PUBG用おすすめグラボとCPUの比較 fpsベンチマークから最低,理想スペックを評価

近年のゲーム機は家庭用ゲーム機のシェアをスマホが奪う構図が続き、高価なゲームPCを利用することは世の中のゲーム全体からみたらマイノリティでしたが、2017年にリリースされたPUBGというゲームは一般層にもハイスペック志向のゲーム用PCを普及させることに成功しました。

PUBGはオープンワールドかつ100人近いプレーヤー(計算負荷の高いオブジェクト)を並行(パラレルではなくコンカレント)に計算処理する必要があり、また同時にFPSゲームであるためフレームレートの高さが重要です。そのためPCゲームの中でもかなりの高スペックを要求されるゲームに分類されます。

後で詳しく解説しますが、PUBGではCPUの1つのコアに極端に大きな負荷がかかります。特に多数のプレーヤーが密集する場所では1つのコアに処理が集中して、処理が間に合わずにフレームレートが下がる(fpsが落ちる)ことになります。これを避けるにはCore i9 9900K,Core i7 9700K、Core i7 8086Kのように5.0GHzの高さまでコアのターボブーストが可能なCPUが必要です。PUBGやApexLegendsをプレイしているプロゲーマーのプロフィールやTwitch配信・Youtube実況動画を見ていると、Ryzenを使っている著名プロゲーマーや著名ストリーマーがいないことがわかると思います。それはRyzenはコア数が多いだけで1コアの性能が極端に低くフレームレートが下がってしまうためです。

ゲームPCは一度購入すれば2~3年は使う人が多いでしょう。PUBGのおかげで今後数年はSteamなどで配信されるPUBG類似ゲームをプレイできるハイスペックPCが各家庭に存在するということです。PUBG推奨スペックPCはBTOで20万円~、ハイスペックになると35万円~ほどします。このような「高いゲーム機」を一般層にも普及させることに成功したことによって、重いゲームを売る土壌ができたということでPUBGのようなオープンワールドのFPSゲーム業界が活況です。

今後もこのカテゴリのゲームが続々投入されることが想定されますが、軒並みPUBGよりも動作が軽いことを謳い文句にしているゲームが多いです。つまりPUBGが動作するゲーミングPCを用意しておけば他のゲームも余裕で動作するような状況です。

2018年もそうですが2017年から既にPCパーツ業界やBTOパソコン業界も活況だったようです。その背景にはPUBGというゲームが登場したのが大きな要因です。

以下、自作PCとしてPCパーツを集めて作る人も想定して各パーツの選定について記載しています。BTOパソコンを購入する場合も想定しています。PUBG向けPCでは特殊な構成にする必要はなく、「ありふれた高スペックパソコン」で十分なので完成品PCを買う場合においても簡単に選択することができるでしょう。

グラフィックボード(GPU)はRTX2080TiかGeForceRTX2080 1世代前のGTX1080TiかGTX1080でもOK

まずゲームで結果を出すことを優先するのならフレームレート144fps張り付きを目指してフレームレートを上げることを優先します。

そのためには画質設定(テクスチャレベルなど)を徹底的に下げればいいだけなので、ゲーム描画の良し悪し(見た目)を気にしないのなら1080Tiほどのグラボは必要ありません。

ただし、プレイヤー自身がゲームの画質を気にする場合は高画質設定にしているユーザーが多く、TwitchやYoutubeで配信or実況をやっている人の中では観ている人がいる手前仕方なく高画質にしている人もいます。

ゲームの勝ち負けだけを優先するなら低画質設定でグレードが低いグラボでも十分です。

解像度1920×1080のフルHDで、最高画質、高画質、中画質、低画質それぞれのフレームレートの平均を取ったフレームレートベンチマーク結果は以下の通りです。

 

このように見るとTuring世代ならRTX2060以上、Pascal世代なら1080Tiでフレームレート100fpsの大台に乗っていることがわかります。120fps超を狙うのならRTX2080かRTX2080Tiになります。

NVIDIAの新モデルが発売される時期はベンチマーク結果が出揃うまで買い控えるのが得策

この選択肢は私が一番おすすめしている選択肢です。その選択肢は「買い控える」というものです。どうしても急いでいるというのなら別ですが、特に急いでいないなら「買い控え」がベストです。

このような「買い控え」のアドバイスは店員など「どうしても買って欲しい」という営業上の都合が働いているとどうしてもしづらいものです。しかし買い控えて新しいモデルを待つというのは重要な選択です。

2018年10月にNVIDIA社からPascal世代の次のチップとしてTuring世代チップを搭載したグラボがちらほら発売されました。しかし品薄でほとんど流通しておらず次の入荷日が一ヶ月後のモデルが非常に多いです。

ASUS、MSI、ZOTAC製品は比較的早くリリースされましたが、他の各社から出揃うのは半年以上かかりました。2019年の4月になってようやく出てきた製品もあるくらいです。

2016年5月のGeForceGTX1080,1070発売の際、980や980Tiを買ってしまった人達が怨嗟の声を上げていたことは記憶に新しいです。なぜなら1080,1070発売で980Tiと980が大幅に値崩れしてしまったからです。

幸いなことに仮想通貨は大暴落してくれているためマイニング需要が低迷し、1世代前の1080Ti,1080の価格も右肩下がりで安くなってきています。GeForceRTX2080Tiや2080も値崩れするかどうかはわからないのですが、RTX2080はGTX1080Tiより若干速い程度です。

つまり、GTX1080Tiより二倍程度も高価なRTX2080を買う価値があるのかという点ですが、その価値はないと私は結論づけています。

もしTuring世代のGPUを買うならRTX2080Tiを買うべきです。これはGTX1080Tiよりも1.5倍以上の性能を持っているため、同じ解像度で同じ画質設定なら1.5倍フレームレートが伸びます。ただし、CPUがボトルネックになってはいけないので9900K,9700K,8700K,8086KあたりのCPUを使うことは必須です。

画質設定を「低」「非常に低い」にするのが合理的にはベスト

ゲーム上での勝ちにこだわるなら画質設定を「低」または「非常に低い」に設定するのがおすすめです。余計なテクスチャ処理をせずに見栄えが良くなくなる一方で、視認性が良くなるからです。また無駄な計算処理を省きフレームレートを向上させてくれるメリットもあります。

このベンチマークでは「低」設定を”Competitive”と表記して評価しています。”Competitive”というのは「競争力がある」という意味なので、画質が低いと悪く捉えるのではなく勝つことにこだわるなら最も好ましい設定という意味で”Competitive”と呼んでいます。

これはGeForceGTX1060でPUBGを実行したものですが、一番左の画質設定「低」では軒並み100fps以上出ていることがわかります。画質を気にせず勝ちやすい環境を作るのなら1060かつ低画質設定で十分です。

RTX2080Tiの性能はGTX1080Tiの1.5倍 Turing世代のGPUを買うならRTX2080Tiがおすすめ

RTX2080Tiは非常に高価である割に大してGTX1080Tiから性能が伸びてない(たった1.5倍)なので手放しにおすすめできるグラボではないのですが、RTX2080が微妙であるため消去法的に、Turing世代のグラボを選ぶとしたらRTX2080Tiしか残らないのが現状です。

RTX2080Tiが高価だと思ったらRTX2080ではなくGTX1080Tiを買うことをおすすめします。

RTX2080はGTX1080Tiとほぼ同じ性能

RTX2080Tiはそれなりの支持を得ているのですが、RTX2080は微妙なGPUとなってしまいました。要因はRayTracingや機械学習用のTensorコアを用意したために、通常のCUDAコア演算部分がさほど拡張されなかったためです。

RTX2080はGTX1080Tiに毛が生えた程度の性能です。つまりほぼ同じです。それならGTX1080TiのほうがRTX2080より半額近く安く買えてしまうのですからGTX1080Tiのほうが得です。ただし、ゲーム以外にも機械学習をやる等の応用分野を想定している場合にはRTX2080のほうがいいでしょう。また、RTX2080が想定以上に値崩れして8万円程度まで下がってきたらRTX2080は推奨できます。

GTX1080Tiを選ぶに越したことはないがGTX1080から若干フレームレートが伸びる程度

1080Tiは1080よりも動作周波数が低いです。理由は1080Tiのコンセプトとしてはマルチコア化と同様でとにかくコア数を増やすというものだからです。しかしそうすると単位面積あたりの熱密度が高くなりチップが焼ききれてしまいます。そのため動作周波数を引き下げてなんとかTDPを250Wに抑えているのが1080Tiです。

コア数よりも動作周波数の高さが必要とされるPUBGにおいては1080のほうが親和性が高いです。

確かに1080Tiのほうがフレームレートは上がっていますが、コア数の向上や価格の向上に見合うだけのフレームレート上昇ではありません。

1080Tiを選ぶ場合も静音ファンを搭載したELSAジャパン製のグラボがおすすめです。

狙い目のタイミングとしてはGeForce RTX 2080Tiと2080が十分に流通した後です。1080Tiが値崩れすることが想定されます。

高画質設定にするとしてもGeForceGTX1080で十分

1080Tiよりも対費用効果が高い1080がおすすめです。画質設定をある程度高く設定して画質にこだわるのなら1060ではフレームレートが低くなってしまうので、1080を選んだ方がいいです。

画質設定を「ウルトラ」にしても100fps前後のフレームレートは出ています。144fps張り付きにしたいのなら「高」くらいの設定にすればいいでしょう。

またストリーマーのSPYGEA氏はスポンサーのサイコム社から提供されたゲーミングPC付属のASUS製ROG STRIX-GTX1080-A8G-GAMINGでプレイしていることを2018年3月8日のTwitch配信で公言しています。2017年8月にドイツで実施された「PUBG Invitational」で参加者全員に景品として提供された1080Tiも一応保有しているようです。

別の1080製品についてはELSAジャパンから販売されているGeForce GTX 1080 8GB S.A.C GD1080-8GERXSがおすすめです。この製品は静音ファンを搭載していることと、ELSAジャパン社は元々ドイツのELSA社の日本法人が分社化されてできた日本企業であり日本製であることがおすすめの理由です。

PUBGのGeForceGTX1070は画質設定”ウルトラ” or 4K解像度のとき60fps前後

上述したように、画質設定にこだわらずに単に勝てればいいということだったら1060で十分です。

しかしより高い画質設定にしたり、より高い解像度(2560×1440や4Kなど)でプレイしたいというニーズは一定程度あります。YoutubeやTwitchで配信しているゲーマー(特に海外)では高画質にこだわる傾向にあります。

画質設定を「非常に低い」「低」ではなくそれよりも高く設定したり、解像度をフルHD(1920×1080)ではなくWQHD(2560×1440)や4KにするのならGeForceGTX1070以上のグラボを選択する必要があります。

PUBGで144fps張り付きを狙うなら最低でもGeForceGTX1060+低画質設定

画質は気にせず、とにかくフレームレートの高さを優先したいのならGeForceGTX1060で十分です。

この動画のうち一番左の”Competitive”設定は最も「競争力のある」設定ということで低画質設定になっています。PUBGにおいては画質の高さは勝率に関係なく、単なる見栄えの問題です。画質さえ気にしなければ1060で十分です。

ただし1060はTDP120Wになるのでファンレスグラボは販売されていません。しかしCalyosのファンレスPCケースNSG-S0を使ったり、Streacom社のDB6を使えばこの1060もファンレスで冷却できます。

PUBGでは最低でもGeForceGTX1050Tiが必要 ただし60fps前後まで

グラボは最低でもTDP75Wの1050Tiを使うことになります。

1050Tiならアンチエイリアシングのみ”ウルトラ”にして、他の画質設定は妥協して「非常に低い」を基本とすれば60fps前後はでます。100fps以上を1050Tiで狙うのは難しいです。

しかし、1050Tiは台湾Palit社からファンレスグラボの「NE5105T018G1-1070H (GeForce GTX1050Ti 4GB KalmX) 」が出ているようにファンレスにすることができます。またこのPalit製グラボを買わなくても、適当な1050Tiを買ってStreacom社のファンレスPCケース「DB4」を使えばファンレスにすることができます。ファンレスの無音PCにこだわるなら1050Tiもありです。

CPUの選び方:PUBGはFPS確保のため1コアあたりの性能が重要 Intel CoreのTDP95Wプロセッサがおすすめ  Core i9 9900K, Core i7 9700K, Core i7 8086K, Core i7 8700Kのどれかが最適

PUBGではフレームレート(1秒間あたりの画面描画枚数)を100fps以上にすることが望ましいとされます。今のところPUBGではリコイル制御についてはサーバーと同期を取っておらずクライアントPCの処理のみで行っています。そのため100fps以上のフレームレートの高さがリコイルのしやすさに直結します。

できれば上限の144fps張り付きが理想ですが、序盤の密集地帯ではCPUの1コアあたりの性能が低いとフレームレートが低くなりがちです。

PUBGでは各プレーヤーオブジェクトを複数コアで並列(パラレル)ではなく、1コアで並行(コンカレント)に処理している

PUBGで扱う重いオブジェクトとしてはRoundに参加している100名近い各プレーヤがあてはまりますが、それら多数のオブジェクトの同期を取りながら1つのコアで集中的にプレーヤーの動作を処理するのがPUBGです。OSのマルチタスクスケジューリングアルゴリズムでいう、ラウンドロビンスケジューリングのように個々のプレーヤーのオブジェクトの動作をCPUの1コアだけに割り当てて処理しています。このオブジェクトの計算をいかに短時間でさばけるかはCPUの性能に大きく依存します。

各プレーヤーの計算処理をCPUの各コアに割り当てて処理することを並列(パラレル)処理といい、1つのコアのみを使って各プレーヤーの計算処理を順々に交代制で処理していくことを並行(コンカレント)処理といいますが、PUBGで採用されているのは後者の並行処理です。

PUBGのみならず他のバトルロワイヤルゲームでも1コアのみで並行処理をしています。せっかくマルチコアなのに1コアしか使わない理由は、複数のコアに分散してプレーヤーの動作を処理すると、あるプレーヤーに割り当てられたコアの処理は早く終了する一方で他のプレーヤーに割り当てられたコアの処理が遅く終了するような時間的なラグ(ズレ)が発生してしまい、各プレーヤーの時間経過を正確に一致させることができなくなってしまうからです。このようなズレが発生すると「隠れたはずなのに被弾した」といったラグが発生してしまうので、1コアがすべてのプレーヤー動作処理の面倒をみてCPU処理上ではラグが発生しないようにしています。※ただしネットワーク通信上のラグ(サーバーまでのレイテンシによるラグ)はCPUの問題ではなくネットワークやサーバー側による問題です

複数のオブジェクト計算を高速処理するために1コアあたりの性能が重要

PUBGでは周辺(敵)プレーヤーの動作も画面には見えてないだけで計算機(ゲームPC)の中ではCPU上で計算処理が行われています。そうしないと敵の足音などをどの方向から鳴らせばいいか判断できないからです。

そのためPUBGを実行しているPCは自プレイヤーの近傍にいる敵プレーヤーのオブジェクトの計算処理を常に実行しておりこれがCPU処理が重くなる要因です。

PUBGでは一時期、ゲーム開始直後の航空機から勝手に強制的に降下させられるバグがありました。こうなると狭い範囲にほぼ全てのプレーヤーが降り立つことになりますが、このバグが顕在化したときには非常に処理が重くなります。

これはPUBGにおける計算処理の仕組みにおいて示唆があります。プレーヤー数は100人で同じなのに、狭い範囲に降り立つのと、広い範囲に散らばるのとではゲームPC(クライアント)への負荷が異なることを表しているからです。

またこのようなときにラグが発生することから、一箇所にプレーヤーが集中するとサーバー側の負荷も高くなることもわかります。その理由としては一箇所に固まっているプレーヤーの位置情報はサーバーからゲームPCに送信され、遠方のプレーヤーの位置情報についてはサーバーからPCに送信していないからだと考えるのが自然です。一箇所に多数のプレーヤーが集まれば、密グラフどころか”完全グラフ”レベルで相互に情報を送信することになるためサーバーの負荷は極めて高くなります。一方で十分にプレーヤーが分散していればそれは”疎グラフ”になるため、サーバーは各プレーヤーの近傍にいる一部の他プレーヤー情報のみを送信すればいいのでサーバー負荷が軽くなるわけです。

先の例はバグによる狭い範囲へのプレーヤー集中でしたが、バグに関係なく発生することもあります。

例えばDONCUPのような2~4人チームの大会で見られることですが、DONCUPでは余計な戦闘(交戦)をせずにさっさと次の円の中に先へ先へと移動して不毛な戦闘を避ける傾向にあります。そのため参加プレーヤーの人数の減りが遅く、終盤戦でも狭い範囲に多数のプレーヤーが存在することになります。

近傍に数多くのプレーヤーが潜伏しているとCPU負荷が重くなりフレームレート(fps)が減少しますが、これは近傍の敵プレーヤーオブジェクトの計算処理をCPUが捌ききれてないからです。

このようにフレームレート(fps)が低下することによって、味方の近傍に敵プレーヤーがどのくらい潜伏しているかがわかってしまうことはメタ情報になってしまうので本来望ましくないのですが技術的観点から仕方ないことです。

このようなときでもフレームレートを落とさないようにするには、1コアあたりの性能を高く維持することが重要です。そのためPUBGにおいてはRyzenよりもIntel Coreのほうがフレームレートが高くなる傾向にあります。

ただしPUBGはマップが広いオープンワールドのゲームなので、初期段階で十分に各プレーヤーが分散していればそこまで負荷は重くなりません。また終盤になれば各プレーヤーが一箇所に集結しますが、その頃にはプレーヤー数が減少しているのでやはり処理は重くなりません。

重くなるレベルまでプレーヤーが集結するのは、ゲーム開始間際のSanhokでいうBootcampなどの激戦区が挙げられます。このように大人数が一箇所に集まるときには、複数のオブジェクト(各プレーヤー)の動作をすべて計算処理しなければならないのでCPU負荷が高くなります。

PUBGではプレーヤーオブジェクトを1コアで集中的に計算する処理が中心なのでRyzenのようにコア数の多さは必要ない

よく言われるのは「PUBGはRyzenに対応していないのでIntel Coreのほうが速い」という意見です。これは正しいのですが「対応していない」という大雑把な表現をより正確に言うと「Ryzenのような多コアプロセッサはPUBGのようにオブジェクト間の同期を正確に取る必要のあるゲームには向いていない」ということです。

本来ゲームというのはRyzenのような多コアのマルチコアプロセッサが有利です。一般論としてゲームでは1コアあたりの性能よりもコア数が重要です。多数のオブジェクトを多数のスレッドで実行し、そのスレッドを各コアに割り当てるといった処理の場合はRyzenのほうが有利であり実際そのような処理が向いているゲームは多数あります。

例えばPS4アンチャーテッド4のロッシーの館では多数の人物がオークション会場に集まる様子がプロセッサで描画されていますが、これらのオブジェクトは別々に独立して動いてもOKで、戦闘シーンでない限りオブジェクト同士の同期が取れていなくても弊害はありません。

しかしPUBGのように各プレーヤーの動きの僅かな同期のズレでも勝ち負けに影響するゲームにおいては、オブジェクトごとにスレッドを走らせて多コアで処理するといった方式は使われません。

多コアで実行すると必ず同期処理が必要になります。同期を取らないと、ダメージを受けていないはずなのに受けていたことになってしまうという「ゲームPC内部処理でのラグ」が起こってしまいます。サーバーとクライアント間のレイテンシによるネットワーク通信ラグ以前の問題です。

このような多スレッド方式を採用してしまうと、オブジェクト間の同期をとるためにいちいちバリア同期が必要になり、非常に同期コスト(待ち合わせ時のクロック数)がかかりまともにリアルタイム性を実現できません。

これは60fpsどころか100fps以上、できれば144fpsというフレームレートの高さが要求され、たった数フレームの違いが大きな差となって現れるようなシビアな描画が要求されるPUBGのようなゲームなら尚更です。

よってPUBGでは各プレーヤーのオブジェクトをたった1つのコアで処理しています。一定時間処理したら次のプレーヤーオブジェクトに切り替えて、また一定時間処理したら次のプレーヤーオブジェクトに切り替えるといったことを、短時間の間に高速にオブジェクト切り替えて処理しています。このように1つのコアで複数のオブジェクトを切り替えるのはOSのタスクスケジューリングにおけるラウンドロビンスケジューリングのようなものです。

PUBGはたった1つのコアで各プレーヤーの処理を一手に引き受けて計算処理しなければならないので1コアの負担が極めて重くなります。

その一方で、他のコアはサーバーとのネットワーク通信処理、各種ログ(情報)の表示処理といった軽い処理をしています。これらの処理は、各プレーヤー(オブジェクト)動作の計算処理に比べたら非常に軽いものです。

そのためPUBGではRyzenのように多数のコアがあってもコアを使いきれません。それどころかRyzenのように1コアあたりの性能が低いと各プレーヤーの動作を計算処理しきれなくなりフレームレートが落ちることになります。

Core-X、Xeon、Ryzenはフレームレートが伸びずらい傾向 もし選ぶならできるだけコア数の少ないCore-Xを洗濯

以上のことはRyzenのみならずIntel Core-Xシリーズにも言えることで、PUBGにおいてはIntel Core i9 7980XE(2.6GHz)のように18コアあっても動作周波数が低いプロセッサではフレームレートが伸びません。Xeonであっても同じです。PUBGのようなバトロワゲーに最適なのはどんなに多くても12コア程度までです。

PUBG向きのプロセッサは、Core i9 9900K,9700Kのように1コアあたりの性能が高いプロセッサです。これらのCPUに共通しているのはTDPが95Wもある高消費電力&高発熱のCPUであるという点です。Core i3というと性能が低い印象を持つかもしれませんが、Core i3 9350KでもTDP91Wあり、実はCore i7 9700KとCore i3 9350Kは1コアあたりの性能では互角です。

動作周波数を高くして1コアあたりの性能を高くすることを優先すると、どうしても電圧を高くする必要があり電流も増えるため消費電力は動作周波数の2乗に比例して増加するのでTDP95W級の発熱量(消費電力)になります。

1コアあたりの性能を追求するためにはコア数が少なく(6~12コア程度)、消費電力が高い(TDP95W程度)プロセッサを選ぶ必要があります。

Intelが「ゲーミングCPU」としているCore i9 9900Kかコア数が少なめのCore-Xシリーズが最もおすすめ

PUBGが流行する以前は、ゲームといえば動作周波数が低いプロセッサを多数搭載したもので十分でした。PS4が典型例です。PS4は処理能力の低いコアを多数搭載しています。ゲームとは本来そういうプロセッサで十分でした。

しかしPUBGやCoD BO4 Blackoutモードなどのゲームでは1コアに極端に大きい負荷がかかる仕様になっています。これはソフトウェア側の努力で改善できるものではありません。多数のプレーヤーの同期を取らないとゲームとして成り立たないので、ゲームの仕組みそのものが1コアに処理が集中せざるを得ないものになっています。

そのためPUBGの流行で、Intel Coreのように1コアの性能が優秀なプロセッサがプロゲーマーに採用されるようになりました。コア数は多いけど1コアの性能が低いRyzenは全く採用されていません。

この潮流に乗ってきたのが最近のIntel Coreプロセッサです。

最近のIntelやAMDのプロセッサをみてみると、コア数が増えるにつれてベースクロック周波数は下がってきています。コア数が増えると消費電力が増えるのでベースクロック周波数を下げざるをえないからです。

Core i7 7700K(4コア)からCore i7 8700K(6コア)のようにコア数が増えたときにはベースクロックもブーストクロックも下がりました。

しかしその後でてきたCore i7 8086K(6コア)では最大動作周波数が5.0GHzになりました。これは2017年にPUBGが大流行したのを受けて、8700Kの高周波数版として発売されたCPUです。

そしてこれは2018年10月20日発売の第9世代Coreプロセッサでも受け継がれました。Core i9 9900Kはベースクロック周波数は3.6GHzですが最大で5.0GHzのコアを2つ用意することができます。また8コアすべてを4.7GHzで動作させることもできます。PUBGは8コアすべてを使い切る仕様になっていないため、1~2コアを5.0GHzにして動作するようになるでしょう。これはOSによるスケジューリング状態をもとにCPUが自動的に判断して動作周波数を上げてくれます。

このCore i9 9900Kなら同時に動画エンコードをしてもフレームレートは下がりません。PUBGをしつつ同じPCでリアルタイム動画エンコードをしてTwitchやYoutubeで配信することもできます。そのような用途を想定しているユーザにも最適なCPUです。

デメリットは価格の高さです。Intel Coreプロセッサは価格が高く性能が高いプロセッサなのでここを許容できるかどうかです。AMD Ryzenは価格が安く性能が低いプロセッサですが、性能を低くしてフレームレートが落ちると困るプロゲーマーは多少値がはってもIntel Coreを選んでいるようです。

すでに持っているならCore i7 8086KでもOK

2018年6月8日に発売されたCore i7 8086KはPUBG用途に最適化されているCPUです。

Core i7 8700Kの6コア12スレッド、12MBキャッシュなどのアーキテクチャをそのままにして、単に動作周波数を4.0GHz~5.0GHz引き上げたものがCore i7 8086Kです。

動作周波数を引き上げて1コアあたりの性能を引き上げると、他プレーヤーなどのオブジェクトの計算処理を単位時間あたり多数回実行できるためフレームレートが伸びます。一箇所に多くのプレーヤーが集まる状況下では特に、Core i7 8086Kのような高クロック周波数のCPUの性能を発揮できます。

Core i7 8086Kの欠点は価格の高さです。動作周波数を高くするとクロックの立ち上がりが鈍くなり論理回路が正常に動作しないチップが出てきます。そういったチップは動作周波数を下げてCore i7 8700Kとして販売します。高クロック周波数でも動作したごく一部のチップだけを選んでCore i7 8086Kとして販売するためどうしても高額になります。予算さえ許せばCore i7 8086KはPUBGに最適なCPUです。8コア8スレッドになるCore i7 9700KよりもCore i7 8086Kのほうがフレームレートが伸びる可能性もあります。

しかしCore i7 8086Kは生産量が少なく価格が高止まりして流通量が減ってきています。既にCore i9 9900Kが発売された今となってはCore i7 8086Kを積極的に選ぶ動機付けは弱くなっています。

第8世代プロセッサならCore i7 8700K

8700Kが優秀なのは1コアあたりの性能を落とさずに、7700Kの4コアから8700Kの6コアまで汎用コアを2コアも増やしたことです。

普通はRyzenのようにコア数を増やせば同時に1コアあたりの性能も下がるものですが、8700Kは前世代の7700Kから1コアあたりの性能を落とさずにコア数を純増させることに成功しました。

PUBG用なら7700Kでも十分です。ただし7700KではPUBGと動画リアルタイムエンコードを同時に実行するとfpsが低下したり動画エンコードが追いつかずコマ落ちが発生する確率が高いです。

8700Kほどのコア性能かつ6コアもあれば、PUBGと動画リアルタイムエンコードを同時にこなしてもフレームレート144fps張り付きになります。

しかし2018年10月頃からこのCore i7 8700Kは品薄になってきました。2018年10月20日に

既に8700Kを持っているならまだしも、これから買う予定なら第9世代を買うのがおすすめです。

エンコードを同時にしないならCore i7 7700Kでも十分

現在においてCore i7 7700Kを購入するのはおすすめしません。今となっては9700Kや9900K、9700Kが発売されているからです。

既に7700Kを持っているならあえて8700Kにする必要はありません。ゲーム画面の同時エンコードをやらずに単にゲームだけをやるなら7700Kでも十分です。

しかし、これからCPUを新しく調達するなら第9世代Core i9 9900KやCore i7 9700Kを選ぶのが得策です。

7700Kと8700Kと9700Kの価格はさほど変わりません。それなら新しい世代の9700Kや8700Kを選んだほうがいいです。また7700KのPCを買ってしまうと、後から9900Kや9700Kや8700Kに交換したくなったときにマザーボードも取り替えることになります。「第7世代KabyLake」と、「第8世代CoffeeLake・第9世代CoffeeLakeRefresh」の間でチップセットの互換性がないからです。

PUBGをプレイしているときに同時にリアルタイムで動画エンコードをしない限りは7700Kで十分ですが、PUBG以外にも同時に重たいアプリケーションを実行するのなら9900K、9700K、8700Kを選ぶのがおすすめです。

動画エンコードというのは非常に並列性が高いアプリケーション(応用)なので、4コア8スレッドの7700Kよりも、8コア16スレッドの9900Kや8コア8スレッドの9700Kや6コア12スレッドの8700Kのほうが有利であり、コア数が多い方がエンコード処理がPUBGのフレームレート数(fps)に影響を与えづらくなります。

メモリは16GB推奨 32GBや64GBなど容量が大きいに越したことはないが優先して予算を配分するほどではない

ゲーム以外の用途でもメモリは以外に消費します。PUBGの場合はゲームだけでも8GBは必要です。OS分やその他ブラウザで多くのタブを開くことも考慮すると16GBは最低でも欲しいところです。メモリを16GBにするというのが2018年でも主流であり、また2016年当時も最低でも16GBと言われていたものです。

ただし2016年当時の事情として2016年においては16GBメモリが6000円後半から8千円で買えました。

2018年ではその3倍程度まで価格が高騰しています。なおさら16GBで済ませて置くのがいいです。

注意すべき点として、もし今後Ryzenを使用することがあるならRyzenではCL17のメモリでないと相性問題が出やすいようです。Intel Coreを使うならCL値は全く気にする必要はありません。

8GBでは足りない

PUBGをやるのに8GBでは下手するとスラッシングが発生します。スラッシングというのはOS(Windows10)が、ページファイルを物理メモリ上に確保できずに論理メモリとして補助記憶(SSDやHDDなどのストレージ)に追い出し、同時にSSDから新たなページファイルを物理メモリに持ってくるといった一連の作業が繰り返し頻発し、パソコンのパフォーマンスが低下する現象のことを言います。補助記憶がSSDならまだこのスラッシングによる痛手は小さいですが、メモリ(RAM)へのアクセス速度に比べたらSSDへのアクセス速度は相当遅いのでやはりボトルネックになります。最低でも16GBにするべきです。

動画編集するなら64GBもあり

以下は特殊な用途向けです。PUBGをプレイするだけでなく動画としてキャプチャして編集し動画投稿する人向けです。

PUBGのプレイ動画を本格的に編集するのなら64GBメモリがあると動画編集がしやすくなります。動画ファイルをメモリ上に置いて編集するとかなり編集作業が軽くなります。

ただし、リアルタイムエンコードで垂れ流し(YoutubeやTwitchのライブ配信)をするのならメモリは16GBもあれば十分です。PUBGのプレイ動画をキャプチャして保存しておいて後で編集するといった場合は64GBあると便利ですが、リアルタイムでPUBGを垂れ流し動画配信するだけなら16GBで十分です。

もし64GBにする場合は16GBのメモリ4枚になります。現在16GBメモリモジュールは高額なので、4枚揃えるとなると下手したらグラボよりも高額になるかもしれません。

SSDは必須 M.2規格のNVMeがおすすめ ゲームが落ちたときの復帰が早くなるメリットもある

SSDは必須だと思ったほうがいいです。ゲーム用途でなくても現在においてSSDを搭載していないパソコンはIOの待ち時間が長く使い物になりません。

PUBGではメモリ約8GBを消費しますが、それはゲーム中のマップ情報をすべてメモリ上に載せているわけではありません。必要になったらその都度マップ情報をSSD(HDDにインストールしてる場合はHDD)からメモリへロードし、CPUはそのメモリに載っているデータに対して計算処理をします。

つまりゲーム中はストレージ(SSDやHDD)からのロード(読込)が常時行われることになります。これがHDDの読込速度では追いつかなくなります。

またPUBGはゲーム中にアプリケーションが落ちることがあります。ひどい場合だと大会中に落ちてるプロゲーマーもいます。再起動すればゲームに復帰できますが、起動に時間がかかると復帰したときには”終了”してしまっていることもあるでしょう。

HDDだとゲームを再び起動するのに時間がかかります。SSDにするとIOがHDDに比べて相当高速化されるので起動時間を大幅に短縮できます。

またSSDは最低でも512GBにしておくことをおすすめします。OSインストールやOffice程度のインストールでも、細々としたアプリをインストールしていくうちに2年くらい使っていると256GBではすぐに一杯になります。私はゲーム以外の用途でも256GBを2年も経たずにアプリケーションインストールのみで食いつぶしました。今は1TBのNVMe M.2 MLC SSDに換装済みですが、換装作業は意外と面倒でリスクもあるのでできるだけ最初の購入時にSSDの容量は大きくしておくのがいいです。

PCI Express接続のSSDが理想(M.2規格含む)

SSDの接続方式には主にSATA接続とPCI Express接続がありますが、PCI Expressのほうが高価で高速です。PCI Express接続は消費電力が大きいですがデスクトップPCなら大して大きな消費電力ではありません。

ゲーム用PCとしてはPCI Express接続のSSD搭載を推奨されていることが多いです。台湾ADATA社のSSDでも最上位のPCI Express接続M.2規格のNVMe SSDはゲーム用途を想定して売られています。

さらにPCI Express接続には、接続コネクタの規格によってM.2タイプとPCI Expressスロットに直挿しするタイプがあります。カタログスペック的には両者に差はありませんが、PCI Express直挿しするタイプは冷却するための基盤面積が広いためチップを冷やし易く、読み書きを高速化したりチップを長持ちさせることができます。

M.2は逆に冷却しにくいのですが、スペースを浪費せずコンパクトであるといったメリットがあります。またM.2規格のSSDは市場価値が高い(流動性が高い)ため、PCI Express直挿しタイプのSSDより安く購入できる上に、売却時も売りやすくなります。M.2規格のほうがオーソドックスなので購入するならM.2規格のものがおすすめです。

・Intel 600p Series SSDPEKKW512G7X1

この製品は悪くはないのですが少し古い製品です。今SSDは発展途上の黎明期であり、非常に短期間で大きく技術進歩します。具体的にはSSDを長持ちさせるための書換え時アルゴリズムにおいて各企業が日進月歩で研究開発をしているため、できるだけ新しい製品を買うのが一つの原則です。一昔前は大学の研究分野においてもSSDの長寿命化アルゴリズムの考案は研究者が多い人気のあるトピックでした。600pシリーズはサイコムのゲームPCのカスタマイズにて選択できるようになっていますが、私としては新しいIntel 760pシリーズをおすすめします。

インテル SSD 600pシリーズ 512GB M.2 PCIEx4
インテル(Intel)
¥13,000(2024/04/19 23:28時点)

・Plextor PX-512M8SeG

東芝製NANDを採用したTLCタイプのSSDです。これもサイコム製ゲームPCにおいて選択できるSSDです。ただIntel製と比べて価格が高止まりしているので、価格面であまりおすすめできません。品質はこちらの方が高いです。このM8Seシリーズは2016年に発売されたPlextorのM8Peシリーズ(MLC)をTLC化した廉価版です。

また以下のIntel SSD 760pシリーズは、サイコムのBTOパソコンにおいては256GBモデルしか選択できないようになっていますが、単品としては512GBモデルも存在します。2018年に発売された新しいIntel製のNVMe SSDであり価格の安さの割に低発熱性、ランダム読書速度に優れているのでおすすめです。

ソリダイム(Solidigm) SSD 760p M.2 PCIEx4 512GBモデル SSDPEKKW512G8XT
ソリダイム(Solidigm)
¥19,980(2024/04/19 23:28時点)

SATA接続のSSD 価格の安さを優先するならこちら

SSDはパソコン構成部品の中でグラボと並んで高額です。場合によってはCPUよりも高額です。NVMe SSDだと価格が高すぎるという場合にはSATA接続タイプでも問題ありません。若干遅くなる程度です。ゲーム以外の用途だったら迷わずSATAでもいいのですが、PUBGのゲーム復帰時のようにロードを高速化したいということだったらNVMeにもメリットがありこれは予算との相談になります。

SATA接続の安いSSDでいい場合は以下のSandiskかCrucialのいずれかがおすすめです。

・ウルトラ 3D SSD SDSSDH3-500G-J25

SATAのSSDとしては王道中の王道です。SATAならこれを選んでおけば間違いありません。Sandisk社はWesternDigital子会社の米国企業ですが、SSDの本体となるNANDチップの製造工場は三重県四日市市にあるので実質日本製です。

次に安いものとしてCrucialがあります。Sandiskより若干安い傾向にあります。

・MX500 CT500MX500SSD1/JP

Intel Micron連合のNAND工場で製造されているチップを搭載したSSDです。Crucialは米国Micron社のブランド名なので確かな品質です。

HDDは動画キャプチャ&エンコード保存をするなら必要な場合もある 単にPUBGプレイだけならHDDは不要

私はPCにHDDを内蔵させない派です。なぜならHDDは騒音(ノイズ)が大きく消費電力も大きく、駆動部品を使っているためSSDに比べて故障率も高いからです。

どうしてもHDDが必要なら外付けで用意すればいいと思います。

またPUBGのプレイ自体においてはHDDは全く必要ありません。PUBGのインストール容量は高々30GBであり実際は10GBもありません。現在SSDにおいて主流の容量である1TBや512GBもあれば十分です。

ただし、ゲームプレイ動画をキャプチャしそれをリアルタイムエンコード後に保存しておくのならHDDの搭載も選択肢です。大容量のSSDはそれなりに高いので人を選びます。それなりの画質を維持するならキャプチャ後の動画サイズは極めて大きくなるのでSSDでは容量あたりの価格が高くなりすぎますし、またキャプチャ動画は時間がながくなるから容量が大きくなるだけであって1秒間あたりの転送データ容量は多くないです。HDDのような低速補助記憶(ストレージ)で十分です。

買うならWesternDigitalがおすすめです。HGSTよりも耐久性があり、またSeagateなんかとは比較にならないほど信頼性が高いです。

PC電源は750Wの80PLUS Titanium認証がおすすめ

電源はどうしても予算を削りがちになるPCパーツですが、いいものを使うと低消費電力になる上に12年保証品もあるので、PCケースとPC電源はそのままにしてCPU+マザーボード+メモリだけ交換していけば非常に長期間使えます。電源は故障した時に最も損害が大きくなりやすいPCパーツなので、高消費電力の高負荷ゲームを長時間やるのなら信頼性の高さを優先して選ぶのをおすすめします。

SilverStone SST-ST75F-GS V2

悪くはない電源だとは思うのですが、Gold認証なのは少し予算を削っているPCだという印象です。またサイコムではPC電源もカスタマイズできるのでSeasonic電源にすることができます。

PUBGで最適な1080+8700KだったらTDP180W+TDP95Wなので、消費電力は発熱量よりも少し大きくなることを考慮しても300W台です。たとえ1080Ti(TDP250W)に換装しても400W弱です。

750Wあれば丁度中間の部分の375Wあたりに消費電力が来ることになります。電力効率は丁度中間地点で最大値を取る(大学でなくとも高校の物理で電力効率を最大化する点を相加平均相乗平均の不等式を使い求められる)ので、750Wはなかなか丁度いい選択です。SLI構成にでもしない限りは750Wで十分です。

こだわるなら以下のSeasonic PRIME Ultraシリーズがおすすめです。

Seasonic PRIME Ultra 750 W Titanium SSR-750TR

この電源より品質が良いものはないというくらいのものなので、これを選んでおけば価格面以外では完全に優れている電源が手に入ります。

液晶ディスプレイはフルHD(1920×1080)で十分 ただし144Hz以上のリフレッシュレート対応を選ぶのがおすすめ

PUBGはフルHD解像度(1920×1080)で十分だということにはほぼ異論はないと見ていいです。PUBGではフルHDもあれば十分です。

4Kにするとフレームレート(FPS)が落ちるのでデメリットが大きいです。

フレームレートは60fpsも出ればそれで十分という意見もありますが、PUBGでは「100fps以上あるとリコイルがしやすく、また車など高速異動している対象を狙いやすい」という意見があります。

そうなると液晶ディスプレイもリフレッシュレート60Hzでは足りなくなります。144Hzや240Hz製品を選ぶのがいいでしょう。

EIZO FORIS FS2735

EIZOのゲーミング用はFORISというシリーズがありますが湾曲モニターは出ていません。

また144Hzのリフレッシュレートに対応するのは27インチのFORISシリーズだけです。

ASUS ROG STRIX XG27VQ 湾曲モニター

湾曲ディスプレイにこだわるならこのROG STRIX XG27VQが手頃です。ROG STRIXはゲーミングを想定したASUSのブランドシリーズ名です。

リフレッシュレートは144Hzあるため十分です。

PUBGを含めてゲームではテンキー不要 ゲーム以外の通常用途でもテンキーレスタイプがおすすめ

PUBGにおいてはテンキーは不要です。またゲームに限らず他の一般的用途でもテンキーは不要なので、ゲーム以外の用途に使うことを想定していてもテンキー無しのキーボードを選択するのがベストです。テンキーを必要とするのは手書きの金額数値をコンピュータ端末に入力するという銀行業務くらいです。しかも銀行業務でも支店のテラーという窓口とその周囲の従業員程度です。

私はRealforceのテンキーレスキーボードをおすすめします。Realforceではゲーミングモデルとそうでないモデルとがありますが性能的な差はないです。

私が初めて購入したRealforceキーボードはゲーミングモデルとして売られている「REALFORCE 108UD-A XE31B0」ですが、普通に文書入力作業に使っています。何をもってゲーミングモデルとされているかというとキーボード裏面にDIPスイッチがありキーの配置を変えることができるからです。

そのため、Realforceならゲーミング用と想定されたモデルであってもゲーム以外の一般用途に使えますし、一般用途のRealforceでもゲーミング用として使えます。

キーボードは「静音」「軽い打鍵(指が疲れない)」「テンキーレス」の3点を満たすものとして以下の2機種をおすすめします。

 REALFORCE TKL SA R2TLSA-JP3-BK

2018年3月発売。16年ぶりにリニューアルされたRealforceの第2世代キーボードです。静音がうりであり、さらにテンキーレス。キーの荷重はAll30gであり世の中に存在するキーボードの中で最軽量です。難点は価格が高いことです。

Realforce91UG-S NG31BS

2016年5月に発売されたゲーミング用を想定したキーボード。発売前に展示された際はゲーミングキーボードモデルとして発表されていました。このキーボードは2017年にリニューアルされた第2世代ではなく、従来の第1世代の中で最も最後に発売されたキーボードです。第1世代だけあって上記のモデルよりこちらのほうが安いです。こちらのキーボードは上記モデルよりも少しだけ静音性に劣ります。それでも十分静かですが、静音性を優先するなら第2世代の上記モデルのほうがいいでしょう。

具体的なPUBG向けBTOパソコンならサイコム製が最適

PUBGはApexLegendsやFortnite等の競合するゲームが数多くリリースされたことから日本国内でPUBGを主戦場とするプロゲーマーや配信者が減ってきています。そんな中現在でも比較的PUBGに取り組んでいるストリーマーとして釈迦氏が挙げられます。彼は2019年9月にスポンサーのサイコム社からBTO PCを貸与されたことをTwitchで報告し開封動画も掲載しています。

ベースとなっているモデルはサイコムの「G-Master Hydro X299II」というもので、第9世代のCore-XプロセッサとTuring世代のGPUを採用しつつ、デュアル水冷であることを主軸に据えたモデルです。

背景を解説しておくと、釈迦氏はこれまで一台のPCのみでPUBG+リアルタイム動画エンコード配信(Twitch配信)をしており、ゲームの処理も動画エンコード処理も全く捌ききれていない状態でした。

そこでスポンサーのサイコム社からBTO PCを貸与してもらい2PC構成でゲーム用と配信用を分ける運用にするのが今回の文脈です。

この新PCはサイコムの公式ウェブページからカスタマイズできるものと比較して、一部特殊仕様になっています。

例えば釈迦氏はサイコムPC開封動画で「 本来2TBのSSD+6TBのHDD構成の予定だったけど、どうしても全てSSDにしたいと要望出して2TB+2TB+2TBで6TBのSSDにしてもらった」と言及しています。RAIDを組み合計にしていたり

この「G-Master Hydro X299II」はBTO PCとしてPUBG用途で確かに優秀なのですが、完全に自作ならもう少しよい作りにできるなと思うところは多々あります。そこでサイコム構成を元にしながらより改善するための施策を指摘していきたいと思います。

CPU:Core i9 9920X(12コア、ベースクロック3.5GHz)

先程取り上げたサイコム製デュアル水冷PCはCore i9 9920Xをサイコム側からおすすめされて選択したようです。「16コアのCore i9 9980XEにして提供もできますが12コアの9920Xのほうがおすすめです」と提言され実際に9920Xを選択したようです。このサイコム側のアドバイスは評価できます。無駄にコア数を増やしてもFPSゲームではフレームレートが伸びずに不利になるだけです。利用者がストリーマーということを考慮してサイコムは適切にアドバイスしたことになります。「G-Master Hydro X299II」でのCPU選択肢は以下のようになっています。

少し以前に私がCPUラインナップを見たときは既に9920Xは受注停止になっていましたが、9900Xの在庫は受注停止になっていませんでした。しかし今では9900Xも受注停止になってしまっています。その理由としては、9920Xや9900Xはコア数が8コアよりも多いのにもかかわらずベースクロック周波数が3.5GHzあるため好んで選択され在庫が捌けやすいからです。コア数を8コアまで減らした9800Xなら3.8GHzのベースクロック周波数ですが、それならば9900Kを選ぶこともできます。

内蔵グラフィクスで十分なユーザなら9900KでもいいですがPUBGのようなFPSゲームを前提とするならばどのみちグラボ(dGPU)が必要になるので、最初から思い切って内蔵グラフィクスを削ったCore-Xを選んでしまうのがいいです。ただし予算は多く必要です。

時期的な問題を言えば、この2019年度下期というタイミングで第9世代Core-XシリーズのCPUを使ってPCを組むのはおすすめできません。この9920Xや9900XといったCPUは2018年発売であり既に次期Core-Xがリリースされるとアナウンスされているので、今回釈迦氏がサイコム製PCを手に入れたタイミングは「モデルチェンジ直前の末期」に相当します。ただし彼のようにスポンサーから無償で貸与or贈与されるのなら別にモデル末期でもかまわないでしょう。問題となるのは実際にお金を払って買うユーザです。その場合は次期モデルを待つのが得策です。

ケース:Fractal Design Define R6

Define R6はDefineシリーズの中でもFractal Design社が一番ゴリ推してるケースです。サイコムではDefine R6の中で強化ガラス採用か否か、色が黒か白かで選択することができます。

Define RシリーズはHDDといったストレージを大量搭載することを前提とした位置づけです。最も一般的なRegularモデルです。一方でDefine Sは水冷ポンプの音が外部にもれないよう静音性を重視したSilentモデルです。Define S2とDefine R6の比較では分かりづらいですが、先代のDefine SとDefine R5のリアパネルを比較してみるとDefine R5のほうが音が漏れやすくDefine Sでは音が漏れないよう塞がれているのがわかります。Define Cシリーズは全長334mmのGPUがぴったり収まる程度の奥行に絞ったCompactモデルです。

HDDを大量に搭載するのならDefine R6でいいと思います。しかしSSDしか搭載しないというのならDefine S2で十分です。Define S2なら334mmGPU+水冷ラジエータ+25mmファンにも耐えられるほどの奥行きがあります。そこまで奥行きが必要ないのならDefine Cシリーズで十分です。

HDDを搭載するのならDefine S2よりもDefine Cのほうが静かだという報告があります。その理由はDefine Cの場合HDDを搭載する場所が電源ユニットの横であり防音が図られていますが、Define S2の場合HDDを搭載するとなると向かって右側の側面パネルのすぐ内側にHDDを搭載することになるため右側から音が漏れやすいからです。

意外とおすすめなのがアクリル製Windowを採用したDefine C(ATXマザーボード対応)です。しかし日本国内では既に在庫がなく、Amazon.co.ukのマーケットプレイスに在庫がある程度です。強化ガラス採用モデルのDefine Cなら在庫が大量にありますが強化ガラスはアクリルと比較し扱いが面倒です。

あとはSSD派のユーザならDefine R6よりもDefine S2がおすすめです。Define S2のほうがドライブベイがついていない分だけケースが軽量なので扱いやすいです。Define S2は水冷ポンプの音が外部にもれないようにする静音性とリザーバーを設置するスペースを確保するのがコンセプトですが水冷化せず空冷として用いる場合でもDefine S2がおすすめです。サイコムの選択肢にDefine R6しかないのは残念な部分です。

まとめ:BTOならサイコムが最適だが、自作ならさらに大域最適解に近づけることができる

以上みてきたように「BTO PCの中からPUBG向けPCを選ぶ」という前提ならば、サイコムのBTO PCが最適です。

BTO PCのメリットは自作する時間が不要であるのに加えて、動作チェックや故障時の対応等をBTOメーカーにアウトソースできることです。それらの作業をアウトソースすることによってBTOメーカーの人件費や企業としての営業利益の分だけ割高になるわけですが、「PCは道具と割り切って自分の時間は応用分野(例:ゲーム)に優先的に割り当てる」ユーザからすればPCは自作せずBTO PCを買って手っ取り早く済ませてしまうのも一つの手です。

しかしBTO PCだと誰が注文しても同じような構成のものになってしまいます。他の人と比較し優位性が生み出せない(差異を生み出せない)のも確かです。

私なら自作します。各パーツで自分が納得する良いものを選んでバラ買いして組み立てます。そのかわり「自作したPCでどんなトラブルが起きても自己責任ですべて対応」になります。初期不良交換や、自分の過失で故障させてしまったことも含めて全て自分で対応することになります。

しかしこれは逆にメリットと捉えることもできます。BTOメーカーのPCは他人が組み立てているわけですから、「他人の過失が要因でPCにトラブルが発生し不便を強いられることが嫌」な場合は、PCを自作することで「自分が組み立てたPCなんだからトラブルが発生しても全て自分の所為」と割り切ることもできます。

PC電源、SSD、グリス、GPUの簡易水冷など、CPUの型番やGPUの型番以外はどうしてもBTOだと予算を削減するためにケチられてしまう部分です。そういった部分でもケチらずしっかり良いものを使いたい場合は自作がおすすめです。