RyzenとCore i7,i5,i3のベンチマーク比較 ゲーム用ならRyzen、作業用ならIntel Core

私も当初はRyzen発売を好意的に受けとめていましたが、非ゲーマーにとってはあまりメリットの見いだせないCPUだという印象です。海外でも”gaming cpu”として認識されています。

2018年4月19日に発売された第2世代Ryzen 7 2700X(Pinnacle Ridge)についてはこちらにも記載しています。

また2018年2月13日に発売されたRyzen GシリーズRaven Ridge APUについてはこちらで評価しています。

私は今後バックアップ用の副系パソコンを自作する予定で、既にケース・ファンレス電源とRyzenにも対応したCPUクーラーも購入して残りはマザボCPUメモリを買うだけなのですが、Ryzenが良かったらそれを選択するでしょうが残念ながら今の情勢だとCore i7を購入することになりそうです。

比較は次のように行います。2017年3,4月に発売されたAMD 第1世代Ryzen各モデルと比較するのは、2017年1月発売のIntel Core第7世代Kaby Lakeまたは2015年8月に発売された第6世代SkylakeのCore i7,Core i5, Core i3の各モデルです。2017年3月発売の第1世代Ryzenプロセッサを2017年11月発売のIntel Core第8世代Coffee Lakeと比較していないのは、Kaby LakeやSkylakeでも十分Intel Coreが優勢なので、第1世代Ryzenよりも後に発売されたCoffee Lakeをあえて持ち出すまでもないからです。プロセッサは後に発売された製品の方が技術的に優位なので、第1世代Ryzenよりも後に発売された第8世代Coreと比較してしまうと第1世代Ryzenが比較において不利になりすぎてしまうというAMD Ryzenへの配慮でもあります。

また2018年4月19日に発売された第2世代Ryzen(Pinnacle Ridge)プロセッサとの比較は、2017年11月に発売されたIntel Core第8世代CoffeeLakeプロセッサを対象に行います。2018年4月に発売された第2世代Ryzenよりも、半年前の2017年11月に発売された第8世代Coreと比較するのなら、第2世代Ryzenにとっては不利にならずIntel Core側のほうが不利になるため、これも第2世代Ryzenプロセッサを不利にしないための配慮になります。

そして2018年4月19日にRyzen 7 2800Xが発売されていません。2017年はRyzen 7 1800Xも同時発売されていたので異例です。これは2018年夏に発売が予定されているCore i7 9700K,Core i5 9600Kが8コアになると言われているため、この第9世代Intel Coreプロセッサに対抗するためにAMDはRyzen 7 2800Xの発売を先延ばしして”温存”していると言われています。プロセッサは後に発売したほうが技術的に優位だからです。

そしてカタログスペックではなく実効性能で性能の優劣を比較します。価格においては定価ではなく実勢価格が重視されるのと同じです。CPUを購入したユーザが実際使ってみて性能がどの程度でるのかが最も重要だからです。

Ryzenが実力以上に持て囃されている理由は、Intelの一強独壇場を打ち崩す役割を果たし、高止まりしているCPU価格を引き下げる効果が期待されていることにあると思います。

Ryzenで採用された8コア16スレッドのようにコア数を増やすことでCPU全体のFLOPS性能を向上させるのは今までの潮流でもあり、それは今後も長く続く流れです。

ゲームや動画エンコードをメインでやる人はこのRyzenを選んで間違いありません。並列性を十分に活かせるからです。しかし、Excel・Word・ブラウザでウェブ閲覧(Youtube閲覧)などの一般的なPC用途や、深層学習・金融分析などの1コアあたりの性能が重要である科学技術計算のプログラミングで用いるならIntel Core i7をおすすめします。

ゲームや動画エンコードなど1コアあたりの性能より並列性を優先するならRyzen

Ryzenが叩かれている部分は何かというと、1コアあたり、または1スレッドあたりの性能の低さです。これはコア数を増やすと消費電力が増大してしまうため、動作周波数を下げなければTDPが高止まりしてしまう技術上の問題で仕方のないことです。

しかし1コアあたりの性能が低くなることは、Word・Excelなどのテキスト作業、VisualStudioなどでのプログラミングで圧倒的に不利になります。

Excelは重い計算処理は自動的に並列化して実行してくれますが、計算処理以外の部分ではマルチコアの恩恵をあまり受けることができません。

VisualStudioなどで並列プログラムを作ったあとに、そのプログラム自体を実行するならRyzenでも”あり”です。

でもプログラム作成段階では1コアあたりの性能が低いと非常に作業効率が悪くなります。

最初から並列化してプログラミングすることはまずなく、まずはシングルスレッドのプログラムを作ってバグを潰してから並列化するという手順を踏むので、趣味でVisualStudioを使って深層学習や金融分析をしているような”非ゲーム用途”で使う人はCore i7の方が作業効率が圧倒的に高いです。

さらにIntelにはMath Kernel Libraryという非常に数値計算精度が高く、さらにIntelプロセッサが独自に用意しているSIMD演算器をフル活用してくれるライブラリが備わっています。このMath Kernel Libraryを利用する際の恩恵を受けられるのがIntelプロセッサの非常に大きなメリットです。

深層学習や金融分析のように1コアあたりの性能が重要な数値計算・数値解析・科学技術計算といった分野の作業をするのなら、残念ですがRyzenが選択肢として載ることはまずありません。大学や大学院などでアカデミックな分野で使いたい人もIntelにしておいたほうが無難です。つまりRyzenは遊び向けということです。

国内ウェブサイトの記事を見ていると、「ゲームならシングルコアあたりの性能が高いIntel core i7のほうがいい」という意見を見ますが、それは単にベンチマークがシングルコア性能を測るものになっているか、並列化実行できないゲームを前提としている評価だと思います。

2017年に爆発的に大流行した某有名ゲームは「Ryzenに対応していないから遅い」と言われていましたが、Ryzenに対応していないというのはすなわち「十分に並列化されていない」ということです。

海外でもRyzenは”a gaming cpu”として認識されており、AMDやNVIDIAグラボと組み合わせて使うゲーム用CPUの色がかなり濃いです。Ryzenはそもそもオンボードグラフィックスが内蔵されていません。グラボを別途用意しない限り画面すら映らないのです。

オンボードグラフィクスが搭載されていないなんてExcelWordをやる事務用PCだったら考えられないことですが、ゲーム用を想定しているRyzenなら「ゲーマーはグラボを別途買うだろうしCPUにわざわざグラフィック機能を乗せる必要はないだろう」ということでRyzenにはオンボードグラフィックスがないのです。このことからもRyzenがゲーマー用CPUだということがわかります。

2018年4月発売の第2世代Ryzen(Pinnacle Ridge)最上位モデルRyzen 7 2700XでもCore i5 8600Kに勝てず

Ryzenのコンセプトは、1コアあたりの性能ではIntelに勝てないためオンボードグラフィックス(iGPU)を削り、その部分に汎用コアを割り当ててコア数を増やして「並列性の高いアプリケーションに特化する」というものです。これは2017年の第1世代Ryzenもそうでしたし、2018年発売の第2世代Ryzen(Pinnacle Ridge)にも引き継がれています。しかし世の中のアプリケーションには並列性が無いものが多く、コア数を増やしただけでは宝の持ち腐れになり性能が伸びないことは第1世代Ryzenにおいても指摘した通りです。

第1世代Ryzenの8コアからコア数が増えなかった第2世代Ryzen

当サイトでも「Ryzenは1コアあたりの性能が低い」「多いコアを活用するためにはアプリケーションにスレッドレベルの並列性がなければならない」「しかし並列性が高いアプリケーションは少数派」ということを指摘してきましたが、こういった点は海外のレビューでも指摘されており、Ryzenの弱点は「1コアあたりの性能が低いこと」に集約されていました。

そのため2018年発売のZen+アーキテクチャ第2世代Ryzenはコア数の増加よりも動作周波数の増加を優先した格好です。デスクトップ向け第2世代RyzenのフラッグシップモデルであるRyzen 7 2700Xでさえコア数は8コアであり、第1世代RyzenのフラッグシップモデルであるRyzen 7 1800Xとコア数が同じです。Ryzen 7 1700Xも8コアだったのでやはりコア数は増えていません。

集積度を向上させると低消費電力化が可能になります。第1世代Ryzenでは14nmプロセスでしたが、第2世代Ryzenでは12nmプロセスでの製造になったため、この集積度の向上だけでも低消費電力化が可能となりました。そうなると第1世代Ryzenと同じ消費電力を維持したまま第2世代Ryzenでは「1.コア数を増やす」か「2.動作周波数を増やす」ことができることになります。

第2世代Ryzenでは動作周波数の上昇を優先

結果として第2世代Ryzenでは「2.動作周波数を増やす」ことを選びました。第1世代Ryzenで指摘されていた「1コアあたりの性能が低い」という弱点を補うことを優先したことになります。14nmプロセスを12nmプロセスにしたことで集積度の向上とアーキテクチャの改良で10コア程度なら達成できるところですが、そうしてしまうと1コアあたりの性能が低いままになってしまうのでコア数を増やすことよりも動作周波数の上昇を選んだわけです。

ゲーム用途は一般的にコア数が多いほうが有利なのですが、2017年から大流行した某ゲームでは1コアに大きな負担がかかるためIntel Coreのように1コアあたりの性能が高いプロセッサのほうが有利であり、Ryzenのコアあたりの性能の低さはゲーミングPC向けとしても大きな弱点となっていました。RyzenのようにiGPU(オンボードグラフィックス)を搭載しておらず、別途グラボを必要とするゲーミングPCを想定しているRyzenだからこそこの点は無視できなかったことになります。

Coffee Lake発売から5ヶ月経過しているので本来は+8.6%ほど第2世代Ryzenが性能で上回らなければならない

プロセッサは後に発売した製品のほうが有利です。これはJohn L.HennessyとDavid A.Pattersonによる著書ComputerArchitecture邦訳第5版(通称ヘネパタ)のP3~P4に書いてある通り「マイクロプロセッサは、実装テクノロジ(集積度)の発展とアーキテクチャの改善の両輪により年率22%の性能向上を達成」する法則があります。2017年11月に発売されたIntel Core Coffee Lakeプロセッサと、2018年4月に発売された第2世代Ryzenプロセッサは約5ヶ月の時間差があるので、1.22(22%の性能向上を表す)の5/12乗(12ヶ月のうち5ヶ月分)は1.086になるため、本来ならば第2世代RyzenプロセッサはIntel Core Coffee Lakeプロセッサの+8.6%ほど勝っていなければなりません。

Ryzen 7 2700XはCore i7 8700Kをカウンタパートとして意識してリリースされたプロセッサです。Ryzen 7 2700Xの価格はCore i7 8700Kとほぼ同じですし、TDPもRyzen 7 2700Xの105WとCore i7 8700Kの95Wで高発熱(高消費電力)帯のCPUであり、また2700Xと8700Kの型番からもわかる通り、ともにグレード7のプロセッサであり高クロック版のプロセッサであることもわかります。

つまり5ヶ月遅く発売されたRyzen 7 2700Xは、同じ価格帯のCore i7 8700Kに+8.6%ほど勝っていなければおかしいことになります。ですが実際はRyzen 7 2700XはCore i7 8700Kに勝つどころか全く歯が立たずCore i5 8600Kにも負ける結果になっています。これは単純にAMDのアーキテクチャ設計と集積回路製造の技術力がIntelより劣っていることに起因します。

・Ryzen 7 2700XはCore i5 8600Kに性能価格ともに勝てない

第2世代RyzenのフラッグシップモデルであるRyzen 7 2700XをIntel Coreプロセッサとベンチマーク比較してみます。Core i7 8700KだとIntel Coreプロセッサが圧勝しすぎてしまうので1グレード低いCore i5 8600Kとまずは比較します。

Core i5 8600KはTDP95Wプロセッサであり、TDP105WのRyzen 7 2700Xとほぼ同等とみていいでしょう。発熱量が大きいプロセッサほど高い性能を出しやすいので、TDP105WのRyzenに対してTDP95WのIntel Coreという時点でRyzenが有利な条件になっていますが、そのくらいはIntelとAMDの技術力の差を考慮し許容してあげなければならない範囲です。

このように+4%、Core i5 8600KがRyzen 7 2700Xに勝利しています。AMDの技術力がIntelと同等と仮定した場合、Core i7 8700K相手でもRyzen 7 2700X側が+8.6%勝利しなければならないのですが、実際はCore i5 8600K相手でもRyzen 7 2700Xが逆に+4%の差をつけられて負ける結果となっています。

本来は、5ヶ月も後に発売されており、かつCore i5 8600K相手であることからRyzen 7 2700Xが勝利しなければならないのですが、実際はCore i7 8700Kを持ち出すまでもなくCore i5 8600KでもRyzen 7 2700Xに勝ってしまったわけです。

しかも価格面をみても、Core i5 8600KのほうがRyzen 7 2700Xより1万円ほど安くなっています。

さらにCore i5 8600KにはiGPU(オンボードグラフィックス)が搭載されておりグラボ無しで4K60fpsトリプルディスプレイにできます。一方でRyzen 7 2700Xはコア数を8コアまで増やすためにオンボードグラフィックスを削ったプロセッサなので、グラボがないと画面すら映りません。

性能も高く、価格も安く、さらにiGPU搭載となると、合理的判断をするならばRyzen 7 2700XよりもCore i5 8600Kを選択することになります。ただし、非常にスレッドレベル並列性が高いアプリケーションに特化して使うのなら8コアのRyzen 7 2700Xを選択してもいいと思いますが、一般の人にとってはそのような用途で使うことはほぼないでしょう。将来どのような用途で使っても性能を出すことができるオールラウンドなCPUを選びたい場合はIntel Coreのほうが失敗がないです。

・Ryzen 7 2700X v.s. Core i7 8700

Core i7 8700Kよりも動作周波数が低いCore i7 8700であってもRyzen 7 2700Xに勝利する結果となっています。

+4%、Core i7 8700が性能で勝利していることがわかります。

重要なことはCore i7 8700は基本動作周波数が3.2GHzしかないため電圧を下げることで消費電力を下げてTDP65Wに抑えていることです。一方でRyzen 7 2700XはTDP105Wもあります。このように消費電力を抑えつつ性能で勝つことは技術的に難しいことであり、たった+4%も勝利しているというよりも+4%も勝利していると捉えることができます。

このベンチマークによる示唆は3つあります。1つ目は動作周波数が高いからといって性能が高いわけではないということ。2つ目として発熱量(消費電力)が高いからといって性能が高いわけではないということ。そして3つ目はコア数が多くても性能が高いとは限らないということです。

消費電力を下げるためには動作周波数を下げる必要がありますが、動作周波数を下げつつも高い性能を維持することは技術的に難しいことです。Core i7 8700は動作周波数を3.2GHzに低く抑えつつも、3.7GHzのRyzen 7 2700Xに勝利しています。

また1コアあたりの性能を向上させるよりも、コア数を単純に増やすほうが技術的には簡単です。Intelでさえ2004年にはこれ以上シングルコアだけに頼った大幅な性能向上は難しいと判断しマルチコア化に舵を切りました(ヘネパタ第5版P4の3段落目参照)。しかしIntelは1コアあたりの性能を犠牲にしてまで多コア化はせず、世代を重ねてコア数を増やしても1コアあたりの性能を維持するか微増させています。1コアあたりの性能を犠牲にしてコア数を増やすことは実は技術的に簡単です。その方法に甘んじたのがRyzenであり、コア数は多いけれども性能が出ないのはそのためです。世の中のアプリケーションはスレッドレベル並列性が高くありません。コア数が多くてもそれを使い切るだけのスレッドレベル並列性がない場合がほとんどなので、このような実際的なベンチマークではRyzenはCoreに負ける結果になってしまいます。

・Ryzen 7 2700X v.s. Core i7 8700K

Ryzen 7 2700XはCore i7 8700Kをライバル視して投入されたことがありありとしてわかるCPUです。まず基本動作周波数が3.7GHzで同じです。また1コアあたりのL3キャッシュサイズが2MBでこれも同じです。TDPはCore i7 8700Kが95Wに対してRyzen 7 2700Xが105WでありRyzenのほうが大きいですが、これは技術的に後塵を拝しているAMDへの下駄履かせとして容認していい範囲だと思います。

両者で異なるのは、Ryzen 7 2700XはiGPU(オンボードグラフィックス)を搭載しておらずCore i7 8700KはiGPUを搭載している点と、Ryzen 7 2700Xは8コアでありCore i7 8700Kは6コアである点です。これはRyzenがIntelの背中に追いつくためにオンボードグラフィックスを削ってその部分にコアを割り当てて、1コアあたりの性能ではIntelには勝てないのでコアの数では勝つようにするという戦略から来ています。

上述したように、時間的に後に発売したCPUは時間経過による技術進歩のため速くなるのが当然です。しかしIntelとAMDには技術力の差が大きいため2018年4月に発売されたRyzen 7 2700Xは2017年11月に発売されたCore i5 8600Kに勝てない結果となっていました。その差の開きはCore i7 8700K相手だとさらに大きくなります。

このように+10%もCore i7 8700Kが勝利しています。たった+10%と思うか、+10%もと思うか直感的な捉え方は人それぞれでしょうが、技術的観点から客観的に言うとこれは非常に大きな差です。まずCPUは1年で22%の性能向上をすることは上述しましたが、この+10%というのは「半年分の技術的差異」に相当します。22%の性能向上を1.22倍と表して、半年分の性能向上を求めるために6/12乗する(平方根をとる)と1.108となるため、CPUは半年で10.8%の性能向上をすることになります。つまりRyzen 7 2700XはCore i7 8700Kよりも時期的に半年ほど遅れた性能だということになります。さらにCore i7 8700Kは2017年11月発売なので、Ryzen 7 2700Xよりも5ヶ月も前に発売されたものです。Ryzen 7 2700XよりもCore i7のほうが昔に発売されたのに、性能評価ではなぜかRyzen 7 2700Xのほうが半年も昔に発売された性能になってしまっています。

5ヶ月も後に発売されたRyzen 7 2700XはCore i7 8700Kよりも本来+8.6%勝利しなければなりません。それなのに逆にCore i7 8700Kが+10%も勝利してしまっています。これはつまりRyzen 7 2700XとCore i7 8700Kの間には、発売時期による優劣をなくして対等に比較しようとすると1.086(8.6%)×1.10(10%)=1.19(19%)もの性能差があるということです。

さらに重要なことは、Core i7 8700Kは6コアの汎用コアのチップ面積と同じ分だけの面積をiGPU(オンボードグラフィックス)のために割いているということです。Ryzen 7 2700XにはiGPUが搭載されていないためこの点もフェアではありません。そのためRyzen 7 2700XとCore i7 8700Kを対等に比較するためにはCore i7 8700KのiGPU部分をRyzenと同様削り、その部分が汎用コアであると想定しなければなりません。そうするとCore i7 8700Kの性能はiGPUの部分を汎用コアに置き換えたことで単純に2倍になり、先程の+19%の性能を2倍してCore i7 8700KはRyzen 7 2700Xよりも+38%も高い性能差があることになります。これはRyzen 7 2700XとCore i7 8700Kの発売時期の差による優劣をなくし、またiGPU(オンボードグラフィックス)と搭載しているか搭載していないかによる優劣をなくした上での性能差になります。

この性能差を技術力の時間的な差に換算すると、CPUは1年で22%の性能向上をすることから、lnを自然対数としてln(1.38)/ln(1.22)=1.62年になり、AMDとIntelの間には1年7ヶ月分の技術力の差があることになります。AMDがIntelと同時に同じカタログスペックでCPUを発売してしまったら、Intelが1年7ヶ月前に既にリリースした性能のCPUしか出せないため、Ryzenではその差を埋めるために「オンボードグラフィックスを削ってその部分を汎用コアに割り当てる」ことでなんとか差を縮めようとしていますがそれだけでは1年7ヶ月の差を埋めることができず、先程のベンチマーク結果の通りIntel Core i7 8700KがRyzen 7 2700Xに性能で+10%勝利する結果となってしまったことになります。

ゲーム・動画エンコードに特化しない汎用的なPC用途ではIntel Core i7 7700Kが完勝
6700Kや7700無印ですらRyzen 7に勝利
しかもCore i7の方が安くオンボードグラフィックス付

最終的にはRyzen7 1800Xと比較しますが、まずは1700から順にIntel Core i7 7700Kと比較してみます。

ここでは実際にプロセッサを保有しているユーザーから申告されたベンチマークを集計し統計データとして公表しているuserbenchmark.comで比較してみます。これは各ユーザーのベンチマーク報告を平均しているものです。

メーカー発表のベンチマークというのはできるだけベンチマーク結果が良くなる方向にバイアスが働いている”大本営発表”のようなものなので意味がありません。

実際にプロセッサを購入し使用している各ユーザーがそれぞれ、様々なマザーボードなりメモリなりを接続した普段の環境で測ったベンチマークにこそ意味があるということです。

・Ryzen 7 1700 v.s. Core i7 7700K

まずはCore i7 7700KとRyzen7 1700とのベンチマーク比較です。

Intel Core i7 7700Kが+20%性能で勝っています。

相手がRyzen7 1700なら7700Kの方が速いのは当然の結果と言えますが、私がこの記事を書いている時点では7700Kの方がCPU価格が安くなっています。Ryzen7 1700の方が価格が高いのです。

しかもCore i7 7700KにはIntel HD Graphics630というグラフィックスコアがCPUに内蔵されており、グラフィックボードなしでも4K画質の60fps動画再生を余裕でこなす能力があります。一方でRyzen7はCPU内部にオンボードグラフィックを内蔵していないので別途グラフィックボードを購入することが必須です。そういった意味でも7700Kの方が遥かにコストパフォーマンスに優れていることがわかります。

・Ryzen 7 1700 v.s. Core i7 7700

7700Kより更に安い7700とも比較しておきます。

Intel Core i7 7700の方がRyzen 7 1700よりも+4%実効性能が上回っており、しかもIntel Core i7 7700の方が安いです。

・Ryzen 7 1700X v.s. Core i7 7700K

では次に1700Xと比較してみます。こちらもオンボードグラフィックは無しです。

こちらもIntelの7700Kの性能が+15%上回っています。もちろん現時点でのCPU価格も7700Kの方が安いです。

・Ryzen 7 1700X v.s. Core i7 6700K

そしてRyzen 7 1700は2015年8月に発売された第6世代SkylakeプロセッサのCore i7 6700Kにも実効性能で負けています。

Intel Core i7 6700KがRyzen 7 1700Xに実効性能で+4%勝っています。価格は若干6700Kの方が安いです。

・Ryzen 7 1800X v.s. Core i7 7700K

最後にRyzen7 1800Xと勝負させてみましょう。

Ryzen7 1800XですらIntel Core i7 7700Kに勝てていません。7700Kの性能が+10%で上回っています。

この画像の左下を見てもらえるとわかる通り、7700Kは全CPUのうちでも2位です。1位は昨年発売されたBroadwell-EのCore i7 6950Kです。2位がCore i7 7700Kであり、Core i7 6900KでさえCore i7 7700Kに勝てていません。6950Kは20万円近くしますし、4万円程度で買える7700Kが最もコストパフォーマンスの高いCPUだと言えます。

実はIntel Core i5 7600Kにも負けているRyzen 7 1800X,1700X
Ryzen 7 1700はIntel Core i5 7600無印にも負ける

Ryzen 7というのはIntel Core i7を念頭に置いている製品であることは間違いないのですが、実はRyzen 7はIntel Core i7どころかCore i5にすら性能で負けています。Core i5はi7の廉価版ですから、当然価格の安さでもRyzen 7はCore i5に負けています。具体的に見ていくことにします。

・Ryzen 7 1700 v.s. Core i5 7600

まずはRyzen 7 1700からです。比較対象はKの付かない無印のCore i5 7600です。

このようにRyzen 7 1700よりもIntel Core i5 7600の方が実効性能で+5%上回っています。さらに価格面ではCore i5 7600の方がRyzen 7 1700よりも1万円ほど安いです。

コア数では4コアのCore i5 7600は8コアのRyzen 7 1700の半分しかありません。しかもRyzen 7 1700はマルチスレッディング対応です。

Core i5が勝利した理由としては動作周波数が高いこと、IntelのSIMD(シムディ:Single Instruction Multiple Data)命令が優秀であること、命令レベル並列性を深く抽出しアウトオブオーダー実行する技術が優秀であることが挙げられます。

動作周波数を上げてコア数を減らすことと、動作周波数を下げてコア数を増やすこと、どちらが技術的に簡単かと言えば後者のほうが圧倒的に簡単です。動作周波数を上げるためには電圧も上げざるを得ず、必然的に消費電力が増えます。また現在は14nmプロセスまで微細化されているのでリーク電流が大きく、動作周波数を上げることはかなり技術的に困難があります。しかしそれを乗り越えて動作周波数を高く維持しているのがIntel Coreプロセッサです。

コア数が多いRyzen 7 1700はアプリケーションにスレッドレベルの並列性がないと速くなりようがないですが、Intel Core i5 7600はシングルスレッド単独の実効性能を高めているので、1コアあたりの性能が高いCore i5の方が実際的な用途では高速になるわけです。

・Ryzen 7 1700X v.s. Core i5 7600K

次にRyzen 7 1700Xについて見ていきます。1700Xはクロック周波数が高いモデルなので、Intel Core i5 7600Kと比較します。

こちらも実効性能でIntel Core i5 7600KがRyzen 7 1700Xに+8%勝っています。

コア数は4コアIntel Core i5 7600Kの方が8コアRyzen 7 1700Xの半分しかないですが、Core i5は動作周波数を高く維持することによって1コアあたりの性能を上げて勝利しています。

また価格面でも1万円程度Intel Core i5 7600Kの方がRyzen 7 1700Xより安いです。

・Ryzen 7 1800X v.s. Core i5 7600K

そして極めつけはRyzen 7 1800Xです。1800XはRyzenシリーズ最高峰のフラッグシップモデルですが、Intel Core i5 7600Kが勝利するという結果になっています。

このように実効性能でIntel Core i5 7600Kが、+4%実効性能でRyzen 7 1800Xに勝利しています。

さらに価格面では2~3万円ほどIntel Core i5 7600Kの方が安いです。

やはり殆どの人の一般的な用途ではマルチコアを活用できる場面は少なく、1コア・シングルスレッドあたりの性能が高いほうがアプリケーションの応答速度もスループットも体感速度も優れているということです。

Intel Core i7を意識しているRyzen 7 1800Xが、Core i5にすら負けてしまった上に価格面でも数万円もCore i5の方が安く、さらにCore i5にはIntel HD Graphicsというオンボードグラフィックスが搭載されているときているのでIntel Coreプロセッサの全面勝利と言えます。

Ryzen 5 1600X,1600,1500XはCore i5に性能でも価格でも勝てず
Ryzen 5 1400はCore i3にも性能価格ともに勝てない

2017年4月には、Ryzen 7よりもコア数と動作周波数を抑えたRyzen 5シリーズが発売されました。明らかにこれはIntel Core i5の対抗馬になることを意識して発売されたシリーズです。

以下、Ryzen 5 1600X,1600,1500XとCore i5 7600K,7600,7500,7400を比較していきますが、Ryzen 5は実効性能・実勢価格でもCore i5に勝てず、Ryzen 5 1400にいたってはCore i3 7300にすら負けるという結果になりました。

・Ryzen 5 1600X v.s. Core i5 7600K

まずRyzen 5シリーズのフラッグシップモデルであるRyzen 5 1600XとCore i5 7600Kから比較します。1600XのXはクロックアップモデルを意味しており、同じくCore i5の7600KのKもクロックアップモデルを意味しているので比較対象としては妥当です。

結果的に実効性能で+12%もIntel Core i5 7600Kが勝利しています。コア数ではRyzen 5 1600Xの6コア12スレッドが、Intel Core i5 7600Kの4コア4スレッドに勝利していますが、動作周波数がCore i5 7600Kの方が3.8GHzでRyzen 5 1600Xの3.6GHzより高いため実効性能ではIntel Core i5 7600Kの圧勝となった格好です。

また私が確認している時点では価格もCore i5 7600Kのほうが、Ryzen 5 1600Xより安いです。

・Ryzen 5 1600X v.s. Core i5 6600K

またRyzen 5 1600Xは、2015年8月に発売された1世代前のSkylake世代Intel Core i5 6600Kにも負けています。

Intel Core i5 6600KがRyzen 5 1600Xに+5%実効性能で勝利しています。コア数は6コアのRyzen 5 1600Xの方が4コアのCore i5 6600Kより多く、さらに動作周波数もRyzen 5 1600Xの3.6GHzのほうがCore i5 6600Kの3.5GHzよりも高いにもかかわらず、実効性能ではCore i5 6600Kが勝利しているわけです。価格については、Core i5 6600Kの2015年8月発売から時間が経過して既に生産されていないため品薄となっており、第6世代Core i5 6600Kの方が第7世代Core i5 7600Kより高くなってしまっています。第7世代Core i5 7600Kの方が性能が高い上、Ryzen 5 1600Xにも大きく引き離して性能が高いので6600Kより7600Kの方がおすすめです。

・Ryzen 5 1600 v.s. Core i5 7600

次にRyzen 5 1600について見ていきます。このモデルは”X”が付いていないことからコア数は1600Xと同じであるものの、動作周波数は1600Xより低くなっています。

そのため比較対象であるIntel Core i5も”K”が付いていないCore i5 7600と比較するのが妥当です。1600の最初の”1″はRyzenの第1世代を表しており、次の”6″はグレードを表していますが、これはIntel Coreでも同じです。COre i5 7600の”7″は第7世代を意味しており、次の”6″は第7世代プロセッサの中でのグレードを表しています。

Ryzen 5 1600とIntel Core i5 7600を比較してみます。

Intel Core i5 7600の方がRyzen 5 1600よりも+9%実効性能が高いです。コア数では6コア12スレッドであるRyzen 5 1600の方が、4コア4スレッドであるCore i5 7600に勝利していますが、動作周波数がCore i5 7600が3.5GHzでありRyzen 5 1600の3.2GHzを上回っているのが主な勝因です。1コアあたりの性能を向上させたCore i5が現実的な用途である実効性能で勝利したということでしょう。

・Ryzen 5 1500X v.s. Core i5 7500

では次にRyzen 5 1500Xを見ていきます。Ryzen 5 1500Xの特徴としては1600Xの6コアよりも2コア減らして4コア8スレッドにしている点です。動作周波数についてはそこまで低いわけではありません。1600Xからコアを減らしたのが1500Xと見ていいでしょう。

Intel側の比較対象としてはCore i5 7500にします。Ryzen 5 1500Xのグレードは”5″ですので、同じくグレード”5″であるCore i5 7500は妥当でしょう。またCore i5 7500には”K”バージョンがありませんので、無印のCore i5 7500と比較します。

実効性能で+7%、Intel Core i5 7500がRyzen 5 1500Xに勝利しており、価格もCore i5 7500の方がRyzen 5 1500Xよりも安いです。

・Ryzen 5 1400 v.s. Core i5 7400

最後にRyzen 5 1400に焦点をあてます。これはCore i3にも実効性能で勝てていないという驚きの結果がでています。

まずは想定されていただろう対抗馬であるCore i5 7400とRyzen 5 1400を比較してみます。

Core i5 7400が実効性能+9%でRyzen 5 1400に勝利しています。コア数はどちらも4コアです。動作周波数はCore i 5 7400の方が低く3.0GHzしかないわけですが、3.2GHzあるRyzen 5 1400が負けたのはSIMD演算やアウトオブオーダー実行の優秀さでIntelにかなわなかったからでしょう。価格面でもCore i5 7400の方が安く勝利しています。

・Ryzen 5 1400 v.s. Core i3 7300

驚いたのはRyzen 5 1400がCore i3 7300にも実効性能で負けているという事実です。Core i5の対抗馬として出たはずのRyzen 5はCore i3にも勝てなかったということです。

たった+1%ですが、Core i3 7300はRyzen 5 1400に実効性能で勝利しています。当然、価格面では圧倒的にIntel Core i3 7300の方が安いです。

この両者のコア数と動作周波数に着目してみると面白いことがわかります。Ryzen 5 1400は4コア8スレッドであるものの、Intel Core i3 7300は2コア4スレッドしかありません。Core i3 7300はコア数こそ2コアしかありませんが動作周波数は4.0GHzもあります。一方のRyzen 5 1400は3.2GHzしかありません。コア数が多いため動作周波数を下げているのです。

このように「多いコア数&低い動作周波数」vs「少ないコア数&高い動作周波数」では殆どの場合後者が勝ちます。後者の場合1コアあたりの性能が高くなる傾向にあり、1コアあたりの性能が高いと実際的な用途では体感速度も実効性能も高くなるからです。1コアあたりの性能が高ければ並列性があってもなくても高い性能を引き出せますが、1コアあたりの性能が低いマルチコアでは並列性が十分にあるアプリでしか性能を引き出せず、並列性がないアプリではかなり遅くなります。

Ryzen 5 1400 v.s. Core i3 7300の比較は「コア数が多くても性能が上がるわけではない」という典型例になっています。

Intel CoreよりRyzenの方がコア数が多くてもアプリケーションに並列性がなければ宝の持ち腐れになる

このようにRyzenが全敗しIntel Core全勝の結果になった理由は簡単です。Ryzenの方が1コアあたりの性能が低いからです。Ryzenのように、Core i7の2倍のコア数である8コアレベルでいくらコア数を増やしても、実行するソフトウェアの並列性がない限りは実効性能を上げることはできません。

これは1964年に世界初のスパコンが出来た時から現在に至るまで、大学の研究者から企業の技術者も頭を悩ませる古典的な問題です。いくら並列実行するためのコア数が増えてもそれを使いこなせるソフトウェアがなければ宝の持ち腐れです。

今回のベンチマークが示しているのは結局世の中の大半のソフトウェアは1コアのみで動くようにできているということです。つまりシングルスレッドでプログラミングされているということです。

一般人の用途で多数のコアを有効活用できるのはゲームと動画エンコードくらいです。しかし日頃からゲームと動画エンコードしかひたすらやっていない人はゲーマーやゲーム実況者など極々一握りであり、ほとんどの人はブラウザでウェブ閲覧をしていたり、Wordで文書作成をしているわけです。そのような用途では1コアあたりの性能が高いIntel Coreの方が優秀です。

オンボードグラフィックスで十分な人にとってはIntel Coreシリーズの方がお得
Ryzen単体ではディスプレイすら映らない

またIntel CoreシリーズからみてRyzenが異様なのはオンボードグラフィックスがないことです。

AMD RyzenではIntel Core i7と互角な勝負をするために、本来オンボードグラフィックスを乗せる部分のチップ面積を汎用コアに回しました。オンボードグラフィクスをCPUチップ上に載せないかわりに、その空いた面積を汎用プロセッサに振り分けたわけです。

オンボードグラフィクスをCPUチップ上に搭載してしまうと、その分だけ汎用プロセッサに割り当てる面積が減り、汎用プロセッサの性能を高くできないからです。

一方で、Intel CoreはこのAMD Ryzenとは全く逆のことをしています。

Intel Coreプロセッサは世代が重なるごとにオンボードグラフィックスのチップ面積を増やし着実に強化しています。IntelとAMDは向いている方向が全く逆です。

なぜIntelは汎用プロセッサ用のチップ面積を減らしてまでオンボードグラフィックス性能を年々上げているかというと、NVIDIA GeForceやAMD Radeonから顧客を奪って、オンボードグラフィックスであるIntel HD Graphicsだけで間に合うようにすることをIntelは狙ってるからです。

実はIntel Coreプロセッサの汎用4コアの面積が、Intel HD Graphics(オンボードグラフィックス)用のコア面積とほぼ同じということはあまり知られていないようです。

これは第6世代のSkylakeプロセッサのチップダイです。第7世代のKabylakeもこれと同じ割当です。

一番左の部分がオンボードグラフィックスです。そして真ん中の4つの青い長方形がある部分がCPUの中枢とも言える汎用4コアプロセッサの部分です。

このようにみると汎用プロセッサとオンボードグラフィックスの面積がほぼ同じだということがわかります。

以前はオンボードグラフィックスの面積はこんなに大きくなく、Intelはオンボードグラフィクスに力を入れず冷遇していました。気休め程度に「ディスプレイが取り敢えず映りさえすればいい」程度の認識しかIntelにはありませんでした。

しかし、現在のIntel Coreプロセッサではチップ面積の大半をグラフィックのために割いています。

なぜそのようなことをするかと言えば、ゲーム以外の用途として使う人にとっては画面出力のためだけに高価なグラフィックボードはオーバースペックすぎて不要だからです。だからといって、Youtube再生や簡単な3Dグラフの描画程度でもたつくのは困ります。

そこで拡張グラフィックボードがなくても、そこそこのグラフィクス性能を確保するために、最近のIntelはNVIDIA GeForceやAMD Radeon潰しのために、CPU上のオンボードグラフィクス(Intel HD Graphics)に注力しているわけです。

次にRyzenのチップを見てみます。

左と右にそれぞれ1つずつ、合計2つ見える横長の長方形がRyzenの汎用コアです。

このように片方の長方形で4コア、もう片方の長方形で4コアで合計8コアにしています。

この図にはグラフィック部分が見当たりません。それは当然であり、Ryzenでは一切グラフィックスを載せていないからです。グラボを別途お買い求めくださいというコンセプトなのがRyzenです。

なぜここまでしてRyzenではオンボードグラフィックスを削ったのかと言えば、それは単なるRyzenのコンセプトだけではありません。

Intel Coreに太刀打ちするために仕方なく、Ryzenではオンボードグラフィックスを削ったのです。

理由1:オンボードグラフィックスを削減して汎用コアにチップ面積をまわさないとIntelに太刀打ちできないから

Ryzenは一切オンボードグラフィックスコアをCPU内部に搭載していません。オンボードグラフィクスを搭載しない代わりに、その空いたチップ面積汎用プロセッサ部分に割り当てることによって、AMDは技術力ではIntelに敵わないから汎用コア用のチップ面積を増やすことでなんとかIntelの背中に追いつこうとしているのが今回のRyzenです。

Intelプロセッサではオンボードグラフィックスと、4コア8スレッドの汎用コアで丁度同じくらいの面積を分け合って使っているものの、Ryzenではオンボードグラフィックス用の面積はゼロです。

RyzenではオンボードグラフィクスをCPU上に載せない代わりに4コア8スレッドの汎用コアをもう1セット追加して、なんとかIntel Coreと勝負しようとしたものの、やはりベンチマークでは負けてしまいました。Core i7 7700KどころかCore i5 7600Kにすら負けてしまった形です。でもAMDの企業規模から言えば一強のIntelに対してそこそこ健闘した方だとは思います。

理由2:そもそもAMDはNVIDIAと並ぶグラボチップメーカーなのでオンボードグラフィックスをRyzenに搭載してしまうとAMDの自社グラボチップが売れなくなる

AMDはCPUではIntelに大きく水を開けられていますが、グラフィックボードではそこそこ健闘しています。NVIDIAという巨人がいるものの、グラフィックボードは価格がそもそも高いので稼ぎ頭です。

もしグラフィックボードが売れなくなってしまうとAMDとしても困ります。

例えばRyzenにオンボードグラフィックスを内蔵してしまうと、ゲーマーでない限りはオンボードグラフィックスで十分なのでグラフィックボードを買おうとしません。そうなるとグラフィックボードを売りたいAMDとしては好ましい展開ではありません。

Ryzenはあくまでも汎用プロセッサ。グラフィックプロセッサが欲しいなら別途グラフィックボードを購入する方向に持っていくほうがAMDとしても望ましいということです。

Ryzen 7とRyzen 5と同じく、Threadripper Ryzen 9も残念な結果に

私は2017年5月15日にスペックがリークされたThreadripperに注目していました。しかしその少し後に発売されたIntel Skylake-XのCore i9 7920Xに性能価格ともに完敗してしまいました。

それどころかCore i7 7820Xでも十分Ryzen Threadripperに勝ててしまいました。詳細はこちらにまとめていますが、これもまた敗因は1コアあたりの性能の低さです。コア数を愚直に増やしていくだけでは限界があることを示しました。

まとめ:
ゲーマー、動画エンコード専門ならRyzenもあり
ウェブ閲覧、文書作成などの一般的用途や深層学習・金融分析などの科学技術計算をやるならIntel Coreが優秀な上に安い

私から見ればRyzenは”パソコンはゲーム機”として捉えているゲーマー向けのCPUであり、硬派な用途である科学技術計算や文書事務作業などをやるならやはりIntel coreを選んでおいたほうが後悔がないと思います。

趣味でC#やC++を書かない、ExcelWordよりゲームをやる、Math Kernel Library(MKL)や数値解析と言われても全くピンとこないという人は、Intel CoreではなくAMD Ryzenが十分いい選択になると言えます。

Youtuberをやっていて動画の編集エンコードを日常的に行っていたり、録画が趣味だったり、ゲームが趣味の人はRyzenでいいでしょう。

Ryzenが惜しかったのはIntel Coreの実効性能を超えられないにしても、せめて価格だけでもRyzenがIntel Coreより安ければそれなりに存在意義はありました。性能でも価格でも負けてさらにオンボードグラフィックスが付いていないとなると、合理的判断をするならばIntel Coreを選ばざるを得ません。感情で判官びいきでもしない限りRyzenの選択はありません。