Ryzen 9 5900Xのベンチマーク性能比較レビュー Intel Core i5 11500に対し第4世代Ryzenが敗北し、Core i9 11900K相手に大敗する性能

Ryzen 9 5900Xは2020年度に発売された第4世代Ryzen5000シリーズプロセッサの中で12コアのCPUです。

本来、Ryzen 9 5900Xと最も発売時期が近い第11世代Intel Core(Rocket Lake)と比較すべきCPUですが、第10世代Intel Core(Comet Lake)や第9世代Intel Core(Coffee Lake Refresh)とも比較していきます。

Ryzen 9 5900Xの詳細スペックと特徴

メーカー・モデル名AMD Ryzen 9 5900X
コア数12コア24スレッド
基本動作周波数3.7GHz
最大動作周波数4.8GHz
全コア同時最大周波数4.1GHz
発売日2020年11月
セキュアブート非対応
AMD Pro(AMD版vPro)非対応
同時マルチスレッディング有効
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)105W
L1キャッシュ768KB
L2キャッシュ6MB
L3キャッシュ64MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅47.68GB毎秒
コードネームVermeer (AMD Zen3世代Ryzen 5000)
コンピュータの形態デスクトップ
グラフィクス(iGPU)非搭載
iGPU最大画面数0
iGPU最大ビデオメモリ0GB
iGPU基本周波数0Hz
iGPU最大周波数0Hz
iGPU CU数0基
iGPU単精度コア数0個
iGPU単精度性能0 FLOPS
ソケットSocket AM4
アーキテクチャZen 3
プロセスルールTSMC7nm
SIMD拡張命令Intel AVX2, SSE
SIMD演算器256bit FMA×2
SIMD倍精度演算性能16 FLOPs/cycle
AI(深層学習)拡張命令非搭載

Ryzen 9 5900Xは12コアまでコア数を絞っているためRyzen 9 5950Xよりも全体的に高性能です。基本的なスペックはRyzen 9 3900Xから変わっていません。キャッシュサイズは同じで、クロックが若干伸びたのみです。前世代からの変更点はL3キャッシュがようやく”共有”になったことです。第3世代RyzenまではL3共有キャッシュという名称は有名無実で、実際は3~4コアごとにしかキャッシュが存在せず、L3キャッシュに乗っているデータもキャッシュミスになるという有様でした。それがようやく6~8コアごとに共有化されたので、コンピュータ・アーキテクチャ上当然の修正がなされただけの変更です。

Ryzen 9 5900Xと第12世代Intel Core(2021年度発売)の比較

本来2021年度にはZen3+マイクロアーキテクチャを採用したWarhol世代のRyzen 6000シリーズをAMDは発売するつもりで開発していたのですが、半導体生産枠をTSMCから割り当ててもらえなかったことで開発中止となってしまいました。よって第12世代Intel Core(Alder Lake)と同時期に発売されたAMD Ryzenが存在しません。第12世代Intel Core(Alder Lake)が強すぎてある意味で敵前逃亡してしまったとも言えます。そのため第12世代Intel Coreとも比較します。

Ryzen 9 5900X vs. Core i9 12900K

Ryzen 9 5900Xは12コア24スレッドのCPUですが、Core i9 12900Kは16コア24スレッドです。コア数で見ればRyzen 9 5900Xにとって不利でありあんフェアですが、同時マルチスレッディングで実行可能なスレッド数でみれば対等でありフェアな比較になります。

このように全体的に+12%の大差でCore i9 12900KがRyzen 9 5900Xに対し勝利しています。特にマルチスレッド性能が要求されるWorkstation用途で22ポイント差でCore i9 12900Kが勝っています。そこそこRyzen 9 5900Xが健闘しているのはゲーム用途ですがそれでも11ポイント差がついてCore i9 12900Kの勝ちです。

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Ryzen 9 5900Xと第11世代Intel Core(2020年度発売)の比較

Ryzen 9 5900Xから見て最も発売日が近いIntel Coreがこの第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)プロセッサです。Ryzen 9 5900Xは12コアプロセッサですが、第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)は最大8コアであるため、基本的は8コア,6コアのIntel Coreと比較していくことになります。コア数が少ないCPUと比較する分にはRyzen 9 5900Xにとって不利にならないため問題ありません。

Ryzen 9 5900X vs. Core i9 11900K

Ryzen 9 5900Xは型番上はCore i9 11900Kと比較するのが妥当です。Ryzen 9 5900Xは12コアプロセッサであり、Core i9 11900Kは8コアプロセッサなので、カタログスペック上はRyzen 9 5900Xが有利です。第4世代Ryzen側にとって有利な条件で比較しても特に困ることはないため比較してみます。もし、このような第4世代Ryzen側にとって有利な条件下でもRyzen 9 5900Xが敗北してしまったら、第4世代Ryzenが極めて劣ることを意味するからです。

Core i9 11900Kに対し、Ryzen 9 5900Xが9%の性能差を付けられて惨敗しています。4コアもRyzen 9 5900Xの方が多く、ベースクロックもRyzen 9 5900Xの方が高いにも関わらず惨敗です。逆にCore i9 11900Kが強すぎると見ることもできるでしょう。Core i9 11900Kで採用されたCypress CoveマイクロアーキテクチャはWillow Coveマイクロアーキテクチャを元にしたものであり、そのWillow Coveマイクロアーキテクチャの前世代のSunny CoveはReservation Stationのウインドウ枠を拡大する等で命令レベル並列性の抽出を強化しています。2021年度のGolden Coveマイクロアーキテクチャではさらに命令レベル並列処理が強化されるので、このままだとAMD Ryzenはさらに大差で惨敗し続けることになります。

Ryzen 9 5900X vs. Core i9 11900

Core i9 11900Kの低クロック版に相当するCore i9 11900とRyzen 9 5900Xを比較してみます。Core i9 11900Kでは有効化されていたAdaptive BoostがCore i9 11900では無効化されているという細かな違いはありますが、結局はAdaptive Boostはクロックに関する機能なのでCore i9 11900KとCore i9 11900の差はクロックの差です。Ryzen 9 5900Xは上述の通り、第4世代Ryzenで12コアを担当している高クロックモデルのプロセッサです。他方Core i9 11900は8コアかつ低クロックのモデル。カタログスペックだけ見ればどうみてもRyzen 9 5900Xが勝つように一見思えます。

しかし実際の性能はCore i9 11900に対してRyzen 9 5900Xが4%の性能差を付けられて敗北してしまいます。コア数が+4コアも多く、クロックも高いRyzen 9 5900Xが第11世代Intel Core(Rocket Lake)の8コア&低クロックモデルに負けてしまったということです。これは「コア数が多くても性能が高いとは限らない」というコンピュータ・アーキテクチャ分野の学術的常識が妥当した実例の一つです。

さらに言えば、Core i9 11900は内蔵グラフィックスを搭載しておりグラボなしでもディスプレイ出力可能です。一方でRyzen 9 5900Xはコア数を増やすために内蔵グラフィックスを削っており、グラボを用意しない限りディスプレイ出力は不可能です。汎用コアの性能でもCore i9 11900の方が高い上に、内蔵グラフィックス搭載。合理的判断をするならばCore i9 11900の完勝です。「業界第2位の弱い側のAMDを応援したい」という感情面での判官びいきでもしない限り、Core i9 11900よりもRyzen 9 5900Xを選ぶ選択はあり得ません。

Ryzen 9 5900X vs. Core i7 11700K

第4世代RyzenプロセッサでRyzen 9 5950Xに次ぐ位置づけにあるRyzen 9 5900Xは12コアプロセッサですが、ここでは8コアのCore i7 11700Kと比較してみます。コア数が4コアも多いRyzen 9 5900Xの方が前提条件としては有利です。

比較した結果はRyzen 9 5900XがCore i7 11700Kに対して敗北してしまいます。しかも+6%もCore i7 11700Kの方がRyzen 9 5900Xよりも高性能です。コア数が多くても1コアあたりの性能が低すぎるRyzen 9 5900Xが、1コアあたりの性能が極めて高いCore i7 11700Kにトータルで負けたことになります。

Ryzen 9 5900X vs. Core i5 11600K

コア数が12コアのRyzen 9 5900Xの半分しかない6コアのCore i5 11600Kと比較してみます。「コア数が半分になれば性能も半分」という嘘を信じているAMD Ryzenユーザは性能差2倍でRyzen 9 5900Xが勝利するように予測するでしょう。

実際は6コアのCore i5 11600Kに対して、12コアのRyzen 9 5900Xが敗北する結果となっています。Core i7 11700Kとの比較と比べたら性能差は縮まっていますが、それでも4%の性能差が開いています。

コア数がどれだけ多くても、マイクロアーキテクチャが劣っていて1コアあたりの性能が低いと負けてしまうのはプロセッサアーキテクチャ分野では常識です。

Ryzen 9 5900X vs. Core i5 11500

第11世代Intel Core(Rocket Lake)の中で6コアモデルのCore i5 11500とRyzen 9 5900Xを比較します。Core i5 11500は、Core i5 11600よりも低クロックでCore i5 11400よりも高クロックという位置付けですが、vProが有効化されている点がCore i5 11500を特徴づけています。Core i5 11500よりも下位のCore i5 11400ではvProが無効化されています。つまり、Core i5 11500はvProが有効化されている第11世代Intel Coreの中では最も低クロックかつ廉価なCPUです。当然ながらIntel Trusted Execution Technologyも有効化されており情報セキュリティ上の機能を重視する法人等向けの用途なら最低でもCore i5 11500からになります。当然ながらCore i5 11500は内蔵グラフィックス搭載です。

内蔵グラフィックスもAMD版vPro相当の機能も非搭載のため、有り余るチップ面積を汎用コアに全振りでした12コアのRyzen 9 5900Xに対し、Core i5 11500がどれだけ健闘するかといった比較に一見思われがちです。

Core i5 11500が健闘するどころか、むしろRyzen 9 5900Xを打ち負かしてしまう結果です。性能差1%なのでほぼ互角の性能ですが、Ryzen 9 5900Xが負けているのは確実です。このような結果になってしまったのは、Ryzen 9 5900Xの12コアは6+6コアの構成になっており、L3キャッシュが全体で共有されていないからです。

第4世代Ryzenで採用されたZen3マイクロアーキテクチャでは、8コアごとのCCXでしかL3キャッシュが共有されていません。Ryzen 9 5900XはCCXの8コアのうち2コアを無効化し、2枚のチップ(Core Complex Die)を接続して無理やり12コアを実現しています。そのため6コアごとでしかL3キャッシュが共有されておらず、片方のCCXのL3キャッシュにデータが乗っていても、もう片方のCCXに属するコアからのLoad命令はキャッシュミスになります。そのキャッシュミス・ペナルティにより多大なクロックサイクル数もの間パイプラインがストールすることになり、1クロックサイクルあたりの実行命令数が減少します。その結果第4世代Ryzenでは1コアあたりの性能が下がり、Ryzen 9 5900Xのようにコア数を増やしたところで、1コアあたりの性能が高いCore i5 11500に対し負けてしまったわけです。

Ryzen 9 5900X vs. Core i5 11400

Core i5 11400は第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)が発売された時点において、内蔵グラフィックスを搭載しているモデルの中では最も低い(安い)グレードのCPUです。Core i5 11400Fと同じくvProは無効化されていますが内蔵グラフィックスは有効化されています。クロックはCore i5 11400Fと全く同じです。

このCore i5 11400は第11世代Intel Coreの6コアCPUの中で最もクロックが低いCPUでもあります。他方、Ryzen 9 5900Xは12コアでありかつ末尾文字(suffix)に”X”とある通り高クロックモデルです。

「6コアかつ最もクロックが低いCore i5 11400と、コア数が2倍の12コアかつクロックが高いRyzen 9 5900Xとの比較」になるため、2倍以上(+100%以上)の性能差でRyzen 9 5900Xが圧勝する結果になると、コンピュータ・アーキテクチャ分野の教育を大学大学院等で受けてない人は考えがちです。

実際は2倍(+100%)どころかたった+2%しか、Ryzen 9 5900XはCore i5 11400に対し勝てていません。第4世代Ryzenの1コアあたりの性能が低すぎて、「コア数が2倍になれば性能も2倍になる」が全く妥当しない実例の一つです。

Ryzen 9 5900X vs. Core i5 11400F

第11世代Intel Core(Rocket Lake)が発売された時点においてRocket Lakeプロセッサの中で最も低グレードなモデル、Core i5 11400Fと比較してみます。Core i5 11400Fは、同じ6コアのCore i5 11600K,11600,11500,11400,11400Fの中で最も価格が安くローエンドな位置付けです。つまり第11世代Intel Coreの中でも低性能で低価格なCPUだと言えます。この6コアのCore i5 11400Fに対して、2倍のコア数12コアを有するRyzen 9 5900Xがどれだけの性能差を付けるか比較するわけですが、ベースクロックだけみてもRyzen 9 5900Xの方が+1.1GHzも高く、コア数は2倍の12コア。「コア数が2倍になれば性能も2倍になる」という嘘理論を信じているAMD愛好家からすると、「コア数が2倍でしかもクロックが1.1GHzも高いので性能差は2倍超になる」と理論上の結果が導かれますが、(間違った)理論上はそうであったとしても実際はそうなりません。

このようにたった+2%しかRyzen 9 5900XはCore i5 11400Fに対して性能差を付けることができていません。コア数にして2倍(+100%)、ベースクロックにして1.42倍(+42%)の差があるにもかかわらず、実際の性能差は+2%に留まっているため、これは事実上Ryzen 9 5900Xが敗北しているようなものです。

Ryzen 9 5900Xと第10世代Intel Core(2020年度発売)の比較

Ryzen 9 5900Xは最も発売時期が近く同じ2020年度発売の第11世代Intel Core(Rocket Lake)と比較すべきCPUですが、それよりも1世代古く発売日が遠い第10世代Intel Core(Comet Lake)と比較してみます。

Ryzen 9 5900X vs. Core i9 10900K

10コアのCore i9 10900Kと、12コアのRyzen 9 5900Xを比較してみます。コンピュータアーキテクチャに詳しくない多くの人は12コアのRyzen 9 5900Xの方が高性能だと予想するでしょう。

しかし結果は全く逆になります。コア数が少ないCore i9 10900Kの方が全体の実効性能で勝ってしまいます。そのようになる理由は、Core i9 10900Kの方が1コアあたりの性能が高く、コア数が2コア少なくても、1コアあたりの性能が低い12コアのRyzenを上回っているからです。

これはすなわち、第4世代Ryzenで採用されたZen3マイクロアーキテクチャをもってしても、2015年にリリースされたIntelのSkylakeマイクロアーキテクチャに対し、未だにRyzenのマイクロアーキテクチャが勝てていないことを意味します。

Ryzen 9 5900Xと第9世代Intel Core(2018年度発売)の比較

ここではRyzen 9 5900Xと本来比較すべきIntel Coreよりも2世代も古い第9世代Intel Core(Coffee Lake Refresh)プロセッサと比較してみます。ここまで古いCPUに負けてしまうとなると、Intel Coreに対し第4世代Ryzen 9 5900Xが相当程度に劣っていることを意味します。

Ryzen 9 5900X vs. Core i9 9900KS

Ryzen 9 5900Xは12コアのCPUですが、8コアのCore i9 9900KSと比較してみます。Ryzen 9 5900Xは2020年度発売で、Core i9 9900KSは2019年度発売なので発売時期ではCore i9 9900KSが不利なはずです。

それでもCore i9 9900KSがRyzen 9 5900Xに対し+1%勝利してしまいます。12コアかつ発売時期が1年も後のRyzen 9 5900Xであっても、発売時期が古く8コアのCore i9 9900KSに勝てていないのが現実です。Zen3マイクロアーキテクチャを採用した第4世代Ryzenが、古い第9世代Intel Coreに負けているという事実はAMD Ryzen愛好家が嫌がり直視したくない結果です。