Sandiskブランドと並んで高品質のSSDを製造しているのが米国Western Digital社です。
Western Digital社のSSD事業の歴史はまだ浅いです。なぜならWestern Digitalは本来HDD専業だった「世界1位のHDDメーカー」であり、Western Digital社がSSDに参入したのは2016年5月に米国Sandisk社を子会社化してからでした。
東芝とSandiskはそれこそSSDが登場する以前から半導体ストレージ分野で協業してきた2社です。Western DigitalはHDDの将来性に見切りをつけ、手っ取り早くSSDに参入するために東芝・Sandisk連合に目をつけてSandiskを子会社化しました。
Western Digital社は東芝・Sandiskが製造したNANDを仕入れそれを販売しているだけです。
とはいっても東芝自社ブランドのSSDは日本国内での流通量はほぼ皆無であり、SandiskのSSDのリリース頻度も下がってきています。そのかわりWestern Digitalが積極的にSSDのラインナップを取り揃えてきており且つ流通量が十分で入手性が高いです。東芝・Sandiskの代替としてWestern Digitalが選択されるようになっています。東芝製でもSandisk製でもWestern Digital製でも使っているNANDは三重県四日市市と岩手県北上市の工場で作られたものなので、東芝・Sandisk・Western DigitalのSSDを購入すればSSDの本体部分(NAND)は日本製であることを意味します。
WD Blueシリーズ(2016)
Western DigitalがSSDに参入して最初に発売された第1世代のWD Blueシリーズです。採用しているNAND Flashダイは東芝・Sandisk連合が製造した15nmプロセスの128Gbit 2D TLCタイプNANDです。第1世代のWD BlueのNANDは3D構造のものではありません。3D TLC NANDは2017年発売の第2世代WD Blueで採用されました。
採用しているNAND Flashが128Gbit(16GB)の容量しかないので最大容量が1TBまでのラインナップになっています。
BlueシリーズはGreenシリーズの上位という位置づけで、何をもって上位かというと使用しているコントローラがGreenシリーズより高機能の「Marvell 88SS1074」です。Marvell 88SS1074はDRAMキャッシュバッファに対応しているため、NANDの書込耐久性が高い上に速度も高速です。一方でGreenシリーズはDRAMキャッシュバッファ非対応です。そのかわりBlueシリーズの価格が高く、Greenシリーズは安くなっています。
Blueシリーズ(2016)の保証期間は全容量3年で共通。
1TB:Western Digital WD Blue WDS100T1B0A
2016年10月発売。
シーケンシャル読込速度は545MB毎秒、シーケンシャル書込速度は525MB毎秒。
4KBランダム読込速度は100K IOPS、4KBランダム書込速度は80K IOPS。
耐久性を表すTBWは400TB。
3D化される前のNANDなので1枚あたり128Gbit(16GB)の容量しかなく、これを4チャネル8CEのコントローラの合計32CEをすべて使い、さらに1CEあたり2枚のダイを制御することで合計64枚のダイを制御しているSSDです。64枚×128Gbit(16GB)2D TLC NAND=1TBです。
500GB:WD Blue WDS500G1B0A
2016年10月発売。リードライト速度はシーケンシャル or ランダムに関わらず1TBモデルと同じです。コントローラの4チャネル8CEを全て使い切れているためです。
耐久性を表すTBWは200TB。
500GBを128Gbit(16GB)の2D TLC NANDで実現するためにはNAND Flashダイが32枚必要です。このMarvell製コントローラは4チャネル8CE対応なので合計32のCE数があり、1CEあたり1枚のNAND Flashダイを制御するようにすればすべてのCEを使い切れます。よってスループットが1TBモデルと同じになるためリードライト速度が1TBモデルと同じになっています。
250GB:WD Blue WDS250G1B0A
2016年10月発売。この250GBモデルはリード・ライト速度が500GB,1TBモデルと比較して少し遅くなっています。
シーケンシャル読込速度は540MB毎秒、シーケンシャル書込速度は500MB毎秒。
4KBランダム読込速度は97K IOPS、4KBランダム書込速度は79K IOPS。
耐久性を表す総書き込みバイト数(TBW)は100TB。
リードライト速度が500MBモデルと比較して低下しているのは、コントローラの4チャネル8CEをすべて使いきれていないことにあります。
このSSDで採用されているNAND Flashは16GB(128Gbit)なのでそれが16枚あれば250GBを実現できます。このコントローラは4チャネル8CE=32CE搭載されていますが、250GBを実現するなら4チャネル4CE=16CEだけあれば十分なのですべてのCEを使いきれずスループットが低下しています。
WD Greenシリーズ(2016)
WD Blueシリーズ(2016)の廉価版です。使っているNANDはBlueシリーズと同じなのでNAND Flashダイそのものには優劣ありません。しかしコントローラが安物になっており、DRAMキャッシュバッファ非対応の「Silicon Motion SM2256S」を採用しています。その分だけSSD全体の価格も落ちていますが、書込に対する耐久性も落ちています。
240GBと120GBの2容量しかラインナップされていません。
Blueシリースでは250GBモデルがあったのになぜ240GBと容量が低下しているかというと、バッファとして使うための予備領域(Over Provisioning)が大きく採られているためです。なぜならWD GreenシリーズのコントローラはDRAMキャッシュ非対応であるためDRAMが搭載されておらず、予備領域を大きく取っておかないと耐久性と速度が大幅に低下してしまうためです。
保証期間はどの容量でも3年。
240GB:WD Green WDS240G1G0A
2016年11月発売。
シーケンシャル読み込み速度が540MB毎秒で、シーケンシャル書き込み速度は435MB毎秒であり、WD Blueシリーズより遅いです。
4KBランダム読込速度は37K IOPS、4KBランダム書込速度は68K IOPS。
耐久性を表す総書込みバイト数(TBW)は80TBであり、Blueシリーズ250GBモデルの100TBと比較して低下しています。
このSSDは128Gbitの2D TLC NANDを16枚搭載して実現されています。16GB×16枚だと256GBになるので、このSSD容量240GBと数字が合わないことになりますがこの差分16GBは予備領域(Over Provisioning)のためによけてある部分です。
4チャネル4CEで1CEあたり1枚のNAND Flashダイを制御して240GBを実現しています。
120GB:WD Green WDS120G1G0A
2016年11月発売。
シーケンシャル読込速度は240GBモデルと同じ540MBですがシーケンシャルライト速度は405MB毎秒に悪化しています。
4KBランダム読込速度は37K IOPSで240GBモデルと同じですが、4KBランダム書込速度は63K IOPSで悪化しています。
4チャネル2CEで合計8つのCEに128Gbit NAND Flashダイを接続して120GBを実現しています。
総書込みバイト数(TBW)は40TB。