプロセッサです。

このプロセッサは12コアにコア数を抑えることで2.9GHzの基本動作周波数を実現しています。これは2018年10月発売の第2世代Ryzen Threadripper 2920Xの3.5GHzに比べると低い動作周波数ですが、Coreプロセッサはマイクロアーキテクチャが優秀なため1コアあたりの性能でRyzen Threadripper 2920Xを上回っています。さらに双方とも同じ12コアプロセッサなので、スレッドレベル並列性があるアプリケーションを利用するかどうかは関係なく、ありとあらゆるアプリケーションに対してもCore i9 7920XのほうがRyzen TR 2920Xより高性能になります。

15位 Core i9 7900X

2017年6月発売。第7世代Skylake-Xの10コア版です。動作周波数は3.3GHz~4.3GHz~4.5GHzとなっており、10コアの割には動作周波数が高くなっています。TDPも140Wと高めです。

比較対象は、2016年5月に発売された同じく10コアである第6世代Core i7 6950Xです。

6950Xの動作周波数は3.0GHz~3.5GHz~4.0GHzであることから、動作周波数が大幅に向上しています。

この7900XはRyzen Threadripper 1950Xの性能を大幅に超えています。

たった+6%と思うかもしれませんが、近年のCPU性能向上率が年率22%を下回っていることからするとほぼ同時の発売時期でこの差は大きいです。

16位 Core i7 9800X BOX

2018年11月発売。8コア16スレッドです。このCore i7 9800XはCore i9 9900Kと選択に悩む対象になるでしょう。価格はほぼ同じであり、コア数も同じだからです。

動作周波数からみてみると、Core i7 9800Xは3.8GHz~4.5GHzで、Core i9 9900Kは3.6GHz~5.0GHzです。こうしてみると5.0GHzまで伸びる9900Kと、4.5GHzまでしか伸びないけれども基本動作周波数が3.8GHzある9800Xと一概に比較できそうにありませんが、様々な応用分野にまんべんなく対応できるプロセッサとしてはCore i7 9800Xのほうが性能が高いです。

1つ目の理由としてはTDP設計がCore i7 9800Xの165Wが、Core i9 9900Kの95Wより相当大きいところです。これはつまり8コアのうち高い動作周波数で稼働できるコア数がCore i7 9800Xのほうが多いことを意味しています。Core i9 9900Kの最大動作周波数5.0GHzというのは1コアか多くても2コア程度までしか5.0GHzを達成できません。その点、Core i7 9800Xは4.5GHz動作のコアを少なくとも4コア以上は作ることができます。

またキャッシュサイズの観点からもL3共有キャッシュの容量をみると、Core i7 9800Xの16.5MBはCore i9 9900Kの16MBより若干多いです。

次は反対にCore i7 9800XがCore i9 9900Kよりも劣っている点ですが、これはiGPUをCore i7 9800Xでは削っているためオンボードグラフィクス未搭載だという点です。これは別途グラボを用意するなら気にしなくていい点です。

さらにソケットの問題があります。Core i7 9800XはLGA2066であり、Core i9 9900Kは個人向けデスクトップ用プロセッサで採用される一般的なLGA1151ソケットです。対応するCPUクーラーの豊富さからみると後者のLGA1151のほうが有利です。

あとは購入者がどちらが多いかという観点でみると圧倒的に9900Kになるでしょう。購入者が多いということはウェブ上にナレッジが多く掲載されるということです。そういった情報のスケールメリットを考慮するとCore i9 9900Kのほうが無難です。

17位 Ryzen Threadripper 2920X BOX

2018年10月発売。第2世代Ryzen Threadripperの12コア24スレッドモデルです。

このRyzen Threadripper 2920Xは、Ryzen Threadripper 2970WXのダイ4つのうち2つを無効化して歩留まりを良くし価格を下げたものです。下図のうちCCXあたり3コア搭載しているため、ダイ2つで合計4のCCXがあるためコア数は合計12コアです。

このCPUは第2世代Ryzen Threadripper発売より1年前の2017年9月に発売されたCore i9 7920Xに負けています。理由はCore i9 7920Xも12コア24スレッドのプロセッサであり、かつ1コアあたりの性能ではIntel Coreが上であるため全体としての性能もCore i9 7920Xが上回るからです。

それどころかCore-Xシリーズではなく、通常のデスクトップPC向けのCore-SシリーズのCore i7 9700Kにすら負けています。

このように10万円弱するRyzen Threadripper 2920Xよりも、5万円程度のCore i7 9700Kが+2%性能で勝っています。さらにRyzen Threadripper 2920Xには内蔵グラフィックス(iGPU)が搭載されておらずグラボ必須ですが、Core i7 9700Kには内蔵グラフィックスが搭載されています。アプリケーションの並列化が十分にされていないと性能を発揮できないピーキーなRyzen Threadripper 2920Xよりも、並列性がない世の中のほとんどのアプリケーションでも性能が発揮できる汎用的なCore i7 9700Kのほうが扱いやすく失敗がありません。

18位 Ryzen 9 3900X

2019年7月発売。第3世代Ryzenの12コア24スレッド版であり動作クロックは3.8GHz~4.6GHzを実現しています。Ryzen Threadripper 2920X(TDP180W)と同じように汎用コアを2チップに分割した2チップレット構成になっています。なぜ1枚のチップに12コア搭載しなかったかというと、8コアでも高価格になってしまっている不良品率が高い(歩留まりが悪い)TSMC 7nmで12コアを実現すると価格が高くなりすぎるため、Intelが高価で買えない人向けのAMD Ryzenとしてマーケティングに失敗してしまうからです。

Ryzen Threadripper 2920Xと同じ2チップレット構成ですが、製造プロセスの微細化でチップ面積を2920Xの半分にしたことで低消費電力化をはかっています。Ryzen Threadripper 2920Xと同じように内蔵グラフィクスは非搭載なので別途グラボが必要です。

本来このRyzen 9 3900Xは16コア32スレッドとなるはずでしたが、価格の安さを維持しながら16コアを実現する技術力がAMDに無かったためコア数を減らした12コアとして登場しました。

このRyzen 9 3900XはRyzen 5 3600X(6コア12スレッド、3.8GHz~4.4GHz)に搭載されているチップを2つ連結しただけの製品です。ベースクロックは3.8GHzで一致しています。また予定価格もRyzen 9 3900X(499ドル)はRyzen 6 3600X(249ドル)の約2倍になっています。

つまり16コア32スレッドのCPUは歩留まりの悪さによる製造コストの高騰で6万円を切るCPUとして出せなかったわけです。

第3世代Ryzenの8コア16スレッドは2モデルラインナップされており、Ryzen 7 3800X(399ドル)、Ryzen 7 3700X(329ドル)の2つです。

よってRyzen 7 3800Xに搭載されているダイを使って16コアを実現しようとすると800ドル(約9万円)、Ryzen 7 3700Xに搭載されているダイを使って16コアを実現するとしても660ドル(約7万5千円)まで価格が高騰してしまうため3900Xを16コアにすることができませんでした。

注意すべき点は、Ryzen 9 3900Xの1コアあたりの性能はどんなに高くてもRyzen 5 3600Xと同じだということです。Ryzen 5 3600Xより高いシングルスレッド性能は出ません。よってRyzen 5 3600Xを使って、PUBG等のFPSゲームのフレームレート性能に満足できないとしたら、Ryzen 9 3900Xを買っても同じように満足できないことになります。それどころか、Ryzen 5 3600Xは8コアでTDP95Wの発熱許容量(消費電力上限)を独占できるため、1コアあたりの性能の高さだったらRyzen 7 3600Xのほうが有利です。

これがRyzen 9 3900Xになってしまうと、12コアでTDP105の発熱許容量の範囲内に収めなければならず、必然的に1コアあたりが使える消費電力量も減少します。つまりゲームのフレームレートを高くしたいのならRyzen 9 3900Xはむしろ不利であり、Ryzen 5 3600Xのほうが有利になるという「逆転現象」になってしまっています。

これはIntel Coreのように「1つのダイに全部のコアを載せる」という手法ではなく、「単にRyzen 5 3600Xのダイを2つ連結してRyzen9 3900Xにする」という手法だからです。

もしゲーム用途を考えているのなら、下位モデルの8コアRyzen 7 3800Xのほうがベースクロック3.9GHzで高いのでそちらのほうがフレームレート性能が高いです。しかしRyzen 7 3800Xの8コアは内蔵グラフィクスを搭載した通常デスクトップ向けのCore i9 9900KやCore i7 9700と同じコア数であり、1コアあたりの性能ではRyzen 7 3800XをもってしてもIntel Coreにまだまだ勝てないので、8コアの第3世代Ryzenを買うなら第9世代Intel Coreのほうが高速な上に内蔵グラフィクスも搭載されています。価格はCore i7やCore i9より安いので、「性能が低くてもいいから安いものがいい」といった場合は第3世代Ryzenがいいでしょう。

19位 Core i7 7820X

2017年7月発売。第7世代Skylake-Eの8コアCPUです。3.6GHz~4.3GHz~4.5GHzです。

第6世代Broadwell-Eで同じく8コアのCore i7 6900Kが比較対象です。6900Kの動作周波数は3.2GHz~3.7GHz~4.0GHzなので、7820Xの方が遥かに動作周波数が高くなっています。8コアになると1コアあたりの性能が低くなりがちですが、動作周波数を上げることによってそれを補っています。その分だけTDP140Wと消費電力が大きくなっています。

実はこのCPUは8コアでありながら、16コアのRyzen Threadripper 1950Xよりも+1%性能が高いです。

しかも価格はRyzen Threadripper 1950Xの約半額。Ryzen Threadripper 1950Xを超えるにはCore i9 7900XどころかCore i7 7820Xでも十分であることが判明したわけです。

20位 Ryzen Threadripper 1950X BOX

2017年8月発売。16コア32スレッドのCPUです。TDPは180Wであり1920Xと同じです。

この1950Xの動作周波数が3.4GHz~4.0GHzであり、1920Xの動作周波数3.5GHz~4.0GHzよりもベースクロックが0.1GHz低くなっています。最大動作周波数は4.0GHzで同じ点は注意しておくべきところです。これは後述します。

これはコア数を12コアから16コアに増やす上でコア一つあたりの動作周波数を下げないと電圧が下げられず消費電力を下げられないからです。

1920Xよりもコア数が増えていて最大動作周波数が4.0GHzのままでは普通なら消費電力が増えていしまいます。しかしTDPは180Wで同じです。

これが意味するところは、16コアのうち同時に4.0GHzの動作周波数で動かすことのできるコア数はそこまで多くないということです。12コア版の1920Xでさえも12コアすべてを4.0GHzで動かすことはできません。これは16コア版の1950Xも同じだということです。

さらに言えば、最大の4.0GHz動作周波数で動かせるコア数は12コア版の方が多いと考えられます。1コアあたりの動作周波数の高さに期待するなら12コア版の方が良さそうです。

第2点目として1950Xと1920Xの大きな違いがあります。キャッシュサイズです。

最もペナルティコストが大きいL3キャッシュは32MBで1950Xでも1920Xでも同じです。

違うのはL1とL2キャッシュであり、コア数が16コアと多い1950XのL1キャッシュは1.5MBであり、12コアの1920Xの1.125MBのほうが少なくなっています。L2キャッシュも同様で、1950Xは8MB、1920Xが6MBになっており1950Xの方が大きくなっています。

L1キャッシュのヒット率はCPU性能に直結します。最近のCPUのボトルネックはメモリアクセスコストにあるため、L1キャッシュを手厚くしてL1キャッシュヒット率を高めることがキャッシュミスペナルティを下げるために重要だからです。

メモリアクセスが頻繁になく、一度レジスタにデータを持ってきたらレジスタに対する演算操作で完結するようなアプリケーション(アルゴリズム)なら1920Xでもいいでしょうが、メモリアクセスを頻繁にするような用途ではL1キャッシュが大きい1950Xの方が有利です。L3キャッシュサイズが1950Xでも1920Xでも同じなので、メモリアクセスが多いアプリケーションだとなおさらL1キャッシュの容量が性能に効いてきます。

Intelプロセッサとのベンチマーク比較ですが、7820Xとほぼ同性能です。少しIntel Core i7 7820Xの方が性能が高いです。

さらに1950Xに差をつけたいならCore i9 7900Xがおすすめです。性能はRyzen 1950Xよりも+6%高くなります。

動作周波数がAMD RyzenとIntel Coreで同じなら当然Intelの方が高性能になることが多いですが、動作周波数の時点でもIntel Coreの方が上回っているのでIntel Coreが勝つのも当然だったというところでしょう。

21位 Core i7 6950X Extreme Edition BOX

Broadwell-Eシリーズで最高峰と位置づけられるものです。10コアCPUであり2016年5月発売です。とはいっても何をもって最高峰かは使い手によって異なります。

動作周波数は3.0GHz~3.5GHz~4.0GHzです。

このCPUはIntel Core第5世代のプロセッサですがハイエンド向けであるため、第6世代のCore i7 7700Kを打ち負かしているCPUです。

このように6950Xは7700Kよりも+3%ほど性能が高いです。

第2世代のXeon Phi(Knights Landing)やXeon E5 v4などを除けば、この6950Kは同時期のCPUでは最も高速なCPUです。そして7700Kはその次で第2位です。

しかし2017年5月にはコードネームSkylake-Xの第6世代Intel Core-Xプロセッサ7960Xが発売されました。7700Kは勿論、6950XもSkylake-Xに完全に追い抜かれて大きく順位を下げています。

重いソフトウェアを同時に何十個と動かしたり、動画エンコードをひたすらやる場合にはこの6950Xは最適です。

ですがVisualStudioでプログラミングをするときにこのCPUはあまりいいとは言えません。やはり1コアあたりの性能が高いほうがプログラミング+ビルド(コンパイル)+デバッグをするストレスが無いので、そういったときは1コアあたりの性能が高い7700Kの方がいいです。

Word文書を編集したりブラウザでネットを見るためだけに使うなど、なにか1つの作業に集中する使い方ならCore i7 7700Kの方が快適に感じるでしょう。

このCPUはキャッシュが25MBと非常に大きいので、キャッシュに載るようなデータサイズの行列に対してひたすら数値計算をするような使い方、たとえば収束するまで繰り返し演算が必要な一般化最小二乗法や、グラフ探索、モンテカルロシミュレーションをやるときには高い効果を発揮します。

Xeonのようにメモリエラー検知・訂正機能が不要なら、10コアのXeonE5を買うよりもこのCore i7を買ったほうが高性能です。ただし最大メモリサイズはこのCPUが128GBなのに対して、XeonE5v4は1.54TBと圧倒的に大容量なので、非常に大きな行列を扱う用途ではXeonのほうが優秀です。

Youtubeの動画投稿のために一時的にキャプチャした非圧縮動画をメモリ上に置いておくくらいなら128GBもあれば十分なのでCore i7-XでOKでしょう。

22位 Core i7 7740X

第7世代Kaby Lake-Xプロセッサです。基本的には7700Kに毛が生えた程度の性能です。

CPUとメモリ間の接続は2チャネルですし、キャッシュは8MB、PCI-Expressレーン数は16と、7700Kとスペックはほとんど同じです。

違いは、7740Xの動作周波数が4.3GHz~4.5GHzとなっており、7700Kの4.2GHz~4.5GHzよりも若干上がっているということです。

また7740Xのデメリットとしてオンボードグラフィックスが付いていません。

 

7740XはTDP112Wであり、TDP91Wである7700Kよりも消費電力が大幅に上昇しています。これは全コアを同時に4.5GHzにできることから消費電力が上昇しています。

7700Kは全てのコアが同時に4.5GHzになることはありません。TDP91Wではそのようなことはできず、一部のコアは4.2GHzのままで動かすしかないのです。

そこが7740Xとの違いです。

しかし、7740Xは中途半端な位置づけのプロセッサだと言えます。私はこのCPUをおすすめしません。

私としてはこれを買うくらいなら、価格が手頃なKaby Lake-S Core i7 7700Kか、次の世代のCoffee Lake-S Core i7 8700Kを買います。

オンボードグラフィックスが不要でさらに高性能をということだったら、6コアのSkylake-X Core i7 7800Xを購入します。

23位 Ryzen Threadripper 1920X BOX

2017年8月発売。12コア24スレッドでTDP180Wという最近あまりみなくなった高消費電力CPUです。高消費電力の理由は高い動作周波数にあり、ベースクロックが3.5GHzで最大4.0GHzまで高くなります。しかし12コアすべてが同時に4.0GHzになるわけではありません。12コア全てを4.0GHzで動作させるとTDP180Wを余裕で超えてしまうのでできないわけです。

8コア16スレッドのRyzen 7 1800Xが、4コア8スレッドのCore i7 7700Kどころか4コア4スレッドのCore i5 7600Kにも負けていたことを考慮すると、12コア24スレッドのRyzen Threadripper 1920Xが10コア20スレッドのIntel Core i9 7900Xを超えるとは非常に考えにくいでしょう。

また当サイトのCPU記事で何度もしつこく記載していますが、マルチコアというのはアプリケーションに並列性がない限り全く高速化に貢献しません。並列性が少ないアプリケーションならコア数を少なくし1コアあたりの動作周波数を向上させたほうが実効性能が高くなり体感速度も上がります。使うアプリケーションの並列性の高さに自信があるのなら活躍するCPUだと言えるでしょう。

1950Xの項目で記載していますが、この1920Xの方がL1キャッシュサイズが大きいです。1.5MBあります。対して1950Xは1.125MBです。L1キャッシュサイズが大きい1920Xの方がL1キャッシュミス率を下げることができ、平均的なペナルティコストを下げることができます。L3キャッシュサイズは1950Xと同じなので、キャッシュという観点からみれば1950Xよりも1920Xのほうが優秀だと言えるでしょう。メモリアクセスが多いアプリケーションではこちらのほうが性能が出ると思われます。

24位 Core i7 7800X

Skylake-Xシリーズで一番下のスペックであるCPUです。とはいってもこれは7700Kなどとは一線を画しています。

まずコア数は6コアあり、第6世代のCore i7 6850Kが比較対象になります。

7700Kのメモリ接続は2チャネルですが、この7800Xは4チャネルもあります。これはつまり、メモリのレイテンシは変わりませんがスループットは2倍になっていることを意味します。CPUメモリ間の遅さがボトルネックになっている現在のコンピュータ事情を勘案するとかなり大きなメリットです。

25位 Core i7 6900K BOX

このCPUは第6世代のCPUであり2016年5月発売のものです。8コアプロセッサであり、動作周波数は3.2GHz~3.7GHz~4.0GHzです。

第6世代の6700Kが主流だった頃はこの6900Kが6700Kを大きく引き離して勝っていましたが、第7世代の7700Kが出ると6900Kは勝てなくなりました。

このようにたった1%ですが7700Kの方が性能が高くなっています。CPU価格に2倍以上の開きがあるのにもかかわらずです。

つまり7700Kが手に入る以上、今となっては7700Kを買ったほうが価格的にも性能的にも完全に得することになります。6900Kは10万円以上するのに対し7700Kは4万円前後です。この6900Kを買うくらいなら私は7700Kをおすすめします。

26位 Ryzen Threadripper 1900X BOX

27位 Core i7 6850K BOX

2016年5月に発売されたCPUで、Core i7 6800Kの高クロック版です。この6850Kのクロック倍率は36倍でありベースクロック3.6GHz。一方でこれより下位の6800Kのクロック倍率は34倍でありベースクロック3.4GHzです。違いはそれだけで、連想度を含めたキャッシュ機構は全く同じです。

6850KのBroadwell-Eは1世代前のBroadwellマイクロアーキテクチャ(Haswellベース)採用なので、Broadwell-Eの後継コードネームであるKaby Lake-XやSkylake-Xと大きな違いがあります。Broadwellというのは広い意味でのマイクロアーキテクチャ名称でありコードネームに近い概念です。元となっているのはHaswellマイクロアーキテクチャであり、このHaswellは狭い意味でのマイクロアーキテクチャを意味します。Kaby Lake-XやSkylake-Xはコードネーム(広い意味でのマイクロアーキテクチャ)なのですが、狭い意味でのアーキテクチャもSkylakeとなっておりHaswellから大きく進歩しています。

つまりこの6850KはHaswellベースであり、第7世代のKaby Lake-S(狭義のSkylake)マイクロアーキテクチャを採用したCore i7 7700Kが出てきたことによって1コアあたりの性能で負けてしまい、全体としての実効性能で負けることになってしまいました。

しかしBroadwell-Eでは4チャネルRAMに対応しており、7700Kでは2チャネル64GBまでなのと比較すると6850Kでは128GBまで対応しています。そのかわり128GBにするには1モジュールあたり32GBあるメモリを4モジュール買ってこなければなりません。

メモリを4モジュールに分けるのにはメリットがあります。7700Kではメモリを4枚挿しても同時に並列アクセスできるのは2枚までであり、メモリアクセス速度は高々2倍になる程度でした。

一方でこのBroadwell-Eは4チャネルアクセスに対応しているので、メモリモジュールを4枚差しすることによって4モジュールに同時(並列)にアクセスすることができます。これは7700Kよりメモリアクセススループット2倍になることを意味しておりかなり大きなメリットです。ただしスループットが増大するだけでレイテンシは短縮されないのでそこは注意。

後述しますが、メモリのレイテンシは年数とともに全く進歩していません。そこでこのように並列アクセスでスループットだけでも向上させなんとか体感速度を速めています。

6850KのデメリットとしてはこのCPUはオンボードグラフィクスがついていないので、必ずグラフィックボードを別に購入してくる必要があります。そうしないとディスプレイが映りません。

また前述したようにこのBroadwell-Eは狭義のHaswellマイクロアーキテクチャ採用です。次の世代のSkylakeマイクロアーキテクチャではSIMD演算命令としてAVX 512に対応しており、512bit FMAを2基も搭載しています。できればコードネームSkylake-X以降をおすすめします。

また最大消費電力を意味するTDPは140Wと大きいのでNoctuaのファンレスクーラーを持ってしてもファンレス可動はむりなのでファンは必須です。

28位 Core i7 6800K BOX

6800Kは6コア12スレッドで、2016年5月に発売されたBroadwell-Eで最も低い性能のCPUですが、一応6700Kは上回っていたものの、第7世代の7700Kには追い抜かれることになりました。

このように+10%も7700Kが勝っています。また7700Kは内蔵グラフィクスを搭載しているため7700Kのほうが良い選択のように考えがちです。

しかしCore i7 6800Kには7700Kに存在しないメリットがあります。キャッシュの連想度です。L1とL2キャシュはそれぞれのCPUで1コアあたりのキャッシュ容量は同じです。ですが6800KのL2キャッシュの連想度は8であり8-wayセットアソシアティブキャッシュです。一方で7700KのL2キャッシュの連想度は4であり4-wayセットアソシアティブになっています。つまり6800KのL2キャッシュではL3キャッシュへのキャッシュアウトが発生する確率が低くなっておりキャッシュミスペナルティを減らす効果があります。L3キャッシュサイズが7700Kの2倍もあるのも6800Kのメリットです。

29位 AMD FX-8350 BOX

2012年に発売されたCPUです。今のAMDで言えばRyzen Threadripperに相当するCPUです。IntelだとBroadwell-EやSkylake-Xなどの、ハイエンド向けCPUに相当します。

しかしこのFX-8350は8コアもありながら、Intel Core i7,i5,i3どころかそれよりも下のPentiumシリーズにすら勝てていません。

Intel Pentium G4560がAMD FX-8350に+5%実効性能で勝利しています。しかもPentiumはIntel HD Graphics 610というオンボードグラフィックスがCPUチップに載っています。Excel操作やYoutube再生は勿論、マインクラフトレベルのゲームだったら余裕でできるほどの性能を持っているものです。消費電力もFX-8350はTDP125Wに対して、Pentium G4560はたった54Wです。合理的に判断するならばすべての点においてPentiumの圧勝です。

Intel Xeonシリーズ:
メモリ故障のせいでデータが壊れると業務上かなり困るなど、故障検知が必要な場合
深層学習や金融分析などの並列性の高い科学技術計算をする場合

Xeonが企業などの業務用として採用されるのはよく知られていると思います。なぜXeonが業務用で採用されるかと言えば、それはXeonはメモリが故障したときに故障したことが検知できるからです。ビットの誤りを検出することができる誤り訂正・誤り検出に対応しているのがXeonプロセッサの大きな特徴です。誤り訂正・誤り検出の理論については情報源符号化分野(Shannonによる情報理論の一分野)を参照すると理解できます。

Core i7などのCoreシリーズのCPUでは、メモリが壊れるとブルースクリーンになったりそのまま画面が停止するなど、何が原因でブルースクリーンになったのかがわかりません。またメモリが故障するとデータを壊すことになりますが、そのデータが壊れてること自体にも気づくことができないのがCoreシリーズのCPUです。一方でXeonは誤り検出によってメモリが故障したことをしっかりログとして記録してくれます。さらにメモリがデータを破壊しながら動き続けることもありません。

よって万が一Xeonマシンが故障したら、その故障を検知して自動的に別のコンピュータに切り替えるといったことがXeonなら技術的に簡単に実現できます。このようにミッションクリティカル度が高く失敗が許されない業務ではXeonの使用が好まれます。

また故障検知以外のXeonのメリットとして、コア数が多いのでスレッドレベル並列性が高いソフトウェアの実行に有利だという点があります。

例えば動画エンコードをする人なら、動画のエンコード処理は並列性が高いためコア数が多いXeonのメリットを受けることができます。ただし並列実行に対応しているエンコードソフトを使うことが必須です。Youtubeで高画質のままライブ配信したいときには、1080pくらいならCore i7で十分でしょうが、4K解像度かつ60fpsかつHDR対応でライブ配信をやりたいとしたらXeonも選択肢に入ってくるでしょう。

また深層学習や金融分析など、最適なパラメータを探す必要があるようなタスクを実行するときにも有利です。パラメータの探索は木(tree構造)の探索と遺伝的アルゴリズムによる分枝打ち切りなので並列処理と親和的です。金融機関におけるデリバティブ(金融派生商品)の時価とリスク量を各金融商品の数(保有している金融商品数)の分だけ計算処理するといった用途にも向いています。個々の金融商品の計算自体は完全に独立しており簡単にスレッドレベルで並列化できるからです。

注意すべき点は、Xeonプロセッサは1つ1つの各コアの性能は高くないということです。並列性が全くないソフトウェアを動かすときはCore i7よりも遅く感じます。Webサーバーのように1つ1つのタスクの処理自体は大したことはないが、そのタスク量が膨大に発生するといった用途にはいいでしょう。

Xeonプロセッサは2017年に発売されたSkylake SPから非常に扱いやすく個人ユーザにも入手しやすくなりました。

それまで(2016年のBroadwell-EP,Broadwell-EX以前)はXeon E3・Xeon E5・Xeon E7と区分され、ソケットはLGA1151・LGA2011-3・LGA2011が混在しておりチップセットもマザーボードも仕様がバラバラでした。 特にXeon E7を個人で扱うのは現実的ではありませんでした。SocketこそLGA2011ですがXeon E7対応のチップセットを搭載したマザーボードが出回っていないため自作に不向きであり、サーバーラックをベンダーに発注してXeon E7搭載済みの製品を納入してもらうという法人を想定した相対の入手方法しかありませんでした。

しかしXeon E7の後継はXeon Platinumとなり、予算さえあれば個人でも十分に自作が可能になりました。非常に大きな改善点です。早速Xeonシリーズで最高峰のXeon Platinum 8180(28コア56スレッド)という120万円近くするプロセッサをASUSのマザーボードに2つ搭載してベンチマークしている個人のYoutube動画が上がっています。

以下、「2016年以前の古い仕様のBroadwell-EP,Broadwell-EXのXeon」と、2017年以降の新仕様の「Skylake-SP、Cascade Lake-SP、Cascade Lake-APのXeon」の対応をまとめておきます。

Xeon E7 & Xeon E5(2ソケット以上マルチCPU対応版)→Xeon Platinum,Gold,Silver,Bronze
ソケットはLGA3647(複数のチップを基盤に搭載可能なソケットでGeneral Purpose Processor+Special Purpose Discrete GPUの2チップ構成なども可能)。このXeon Platinum,Gold,Silver,BronzeはXeonプロセッサScalableファミリと呼ばれ、2CPUのみならず4CPUも8CPUも可(スケーラブルに接続できる)。
Xeon E5(1ソケットのシングルCPUのみ対応)→Xeon W(iMac Pro等で採用)
ソケットはLGA3647でありScalableファミリのソケットと同じ。しかしXeon Wはシングルプロセッサ構成のみでありScalableファミリに属さない。1ソケットのみの対応なので2CPUや4CPUや8CPUにできない。以前のXeon E5-1600 v4の後継の立ち位置に相当する。
Xeon E3→Xeon E(EはEntryの意、1ソケットのシングルCPUのみ対応)
ソケットはLGA1151。このXeon Eは、単純にLGA1151のIntel Coreプロセッサシリーズ(8700Kなど)にメモリエラー検出・訂正機能を追加したもので、Intel UHD GraphicsなどのiGPU(内蔵グラフィクス、オンボードグラフィックス)を搭載しておりグラボ無しでもディスプレイ表示可能。

このように大雑把に3つのランクに分けることができます。

一番上のランクがXeon Scalableプロセッサです。以前のXeon E7と、2CPUに対応したXeon E5の後継という位置づけです。ScalableというのはCPUを2つ接続したらCPUの数に比例して性能も2倍3倍になるといった特性のことを指します。逆にCPUをいくら増やしても性能が向上しないことを「スケールしない」と言います。日本語では「スケールする」と言うこともありますが学術的にはScalableと言います。これは重要な性質であり、CPUを単純に並列接続していくだけで、スレッドレベルの並列性がある限り性能も2倍3倍とスケールするので、スパコンを組む上で非常に有用なプロセッサです。

次のランク帯は、1CPUに制限された「Xeon W」というシリーズです。これは2018年に「160万円の最高スペックカスタマイズでiMac Proを買ってみた」というレビューが大量発生したことで有名なiMac Proに搭載されたCPUです。iMac Proの中では最高スペックでも、上の表で見ればXeon Platinum,Gold,Silver,Bronzeに続きXeon Wは第5番目のCPUなのでそこまで高性能ではありません。Xeon WはBroadwell-EP以前のXeon E5 1400 v4の後継品であり、2CPUを搭載して1つのOSで認識するといったマルチプロセッシングに対応していません。1CPUのみです。つまりScalableプロセッサではないということです。その分だけXeon Processor Scalable Familyより安くなっています。

そして更に下のランク帯がXeon Eです。これはXeon E3の後継にあたります。これも1CPUのみであり2CPUや4CPUにはできません。このXeon Eはシンプルであり、単にCore i9 9900KやCore i7 9700KやCore i5 9600Kのような個人向け一般プロセッサにエラー訂正・エラー検出機能を搭載して信頼性を高めたものです。決してCore i9 9900Kより高性能という位置づけではないので注意。Coreプロセッサの性能をそのままに、信頼性を高める機能を追加したものがXeon Eです。基本的に中身はCoreプロセッサなので、Intel UHD GraphicsというiGPU(オンボードグラフィックス)を搭載しています。上記のXeon-WやXeon Platinum,Gold,Silver,Bronzeは内蔵グラフィックス非搭載なので別途グラボが必要です。

重要なことは、Xeonは1コアあたりの性能の高さを求めるものではなく、スレッドレベルの並列性が高いアプリケーションの並列処理の高速化信頼性の高さを追求するのがコンセプトだということです。単純にゲーム用の高性能なプロセッサが欲しいなら、Core i7やi9を買ったほうが性能が高くなります。

1位 Xeon Platinum 8180

28コア56スレッドのCPUです。Skylake-SP世代では最も上位に位置するフラッグシップモデルです。マルチプロセッシング可能なため、マザーボードに2つ搭載すれば56コア112スレッドにできます。1CPUあたりおよそ120万円ほどするのでCPUだけで240万円ほどになりますが、マザーボードは以前のXeon E7と比べたら入手性が高いので300万円もせずに論理コア100のPCを組むことができます。

1コアの動作周波数は2.5GHzしかありませんが、24時間以上かかる数千回レベルのループを並列化すれば非常に短時間で処理が完了します。

2位 Xeon W 3175X

2019年1月発売。28コア56スレッドであり、Xeon Wシリーズの中では最高峰のモデルです。ただしXeon Scalableプロセッサファミリよりは下位の製品であるため1CPU構成のみであり2CPUなどのマルチプロセッサ構成にはできません。

このプロセッサは「高価」で「高速」であることから物好きな人が早速購入してベンチマークスコアを掲載しています。そして他の全てのCPUを上回るベンチマークスコアを出せたので満足、といういつものパターンが見られます。

しかし、「実際に役立つ用途」を考えて実際のニーズでCPUを探しているユーザからすると「このXeon Wというプロセッサはどのような用途に最適なのか?どのような場合にこのXeon W 3175Xを選択すると得するのか?」の部分に最も関心があると思います。つまり「Xeon W-3175Xは何に役立つの?」という疑問をもっているユーザと、「単にハイスペックなPCを組んでベンチマークで満足して終わり」のユーザは決定的に目的が異なっているということです。CPUを何らかの応用分野の解を求めるための「手段」とみなしているユーザと、CPUそれ自体が「目的」となってしまっているユーザは決定的に異なります。ここでは前者の「手段」としてこのXeon W-3175Xの活用方法を説明します。

率直に言えば、このXeon W 3175Xは「普段遣いの作業用PC+常時運用のXeon Scalableの2台構成」に本来するべきものを、「Xeon Wで作業用も運用も兼務させ1台構成」に簡略化(妥協)するためのものです。

例示として金融工学の業務を挙げます。投資銀行などの金融機関では従業員が数理モデルをC++やC#として実装し業務に役立てています。実装はCore i9やi7の一般的なPCでVisual Studioで行います。そしてバグ取りが終わり実際に業務で使う段階になったら別のXeon機で本番運用します。このように2台に分ける理由は、VisualStudioのビルド&デバッグ作業やプログラミング作業(webでC#のClassリファレンスを閲覧するなど)をするには1コアあたりの性能が高いCoreプロセッサのほうが快適だからです。しかし実際に本番運用するときは多数のコアで並列化可能かつメモリエラー検知訂正があるXeon機で実行させます。つまり目的ごとにCore i9やXeonというようにCPUを使い分けています。

予算の潤沢な大きな法人ならこれで良いですが、コンピュータが2台必要となると予算が必要なばかりか場所を取ります。個人用途だとなおさら問題になります。

そこでCore i9などのメモリエラー検出訂正機能がないCPUをXeon側に寄せて信頼性を高め、かつXeon Scalableファミリ特有の「1コアあたりの性能は低いがコア数は多い」といった特性を「1コアあたりの性能が高いCore i9」側に寄せることで、丁度真ん中を取った折衷案として使えるようにしたのがXeon W-3175Xです。

本来は役割(例:普段使い+本番運用)ごとに複数のコンピュータ(CPU)を使うようにするべきですが、それを1台にまとめて複数の役割を兼務させて安上がりかつコンパクトにするニーズのためにXeon Wがあります。つまり、Core i9マシン + Xeon Scalableマシンに分けて業務を行っている側からすると、Xeon Wは「妥協したCPU」です。個人からするとXeon W-3175Wは「高価」かつ「高性能」といった認識でしょうが、実際は「安価」かつ「中性能」の妥協的なCPUなのです。

既に自分の応用分野を持っている人がこのようなXeon Wの立ち位置を見れば、その人にとってこのCPUを選択する価値があるかすぐ判断できます。いまいち使い道が見つからない人は、もともとXeonを活用する「応用分野」を持っていないユーザだということです。

結局のところコンピュータとは手段です。それ自体は目的ではありません。その人自身がこのプロセッサを使いこなせるだけの「応用分野」を持っているのか?という部分が、このXeon W-3175Wを活かせるかどうかの分水嶺になるでしょう。

3位 Xeon W-2195

18コア36スレッドであり、2017年発売のXeon Wシリーズの中では最も高性能です。2018年に発売されたiMac Proで選択可能な18コアXeon Wプロセッサはこれのカスタマイズ版です。Xeon Wの欠点はマルチCPUに対応しておらずCPUを1つしか搭載できないシングルCPUのみ対応ということです。複数のCPUを搭載してスケールさせるといったことができません。スケールさせたい場合はXeon Bronze以上を選択する必要があります。

 コア数を2倍にすると性能を維持したまま動作周波数を半分にできる

Xeonシリーズの最大発熱量(消費電力)が250Wであるように、だいたいCPUの消費電力はこのあたりが限界です。これ以上いくと発熱でチップが焼ききれてしまいます。

現在のCPUは「消費電力を抑えた上で高速化する」という方向性で作られています。

そのためにとられている手段がマルチコア化です。マルチコア化はIntelやAMDが好きでやってるのではなくて、集積度が上がりすぎて電力密度の限界がきてしまっているので、消費電力を下げるために仕方なくマルチコアを採用せざるを得ないという切実な背景があります。

CPUには4GHzなどの動作周波数がありますが、実は動作周波数を上げるには電圧も上げなければなりません。

そして電圧を上げると電流も上昇するので(プロセッサ回路の抵抗値が一定のため)、消費電力は電圧上昇の2乗に比例して大きくなってしまいます。これが最近のCPUが4GHzから動作周波数がいっこうに上がらない理由です。4GHzという動作周波数は2003年頃のPentium4ですら達成していました。それから20年近く経過しても高い動作周波数帯は4GHzのままです。

そこでマルチコア化するわけです。

2つのコアに分ければ極端な話、動作周波数を2GHzに下げてもいいことになります。そうすると電圧を下げても問題なく、それは電流も下がることを意味するので消費電力は激減します。1コアあたりの性能向上も毎年されていますが、それに加えてコア数を増やすという手法で現在はCPUを高速化しています。

しかし、これはソフトウェア内部のコードに十分なスレッドレベル並列性がある場合に限ります。まったく並列性が無い場合は、コア数を2倍にして動作周波数を1/2にしたCPUを使うと速度は1/2になってしまいます。これがコア数を増やす最大のデメリットです。AMD Ryzenはこのコア数を増やすことに特化して1コアあたりの性能向上を諦めたプロセッサです。

並列実行するように作られているソフトウェアは動画エンコードを行うものなど非常に限られています。よってExcelやWordやブラウザや数値計算など、複数のアプリケーション(プロセス)を同時稼働させ、それぞれのコアにプロレスをOSが割り当てることがマルチコアCPUを活用する最も簡単な方法です。

よってコア数が増えるほど動作周波数(~GHz)が低くなる

動作周波数が4GHzのままコア数を2倍にすると消費電力は単純に2倍になってしまいます。

だから必然的に動作周波数を下げざるを得ません。

例えば1コア4GHzのプロセッサをのコア数を増やし、2コア4GHzにした場合、この4GHzの動作周波数を下げて2GHzにしても2つもCPUがあるわけですから、1コア4GHzと比較して全体としては速度は落ちていません(複数のコアを使い切れるだけの十分なスレッドレベル並列性がある場合に限ります)。つまり性能を維持したまま動作周波数を下げることができるわけです。

このように、マルチコア化すると動作周波数は下げることもできるし、逆に消費電力上の制約から下げざるを得ないという状況にもあると言えます。

実際にXeonの上位モデルで50コア以上のものは、動作周波数が2GHz程度しかなく動作周波数が低いと感じるでしょう。でもこれは消費電力を250W以内に収めるために仕方ないことだということです。

2ソケット以上のマルチプロセッサと、マルチ「コア」プロセッサの違いは何か

プロセッサのコア数を増やして、動画エンコードのようなスレッドレベル並列性の高いアプリケーションを高速化するという手法はMIMD(Multiple Instruction Multiple Data)に分類されます。実はこのMIMDによる高速化は日本を含めて世界中で研究されていて、大学の研究室が発表した論文は山ほどあり書籍も大量に出版されています。

1つのプロセッサの性能を向上させるのに限界がでてきたら、それを2つ3つと増やして並列処理すればいいという考え方は大昔からある古典的手法だということです。実際に今でもスパコンはこのMIMD手法で高速化されています。

マルチプロセッサは、マザーボード上に2つのソケットがあり2つのCPUを搭載できるようになってるものが一つの例です。別のソケットに複数のCPUを挿すことでプロセッサを増やすわけです。

一方で、マルチコアプロセッサは1つのCPUチップ上に複数のコアを実現します。現在Intel CoreやAMD Ryzenが採用しているのはこの手法です。一方でIntel Xeonはマルチ「コア」化と、複数のソケットによるマルチ「プロセッサ」化の2つを同時に実現しています。

このマルチ「プロセッサ」とマルチ「コア」はOSからみるとどちらも複数のCPUとして見えますが、実際はかなり違うわけです。

理想から言うと、複数のソケットに分けずに複数のコアとして1チップ上にすべて押し込んでしまうのがベストです。

なぜなら、物理的に距離の離れたCPU同士で通信しようとすると数百クロックレベルの多大な時間を要するからです。これは普通のCPUで、並列化したプログラムを実行するときの待ち合わせ(同期処理)時に非常に不利になります。一方でマルチコアならコア同士は同じチップ上に載っておりすぐ隣にあります。しかもIntelプロセッサの場合は全てのコアで1つのキャシュを共有しているため同期が非常に高速化されます。

そのため30クロックレベルの待合せで他のコアと通信して連携できるわけです。これが全てのコアを1チップ上に押し込むマルチコアの大きなメリットです。

ですが技術的にそれは難くなります。コア数を増やそうとするとチップ面積が増えるので、面積が増えると不良品になってしまう確率が一気に高くなり歩留まりが悪くなります。歩留まりが悪くなると販売価格が高騰してしまうため1チップに詰め込めるコア数はいくらでも増やせるわけではありません。

そこでチップを複数に分割してしまうと、そのチップとチップは別々のキャッシュを共有するため、コアとコア同士の同期のレイテンシが非常に長くなってしまい速度が遅くなります。

このように技術的な限界から1チップあたりは64コア程度に抑えて、そのチップを複数連結して256コアにするといったことが実施されています。理想からいうとすべてのコアを1枚のチップに収めてしまうマルチコアの方が各コア同士の通信速度が速いし、コンパクトだし、消費電力の面でも有利だと言えます。

CPUよりも高速化の方法に乏しく頭打ちのメモリ

CPUは集積度を上げて1コアあたりの性能を増やしつつ、同時にコア数を増やすことでまだまだ性能を向上できる余地があります。

一方で速度の頭打ちが深刻なのがメモリです。メモリの「容量」は年月が経つにつれて劇的にアップし続けていますが、読み書きの速度は10年前どころか20年程度のスパンで見ても大して速くなっていません。

メモリはチャネル数を増やすことで並列アクセスを可能にして高速化しています。ただしIntel Xeonでさえメモリチャネル数は6つです。24枚メモリモジュールを使っても並列にアクセスできるのは6つまでです。

しかしチャネル数を増やすことはスループット(throughput)を向上させることはできてもレイテンシ(latency)の向上には繋がりません。

スループットとはネットワークで言えば帯域幅のことです。ネットワーク(インターネットもネットワークの一種)の事例がわかりやすいのでこれを使って例示してみます。

インターネットアクセス速度が100Mbps、1Gbps、10Gbpsのように向上してきていますがこれはスループットのことを指します。一方でレイテンシとは目的のサーバからデータを送出して、手元に届き始めるまでの時間です。実はこのレイテンシは物理的な距離が大きいと改善に限界があります。物理的に離れているとどんなに技術が進歩してもレイテンシを短縮することができなくなります。例えば日本からだと丁度地球の真反対にあるのはブラジルの近海になりますが、ブラジルから日本まで一直線で通信回線を引いても光の速度1秒間に地球を7周半のうち半周分もかかってしまいます。光が地球を半周するのにかかる時間は0.06秒です。一方で60fpsでゲームをしていると1フレームが0.016秒で切り替わり、120fpsでゲームをしていると1フレームが0.008秒で切り替わります。つまりフレームレートがどんなに高くても、物理的に距離が離れてしまうと、たとえ光の速度(物理的に可能な最大速度)でネットワーク接続されていたとしても0.06秒もの遅延が発生してしまいます。これはディスプレイ表示の1フレームが切り替わる時間に比べると非常に長い時間です。実際はさらに長くなってしまいます。電気信号の速度は光よりかなり遅く、しかも一直線でネットワーク接続されているわけではなく途中いくつものルータを経由して迂回しながらようやく日本まで届きます。FPSゲームのように遅延があると致命的になるゲームではネットワークのping値が重視されていますが、これは今後インターネット接続速度が100Gbpsだとか1Tbpsのように高速化されても、レイテンシ(ping値の約1/2)が改善されることはありません。なぜなら電気信号の進む速さはどんなに速くても光の速度が上限だからです。

これはメモリの速度と同じで、CPUがメモリからデータを取ってくるまでの待ち時間というのはCPUとメモリまでの物理的距離が大きく影響します。メモリを24枚も挿せるようにしてしまうと、どうしてもCPUから距離の離れたメモリスロットが出てきてしまいます。

CPUからメモリまでは数百クロックもかかってしまい、キャッシュより10倍以上の時間がかかります。この数百クロックが改善することはありません。なぜなら電気信号の理想的な最大速度はどんなに速くても光の速度(30万キロメートル毎秒)が限界であり、実際の電気信号は光の速度より遅くなるからです。意外に思えるかもしれませんが光の速度は遅いです。光の速度30万キロメートル毎秒をCPU4GHzのクロック数(1秒間に40億回)で割ると、1クロックでどのくらい光が進めるか計算できますがそれはたった7.5cmです。メモリのクロック2,000MHzを基準にしても1クロックで15cmです。

Mini ITXマザーボードは1辺17cmなので、CPUが1クロック待っている間にメモリからのデータはマザーボード上の距離の半分も進めません。それどころかこの1クロックで7.5cmというのは理想的な光の速度です。電気信号は抵抗値とキャパシタ(コンデンサ)値のある配線上を流れますから実際はこれよりはるかに遅くなります。一直線でも遅いのに、この電気信号が同期の待合せやエラー検出・エラー訂正されるステップを踏むとなるとさらに遅くなります。CPUとメモリの位置が離れるとたとえ電気のように流れるのが速いものでも到達に時間がかかり大きなロスとなってしまうわけです。

そのためCPU上のキャッシュサイズを大きくしていくことで、メモリのレイテンシの大きさの影響を受けないようにしているわけですが、キャッシュサイズを大きくすると今度はキャッシュのレイテンシが増えてしまうというトレードオフが発生します。つまりメモリとキャッシュの高速化はCPUの1コアあたりの性能の向上よりも限界がきています。

メモリ速度とCPU速度の頭打ちはSSDでカバーできる

このようにメモリのレイテンシが向上しない以上、どんなにCPUが高速化されてもデータが届くまで待たされてしまうため高速化できません。

またCPUの1コアあたりの動作周波数も4GHz台で頭打ちになっています。

このような中でどのようにしてさらに体感速度を上げていくかというと、Intel Core i7やXeonのようにマルチコア化していくわけです。ですがこのマルチコア化は1つのソフトウェア実行を高速化するのではなく、ブラウザやExcelなど複数のソフトウェアを同時に動かしているときに速くなるだけということを前述してきました。

そこで1つのソフトウェアだけでも高速化する方法としてSSDの採用が現在はオーソドックスになっています。

特に個人のパソコン用途ではHDDなどのストレージへのアクセスが多いのが特徴であり、このストレージアクセスを高速化するだけで体感速度がかなり速くなるわけです。

そして幸いなことに、このストレージはSSDの発展によって劇的に高速化されています。ストレージはハードディスクドライブ(HDD)の時代が終わりを告げようとしており、近い将来完全にSSDに取って代わるでしょう。

このSSDの速度はまだまだ改善の余地があり、SSDの高速化がパソコン全体の高速化につながる状況は今後も続きます。

なぜならSSD自体は現在でも相当高速なのですが、それをCPUと接続するバスの部分が低速であり、SSDの本来の速度を十分に発揮できないというSSDが「手持ち無沙汰」の状態にあるのが現状なのです。そのような「手持ち無沙汰」の状態である現在のSSDでも高速に感じるのですから、そのボトルネックが解消されたあとのSSDはとてつもなく速くなるでしょう。

よってまだまだSSDはさらに高速になる潜在能力があり、今後のさらなる発展が期待できる分野です。

Intel CPUもPCI ExpressのリビジョンをSkylakeで3.0に上げるなど、バスの高速化に力を入れています。そのPCI Express接続を使ったSSDがNVMe対応のSSDです。IntelはCPUだけでなくMicronと協業してSSD開発にもかなり投資しているので、パソコンを購入する側もSSDの性能にお金をかけることによって高速なパソコンを手に入れることができます。

CPUは業界第一位の設備投資額が最も大きいメーカーのものを買う:現状はIntel

CPUというのは半導体であり、メモリもSSDも半導体ですが、これら半導体産業に共通する法則(経験則)があります。

それは、金額で他の企業を上回る第1位の巨額投資をしないかぎり、良い製品ができないという法則です。

例えばCPUを作るために1兆1千億円の投資をしたA企業と1兆円の投資をしたB企業があるとします。

投資額からみると、A企業はB企業より10%大きい金額を投資しているので、CPUの性能もA企業はB企業よりも10%速いものを作ると思うでしょう。

ですが現実はまったく違って、A企業はB企業よりも2,3倍(100~200%)も速いCPUを作ってしまいます。

これが半導体産業の特殊なところで、半導体は一番大きい巨額の投資を一度にやった企業が圧倒的勝利を納めます。それが現状Intelです。

つまりIntelが資本力(貸借対照表の純資産の部)や投資額で最も大きい業界第一位を走ってる以上、IntelにはCPU分野で勝てません。投資額が少なくても工夫すればなんとかなる他の業界とは根本的に異なると言えます。

よって重要なことは、そのときどきで業界第一位の企業が出すCPUを買うことです。それは現状Intelなので、多少高くてもIntel製を買うことがあとあと後悔せずに済むということです。

IntelはMath Kernel Libraryで数値計算を高精度で高速化できる 機械学習や金融分析をするならIntel一択

Intel製プロセッサはParallel Studioに含まれているMath Kernel Library(MKL)を使うことでSIMD演算命令やコア間の並列化を自動化してくれます。

行列演算はまさに並列性が高くSIMD演算命令が得意とするところですが、そのような命令を意識せずにMKLを使うことで自動的にSIMD演算器に命令を割り当てたり、コアにスレッドを割り当てて並列化してくれます。

Visual StudioではNugetでMath.NETライブラリをインストールすることができますが、このMath.NETはMKLを内部的に使用したバージョンも配布されています。これはC#のマネージドなメモリから、アンマネージドなメモリへマーシャルコピーをしてMKLを呼び出し演算をさせるというものです。いちいち自分でマーシャルコピーをせずにMKLの恩恵を受けることができるのでおすすめです。

このようなMKLは深層学習や金融分析において大きなメリットがあります。金融時系列分析では行列の固有値を求めたり逆行列を求めることが多々発生しますが、そのようなときに倍精度浮動小数点演算で高速に演算結果を叩き出してくれるIntel Coreプロセッサは使い勝手がいいです。

Ryzenはコア自体の性能は高くなく、コア数を多くして高性能に見せかけているプロセッサなので、スレッドレベルの並列性がないアプリケーションの場合逆に遅くなります。スレッドレベルの並列性が高いアプリケーションというのはあまり存在しません。ゲームや動画エンコードくらいです。

Intel Coreのほうがオールラウンドなプロセッサであり、Ryzenは極一部のニーズにマッチするspecial purposeなプロセッサに近いので、様々な用途に使う予定ならIntel Coreのほうが間違いない選択です。

実はコンピュータの中心はCPUではない CPUはチップセットにぶら下がっている構成要素の一つ

パソコンの中心的な部品は何かと質問したら、大多数の人が「CPU」と答えるのではないでしょうか?これは情報工学分野に詳しくないパソコン初心者のみならず、「PCの自作に自信がある」と自称する人でも「CPU」と回答するでしょう。しかしそれは誤りです。CPUはコンピュータの「心臓部」だとか「脳」と表現している入門書籍も多いですが違います。実際はCPUの役割は「手足」です。

パソコン(コンピュータ)の中心は「チップセット」です。

コンピュータには様々な構成要素があります。まず演算を行うためのCPU。そしてCPUが処理する対象のデータを格納しておく主記憶(メモリ:RAM)。この2つだけでもコンピュータは動作しますが、主記憶に収まりきらないデータを格納しておくための補助記憶(ストレージ:SSDやHDD)もあります。つまりCPUは「コンピュータの構成要素の1つ」にしか過ぎません。

これらの構成要素がばらばらに動作してもコンピュータは動作しません。お互いを接続する仲介役が必要です。それがチップセットです。CPUやメモリやSSDといった部品はチップセットの下にぶら下がる形で接続されています。SSDからメモリへデータを転送させるのもチップセットの仕事ですし、メモリへ転送が完了したらそれをCPUに伝えてあげるのもチップセットの仕事です。

チップセットというのスター型接続でパソコンの構成部品を取り仕切っています。たとえCPUであってもチップセットにぶら下がっている一つの部品に過ぎないとうことです。

「CPU(Central Processing Unit)の”C”の字はCentralだからCPUがコンピュータの中心だ」と主張する人が出てきそうですが、これは数ある「プロセッサ(Processing Unit)」の中で「中心的(Central)」なのが「CPU」という意味なので、コンピュータの中心という意味ではないのです。

CPUとマイクロプロセッサ(MPU)の違い

プロセッサとはProcessorのことで「処理系」と翻訳されますが、これを理解するためにはコンピュータ・サイエンス分野の全体を捉えることが必要です。”Information Processing”という用語が日本に伝わったとき、日本ではそれを「情報処理」と翻訳しました。これは日本の情報工学分野の筆頭学会である「情報処理学会」にも現れています。

これに付随してProcessorとは「処理を行う役割を担うもの」つまり「処理系」と翻訳されました。処理系とは何かと言うと、データを読込み、それを加工し、加工後のデータをまた書き込むといった一連の処理を行う系のことです。

何か情報を処理する作業を行うためには必ずインプットとなるデータがあります。例えばキーボードからの入力であったり、ファイルの読込みであったり、インターネット上から取得したウェブデータ等、本当に様々なインプットデータがあります。

そのインプットに対してコンピュータは何らかの「処理」をします。動画だったらエンコードの作業を行います。そしてエンコード後の動画の書き出しを行います。このような一連の流れが「処理=プロセッシング」です。この作業を担うのが「処理系=プロセッサ」です。

つまりコンピュータでの情報処理というのは、「データ→処理→データ」の一連の作業の繰り返しです。データを読込み、それに何らかの処理を行い、その結果を書き出す。そしてまたそれを読み込むの繰り返しです。この真中にある「処理」を実施するのが「プロセッサ」です。

このプロセッサとは非常に広い概念であり、CPUもマイクロプロセッサ(MPU)も包括する概念です。

ベン図で言えばCPUもマイクロプロセッサ(MPU)も「プロセッサ」の内側にあります。

処理系(プロセッサ)は非常に広い概念であるため様々な処理内容を含んでいます。例えばSSDやHDDの通信を担うSATA接続もある意味で処理系です。LANケーブルから伝わってきた伝送信号に対してエラー検出・エラー訂正して0と1のビットデータにするのも処理系です。

このようにコンピュータ上に存在するありとあらゆる処理系の中で、特に重要で中心的な役割を担っている部分を「中心的な処理系」として「Central Processing Unit(CPU)」と呼ぶようになりました。重要なことは、ここでいうCPUとは「チップ上に一体化された」という意味は含んでいないということです。あくまでも機能(役割)として「中心」を担っていればCPUです。たとえそれが真空管+抵抗+コンデンサという前時代的な部品で組まれていても中心的な役割を担っているならCPUですし、電子計算機(電子コンピュータ)ではなく機械式のコンピュータであってもそれが中心的な処理系ならCPUです。

一方で、マイクロプロセッサ(MPU)というのは「半導体チップ上に処理系の機能を統合したプロセッサ」という意味です。つまりこのMPUが現在の「いわゆるCPU」と一番イメージが近いものになります。しかしマイクロプロセッサ(MPU)には「中心的な処理を担う」といった意味は入っていません。たとえそれが脇役的な役割を担うためのプロセッサであっても、半導体チップ上に載っていれば「マイクロプロセッサ(MPU)」です。

つまり、Intel Coreプロセッサのような「いわゆるCPU」というのは、「中心的な役割を担うプロセッサ(CPU)」と、「半導体チップ上に処理系を載せたMPU」の積集合を意味していることになります。「いわゆるCPU」=「本来の意味のCPU」∩「MPU」だということです。

実は、Intelがプロセッサに参入するまでは「MPU」という呼称が一般的でした。IntelはRAM(メモリ)を作っていたメーカーでしたが、日本のRAMメーカーに勝てなくなり仕方なくMPUに参入し、Intelが「CPU」という名称で商品を売り始めそれが爆発的にヒットしたため「CPU」という名称が普及し定着し一般的になったということです。「コンピュータの中心はCPU」というイメージを作り上げたのも、「MPUではなくCPUと呼ぶ」のも実はIntelプロセッサの一強状態が作り出してくれたものです。つまり「CPU」という用語を使っている時点でIntelの影響を非常に強く受けているということになります。