サムスンは他社にNANDを供給するよりも自社ブランドのSSD製造にこだわっているメーカーです。SK hynixよりは当然上ですが、東芝・Sandisk(Western Digital)連合とIntel・Micron連合に比べたら”下”という位置づけです。
コントローラについても自社製にこだわりかなり初期から内製化しているのがサムスンの特徴で、MGX,MEX,MHXといった自社開発のコントローラを採用しています。CFDのようにモデルごとに採用NANDもコントローラもピンキリな玉石混交のSSDラインナップとは違って、サムスン製は自社のコントローラと自社のNANDしか使っていないためモデルごとの差異が小さいことがメリット。
750 EVOシリーズ(2015)
850 EVO(2014年発売)の32層TLC NANDを微細化した16nmプロセスの32層3D TLC NANDを採用。32層は2014年発売の850 EVOシリーズと変わりないが、16nmに微細化したため総書込みバイト数(TBW)が850 EVOよりむしろ悪化。発売日はこちらの750 EVOが後ですが先行モデルより性能が低くなっていることに注意。
850 EVOから変わっていないのはシーケンシャルリード速度540MB毎秒とシーケンシャルライト速度520MB毎秒。
ランダムリード・ライト性能に関しては500GBモデルは750 EVOで悪化していますが、他の容量では850 EVOと同じ。
大きく違うのは総書込みバイト数(TBW)で、120GB~500GB全てのモデルにおいて2014年発売の850 EVOから悪化しています。
500GB:サムスン 750 EVO MZ-750500B/IT
2016年7月発売のSSD。16nmプロセスのサムスン製 32層3D TLC V-NAND採用。2014年発売の850 EVOの廉価版という位置づけです。
4Kランダム読込速度は97K IOPSで、850 EVOの98K IOPSから悪化。
4Kランダム書込速度は88K IOPSで、850 EVOの90K IOPSから悪化しています。
またDRAMキャッシュが削減されており、850 EVOでは512MBあったDRAMキャッシュが256MBまで削減されています。採用コントローラはMGXで850 EVOと同じ。
総書き込みバイト数も悪化しており100TB。850 EVOの150TBと比較し30%超の減少です。
250GB:サムスン 750 EVO MZ-750250B/IT
2015年12発売。2014年発売の850シリーズの廉価版750シリーズの250GBモデル。
コントローラは500GBモデルと同じMGXなのですが、500GBモデルのMGXは3コアのコントローラである一方でこの250GBモデルのMGXコントローラはDual Core MGXという2コアのタイプです。つまりコストを削っています。普通MGXは3コアです。
廉価モデルとはいえDRAMキャッシュを搭載しているのがサムスンらしいところ。しかしDRAMキャッシュは850 EVOの250GBモデルでは512MBもあったのに対し、750 EVOでは256MBになり半減されました。
シーケンシャルリード・ライト速度や、4Kランダムリード・ライト速度は850 EVOから変化ないのでそこは評価できます。ランダムリードは97K IOPS、ランダムリードは88K IOPSで850 EVOと同じです。
悪化してるのは総書込みバイト数です。750 EVOのTBWは70TBであり、850 EVOの75TBから悪化しています。
120GB:サムスン 750 EVO MZ-750120B/IT
2015年11月発売のSSDです。16nmプロセスのサムスン製32層3D TLC V-NANDを採用。
850 EVOの120GBモデルの廉価版という位置づけです。
コントローラが2コアタイプのMGXとなっており、3コアタイプのMGXコントローラを搭載していた850 EVOから後退しています。DRAMキャッシュは256MBで850 EVOと同じです。
4Kランダム読込速度は94K IOPSで850 EVOと同じで、ランダム書込速度は88K IOPSでこれも850 EVOと同じ。つまりリードライト性能は850 EVOから悪化していません。
悪化しているのは耐久性です。総書込みバイト数(TBW)が850 EVOでは75TBあったのが750 EVOの120GBモデルでは35TBとなり大幅に悪化しています。
850 PROシリーズ(2014)
2TB:サムスン 850 PRO MZ-7KE2T0B/IT
サムスンのPROシリーズはEVOシリーズよりも高速です。その分価格が高いです。
1TB:サムスン 850 PRO MZ-7KE1T0B/IT
2014年発売。850 PROシリーズです。2018年2月に発売された860 PROの前身モデルです。
2018年の860 PROよりも、こちらの850 PROの方がシーケンシャル読込・書込速度ともに10MB毎秒ずつ遅いです。SATA接続でMLCタイプという点は同じです。今買うとしたら、この850 PROの価格でSandisk 3D Ultraの2TBSSDが買えてしまいます。しかも読み書き速度も850 PROより10MB毎秒ずつ高速です。
512GB:サムスン 850 PRO MZ-7KE512B/IT
2014年発売です。下記850 EVOのMLC版です。そして2018年2月に発売された860 PROの前身製品でもあります。今買うなら860 PROの方がいいでしょうし、850 PROと同じ価格で、この製品よりも読み書き速度が高速なSandiskの3D Ultraシリーズ1TBが買えてしまいます。
256GB:サムスン 850 PRO MZ-7KE256B/IT
2014年発売。850 EVOはTLCですが、こちらの850 PROはMLCです。2018年2月に860 PROシリーズが発売されましたが、この850 PROはそれの前身モデルです。さすがに今となっては古い上に価格も高いので、価格が安く大容量な最近発売されたSSDを購入した方がいいでしょう。
850 EVOシリーズ(2014~2016)
1TB以下の小容量モデルは2014年。2TBモデルは2015年。4TBのモデルは2016年に登場しました。
共通点は1ダイあたり128Gbitの32層3D TLC V-NANDを使用していることです。
コントローラは500GB以下はMGX、1TBはMEXコントローラ、2TBと4TBはMHXコントローラです。当然すべてDRAMキャッシュバッファ対応のコントローラです。
シーケンシャル(逐次)読込速度はどの容量でも540MB毎秒で共通。シーケンシャル書込速度も520MB毎秒で全容量共通。
4TB:サムスン 850 EVO MZ-75E4T0B/IT
2016年12月発売のSSD。全メーカー含めて個人向けでは最も早く登場した4TBのSSD。
使用しているNANDは2014年発売の850 EVOシリーズと同じ1ダイあたり128Gbitの32層TLC NANDなので中身は古いSSDです。コントローラはMHXを使用しており2015年発売の2TBモデルと同じです。TBWは300TB。DRAMキャッシュは4GB。4Kランダム読込速度は98K IOPS、4Kランダム書込速度は90K IOPS。
サムスンは日本市場では足元をみて非常に高値で展開しています。米国Amazon.comでドル建てで購入すると、クレジットカードの為替手数料を考慮してもはるかに安くなります。
日本サムスンは相当マージンを載せて日本で展開しているのでそこは注意です。ただし、個人輸入すると日本国内ではノンサポートになりますので、日本国内正規品にしたいのなら高い国内品を買うしかありません。私はサムスン以外を買うという選択肢をおすすめしています。既に4TBのSSDはMicronやKingston等他社からも出ているのでそちらがおすすめです。
2TB:サムスン 850 EVO MZ-75E2T0B/IT 2TBモデル
2015年発売の2TBSSD。中身は2014年発売の850 EVOと同じ1ダイ128Gbit32層TLC NANDです。コントローラはMHXで2016年発売の4TB 850 EVOモデルと同じ。TBWは300TB。DRAMキャッシュは2GB。4Kランダム読込速度は98K IOPS、4Kランダム書込速度は90K IOPS。
1TB:サムスン 850 EVO MZ-75E1T0B/IT
2014年発売の1TBSSD。850 EVOシリーズは2014年に発売されましたがその当初から存在した中では最大容量だったのがこの1TBモデルです。他の2TBや4TBは翌年、翌々年に登場しました。
使用しているのは128Gbitのダイなので、1TBを実現するためには多くのチャネル数とCE数が必要でありコントローラが500GB以下モデルとは異なります。1TBモデルではより上位のコントローラのMEXが採用されています。TBWは150TBで500GBモデルと同じです。DRAMキャッシュは1GB。4Kランダム読込速度は98K IOPS、4Kランダム書込速度は90K IOPS。
500GB:サムスン 850 EVO MZ-75E500B/IT
2014年発売。1TBモデルと違うのはコントローラが下位のMGXであること。TBWは150TBで同じ。DRAMキャッシュは512MB搭載で250GBモデルと同じ。4Kランダム読込速度は98K IOPS、4Kランダム書込速度は90K IOPS。
この850EVOシリーズは発売当初は高級路線を行っている数少ないSSDでした。ですが最近は多くの500GB帯SSDが出てきてこのSSDの存在価値が薄れてきました。そのため最近価格が下がってきて他のSSDと肩を並べるようになってきていますが古いSSDなのでSandiskや東芝などの最新のSSDを買ったほうがいいです。
250GB:サムスン 850 EVO MZ-75E250B/IT
2014年12月発売であり750EVOシリーズより古いです。2015年発売の750 EVOに比べたら確かにこちらの方が信頼性は高いですが値段差ほどのメリットは得られません。
低用量モデルながらDRAMキャッシュ512MBも搭載しておりTBW75TBを実現する耐久性。コントローラは500GBモデルと同じMGXを採用。
250GBモデルの欠点は500GB以上のモデルと比較してランダムリード・ライト性能が落ちること。
4Kランダム読込速度は97K IOPS、4Kランダム書込速度は88K IOPS。
120GB:サムスン 850 EVO MZ-75E120B/IT
2014年12月発売。2014年にリリースされた850 EVOシリーズの中で最も低用量なモデル。
低用量でも使用しているNANDは4TBとも同じであるためシーケンシャルリードとシーケンシャルライト性能は4TBモデルと同じ。採用コントローラはMGXであり250GBや500GBモデルと同じ。
しかしDRAMキャッシュは256MBで最も小容量。ランダム性能が少し低く、4Kランダム読込速度は94K IOPSで250GBモデルより低い。4Kランダム書込速度は88K IOPSで250GBモデルと同じ。耐久性はTBW75TBでこれも250GBモデルと同じ。
この120GBの小容量の中では非常に優秀な性能ですが既に品薄のため他の製品がおすすめ。