おすすめRyzen 5 3500Xのベンチマーク性能比較レビュー 2017年発売のIntel Core i5 8400と互角の性能

Ryzen 5 3500Xは日本国内ではマイナーな存在です。国内正規品として個人消費者向けには販売されておらず、法人向けに納入されPCとして組込まれた後に、個人消費者へPC本体ごと販売される形で流通しています。

完成品のPCを購入する人は「PCに詳しくない一般人」が多いため、そういった人は「名前も聞いたこともないAMDよりも,聞いたことのあるIntel」を選ぶため、完成品PCに組み込まれたRyzen 5 3500Xでも購入されることは滅多になく、Ryzen 5 3500Xは事実上日本では殆ど流通していないCPUです。

AMD Ryzenを購入するのはPCパーツを集めて組み立てるいわゆる「自作PCユーザー」ですが、このRyzen 5 3500Xは国内正規品として販売されていないので自作PCユーザの手にも届きにくくなっており、AMD愛好家が並行輸入品としてRyzen 5 3500Xを購入して自作PCとして組み立て使っているパターンが殆どです。

Ryzen 5 3500Xの詳細カタログスペック

型番Ryzen 5 3500X (Zen2 第3世代AMD)
コア数6コア6スレッド
基本動作周波数3.6GHz
最大動作周波数4.1GHz
全コア同時最大周波数3.9GHz
発売日2019年11月
セキュアブート非対応
AMD Pro(AMD版vPro)非対応
同時マルチスレッディング無効
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ384KB
L2キャッシュ3MB
L3キャッシュ32MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅47.68GB毎秒
コードネームMatisse
コンピュータの形態デスクトップ
グラフィクス(iGPU)非搭載
iGPU最大画面数0
iGPU最大ビデオメモリ0GB
iGPU基本周波数0Hz
iGPU最大周波数0Hz
iGPU CU数0基
iGPU単精度コア数0個
iGPU単精度性能0 FLOPS
ソケットSocket AM4
アーキテクチャZen 2
プロセスルールTSMC7nm
SIMD拡張命令Intel AVX2, SSE
SIMD演算器256bit FMA×2
SIMD倍精度演算性能16 FLOPs/cycle
AI(深層学習)拡張命令非搭載

Ryzen 5 3500Xの詳細スペックは上記の通りです。このスペック表で注目すべき点について指摘していきます。

Ryzen 5 3500XはRyzen 5 3600から最大動作クロックを0.1GHz引き下げ、同時マルチスレッディングを無効化しただけのもの

Ryzen 5 3500Xは最大動作クロックが4.1GHzであり、一つ上位のモデルであるRyzen 5 3600の最大動作クロック4.2GHzから0.1GHz引き下げられています。ベースクロックと、全コア同時最大クロックは全く同じです。

最大動作クロックを0.1GHz引き下げることによって、歩留り(半導体の良品率)を向上させ、Ryzen 5 3600よりも安く販売できるようにしたものがRyzen 5 3500Xだということになります。

さらに、同時マルチスレッディングも無効化されています。これも歩留りを向上させ、販売価格を安く抑えるための一つの手段です。

Core i5 9500では同時マルチスレッディングが無効化されていて6コア6スレッドだったからよかったものの、Core i5 10500では同時マルチスレッディングが有効化されています。下位モデルでも同時マルチスレッディングを有効化していることが売りだったAMD Ryzeの優位性が崩れてしまっており、これもRyzen 5 3500Xの魅力を薄くしています。

Ryzen 5 3500Xは日本国内で正規販売されていない

Ryzen 5 3500Xは日本国内では国内正規品として販売されていません。その詳しい理由は後述しますが、簡単に言えば「意味もなく無駄にラインナップを増やしすぎてしまうから」ということになります。

Ryzen 5 3500Xの一つ上位であるRyzen 5 3600と殆ど差がありませんし、Ryzen 5 3500Xの一つ下位であるRyzen 5 3500とは本当に微々たる差しかありません。そこでRyzen 5 3500Xを省いて、Ryzen 5 3600の下位モデルをRyzen 5 3500にしたのが日本国内でのAMDのマーケティングです。

AMD RyzenはIntel Coreシリーズを強く意識してモデルを用意しているので、Ryzen 5 3500Xに相当するCore i5 9500Kというモデルが存在しないことも理由の一つです。

またIntel Core i5シリーズではCore i5 9600K,9600,9500は「Intel vPro」「Intel TXT」というセキュリティ機能が搭載されており、Core i5 9400には「Intel vPro」「Intel TXT」が搭載されていないという住み分けができていますが、AMD Ryzenには上位から下位まで全てのモデルにおいて「Intel vPro」「Intel TXT」に相当するAMD版機能が全く存在せず、Ryzen 5 3600X,3600,3500X,3500全てにおいてセキュリティ機能が存在しないため、Ryzen 5だけで意味もなく4つもモデルが設定されてしまっています。そのためRyzen 5では数減らしとして1つのモデルを日本の正規販売から省いたことになり、それがこのRyzen 5 3500Xです。

Ryzen 5 3500Xと第8世代Intel Core(2017年発売)の比較

Ryzen 5 3500Xは2019年10月に発売されたCPUですが、このRyzen 5 3500Xを打ち負かすのは2017年に発売された第8世代Intel Coreプロセッサでも十分です。

Ryzen 5 3500X vs. Core i5 8400

2017年10月に発売された6コア6スレッドのCore i5 8400と比較してみます。同じコア数同士の比較なので、比較結果は1コアあたりの性能の高低に帰着されます。

このようにCore i5 8400がRyzen 5 3500Xに+1%勝利しています。ほぼ互角の性能です。つまり、2019年発売の第3世代Ryzenを持ってしても2017年発売のIntel Coreと互角だったということは、IntelとAMDには2年程度の技術力の差があるということです。

Ryzen 5 3500Xが日本国内で正規販売されていない理由

Ryzen 5 3500Xは日本国内で正規販売されておらず、並行輸入品として買うしかないため非常に影の薄いCPUです。並行輸入品だとサポートを受けられないため、全て自己責任で好んで自作するAMD愛好家くらいしか購入せず、仕事でPCを使うような「PCをしっかり活用している」人からは見向きされておらずほとんど活用事例がありません。なぜRyzen 5 3500Xが日本では正規販売されたなかったのか理由を列挙していきます。

Ryzen 5 3500XはRyzen 5 3600よりも低クロックなのに末尾文字”X”型番になっており、Intel Coreの末尾文字”K”の意味が深く浸透していることで誤解するユーザが多いから

AMDは販売規模(売上高,純利益)がIntelの1/10程度であり、常にIntelのマーケティング戦略を意識しながらCPUをラインナップしなければ市場で勝てません。そこでAMDはIntelのラインナップを強く意識しています。

例えばIntelが2009年から用いているCore i7, i5, i3という分類を、AMDがRyzen 7, Ryzen 5, Ryzen 3と模倣している事実も、AMDがIntelを強く意識している傍証になっています。

しかし、以前からIntel Coreには型番500Kに相当するモデルが存在しません。Intel Coreでは末尾文字(suffix)”K”モデルは高クロックを意味しているからです。

一方でAMDは低クロックでも末尾文字に”X”をつけることが多く、実際Ryzen 5 3600よりも動作クロックが低いRyzen 5 3500Xに末尾文字”X”が付いています。

AMD Ryzen 5 3500Xにおける”3500X”とは単に「Ryzen 5 3600より下」という意味だけであり、それ以上でもそれ以下でもありません。AMD Ryzenの”X”に高クロックという意味は含まれていません。

よって、Ryzen 5 3500XはRyzen 5 3600よりも低クロックにもかかわらず末尾文字”X”という非常に不明瞭な型番となっており、これがRyzen 5 3500Xを日本正規販売から外した理由です。

Ryzen 5 3500XとRyzen 5 3500どちらか片方をラインナップから外すとすれば、低クロックなのに末尾文字”X”モデルとなっているRyzen 5 3500Xに白羽の矢が立つのは当然です。

これは、2009年から長く販売されてきたIntel Coreプロセッサのおかげで、末尾文字”K”のモデルは高クロックだというコンセンサスがPC分野において醸成されており、広くPCユーザに浸透しているためです。AMD Ryzenにおいて末尾文字”X”が付いていれば当然高クロックだと普通のユーザは考えるようになってしまっているということです。

Intel Coreの型番の長い実績がこのような認識を広く浸透させてしまったため、低クロックなのに末尾文字”X”のRyzenを出すと混乱を生むということからRyzen 5 3500Xが国内正規品から外されていることになります。

Ryzen 3500Xと3500の差がL3キャッシュサイズの違いしかない

Ryzen 5 3500Xの下にRyzen 5 3500という下位モデルがあります。この両者の違いは、Ryzen 5 3500Xでは32MBのL3キャッシュで、Ryzen 5 3500では16MBのL3キャッシュという違いだけです。動作クロックは全く同じです。そうなると、Ryzen 5 3500XとRyzen 5 3500の2つを同時に日本国内正規品としてラインナップしても、あまりにも微々たる違い過ぎて何の意味もありません。

そこで、前述したように「クロックが低いのに末尾文字”X”であるRyzen 5 3500X」を削り、Ryzen 5 3600の下のモデルがRyzen 5 3500になるようにしたことになります。そうすればRyzen 5 3600とRyzen 5 3500の違いがキャッシュサイズの違いのみならず、動作クロックの違いも出てくるのでそれなりにラインナップの意味が出てきます。

Core i5 9500はvPro,Intel TXTが有効だが、Ryzenはそもそもセキュリティ機能が無くラインナップを無駄に増やすのは恥だから

Intel Coreプロセッサでは型番500以上のモデルではvProテクノロジとIntel TXT(Trusted eXecution Technology)が有効化されており、型番400以下のモデルではvProテクノロジとIntel TXTが無効化されています。

しかしRyzen 5 3500XもRyzen 5 3500もいずれもIntel vPro,Intel TXTに相当するセキュリティ機能が存在しません。それどころかRyzen 7にもRyzen 9にもセキュリティ機能が存在しません。

Intel vProテクノロジとはリモートアクセスする際のセキュリティ機能を提供するものです。そしてIntel TXTはUEFI(BIOS)やブートドライブが改竄されていないことを検知しセキュアブートをするためのTPMチップに対応させるための機能です。

AMD Ryzenではこれらのセキュリティ機能に相当するものがRyzen Proという法人向けモデルでないと搭載されておらず、そしてRyzen ProはPCショップで出回っていないため個人消費者では入手性が悪いです。一方でIntel Coreでは個人向けCPUでもしっかりセキュリティ機能が搭載されているため、Intel Coreでは型番500以上はセキュリティ機能有り、型番400以下はセキュリティ機能無しと住み分けしています。この住み分けのために、Intel Coreでは型番を増やしてラインナップを増やすことは意味がありますが、そもそもセキュリティ機能が一切搭載されていないAMD Ryzenにおいて無駄に型番を増やすのは恥でしかありません。

Ryzen 5 3500Xを正規販売するとRyzen 5が3600X,3600,3500X,3500にかけて4つのラインナップになり意味もなく無駄に増える

Intel CoreではCore i5のうち9600K,9600,9500はvProテクノロジ・Intel TXT有効であり、この中で動作クロックの違いでモデル分けをしています。一方でCore i5 9400はvProテクノロジ・Intel TXTは無効化されています。

他方、AMD Ryzen 5では3600X,3600,3500X,3500いずれもvProテクノロジ・Intel TXTに相当するAMD版のセキュリティ機能が搭載されておらず、一体何のためにRyzen 5を4つにも分けているのか意味が見いだせないことになります。