ファンレスも可能な無音or静音CPUクーラーまとめ

ファンレス無音と静音PCを構築する際にサーベイした結果をまとめておきます。

2021年にNoctuaから発売されたTDP180W対応のファンレスCPUクーラー「NH-P1」が最高峰

Noctua初のファンレスCPUクーラーNH-P1は、2019年にNoctuaからプロトタイプが発表され、2021年6月に発売されました。発表から発売まで時間がかかり期限を守れないのは従来からのNoctuaのとおりです。

このNH-P1は開放型ケースで室温に近い温度が維持できているのなら、完全ファンレス(ケースファンすら不要)を実現するものです。しかし全てのCPUで完全ファンレスを実現できるわけではありません。

ケースファンを非常に低速で回転させれば密閉型ケースであってもTDP180Wに対応します。完全ファンレスは狙わずケースファンは搭載した方がいいです。

また、近年の高クロックモデル≒末尾文字(suffix)が”K”or”X”のモデルはこのNH-P1かつケースファン付きでも冷却しきれません。高クロックCPUの場合は直接ヒートシンクにファンを付ける必要があります。

2019年に発売されたNoctuaの第2世代サーマルグリスNT-H2が付属します。

ヒートシンクは比較的「疎」 フィンは厚く1.5mm

ヒートシンクの枚数が非常に少なく表面積がかなり小さいように見えますが実際にその通りです。たとえファンレスCPUクーラーであってもフィンの間隔は通常もっと狭いものです。フィンとフィンの間の距離が非常に大きく取られているのが特徴です。

またフィンの厚みが1.5mmあるのも魅力的です。たとえヒートシンクに直接ファンを取り付けるとしてもフィンの厚さがあるなら騒音を小さくできます。

クーラー高は158mm

クーラー高は158mmなのでとても標準的です。近年は大型CPUクーラーでも160mmを下回るように設計されているため、このファンレスCPUグーラーも例に洩れず160mm未満となっています。

NoctuaのCPUクーラー世代としては古いヒートパイプ「6本」が弱点

ヒートパイプは意外と少なくて6本です。これは少し残念な部分です。最近のNoctua製CPUクーラーは世代が新しくなり、ヒートパイプ7本のものが登場してきています。ヒートパイプをたった1本増やすだけでも冷却効果は非常に大きいです。伝熱量は熱流束(w/㎥)×断面積で求められるため、ヒートパイプを1本増やすだけで+16%もヒートシンクへ運ぶ熱量(伝熱量)が上昇します。

NH-P1の最大のデメリットはクリアランスの悪さ Le Grand Machoと同じくMini ITXには向かない

このCPUクーラーNH-P1はMini ITXマザーボードに向きません。もし取り付ける場合は、比較的大型のPCケース(Fractal Design Define Nano S等)で180度向きを変えて取り付ける必要があります。これはLe Grand Machoと同じ欠点です。Le Grand MachoもMini ITXマザーボードに取り付けるには向きを反転させる必要がありました。

Mini ITXを前提とするなら、ファンレスではないですがNH-D15やNH-D15Sを使ってファンを超低速で回すのがおすすめです。

Noctua NH-P1, パッシブ ファンレス CPUクーラー
Noctua
¥25,981(2024/02/13 11:08時点)

おすすめの無音CPUクーラーはNoctuaかThermalright

現時点では2016年1月発売のLe Grand Machoが最もおすすめです。

・Thermalright Le Grand Macho

最近は品薄になってきており、以下の並行輸入品でも高値になってしまっています。

Le Grand Macho with fan TY-147B [並行輸入品]
Thermalright
¥45,843(2024/01/28 18:46時点)

このLe Grand Machoはファンなし(without fan)でTDP95WまでのCPUを冷やすことができます。しかしケースファンを動作させることが必要です。そういった意味ではセミパッシブです。TDP65WのCPUであれば、密閉型ケースではなく開放型ケースの使用によってケースファンも不要な完全ファンレス構成にできます。

 

さらに2017年2月にLe Grand Macho RTという14cm純正ファン付きのモデルが発売されました

・Thermalright Le Grand Macho RT

CPUクーラー本体の寸法は「Le Grand Macho」と全く同じです。ファンが追加されたかどうかの違いです。ファンクリップは1組しか付属していないためデュアルファン構成にはできません。インストールに必要となる専用の長いドライバーも付属しています。

2017年1月出荷以降はAMD Ryzenで採用されたSocket AM4対応部品が入っているようです。

ファンを付けるとTDP300Wまで対応できるので、Le Grand Macho RTはTDP300WでもOKです。ファンをつけなければ2016年1月発売のLe Grand Machoと同じようにファンレスでTDP95Wに対応できます。

ファン無しの初代Le Grand Machoは品薄なため、常識的な価格の範囲内で手に入るLe Grand Macho RTがおすすめです。ファンが付属してる以外の違いはないため同じヒートシンクが手に入ります。またファン自体のできは良くないので、Noctua製のNF-A15 PWMを別途購入し、Le Grand Macho RTに付属しているファンクリップだけ流用することをおすすめします。

Thermalright HR-22

これはLe Grand Machoの前身です。今このHR-22を買う必要はありません。Le Grand Machoの方が干渉しにくくできてますし、HR-22は品薄のため高値になりすぎています。

HR-22は発売してからすでに時間が経過しているため、これを用いてケースに組み込んでいる人が多数います。つまり事例がネット上に多く掲載されています。寸法はだいたいLe Grand Machoと同じなので、HR-22が入るケースやマザーボードならLe Grand Machoもいけます。そういった意味でこのHR-22は今でも情報としては価値があります。

SST-HE02

またSilverStoneのHE02BもLe Grand Machoの次くらいに優秀です。

このSilverStoneのCPUクーラーだと6700Kは難しいかもしれません。無印のCore i7 7700ならいけるでしょう。

Le Grand Machoは2016年1月発売と比較的最近のものであり、検証結果を見ても随分年数が立っているNoFanやSilverStoneなどの競合製品を意識しているのでLeGrandMachoが性能でいえば最も上を行っていると言えます。

あまりおすすめしないNoFan,ZALMANシリーズ

無駄に大きいだけでLeGrandMachoより冷却能力の小さいNoFan CR-95Cはあまりおすすめしません。

しかもPCI Expressスロットに干渉することが前提であり、せっかくスロットがあるのに刺せなくなったりします。またマザーボードによってはメモリやIO部分にぶつかったりするようです。

一回り小さいNoFanのファンレスCPUクーラーCR-80EHなら干渉はおさえられそうですが、冷やせるのはCore i3レベルのCPUまででありCore i7 6700Kは難しいです。

同じく取り付け部分に問題のあるZALMANのファンレスCPUクーラーもおすすめしません。

またNoFanもZALMANも信用の無い海外メーカー品というのも不安要素です。

オリオスペックの無音PCはNoFan CR095Cクーラーを使っていますが、ケースのクーラー高が158mmとなっているのでギリギリだと思います。もしこのNoFanクーラーを使うとしてもThermaltake CoreV21のケースのほうをおすすめします。このケースは18cmクーラーも取り付けできるので余裕があります。

ファンがついててもいい場合(無音ではなく静音)

どちらかというと私が現在推奨している形態であり、私自身も採用している方法です。

ファンというのは1秒間に10回転である600RPM(回転数/分)であっても十分に冷えます。回転数を2倍の1200RPMにしたら60℃の温度が30℃になるかといったらそうではありません。数℃下がる程度なのです。

しかし一方でまったくファンを回さないと90℃まで普通に到達してしまいます。

つまり超低速でもいいから一応ファンを回しておくだけでも十分に冷却効果があるという事実があります。それならファンレスにせずに1秒間に10回転というほぼ無音レベルの超低速でファンを回しておいたほうがCPUの性能が上がります。温度が高くなるとCPUはどうしてもパフォーマンスを下げざるを得ないからです。

クーラー高16cmの大型静音CPUクーラー 注意:PCケースのクーラー高制限を確認すること

まずは大型CPUクーラーとしては最も支持されていると思われる虎徹です。

虎徹 SCKTT-1000

12cmファンが付属しており、それほど奥行きのないヒートシンクのためマザーボードで干渉が起きにくくなっています。ThermalrightのCPUクーラーは奥に突き出すような奥行きのあるタイプが多いのとは対照的です。

注意すべきことはCPUクーラーを取り付けると高さ16cmにもなるため、ミドルタワーやフルタワーケースであっても入らないことがあります。PCケースの横幅が21cmあるから大丈夫と油断しないほうがいいです。

しっかりそのケースのクーラー高制限を確認しておく必要があります。

虎徹は発売からかなり時間が経過してきており、”ポスト虎徹”として私がおすすめするのは2016年11月に発売されたThermalrightのTRUE Spirit 140 Direct

これはすでに購入済みですので、別記事でも詳しくレビューを書きたいと思っています。

TRUE Spirit 140 Direct

虎徹と同じ16cm級のクーラーですが、虎徹と異なるのはまず搭載ファンの大きさです。虎徹は12cmファンですが、このTRUE Spirit 140 Directは14cmファンを搭載しています。

また2017年1月出荷以降のこの製品にはAMD Ryzen7のSocket AM4に対応した部品が付属しているようです。私が購入したのは2月下旬なので当然入っていました。

同じ回転数ならファンが大きいほど風量が増えるため冷却効果も高くなります。TRUE Spirit 140 DirectはTDP200Wに対応していると公式発表されています。虎徹については公式数値はありませんが、TDP200Wはなく高々150~180Wだと思われます。

さらに虎徹は最大で28dbものノイズがありますが、TRUE Spirit 140 Directは最大で21dbです。ファンの最大回転数は両製品ともに1300RPM~1400RPMにもかかわらず、なぜここまで最大騒音に差がつくのかというと原因はヒートシンクの厚さの違いにあります。

虎徹のヒートシンクの厚さは58mmあります。一方でTRUE Spirit 140 Directは42mmであり薄くなっています。

CPUクーラーから発生する音というのは回転するファンそのものより、風がヒートシンクを切る音のほうが支配的です。ヒートシンクが風を切る音をいかに抑えるかが静音化で重要です。

基本的には薄いほうがこの点での静音化は有利です。そのためTRUE Spirit 140 Directは虎徹より静音化されています。ヒートシンクを薄くすることによるデメリットは冷却能力が落ちることなのですが、その点でもTRUE Spirit 140 Directは虎徹より冷却能力が高くなっています。それは14cmファンを搭載したことによって静音と冷却性を両立しているからです。

TRUE Spirit 140 Directの欠点としては虎徹より価格が高いことです。私がこの記事を書いてる時点では虎徹より60%ほど割高です。

虎徹は2013年10月発売ですが、TRUE Spirit 140 Directは2016年11月発売でありCPUと接触する部分がヒートパイプダイレクトタッチになっているところも最近の潮流を反映しています。

Le GRAND MACHO RT

予算があってかつマザーボードのCPUからIOパネルまでの距離に比較的余裕があるのならThermalrightのLeGrandMacho+14cmファンも視野に入ります。MicroATXやATXなら問題ありませんが、Mini-ITXだと180度逆方向に向けて取り付ける必要がでてくることもあります。

2017年にはLe Grand Machoに純正14cmファンが付属しているモデルが公式に発売されました。Le Grand Macho RTというモデルです。ファンをわざわざ別途買うくらいなら、このLe Grand Macho RTを購入したほうがいいでしょう。

また2017年1月出荷以降のものにはAMD Ryzen7で採用されたSocket AM4に対応するための部品が付属しています。私が購入したものは2月下旬に買ったものなので入っていました。

このCPUクーラーは14~20dBAです。先程のTRUE Spirit 140 Directよりも1db程度静かになっています。ヒートシンクが厚くなっているのにも関わらず静音化されている理由は、ヒートシンク中央に空いているエアーダクトです。これによってヒートシンクと風の摩擦音を軽減しています。

このLe Grand Machoの取り付け方を知っている人ならわかると思いますが、Le Grand MachoはCPUソケットに固定化する際にこのエアーダクトに付属の長い専用ドライバーを挿し込んでネジ止めします。つまりこのエアーダクトは最初、ネジ止めするために仕方なく開けた穴だったと思われます。それが思いの外、風を切る音を軽減させ静音化に効果があることがわかったという流れだと私はそう勝手に解釈しています。

Le GRAND MACHO + 別途ファン購入

2016年発売のLeGrandMachoは「ファン」は別売りなので14cmファンを購入する必要があります。一応Thermalrightの純正が推奨されていますが、14cmのものであったら他社のものでも取り付けられると思われます。

Le Grand MachoはファンレスでもTDP95Wに対応しているのでこれをつければcore i7 7700Kも6700Kもファンレスで冷やせます。Thermalright日本代理店の公式サイトでも6700Kで実際に組んだ例を紹介しています。

さらに14cmファンをつければTDP300Wまで対応するのでXeonE5でも余裕で静かに冷やすことができます。

多くの人が使っている虎徹でさえ12cmファンですから、それより大型の14cmファンならさらに静かにできます。

クーラー高15cmの静音CPUクーラー

クーラー高15cmと16cmの差は大きいです。なぜなら15cmまでの場合どうしても取り付けるファンが12cmファンになってしまうからです。同じ風量を維持しようとするとどうしても音が大きくなってしまいます。

このクーラー高だと2016年6月に発売されたMacho 120 SBMがおすすめです。

Macho 120 SBM

最低ノイズレベル300RPMで21dbであり、最大ノイズレベルが1300RPMで33dbです。このように搭載ファンの直径が12cmのように2cm小さくなるだけで随分ノイズが大きくなります。

PCケースを選ぶ段階から決めるとしたら、16cmのCPUクーラーが取り付けられる条件でケース選びを開始するのも一つの手です。

クーラー高12cm~14cmの静音CPUクーラー

ここまで高さが低いクーラーになってくると、取り付けるファンの回転数は最低でも600RPMからになってきます。最低300RPMの製品はあまりありません。

冷却性能が高くてクーラー高16cmファンより低いタイプのものでベストなのはThermalrightのMacho 90です。

Macho 90

Macho 90の90はファンが9cmという意味です。Le Grand Machoより小型のものと言えます。冷却性能は高いのですがヒートシンクの面積が大きく場所を取ります。Mini-ITXを使う場合は注意です。私はMicroATXを使いましたが、以下のM9iファンでさえ取り付けがギリギリだったので、MachoシリーズだとIOパネルまでの距離の余裕を見ておいたほうがいいです。

またMacho 90より安いCPUクーラーとしては私も今回使ったCRYORIG M9iもおすすめです。

CRYORIG M9i

ミドルケースのクーラー高の制約から私はこの12cm台のクーラーにしました。ファンは9cmです。

16cmのCPUクーラーが入らない場合は、虎徹より若干高めですがM9iが無難な選択と言えます。音についてはUEFIのCPUクーラー回転数の初期設定であるStandardにしていると高負荷時に音が聞こえます。回転数が上がってるなとか下がってるなというのがリアルにわかります。

ですがUEFIで一段階下のSilentにしておくと高負荷時もファンの回転音が聞こえないレベルに静かです。私の場合は電源ファンの回転音しかしないのでCPUファンは無音同然です。

クーラー高7cm台の静音CPUクーラー

7cm台になるとCPUクーラーはサイドフロー型ではなくてトップフロー型になります。

AXP-200 Muscle

Thermalrightのこのクーラーがベストでしょう。

73mmというロープロファイルタイプなのに14cmの大型ファンを搭載しているので回転数を落とせば静音にできます。

ただし、このクーラーも含めてトップフロー型の薄型CPUクーラーというのはファンの回転数が最低でも600RPM(回転毎分)あります。つまり1秒間に10回転が最低回転数です。

サイドフロー型だと最低300RPMのファンを搭載したものが多く、回転数が最低600RPMもあるトップフロー型はどうしてもノイズが大きくなってしまいます。14cmファンを搭載したこのモデルでも600RPMも必要なのですから、薄型のトップフロー型CPUクーラーを選ぶ場合は12cmファンのものではなく14cmのものを選ぶべきです。

メモリ側とIO側のスペースがぎりぎりなので、microATXなら大丈夫でしょうが、Mini-ITXのようにCPUの位置がまちまちなマザーボードに取り付ける場合は干渉しないか注意が必要です。

クーラー高6cm台のロープロファイルタイプ

私は実際にこの高さのクーラーも購入しました。Lian Liの岡持ちタイプ超小型ケースであるPC-TU100は6.5cm程度のクーラーでないと厳しいので、6cm台を購入しました。

Thermalright AXP-100R H

2017年2月発売。ファンを含めてクーラー高が6.5cmしかないロープロファイルタイプのCPUクーラーです。付属しているファンは10.5cmですが、付属の金具を使えば12cm、さらに14cmのファンも取り付けることができます。私は別途12cmの薄型ファンを買ったのでそれを取り付ける予定です。

下記のAXP-100H Muscleとの違いは、AXP-100H Muscleの場合は12cmや14cmの大きいファンを取り付けることができません。

また下記モデルはソケット2011や2011-3に対応していませんが、こちらのAXP-100R Hは対応しています。

また価格はこちらのAXP-100R Hの方が高いです。良いものを選ぶならこちらのほうがおすすめです。

Thermalright AXP-100H Muscle

2017年2月発売。上記モデルとほとんどかわりませんが、こちらは付属ファンより大きいファンは搭載できません。またXeonプロセッサやBroadwell-Eシリーズプロセッサで採用される2011や2011-3ソケットに対応していません。

その分だけこちらの方が価格が安いです。