RyzenとCore i7 7700K,i5,i3のベンチマーク比較 ゲーム用ならRyzen、作業用ならIntel Core

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私も当初はRyzen発売を好意的に受けとめていましたが、非ゲーマーにとってはあまりメリットの見いだせないCPUだという印象です。海外でもgaming cpuとして認識されています。

私は2017年5月あたりにバックアップ用の副系パソコンを自作する予定で、既にケース・ファンレス電源とRyzenにも対応したCPUクーラーも購入して残りはマザボCPUメモリを買うだけなのですが、Ryzenが良かったらそれを選択するでしょうが残念ながら今の情勢だとCore i7 7700Kを購入することになりそうです。

比較は次のように行います。まずAMD側の比較対象は2017年3,4月に発売されたRyzen 7とRyzen 5の各モデルです。Intel側の比較対象は2017年1月発売のKabylakeまたは2015年8月に発売されたSkylakeのCore i7,Core i5, Core i3の各モデルです。

そしてカタログスペックではなく実効性能で性能の優劣を比較します。価格においては定価ではなく実勢価格が重視されるのと同じです。CPUを購入したユーザが実際使ってみて性能がどの程度でるのかが最も重要だからです。

Ryzenが持て囃されているのはIntelの独壇場を打ち崩す役割を果たし、高止まりしているCPU価格を引き下げる効果が期待されていることにあると思います。

Ryzenで採用された8コア16スレッドのようにコア数を増やすことでCPU全体のFLOPS性能を向上させるのは今までの潮流でもあり、それは今後も長く続く流れです。

ゲームや動画エンコードをメインでやる人はこのRyzen 7 1800Xを選んで間違いありません。並列性を十分に活かせるからです。ただし、Excel・Word・ブラウザでウェブ閲覧(Youtube閲覧)などの一般的なPC用途や、深層学習・金融分析などの科学技術計算のプログラミングで用いるならIntel Core i7をおすすめします。

ゲームや動画エンコードなど1コアあたりの性能より並列性を優先するならRyzen

Ryzenが叩かれている部分は何かというと、1コアあたり、または1スレッドあたりの性能の低さです。これはコア数を増やせば自然と動作周波数を下げなければTDPが高止まりしてしまうため技術上の問題で仕方のないことです。

しかし、1コアあたりの性能が低くなることは、Word・Excelなどのテキスト作業、VisualStudioなどでのプログラミングで圧倒的に不利になります。Excelは重い計算処理は自動的に並列化して実行してくれますが、計算処理以外の部分ではマルチコアの恩恵をあまり受けることができません。

VisualStudioなどでプログラムを作ったあとにそれを実行するなら1800Xでも”あり”です。でもプログラム作成段階では1コアあたりの性能が低いと非常に作業効率が悪くなります。最初から並列化してプログラミングすることはまずなく、まずはシングルスレッドのプログラムを作ってバグを潰してから並列化するという手順を踏むので、趣味でVisualStudioを使って深層学習や金融分析をしているような”非ゲーム用途”で使う人は7700Kの方が作業効率が圧倒的に高いです。

さらにIntelにはMath Kernel Libraryという非常に数値計算精度が高く、さらにIntelプロセッサが独自に用意しているSIMD演算器をフル活用してくれるライブラリが備わっています。このMath Kernel Libraryを利用する際の恩恵を受けられるのがIntelプロセッサの非常に大きなメリットです。

深層学習や金融分析のように数値計算・数値解析・科学技術計算といった分野の作業をするのなら、残念ですがRyzen1800Xが選択肢として載ることはまずありません。大学や大学院などでアカデミックな分野で使いたい人もIntelにしておいたほうが無難です。つまりRyzenは遊び向けということです。

国内ウェブサイトの記事を見ていると、「ゲームならシングルコアあたりの性能が高いIntel core i7 7700Kのほうがいい」という意見を見ますが、それは単にベンチマークがシングルコア性能を測るものになっているか、並列化実行できないゲームを前提としている評価だと思います。海外でもRyzenは”a gaming cpu”として認識されており、AMDやNVIDIAグラボと組み合わせて使うゲーム用CPUの色がかなり濃いです。Ryzenはそもそもオンボードグラフィックスが内蔵されていません。

このようなことはExcelWordをやる事務用PCだったら考えられないことですが、ゲーム用なら「ゲーマーはグラボを別途買うだろうしCPUにわざわざグラフィック機能を乗せる必要はないだろう」ということでRyzenにはオンボードグラフィックスがないのです。このことからもRyzenがゲーマー用CPUだということがわかります。

ゲーム・動画エンコードに特化しない汎用的なPC用途ではIntel Core i7 7700Kが完勝
6700Kや7700無印ですらRyzen 7に勝利
しかもCore i7の方が安くオンボードグラフィックス付

最終的にはRyzen7 1800Xと比較しますが、まずは1700から順にIntel Core i7 7700Kと比較してみます。

ここでは実際にプロセッサを保有しているユーザーから申告されたベンチマークを集計し統計データとして公表しているuserbenchmark.comで比較してみます。これは各ユーザーのベンチマーク報告を平均しているものです。

メーカー発表のベンチマークというのはできるだけベンチマーク結果が良くなる方向にバイアスが働いている”大本営発表”のようなものなので、実際にプロセッサを保有している各ユーザーが様々なマザーボードなりメモリなりを接続して測ったベンチマークにこそ意味があるということです。

・Ryzen 7 1700 v.s. Core i7 7700K

まずはCore i7 7700KとRyzen7 1700とのベンチマーク比較です。

Intel Core i7 7700Kが+20%性能で勝っています。

相手がRyzen7 1700なら7700Kの方が速いのは当然の結果と言えますが、私がこの記事を書いている時点では7700Kの方がCPU価格が安くなっています。Ryzen7 1700の方が価格が高いのです。

しかもCore i7 7700KにはIntel HD Graphics630というグラフィックスコアがCPUに内蔵されており、グラフィックボードなしでも4K画質の60fps動画再生を余裕でこなす能力があります。一方でRyzen7はCPU内部にオンボードグラフィックを内蔵していないので別途グラフィックボードを購入することが必須です。そういった意味でも7700Kの方が遥かにコストパフォーマンスに優れていることがわかります。

・Ryzen 7 1700 v.s. Core i7 7700

7700Kより更に安い7700とも比較しておきます。

Intel Core i7 7700の方がRyzen 7 1700よりも+4%実効性能が上回っており、しかもIntel Core i7 7700の方が安いです。

・Ryzen 7 1700X v.s. Core i7 7700K

では次に1700Xと比較してみます。こちらもオンボードグラフィックは無しです。

こちらもIntelの7700Kの性能が+15%上回っています。もちろん現時点でのCPU価格も7700Kの方が安いです。

・Ryzen 7 1700X v.s. Core i7 6700K

そしてRyzen 7 1700は2015年8月に発売された第6世代SkylakeプロセッサのCore i7 6700Kにも実効性能で負けています。

Intel Core i7 6700KがRyzen 7 1700Xに実効性能で+4%勝っています。価格は若干6700Kの方が安いです。

・Ryzen 7 1800X v.s. Core i7 7700K

最後にRyzen7 1800Xと勝負させてみましょう。

Ryzen7 1800XですらIntel Core i7 7700Kに勝てていません。7700Kの性能が+10%で上回っています。

この画像の左下を見てもらえるとわかる通り、7700Kは全CPUのうちでも2位です。1位は昨年発売されたBroadwell-EのCore i7 6950Kです。2位がCore i7 7700Kであり、Core i7 6900KでさえCore i7 7700Kに勝てていません。6950Kは20万円近くしますし、4万円程度で買える7700Kが最もコストパフォーマンスの高いCPUだと言えます。

実はIntel Core i5 7600Kにも負けているRyzen 7 1800X,1700X
Ryzen 7 1700はIntel Core i5 7600無印にも負ける

Ryzen 7というのはIntel Core i7を念頭に置いている製品であることは間違いないのですが、実はRyzen 7はIntel Core i7どころかCore i5にすら性能で負けています。Core i5はi7の廉価版ですから、当然価格の安さでもRyzen 7はCore i5に負けています。具体的に見ていくことにします。

・Ryzen 7 1700 v.s. Core i5 7600

まずはRyzen 7 1700からです。比較対象はKの付かない無印のCore i5 7600です。

このようにRyzen 7 1700よりもIntel Core i5 7600の方が実効性能で+5%上回っています。さらに価格面ではCore i5 7600の方がRyzen 7 1700よりも1万円ほど安いです。

コア数では4コアのCore i5 7600は8コアのRyzen 7 1700の半分しかありません。しかもRyzen 7 1700はマルチスレッディング対応です。

Core i5が勝利した理由としては動作周波数が高いこと、IntelのSIMD(シムディ:Single Instruction Multiple Data)命令が優秀であること、命令レベル並列性を深く抽出しアウトオブオーダー実行する技術が優秀であることが挙げられます。

動作周波数を上げてコア数を減らすことと、動作周波数を下げてコア数を増やすこと、どちらが技術的に簡単かと言えば後者のほうが圧倒的に簡単です。動作周波数を上げるためには電圧も上げざるを得ず、必然的に消費電力が増えます。また現在は14nmプロセスまで微細化されているのでリーク電流が大きく、動作周波数を上げることはかなり技術的に困難があります。しかしそれを乗り越えて動作周波数を高く維持しているのがIntel Coreプロセッサです。

コア数が多いRyzen 7 1700はアプリケーションにスレッドレベルの並列性がないと速くなりようがないですが、Intel Core i5 7600はシングルスレッド単独の実効性能を高めているので、1コアあたりの性能が高いCore i5の方が実際的な用途では高速になるわけです。

・Ryzen 7 1700X v.s. Core i5 7600K

次にRyzen 7 1700Xについて見ていきます。1700Xはクロック周波数が高いモデルなので、Intel Core i5 7600Kと比較します。

こちらも実効性能でIntel Core i5 7600KがRyzen 7 1700Xに+8%勝っています。

コア数は4コアIntel Core i5 7600Kの方が8コアRyzen 7 1700Xの半分しかないですが、Core i5は動作周波数を高く維持することによって1コアあたりの性能を上げて勝利しています。

また価格面でも1万円程度Intel Core i5 7600Kの方がRyzen 7 1700Xより安いです。

・Ryzen 7 1800X v.s. Core i5 7600K

そして極めつけはRyzen 7 1800Xです。1800XはRyzenシリーズ最高峰のフラッグシップモデルですが、Intel Core i5 7600Kが勝利するという結果になっています。

このように実効性能でIntel Core i5 7600Kが、+4%実効性能でRyzen 7 1800Xに勝利しています。

さらに価格面では2~3万円ほどIntel Core i5 7600Kの方が安いです。

やはり殆どの人の一般的な用途ではマルチコアを活用できる場面は少なく、1コア・シングルスレッドあたりの性能が高いほうがアプリケーションの応答速度もスループットも体感速度も優れているということです。

Intel Core i7を意識しているRyzen 7 1800Xが、Core i5にすら負けてしまった上に価格面でも数万円もCore i5の方が安く、さらにCore i5にはIntel HD Graphicsというオンボードグラフィックスが搭載されているときているのでIntel Coreプロセッサの全面勝利と言えます。

Ryzen 5 1600X,1600,1500XはCore i5に性能でも価格でも勝てず
Ryzen 5 1400はCore i3にも性能価格ともに勝てない

2017年4月には、Ryzen 7よりもコア数と動作周波数を抑えたRyzen 5シリーズが発売されました。明らかにこれはIntel Core i5の対抗馬になることを意識して発売されたシリーズです。

以下、Ryzen 5 1600X,1600,1500XとCore i5 7600K,7600,7500,7400を比較していきますが、Ryzen 5は実効性能・実勢価格でもCore i5に勝てず、Ryzen 5 1400にいたってはCore i3 7300にすら負けるという結果になりました。

・Ryzen 5 1600X v.s. Core i5 7600K

まずRyzen 5シリーズのフラッグシップモデルであるRyzen 5 1600XとCore i5 7600Kから比較します。1600XのXはクロックアップモデルを意味しており、同じくCore i5の7600KのKもクロックアップモデルを意味しているので比較対象としては妥当です。

結果的に実効性能で+12%もIntel Core i5 7600Kが勝利しています。コア数ではRyzen 5 1600Xの6コア12スレッドが、Intel Core i5 7600Kの4コア4スレッドに勝利していますが、動作周波数がCore i5 7600Kの方が3.8GHzでRyzen 5 1600Xの3.6GHzより高いため実効性能ではIntel Core i5 7600Kの圧勝となった格好です。

また私が確認している時点では価格もCore i5 7600Kのほうが、Ryzen 5 1600Xより安いです。

・Ryzen 5 1600X v.s. Core i5 6600K

またRyzen 5 1600Xは、2015年8月に発売された1世代前のSkylake世代Intel Core i5 6600Kにも負けています。

Intel Core i5 6600KがRyzen 5 1600Xに+5%実効性能で勝利しています。コア数は6コアのRyzen 5 1600Xの方が4コアのCore i5 6600Kより多く、さらに動作周波数もRyzen 5 1600Xの3.6GHzのほうがCore i5 6600Kの3.5GHzよりも高いにもかかわらず、実効性能ではCore i5 6600Kが勝利しているわけです。価格については、Core i5 6600Kの2015年8月発売から時間が経過して既に生産されていないため品薄となっており、第6世代Core i5 6600Kの方が第7世代Core i5 7600Kより高くなってしまっています。第7世代Core i5 7600Kの方が性能が高い上、Ryzen 5 1600Xにも大きく引き離して性能が高いので6600Kより7600Kの方がおすすめです。

・Ryzen 5 1600 v.s. Core i5 7600

次にRyzen 5 1600について見ていきます。このモデルは”X”が付いていないことからコア数は1600Xと同じであるものの、動作周波数は1600Xより低くなっています。

そのため比較対象であるIntel Core i5も”K”が付いていないCore i5 7600と比較するのが妥当です。1600の最初の”1″はRyzenの第1世代を表しており、次の”6″はグレードを表していますが、これはIntel Coreでも同じです。COre i5 7600の”7″は第7世代を意味しており、次の”6″は第7世代プロセッサの中でのグレードを表しています。

Ryzen 5 1600とIntel Core i5 7600を比較してみます。

Intel Core i5 7600の方がRyzen 5 1600よりも+9%実効性能が高いです。コア数では6コア12スレッドであるRyzen 5 1600の方が、4コア4スレッドであるCore i5 7600に勝利していますが、動作周波数がCore i5 7600が3.5GHzでありRyzen 5 1600の3.2GHzを上回っているのが主な勝因です。1コアあたりの性能を向上させたCore i5が現実的な用途である実効性能で勝利したということでしょう。

・Ryzen 5 1500X v.s. Core i5 7500

では次にRyzen 5 1500Xを見ていきます。Ryzen 5 1500Xの特徴としては1600Xの6コアよりも2コア減らして4コア8スレッドにしている点です。動作周波数についてはそこまで低いわけではありません。1600Xからコアを減らしたのが1500Xと見ていいでしょう。

Intel側の比較対象としてはCore i5 7500にします。Ryzen 5 1500Xのグレードは”5″ですので、同じくグレード”5″であるCore i5 7500は妥当でしょう。またCore i5 7500には”K”バージョンがありませんので、無印のCore i5 7500と比較します。

実効性能で+7%、Intel Core i5 7500がRyzen 5 1500Xに勝利しており、価格もCore i5 7500の方がRyzen 5 1500Xよりも安いです。

・Ryzen 5 1400 v.s. Core i5 7400

最後にRyzen 5 1400に焦点をあてます。これはCore i3にも実効性能で勝てていないという驚きの結果がでています。

まずは想定されていただろう対抗馬であるCore i5 7400とRyzen 5 1400を比較してみます。

Core i5 7400が実効性能+9%でRyzen 5 1400に勝利しています。コア数はどちらも4コアです。動作周波数はCore i 5 7400の方が低く3.0GHzしかないわけですが、3.2GHzあるRyzen 5 1400が負けたのはSIMD演算やアウトオブオーダー実行の優秀さでIntelにかなわなかったからでしょう。価格面でもCore i5 7400の方が安く勝利しています。

・Ryzen 5 1400 v.s. Core i3 7300

驚いたのはRyzen 5 1400がCore i3 7300にも実効性能で負けているという事実です。Core i5の対抗馬として出たはずのRyzen 5はCore i3にも勝てなかったということです。

たった+1%ですが、Core i3 7300はRyzen 5 1400に実効性能で勝利しています。当然、価格面では圧倒的にIntel Core i3 7300の方が安いです。

この両者のコア数と動作周波数に着目してみると面白いことがわかります。Ryzen 5 1400は4コア8スレッドであるものの、Intel Core i3 7300は2コア4スレッドしかありません。Core i3 7300はコア数こそ2コアしかありませんが動作周波数は4.0GHzもあります。一方のRyzen 5 1400は3.2GHzしかありません。コア数が多いため動作周波数を下げているのです。

このように「多いコア数&低い動作周波数」vs「少ないコア数&高い動作周波数」では殆どの場合後者が勝ちます。後者の場合1コアあたりの性能が高くなる傾向にあり、1コアあたりの性能が高いと実際的な用途では体感速度も実効性能も高くなるからです。Ryzen 5 1400 v.s. Core i3 7300の比較は「コア数が多くても性能が上がるわけではない」という典型例になっています。

Intel CoreよりRyzenの方がコア数が多くてもアプリケーションに並列性がなければ宝の持ち腐れになる

このようにRyzenが全敗しIntel Core全勝の結果になった理由は簡単です。Ryzenの方が1コアあたりの性能が低いからです。Ryzenのように7700Kの2倍のコア数である8コアのようにいくらコア数を増やしても実行するソフトウェアの並列性がない限りは実効性能を上げることはできません。これは1964年に世界初のスパコンが出来た時から現在に至るまで、大学の研究者から企業の技術者も頭を悩ませる古典的な問題です。いくら並列実行するためのコア数が増えてもそれを使いこなせるソフトウェアがなければ宝の持ち腐れであり、今回のベンチマークが示しているのは結局世の中の大半のソフトウェアは1コアのみで動くようにできているということです。

一般人の用途で多数のコアを有効活用できるのはゲームと動画エンコードくらいです。しかし日頃からゲームと動画エンコードしかひたすらやっていない人は極々一握りであり、ほとんどの人はブラウザでウェブ閲覧をしていたり、Wordで文書作成をしているわけです。そのような用途では1コアあたりの性能が高いIntel Coreの方が優秀です。

オンボードグラフィックスで十分な人にとってはIntel Coreシリーズの方がお得
Ryzen単体ではディスプレイすら映らない

またIntel CoreシリーズからみてRyzenが異様なのはオンボードグラフィックスがないことです。

今回AMDのRyzenではIntel Core i7と互角な勝負をするためにオンボードグラフィックス用のチップ面積を削りました。それを汎用プロセッサに振り分けたわけです。

逆にIntel Coreプロセッサは世代が重なるごとにオンボードグラフィックスのチップ面積を増やし着実に強化しています。IntelとAMDは向いている方向が全く逆です。

なぜIntelは汎用プロセッサ用のチップ面積を減らしてまでオンボードグラフィックス性能を年々上げているかというと、NVIDIA GeForceやAMD Radeonから顧客を奪って、オンボードグラフィックスであるIntel HD Graphicsだけで間に合うようにすることをIntelは狙ってるからです。

実はIntel Coreプロセッサの4コアの面積が、Intel HD Graphicsのオンボードグラフィックスコアの面積とほぼ同じということはあまり知られていないようです。

これは第6世代のSkylakeプロセッサのチップダイです。第7世代のKabylakeもこれと同じ割当です。

一番左の部分がオンボードグラフィックスであり、真ん中の4つの青い長方形がある部分がCPUの中枢とも言える汎用プロセッサの部分です。

このようにみると汎用プロセッサとオンボードグラフィックスの面積がほぼ同じだということがわかります。

以前はオンボードグラフィックスの面積はこんなに大きくなく非常に冷遇されていました。気休め程度に「ディスプレイが取り敢えず映りさえすればいい」程度の認識しかIntelにはありませんでした。

現在のIntel Coreプロセッサのチップは大半をグラフィックのために面積を割いています。

なぜそのようなことをするかと言えば、深層学習・金融分析などの科学技術計算や業務用として使う人にとっては画面出力のためだけに高価なグラフィックボードはオーバースペックすぎますが、だからといって3Dグラフの描画がもたつくのは困るからです。そこで拡張グラフィックボードいらずでそこそこのグラフィクス性能を確保するために、最近のIntelはNVIDIA GeForceやAMD Radeon潰しのためにオンボードグラフィクスに注力しています。

次にRyzenのチップを見てみます。

中央に2つ見える横長の長方形がRyzenの汎用コアです。

このように片方の長方形で4コア、もう片方の長方形で4コアで合計8コアにしています。

この図にはグラフィック部分が見当たりません。それは当然であり、Ryzenでは一切グラフィックスを載せていないからです。グラボを別途お買い求めくださいというコンセプトなのがRyzenです。

なぜここまでしてRyzenではオンボードグラフィックスを削ったのかと言えば、単なるコンセプトだけではありません。Intel Coreに太刀打ちするために仕方なくオンボードグラフィックスを削ったのです。

理由1:オンボードグラフィックスを削減して汎用コアにチップ面積をまわさないとIntelに太刀打ちできないから

Ryzenは一切グラフィックスコアをCPU内部に搭載していません。その部分を汎用プロセッサ部分に割り当てて、技術力ではIntelに敵わないから汎用コア用のチップ面積を増やすことでなんとかIntelの背中に追いつこうとしているのが今回のRyzenです。Intelプロセッサではオンボードグラフィックスと4コア8スレッドの汎用コアで半分ずつ面積を使っているものの、Ryzenではオンボードグラフィックスを載せない代わりに4コア8スレッドの汎用コアをもう1セット追加してなんとかIntel Core i7 7700Kと勝負しようとしたものの、やはりベンチマークでは負けてしまいました。Core i7 7700KどころかCore i5 7600Kにすら負けてしまった形です。でもそこそこ健闘した方だとは思います。

理由2:そもそもAMDはNVIDIAと並ぶグラボチップメーカーなのでオンボードグラフィックスをRyzenに搭載してしまうとAMDの自社グラボチップが売れなくなる

AMDはCPUではIntelに大きく水を開けられていますが、グラフィックボードではそこそこ健闘しています。NVIDIAという巨人がいるものの、グラフィックボードは単価が高いので稼ぎ頭です。

もしグラフィックボードが売れなくなってしまうとAMDとしても困ります。

例えばRyzenにオンボードグラフィックスを内蔵してしまうと、ゲーマーでない限りはオンボードグラフィックスで十分なのでグラフィックボードを買おうとしません。そうなるとグラフィックボードを売りたいAMDとしては好ましい展開ではありません。

Ryzenはあくまでも汎用プロセッサ。グラフィックプロセッサが欲しいなら別途グラフィックボードを購入する方向に持っていくほうがAMDとしても望ましいということです。

2017年の第1世代Ryzen 7とRyzen 5は残念で終わってしまったがThreadripper Ryzen 9には期待できる

しかし私は2017年5月15日にスペックがリークされたThreadripper Ryzen 9 1998Xに注目しています。16コア32スレッドと、3.5~3.9GHzもの動作周波数を確保しています。

近々発売されるであろうSkylake-XのフラグシップモデルであるCore i9 7920Xの動作周波数は3.3~4.3GHzよりも低くなると考えられ、Ryzen 9 1998X動作周波数が高くなる可能性もあります。ただしIntelはこのフラグシップモデルのCore i9 7920Xの動作周波数をまだ決定していないらしく、後出しジャンケンでRyzen 9 1998Xの性能を伺ってから動作周波数を決定してくるでしょう。

さらにコア数もIntel Core i9が最大12コアである一方、Ryzen 9 1998Xは16コアです。さらにTDPも、160WであるIntel Core i9 7920Xに比べてRyzen 9 1998Xの155Wの方が低いときています。カタログスペックを見る限りはRyzen 9の完勝です。SIMD演算が低サイクル数で完了すること、アウトオブオーダー実行で命令レベル並列処理がスムーズに行われること、そしてキャッシュ容量が十分でキャッシュレイテンシが小さいかどうかなどをクリアすれば実効性能でもRyzen 9が勝つでしょう。あとは価格がIntel Coreと同じか、少し安いくらいなら迷わずRyzen 9を選択することになります。

まとめ:
ゲーマー、動画エンコード専門ならRyzenもあり
ウェブ閲覧、文書作成などの一般的用途や深層学習・金融分析などの科学技術計算をやるならIntel Core i7 7700Kが優秀な上に安い

私から見ればRyzenは”パソコンはゲーム機”として捉えているゲーマー向けのCPUであり、硬派な用途である科学技術計算や文書事務作業などをやるならやはりIntel core i7 7700Kを選んでおいたほうが後悔がないと思います。

趣味でC#やC++を書かない、ExcelWordよりゲームをやる、Math Kernel Library(MKL)や数値解析と言われても全くピンとこないという人は、Core i7 7700KではなくRyzen1800Xが十分いい選択になると言えます。

Youtuberをやっていて動画の編集エンコードなどを日頃からやっていたり、録画が趣味だったり、ゲームが趣味の人はRyzen1800Xでいいでしょう。

Ryzenが惜しかったのはIntel Coreの実効性能を超えられないにしても、せめて価格だけでもRyzenがIntel Coreより安ければそれなりに存在意義はありました。性能でも価格でも負けてさらにオンボードグラフィックスが付いていないとなると、合理的判断をするならばIntel Coreを選ばざるを得ません。判官びいきでもしない限りRyzenの選択はありません。

ただし上述したようにRyzen 9にはかなり期待が持てます。カタログスペックを見る限りはRyzen 9の完勝です。あとは実勢価格がIntel Core i9より安ければ、Ryzen 9の実効性能が多少Intelに負けていても十分良い選択肢になるでしょう。

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