16cm以上の大型CPUクーラーが入るおすすめMini ITX小型ケースまとめ

超小型PCとなるとベアボーンという選択肢もありますが、ベアボーンに採用されているCPUはモバイル向けだったりと物足りない点が多いです。超小型PCを組む上でベアボーンのデメリットを列挙してみます。

  1. 電源とマザボとCPUがセットになっておりパーツが選べない
  2. ケースと一体化した規格になっており再利用性に乏しい
  3. パーツの使い回しができないため壊れたときに代替品が手に入らない
  4. CPUもGPUもモバイル仕様のため性能が劣る
  5. ファンの音がとても大きく静音とはいえない

マザーボードも電源もCPUもオールインワンでベアボーンに搭載されているため、どれか一つだけの交換といったことができません。1つ壊れたらベアボーンごと全て交換です。メモリとSSDくらいしか再利用できません。

さらにベアボーンはファンサイズが小さく、冷却するためには高速回転させる必要があります。よってベアボーンのファンはとてもうるさいです。このファンが交換できない点もデメリットです。同じくCPUクーラーもベアボーンに付属してくるものを使うしかありません。

CPUやGPUはモバイル向けのものが多くデスクトップ向けより性能が劣ります。IntelのゲーミングベアボーンNUC 6i7の評価を当サイトに掲載していますが、米国のレビューでも性能が大して高くないと書かれています。

 

そこで広く普及している一般的なPCパーツを用いてデスクトップパソコンとして超小型PCを組むことを重視しています。

要件は以下の通りです。

  1. ATX、SFX、TFX電源を格納可能 ACアダプタを使う場合はHDPLEX社の400~800W対応必須
  2. 背面ファンが12cm以上であること できれば14cm以上
  3. CPUクーラー高がNH-D15SやLe Grand Machoのような16cm級でも格納できること
  4. Quadro M6000(26.7cm)のような10.5インチタイプのグラフィックボードも入ること

電源はTFXでも場合によっては許容できますがファンが小さいためうるさくなりがちです。やはりできればSFX以上です。たとえACアダプタを使うとしてもHDPLEX社の800Wのタイプを格納できるものを選びたいところです。

また背面ファンは最低でも12cmです。92mmだと風量が劣ります。

このような条件を満たすためにまず必要なのはケース選びです。これでほとんど決まってしまいます。

Fractal Design Define Nano S

Mini-ITX、クーラー高162mm、グラボ315mm(25mm厚フロントファンを設置した場合)、電源160mm、5インチベイ無し、リアファン12cm、4.6kg、26.796L

2016年に発売されたFractal Design Define SのMini-ITX版です。

この電源は電源の全長160mmまでとなっていますがそれを超過しても問題ありません。このケースは電源コードを裏にまわしてアクリル製Windowから見えないようにしています。コードを裏に回すためのホールが電源長160mmにあわせてあるため、長過ぎる電源を使うと裏までコードを回すのが難しくなるというだけです。

クーラー高16cmのMini ITXケースの中で最も無難です。非常に多くの人がこのケースを使って組んでおり、存在する問題点のほとんどが事前に明らかになっていて選ぶ上で失敗がないです。

クーラー高は162mmあります。NH-D15Sは当然のことNH-D15も可能です。

このケースの欠点はケース左側から見たときの、CPUクーラーとGPUで挟まれる部分にデッドスペースがあることです。

この写真の右上がデッドスペースになります。この部分に電源を設置してPCケースをコンパクトにするアプローチを採っているのが、Raijintek Metis Plus, Lazer3D XTD, Sliger Cerberus(microATXケース)です。

デッドスペースがあるかわりに電源を最下部に設置しているため電源長に自由度があります。

リアファンが12cmまでなのも残念です。その割に体積が26リットルもあります。

利点としては3.5インチや2.5インチのシャドウベイが充実しているため大量にストレージを格納できることです。3.5インチドライブは電源の横、写真でいう右下部分に設置することになります。

逆にストレージを格納しないならばデッドスペースが多すぎます。3.5インチベイを取り外してボトムファンを搭載することもできます。

このケースはATX電源を使うと2スロット占有までのGPUしか搭載できません。しかも空冷式のGPUにしてしまうと電源とGPUの距離が近すぎて、電源とGPU双方が熱を持ってしまいます。そのためCorsair製の750WSFX電源を使用しつつSilverStoneのブラケットで下方向にオフセットして2cm程度空間を追加することをおすすめします。

RAIJINTEK METIS PLUS

人気のものとしてRAIJINTEK METISがあります。静音性は微妙ですが収容力は優秀なケースです。全ての辺の長さが30cm未満に収まっているにもかかわらず、10.5インチのGPU(しかも最大2.5スロット占有)が使用でき、16cm超のクーラー高をもつNH-D15も搭載できてしまいます。リアファンは12cmです。

Metis PlusでATX電源を使うと全長190mm程度のGPUしか搭載できません。SFX電源を使用した上で前面のUSBコネクタを取り外すと268mm長GPUも搭載できます。

さらにSFX電源を単純に設置するだけでなく、SilverStone製のブラケットを使用してマザーボードと反対側にオフセットすることをおすすめします。

オフセットするとLe Grand Macho RTのような巨大な空冷式CPUクーラーも搭載できます。そのかわりLe Grad Machoは180度逆向きに設置しなければなりません。そのためファンは吹付け方向にはできません。

NH-D15なら通常通り設置できます。しかもNH-D15やNH-D15Sならリアファンを含めて3連ファン構成にできます。ただし、一番電源側のCPUクーラーファンが電源と近すぎると、たとえファンの吸気側だとしても電源が熱をもってしまうため、やはりSFX電源+SilverStoneのブラケットでCPUクーラーと反対側に2cmオフセットすべきです。

このMetis PlusはGPU全長268mm対応なので、MSI製の簡易水冷一体型グラフィックボードSeaHawkシリーズを使ってGPUを簡易水冷化できます。120mmラジエータをリアファン部分に取り付け、完全なメモリクリアランスを持つCPUクーラーファンと120mmラジエータファンを1基のファンで兼務させます。メモリ上部と干渉するようなCPUクーラーだと120mmラジエータと同時設置できません。例えばNH-D15+MSI SeaHawk120mmラジエータの組合せは無理です。Le Grand Machoを180度逆向きに設置すれば120mmラジエータ+ファンを搭載するスペースができるため、Le Grand Macho+MSI SeaHawkの組合せが、Metis Plusの空間制約の条件下では最も冷却性能が高いです。

Fractal Design Core 500

Mini-ITX、クーラー高17cm、グラボ31cm、電源17cm、5インチベイ有り、リアファン14cm、4.4kg、20.235L

2015年10月発売のものです。

このケースは収納率が極めて高いです。小型重視の人はこれがベストだと思います。

電源ユニットをケース前面に配置し、その上に5インチベイがくるようにしてスペースを有効活用しています。ケース後部はマザーボードとCPUクーラー専用のスペースです。このケースはクーラー高17cmまで対応するので虎徹やThermalrightのTRUE Spirit 140 Directも搭載できます。

電源17cmもOK。リアファンが14cmなのも合格です。グラボも31cm対応です。

ここまで全部入りなので体積は30リットルとずいぶんスリムにできています。

そして2.5インチドライブを格納するスペースがケース向かって右手にあります。側面に固定するタイプです。ここにSSDを2枚設置できるので小型PCとしては十分です。

Fractal Design Node 304

Mini-ITX、クーラー高16.5cm、グラボ31cm、電源16cm、5インチベイ無し、リアファン14cm、4.9kg、19.635L

競合商品として同社から2012年に発売されたNode 304があります。

このケースはCore 500と外寸はほぼ同じです。にもかかわらずこちらのケースには5インチベイがありません。

その理由はこの古い方のケースは電源ユニットが背面設置だからです。背面に電源ユニットを設置しつつクーラー高16.5cmを確保しなければならないため、5インチベイを設置するスペースがないのです。

CPUクーラー高もCore 500より5mm低いです。しかもその割に重量は500gも重くなっています。

また電源ユニットはATXサイズに対応していますが、Node 304の方は電源スペースが16cmとシビアです。ものによっては設置できません。

Core 500は電源ユニットの奥行き17cmでもOKなので余裕があります。

ACアダプタを使って組む予定の人はNode 304の方がいいでしょう。ACアダプタタイプの電源をケース前面に設置するのは面倒だからです。

2012年発売のNode 304のほうがCore 500より価格が高くなっているので、今となっては安い上に収納率も高いCore 500の方がいいでしょう。上記数値を比較してみるとわかりますが、やはりCore 500の方が優秀です。

【Abee smart ES05】

2016年11月発売のMini-ITXケースです。このケースはSFX電源しか搭載できないため解説の優先度が低いので後日にします。

【Abee Smart SME-ES01】

Mini-ITX、クーラー高19cm、グラボ26cm、電源26cm、5インチベイ有り、リアファン12cm、7.9kg、26.934L

このSME-ES01は2015年11月発売です。

クーラー高と電源長については申し分ありません。

ただグラボの長さが26cm制限なのは痛いです。リアファン12cmは許すにしても、全体容量が26リットルもあるのにグラボの長さ制限だけがネックです。

Abee公式の解説ページを見てもらえるとわかりますが、MiniITXにMacho Rev.Bを取り付けた様子の写真があります。Macho Rev.BはLe Grand Machoの前身であり、奥行きが2cmほど小さいですがMacho Rev.Bよりも干渉しにくいようになったのがLe Grand Machoなので、おそらくLe Grand Machoも付くでしょう。

Qbee03 スノーホワイト

また5インチドライブベイが不要で、内蔵ドライブベイもほとんど必要なく、2.5インチSSDを数個取り付ける程度だったらこれが最もコンパクトです。しかもCPUクーラー高18cmまで対応しているので虎徹も余裕で取り付けられます。

欠点は背面ファンが12cmであることです。Core 500の14cmに比べると小さいです。

利点としてはCore 500と同様に水平にマザーボードを取り付けられるのでCPUやマザーボードに無理な負担がかからないこと。マザーボードを横にすると、どうしても大型CPUクーラーではモーメントが働いてマザーボードやCPUに重量の負担がかかります。その点Core 500やこのQbee03のように水平設置できるタイプのケースはメリットです。

ケースの体積はQbee03の方がCore 500より1割ほど小さいです。5インチベイが付いていない分だけ小さいと言えますが、5インチベイが不要ならQbee03が最もコンパクトだと言えます。

Thermaltake Core V1

ThermaltakeのCore V1はクーラー高14cmまでですがトップパネルを外せば搭載できるということで16cm級クーラーを使っている人がいるようです。

これは電源部分とマザーボード部分で2階建て構造になっています。よって電源部分の横のスペースが大量に余ります。ここがデッドスペースです。

収納量の割にケースがでかく、ケースの大きさの割にあまり収納できません。

他のMini-ITXケースに比べて価格が安いのがメリットですが、収納率やクーラー高を考慮するとあまり良いものだとは言いがたいです。