おすすめCore i9 9900Kのベンチマーク性能比較レビュー Ryzen 9 3950Xに+10%以上の性能差をつけて勝利 Ryzen 9 3900Xにも大差を付けて上回り、Ryzen 7 2700X,Threadripper 2970WX,2950Xにも勝つ

Core i9 9900Kが2018年11月2日(金曜日)に日本国内で発売されました。Intel第9世代Coffee Lake Refreshの一般デスクトップ向けプロセッサの中では最高位モデルです。

いままではCore i7 8700K、Core i7 7700K、Core i7 6700Kが高性能デスクトップパソコンで採用されてきたプロセッサでした。それが2018年発売のIntel第9世代ではCore i9 9900Kに取って代わられます。Core i7 9700Kというプロセッサも同時発売されましたが、Core i7 9700Kよりも最大動作周波数が5.0GHzに届き、同時マルチスレッディングが有効化されている8コア16スレッドのCore i9 9900Kのほうが広く採用されていきます。

Core i9 9900Kの詳細スペック

型番Core i9-9900K (第9世代Intel)
コア数8コア16スレッド
基本動作周波数3.6GHz
最大動作周波数5.0GHz
全コア同時最大周波数4.7GHz
発売日2018年11月
セキュアブート対応
vProテクノロジ対応
同時マルチスレッディング有効
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)95W
L1キャッシュ512KB
L2キャッシュ2MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-2666
メモリチャネル2
メモリ帯域幅41.6GB毎秒
コードネームCoffee Lake-S R
コンピュータの形態デスクトップ
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 630
iGPU最大画面数3
iGPU最大ビデオメモリ64GB
iGPU基本周波数350MHz
iGPU最大周波数1,200MHz
iGPU EU数24
iGPU単精度コア数192
iGPU単精度性能0.4608TFLOPS
ソケットLGA 1151
アーキテクチャCoffee Lake Refresh
プロセスルールIntel14nm
SIMD拡張命令Intel AVX2, SSE
SIMD演算器256bit FMA×2
SIMD倍精度演算性能16 FLOPs/cycle
AI(深層学習)拡張命令非搭載

Core i9 9900Kと第3世代Ryzen(2019年~2020年発売)プロセッサを比較

Core i9 9900K vs. Ryzen 9 3950X

2019年12月にデスクトップ向け第3世代Ryzenプロセッサの中でもフラッグシップモデルであるRyzen 9 3950Xが発売されました。2019年7月リリースに間に合わず何度も先送りされたものの、第3世代Ryzenの中では最も期待度の高かったプロセッサであり注目度も高いです。

第10世代のIntel Coreプロセッサは2020年発売であるため、2019年発売のRyzen 9 3950Xと比較すると後に発売された第10世代のIntel Coreが有利になってしまいます。

そこで、2018年11月に発売されたCore i9 9900Kとの比較ならRyzen 9 3950Xにとって不利な条件とはならないため、Ryzen 9 3950Xと比較してみます。

Ryzen 9 3950Xは16コア32スレッドであるものの、動作クロックがCore i9 9900Kよりも低いです。そのため、コア数ではRyzen 9 3950Xのほうが2倍もあるものの、実際の性能はCore i9 9900Kが+12%もRyzen 9 3950Xを上回っています。

Core i9 9900K vs. Ryzen 9 3900X

2019年7月に発売された12コアのRyzen 9 3900XとCore i9 9900Kを比較してみます。Ryzen 9 3900XはRyzen 9 3950Xよりも先に発売されましたが、Ryzen 9 3900Xのベースクロックは3.8GHzあり、Ryzen 9 3950Xの3.5GHzよりも高いです。

このように+11%もCore i9 9900KがRyzen 9 3900Xを上回っています。注目すべきところは、Ryzen 9 3950XよりもRyzen 9 3900Xのほうが健闘していることです。

これはRyzen 9 3900Xではコア数を12コアまで絞ったことで各コアが使える消費電力に余裕ができ、動作クロックを上げることができるためです。逆に言えば、Ryzen 9 3950Xは7nm製造プロセスを採用した微細化によっても16コアを高クロックで稼働させるだけの低消費電力化に失敗し、コア数を増やしたことでむしろ性能が低下したことになります。第3世代Ryzenは高々12コアまでが身の丈にあったコア数だったということになります。

Core i9 9900Kと第2世代Ryzen(2018年~2019年発売)プロセッサを比較

Core i9 9900K vs. Ryzen 7 2700X

Ryzenプロセッサのコンセプトは「1コアの性能よりもコア数でIntel Coreに勝つ」というものです。1コアあたりの性能を向上させることは技術的に難しく、現在でもIntel Coreより1コアあたりの性能を高めたプロセッサは存在しません。そこで2000年台からAMDは「コア数ではIntelに勝つ」ということでスレッドレベル並列性が高い用途に特化しかプロセッサに注力してきました。

それが一般コンシューマ向けデスクトップまで降りてきたのがRyzenプロセッサです。2017年発売のRyzenプロセッサは8コアが投入され、それまで4コアだったIntel Coreプロセッサの2倍のコア数になり注目されました。

この時点では「1コアあたりの性能が高いIntel Core vs. 1コアあたりの性能は低いけれどもコア数が多いRyzen」というぶつかり合いになっていました。

例えば、CoD BO4やPUBGといったゲームでは1コアあたりの性能の高さが重要であり、フレームレートの高さに直結します。そのためこの分野のプロゲーマーはIntel Core 8700K,7700Kのパソコンを使用しており、今後はCore i9 9900Kを使用します。また一般的な汎用分野においても1コアあたりの性能が高いプロセッサのほうが優位です。

一方で、動画エンコードのようなスレッドレベル並列性が高いアプリケーションを実行するためには1コアあたりの性能よりも多コアのほうが全体的な性能が伸びます。全てのコアを使い切れるからです。

このように汎用向けではIntel Core、スレッドレベル並列性が高い特化型アプリケーションではRyzenのような「住み分け」を作ることにRyzenは成功しました。それまでのIntelとAMDは「資金がある人はIntel、無い人はAMD」という住み分けだったからです。そのような資金面での住み分けを、アプリケーションの用途ごとの住み分けに持っていくことができたのが今までのAMDプロセッサとRyzenプロセッサで異なる点でした。

しかし、第1世代Ryzen発売から1年半が経過して発売されたIntel Core i9 9900Kでは8コアのプロセッサになりました。これは2018年4月発売の第2世代Ryzen 7 2700Xと同じコア数です。

つまり「動画エンコードのようにスレッドレベル並列性が高いアプリケーション用途ではRyzen」という優位性が崩れてしまいました。Intel CoreでもAMD Ryzenでも同じ8コアプロセッサになってしまったからです。これでは「スレッドレベル並列性の多いアプリならRyzen」といった”住み分け”をすることはできません。Intel Coreも8コアだからです。そうなると単純に1コアあたりの性能だけでの比較になります。

Intel CoreとAMD Ryzenのコア数が並んだことによって、単純に1コアあたりの性能での比較となり、「Ryzenはコア数が多い」といった優位性が崩れてしまいました。1コアあたりの性能ではAMD RyzenはどうやってもIntel Coreに勝てないからです。

その結果、住み分けは「高価で性能の高いIntel Core vs 安価で性能の低いAMD Ryzen」という従来の住み分けに戻ってしまいました。つまり「資金がある人はIntel、無い人はAMD」に逆戻りしてしまったわけです。AMD Ryzenにとって「Intel Coreよりコア数だけは勝つ」というのは絶対に譲ってはならないRyzenの存在意義のようなものでした。その「コア数が多い」という部分でIntel Core i9 9900Kに追いつかれてしまったので、動画エンコードのようなスレッドレベル並列性が高い用途でもCore i9 9900KがRyzen 7 2700Xを大きく上回ることになりました。

Ryzen 7 2700Xは第2世代Ryzenのメインストリームプロセッサの中では最高位のフラッグシップモデルです。1世代前のRyzen 7 1800XとRyzen 7 2700Xはともに8コアです。何が変わったかというと動作周波数です。Ryzenは1コアあたりの性能が低く、シングルコアに大きな負荷をかけるゲーム用途ではRyzenは弱いと指摘されてきたため、1コアあたりの性能を上げるために第2世代Ryzenでは動作周波数を向上させました。それでも同じ8コアのCore i9 9900Kには遠く及びませんでした。

このように+19%もCore i9 9900KがRyzen 7 2700Xより上回る性能になっています。Core i9 9900KはRyzen 7 2700Xには搭載されていない内蔵グラフィクス(iGPU)も搭載しています。Ryzen 7 2700Xが唯一Core i9 9900Kより優位なのは「価格」です。価格はRyzen 7 2700Xのほうが安いです。これはRyzenが発売される以前から「性能は高いけど高価なIntel」「性能は低いけど安価なAMD」のように言われてきた「資金がない人はAMD」のような位置づけに戻ってしまったことを意味します。コア数がIntelとAMDで同じになってしまうと「コア数だけは多いRyzen」の優位性が消えてしまうため、単純に「高くても良いIntel Coreを選ぶか」「悪かろう安かろうでAMD Ryzen」を選ぶかという価格面での比較軸になってしまうということです。

Ryzenにとって不幸だったのは、Ryzenが発売された2017年頃からPUBGが流行しゲーミングPCが活況になったものの、Ryzenがその流れに乗れなかったことです。PUBGリリースより前のゲームはコア数が多いRyzenのようなプロセッサのほうが優位でした。しかしPUBGや2018年リリースのCoD BO4のようなバトロワ系ゲームでは1つのコアに極めて高い負荷がかかるため、1コアあたりの性能が重要になりました。1コアあたりの性能が高くないと、コア数が多くてもフレームレートが伸びないためです。実際各プロゲーマーはCore i9 9900K以前からCore i7 8700KやCore i7 7700Kを搭載したゲーミングPCを使用してきました。そこでさらにIntelは最大動作周波数を5.0GHzまで高めたCore i9 9900Kを「ゲーミングに最適なCPU」としてリリースしてきました。しかしRyzenは今でも多コア志向のままであり1コアあたりの性能は犠牲にしています。

2018年はIntel Coreが品薄でありAMD Ryzenにとってはこの上ない商機です。しかし個人向けデスクトップPC市場を活性化させる要因となった「バトロワ系ゲーム用途」でRyzenが弱いために、Intel Core品薄でもAMD Ryzenが顧客を奪えないまま、ほとんどのユーザはIntel Coreが手に入るまで「待つ」という選択を採っています。「1コアあたりの性能が低い」というRyzenの根本的な弱点を解決しない限りは、ゲーミングPC用のプロセッサシェアをIntelから奪うことはできません。

Core i9 9900K vs. Ryzen Threadripper 2990WX

Ryzen 7 2700Xのような8コア16スレッドプロセッサではCore i9 9900Kとコア数が並んでしまったため、Ryzen 7 2700Xの優位性はなくなりました。単純に「予算がないなら価格の安いRyzen」になってしまったわけです。コア数が並んでしまってはAMD RyzenがIntel Coreに勝てる分野がありません。しかしコア数だけでもIntel Coreに勝てば、「スレッドレベル並列性が高く多コアを使いきれるアプリケーションならRyzen」というコンセプトでIntel Coreに対抗できる余地がまだあるということです。

そこでRyzen ThreadripperとCore i9 9900Kを比較します。Ryzen Threadripperは12コア~32コアまでラインナップされており、8コアのCore i9 9900Kよりもコア数が多いからです。

しかしRyzen Threadripperは1コアあたりの性能が極めて「低い」という欠点があります。そのためコア数が多くても全体的な性能をみるとCore i9 9900KよりもRyzen Threadripperのほうが低い性能となったり、良くても互角程度になります。

このRyzen Threadripper 2990WXは第2世代Ryzen Threadripperの中で最高位のモデルです。32コア64スレッドであり、「多コア志向の急先鋒」とも言えます。コア数は実に4倍です。

しかし性能では4倍も差がつきません。

このように+10%しかRyzen Threadripper 2990WXはCore i9 9900Kを上回っていません。

当然ながら、このRyzen Threadripper 2990WXは1コアあたりの性能は極めて低くなっています。そのためPUBGやCoD BO4などのゲーム用にRyzen Threadripper 2990WXを使ってしまうとフレームレートが全然伸びなくなってしまいCore i5 9600K未満のフレームレートになってしまいます。

ゲーム用途を想定しているならRyzen Threadripper 2990WXは逆効果になるので、Core i9 9900Kのほうがおすすめです。Ryzen Threadripper 2990WXは、高価でも性能が高いとは限らないという稀な事例の一つです。

Core i9 9900K vs. Ryzen Threadripper 2970WX

このRyzen Threadripper 2970WXはダイ自体は2990WXと同じものですが、ダイに2基搭載されているCCXの4コアのうち1コアを無効化し、CCXあたり3コアにして歩留まりを向上させ安い価格で提供されているものです。つまりRyzen Threadripper 2970WXはダイ4×CCX2×コア3=24で合計24コアです。特性も2990WXを引き継いでおり、並列性の高い動画エンコードなどのイメージ処理、全パターンをしらみつぶし的に探索する用途では高い性能を発揮しますが、1つのコアに高い負荷をかける用途では2970WXも無力です。

このように24コアもあるにもかかわらず8コアのCore i9 9900Kが+1%上回り、ほぼ互角になってしまっています。コア数が3倍あれば性能は大幅に2970WXが上回ってもいいはずですが、1コアあたりの性能が低すぎるためにこのような結果となっています。

Core i9 9900K vs. Ryzen Threadripper 2950X

2990WXより下位の製品である2950Xは16コアのプロセッサです。

Core i9 9900Kのほうが+24%も性能でRyzen Threadripper 2950Xに勝っています。このような結果になった要因はRyzenの1コアあたりの性能が低すぎるからです。

Core i9 9900K vs. Ryzen Threadripper 2920X

このRyzen Threadripper 2920Xは2970WXの4つあるダイのうち2つのダイを無効化したものです。そのため2970WXの24コアの半分の12コアになっています。

12コアと少ない割には動作周波数が低く、2桁の差を付けてCore i9 9900Kが勝利しています。

Ryzen Threadripper 2920XよりもCore i9 9900Kが+10%上回る性能です。10%の差がつくということは、Ryzen Threadripper 2920XはCore i7 9700Kよりも性能が低いことがわかります。Core i9 9900KはCore i7 9700Kよりも+7%高い性能だからです。

Core i9 9900Kと第9世代Intel Core(2018年~2019年発売)プロセッサを比較

Core i9 9900K vs. Core i7 9700K

第9世代Coffee Lake Refreshプロセッサの中でCore i9 9900Kよりワンランク下のプロセッサであるCore i7 9700Kと比較してみます。

この高価なCore i9 9900Kと安価なCore i7 9700Kで迷っているユーザは多いと思います。

予算の都合でCore i9 9900Kを買えない本来の理由を挙げずに、「発熱量の大きさ」を理由に挙げてCore i7 9700Kを選ぶことを正当化しているユーザが実際多いです。

実はCore i9 9900KとCore i7 9700Kの発熱量は同じです。全く同じダイを用いておりCore i7 9700Kでは同時マルチスレッディングを無効化しているだけだからです。

Core i9 9900KのTDP95Wとは、「基本動作周波数の3.6GHzで8コアすべて動作させたときの消費電力(単位時間あたりの発熱量)が95W」です。同様にCore i7 9700KのTDP95Wも「基本動作周波数の3.6GHzで8コアすべて動作させたときの消費電力が95W」です。

ではなぜCore i9 9900Kのほうが消費電力が高いと認識されているかというと、UEFIの設定でCore i9 9900Kの動作周波数が上がる上限が高く設定されているからです。TurboBoostの設定でTDP上限をCore i7 9700Kと同じにしてやればCore i9 9900KとCore i7 9700Kは同じ消費電力になります。

この設定を同じにしてしまったらCore i9 9900KとCore i7 9700Kの性能は同じになってしまうと思うかもしれませんが実際は大きな差がつきます。それはCore i9 9900Kでは同時マルチスレッディングが有効化されているからです。同時マルチスレッディングは1つのスレッドでは使い切れない演算器(例えば除算器)を、除算器を必要としている他のスレッドに割り当てて実行させることができる仕組みです。

Core i9 9900Kのほうが演算器の利用率を向上させることができるためパイプラインのスループットが向上し、それが全体の性能向上に繋がります。動作周波数を上げることなく余ってる演算器に命令を流し込むだけで性能が向上するということです。

つまり予算さえ許せば同じ動作周波数、同じTDPを前提としてもCore i9 9900Kのほうが優秀です。発熱量が気になるのならCore i9 9900KのTDP上限をCore i7 9700Kと同じ上限に設定すればいいだけです。

Core i9 9900KとCore i7 9700Kでどのくらいの差がつくかというと+7%も差がついてしまいます。

前の世代のCore i7 8700Kとの比較でも12%の差だったので、同じ世代のCore i7 9700Kで7%の差は非常に大きい差です。

Core i9 9900Kと第8世代Intel Core(2017年~2018年発売)プロセッサを比較

Core i9 9900K vs. Core i7 8086K

2017年発売のCore i7 8700Kと、2018年発売のCore i7 9700Kとの間のつなぎとして発売されたCore i7 8086Kとも比較してみます。

このCore i7 8086Kが発売されたのは2017年から流行したバトロワ系FPSの存在です。特にその流行の発端となったPUBGは並列性が非常に低いゲームであり、1つのコアに大きな負担がかかるゲームになっています。そのためPUBGを主戦場とするプロゲーマーは1コアあたりの性能が低いRyzenを使わずIntel Coreを使っていました。PUBGを模倣する形で次々に同じカテゴリのゲームが発売され、それらも同様に1コアあたりの性能の高さがフレームレートの高さに直結するものでした。このような背景で、1コアあたりの性能に特化したこのCore i7 8086Kが「Core i7 8700Kよりも1コアあたりの性能をさらに高めたプロセッサ」として投入されました。

発売された当初はCore i7 8086Kは確かに最高峰だったのですが、今となってはCore i9 9900KどころかCore i7 9700Kを下回る性能です。

このように+10%もCore i9 9900KがCore i7 8086Kに勝利しています。Core i9 9900KとCore i7 9700Kの差は+7%なので、Core i7 9700KはCore i7 8086Kよりも高性能だという結果も導き出せます。

Core i9 9900K vs. Core i7 8700K

Core i7 8700Kを始めたとした第8世代CoffeeLakeプロセッサを使っている人はZ370,H370,H310,B360のIntel300シリーズチップセットを搭載したマザーボードを使用しているはずです。

これらのマザーボードならUEFI(BIOS)をアップデートすることで、マザーボードを買い換えることなく第9世代CoffeeLakeRefreshプロセッサに対応します。Core i9 9900Kも当然動作します。

現在Core i7 8700Kを使用しているユーザはCore i9 9900Kに乗り換えるか、それともそのまま使用し続けるかで悩む点でしょう。

ゲーム用途で使用しているユーザの場合、Core i9 9900Kに乗り換えるメリットが大いにあります。FullHD解像度でゲームをする場合グラボGTX1080,GTX1080Ti,RTX2080,RTX2080Ti程度あれば十分144フレームレートを狙えます。そのグラボの性能を引き出せるかどうかは、CPUがグラボに描画命令を遅滞なく送信できるかどうかに依存しています。グラボは新調しているのにフレームレートが伸びないとしたら、それはSSD(ストレージ)やメモリ(RAM)の所為ではなくCPUの1コアあたりの性能が足りていないためです。

全体的な性能ではCore i9 9900KはCore i7 9700Kより二桁以上の性能向上を示しています。

1コアあたりの性能では、5.0GHzまでBoostするCore i9 9900Kがさらに引き離して有利です。ゲームのフレームレートを高くしたい場合はCore i9 9900Kへの乗り換えも一つの手です。

Core i9 9900Kと第7世代Intel Core(2016年度発売)プロセッサを比較

Core i9 9900K vs. Core i9 7980XE

このCore i9 7980XEは第7世代のCore-Xプロセッサの中ではフラッグシップモデルでしたが、コア数を16コアから18コアまで増やすことを優先してしまったため1コアあたりの性能が下がってしまいRyzenと同じ轍を踏んでしまったプロセッサです。

このようにCore i9 9900Kが+2%ほどCore i9 7980XEを上回っています。つまりCore i9 7980XEはCore i9 7960Xより低性能です。コア数を増やした代わりに動作周波数を下げることになってしまったためで、Ryzenと同じ要因でCore i9 9900Kが+2%ほど上回る結果となりました。

以上の結果は2017年発売の第7世代Core-Xと比較した結果なので、次の世代のCore i9 9960XやCore i9 9980XEはCore i9 9900Kを上回る性能になります。

Core i9 9900K vs. Core i9 7960X

Intel Coreプロセッサには、内蔵グラフィクス(iGPU)を搭載したCore-Sシリーズと、内蔵グラフィクスを搭載せずコア数を増やす志向のCore-Xシリーズが存在します。

オーソドックスなのは前者であり、個人消費者向けの市販PCでは前者のCore-S搭載モデルがほとんどです。後者のCore-Xシリーズは内蔵グラフィクスを搭載していないためハイエンド向けプロセッサとも呼ばれますが、Core-Xシリーズの「内蔵グラフィクスを削ってコア数を増やす」という手法はRyzen Threadripperも勿論ですが、一般的なデスクトップ向けのRyzen 7 2700Xでも採用されている手法です。そのためCore i9 9900Kには内蔵グラフィクスが搭載され、なぜかRyzen 7 2700Xには内蔵グラフィクスが搭載されていないわけです。

ここでは内蔵グラフィクスを搭載していないIntel Core-Xシリーズと、Core i9 9900Kを比較してみます。Core-Xシリーズの中では2017年に発売された第7世代Core i9 7980XEやCore i9 7960Xがトップ2として有名です。この2つのプロセッサは1コアあたりの性能を犠牲にしてコア数をとにかく増やすというコンセプトを採用しておりRyzenと同じ方向性を向いています。

Core i9 7960Xはコア数を16コアに抑えているため後述のCore i9 7980XEよりも高性能です。Core i9 7960XはCore i9 9900Kの2倍のコア数を有していますが、性能は互角です。

このように、コア数では2倍の差がありますが全体的な性能では互角になっています。Core i9 7960Xは2017年発売の1世代前のプロセッサなので、Core i9 9900Kを選択したほうが優位です。

Core i9 9900KとCore i7 8700Kのダイ比較 内蔵グラフィクスを搭載しながらも2コア増加

第9世代Core i9 9900Kは第8世代Core i7 8700Kと比較して汎用コアが2コア増えました。これはダイ(チップ)でも確認できます。

Core i9 9900Kのダイ(チップ)は以下のようになっています。

中央に黄色で着色されたブロックが8つ見えます。この1つ1つが汎用コアであり、合計8コアあることがわかります。そして左側の青色で着色されている部分が内蔵グラフィクス(iGPU)です。マザーボード上にグラフィクス機能が搭載されていた頃はオンボードグラフィクスと呼ばれていたため、今でも広い意味では内蔵グラフィクスのことをオンボードグラフィクスとも呼びます。この青色に着色されたオンボードグラフィクス部分の電子回路があるからこそIntel Coreは別途グラボを挿さなくても、マザーボードのバックパネルに搭載されているDisplayport,HDMI,USB Type C端子で4K@60fpsのトリプルディスプレイ表示を可能にしています。このように別途グラボを使わずマザーボード標準装備のディスプレイ端子でトリプルディスプレイ表示できることは、法人向けで支持されています。ExcelやWordを扱うくらいなら60fpsで十分であり、しかもオンボードグラフィクスだけでトリプルディスプレイ表示できてしまうからです。

次に1世代前の第8世代CoffeeLake Core i7 8700Kのダイを観てみます。

中央部分の黄色で着色された部分が汎用コアですが、ちょうど6つあることがわかります。そして左側にある青色で着色されている部分が内蔵グラフィクスです。

Core i9 9900Kは集積度を高めることでCore i7 8700Kよりも2コア増やしていることが目視でもわかります。さらに内蔵グラフィクスの性能は削っていません。内蔵グラフィクスの性能は維持したまま純粋に汎用コアを純増させたのがCore i9 9900Kです。また集積度が向上していることから、電圧の上昇を抑えながら動作周波数を上げることができ消費電力の上昇を抑えられるようになりました。これが5.0GHzまでのターボブーストをオーバクロックするまでもなく定格動作で実現しています。

Core i9 9900Kは8コアに加えて内蔵グラフィクス(iGPU)をチップ上に搭載 Ryzenは8コアにするために内蔵グラフィクスを削りスペースを確保

しかしRyzen 7 2700Xを始めとしたRyzenシリーズには内蔵グラフィクスが搭載されていません。

これはRyzen 7 2700Xのダイですが、左側に見える横長の長方形が4コアの汎用コアです。右側にも同じ形状の横長の長方形がありますがそれも4コアであり、これで合計8コアになります。周辺にあるのはメモリやI/Oのコントローラ回路です。

つまりRyzenには内蔵グラフィクスに相当する回路がありません。こうなった理由は、内蔵グラフィクスを搭載してしまうと汎用コアの数を増やすことができず4コア止まりになりAMD RyzenがIntel Coreに勝てなくなってしまうため、内蔵グラフィクスを全て削りその空いた面積を汎用コアに割り当てて8コアを実現させたためです。

第1世代Ryzenが発売されてから1年後にRyzen APUが発売され、これは内蔵グラフィクスを搭載しています。しかし汎用コアは4コア止まりになり8コアのAPUは発売されませんでした。その理由は上述したように、内蔵グラフィクスを搭載してしまうとAMDの技術では汎用コアの面積を減らさざるを得ず、結果的にRyzen APUは4コアまで減ってしまったわけです。

Ryzenが内蔵グラフィクスを削ってでも汎用コアを8コアにすることにこだわったのには理由があります。それは1コアあたりの性能の高さではIntel Coreに絶対に勝てないので、コア数の数だけはIntel Coreを上回る戦略を採ったのがRyzenだからです。1コアあたりの性能が低くても、コア数さえIntel Coreより多ければ「並列性が高い分野に限ればRyzenのほうが速い」という特化ができます。そのため第1世代Ryzenでも第2世代Ryzenでも、通常のデスクトップ向けプロセッサ(Ryzen 7, 5, 3)にもかかわらず内蔵グラフィクスを削りました。Ryzen Threadripperが内蔵グラフィクス非搭載であることは問題ありませんが、Intel Core 7,5,3に相当するRyzen 7,5,3で内蔵グラフィクス非搭載であることは以上のようなAMDの技術的な遅れによる理由があるわけです。AMD Ryzenにとって最も望ましいのは「8コアにしつつ内蔵グラフィクスも搭載する」ことですが、内蔵グラフィクスを搭載してしまうとAMDの技術では8コアを維持できないため、内蔵グラフィクスを思い切って削り汎用コアを8コアに維持することを優先したということです。

 

このように2017年発売のRyzen 7 1800X、2018年発売のRyzen 7 2700Xを始めとするRyzenでは「内蔵グラフィクスは搭載していないけれどもAMD Ryzenの汎用コアは8コアで、Intel Coreの6コアより多い」ことが唯一の存在意義でした。

しかし2018年11月に発売されたIntel Core i9 9900Kは「内蔵グラフィクスを搭載しつつも8コア」を達成してしまったわけです。「内蔵グラフィクスを削るまでしても8コア止まり」のAMD Ryzenと、「内蔵グラフィクスを搭載しながらも8コアを達成」したIntel Coreの対決となりました。

性能面では上記したようにCore i9 9900Kの完勝です。内蔵グラフィクスを搭載しているため汎用コアに割り当てるチップ面積が少ないというハンディキャップがありながらもCore i9 9900Kは8コアを達成しました。こうなると「内蔵グラフィクスを削ってでもコア数だけはIntelに勝つ」というAMD Ryzenの存在意義自体が完全に崩れてしまったことを意味します。

ここで再度Core i9 9900Kのダイを観てみると面白いことがわかります。

左側の内蔵グラフィクス(iGPU)の回路を削れば、その部分に汎用コアを4つ追加できる面積があることがわかります。つまりIntel Core 9900Kは内蔵グラフィクスを削れば汎用コアを4つ増加させ合計12コアにできます。

しかしRyzen 7 2700Xでは内蔵グラフィクスを削っても8コアまでしか達成できませんでした。なぜIntelとAMDでこのような差が発生するかというと、単純にAMDのマイクロアーキテクチャ設計技術と集積回路の製造技術がIntelよりも劣っているからです。

ただし、価格面ではCore i9 9900Kのほうが高価でありRyzen 7 2700Xのほうが安価です。つまりCore i9 9900Kの登場で、今までの「コア数ならAMD Ryzen、1コアあたりの性能ならIntel Core」の構図が、「価格の安さならAMD Ryzen、性能の高さならIntel Core」という構図に変化しました。

Core i9 9900Kの登場で「スレッドレベル並列性の高い用途ならRyzen」→「予算がない人はRyzen」へ逆戻り

Ryzenプロセッサが登場する2017年より前までは、予算がある人は性能が高く高価なIntelプロセッサを購入し、予算がない人は性能が低く安価なAMDプロセッサを購入するという住み分けになっていました。

しかしそれだと「AMDはIntelの2番手」という評価のままであるため、AMDは安かろう悪かろうの立ち位置から脱却する必要に迫られていました。

そこで2017年に投入されたのがRyzenプロセッサです。Ryzenプロセッサでは「1コアあたりの性能はIntelに勝てなくてもコア数だけはIntelより多くする」ことで、スレッドレベル並列性が高い動画エンコード等の分野ではRyzenのほうが高速になりました。つまり多コアを使いこなせるアプリケーションではRyzenは効果を発揮していたわけです。

でもそのためには「Intel CoreよりもAMD Ryzenのほうがコア数が多い」という前提が必須です。しかし、今回のCore i9 9900Kの登場で、一般的なデスクトップ向けのプロセッサでもIntel Coreに8コアが用意されることになり、Ryzen 7 2700Xの8コアとコア数が並んでしまいました。

そうなるとスレッドレベル並列性が高い動画エンコードのようなアプリケーションはIntel Coreでも同じように高い性能が出てしまいます。つまり「Ryzenのほうがコア数が多い」という前提が崩れたため「スレッドレベル並列性が高い用途ではRyzenのほうが高速」という結果も成立しなくなってしまいました。

AMD RyzenからするとIntel Coreよりコア数を多くすることは存在意義そのものであり、絶対にIntelに追いつかれてはいけない部分でした。しかしCore i9 9900Kの登場でAMDとIntelのコア数が並んでしまったことで、今後AMD Ryzenは1コアあたりの性能を高めていかないとIntel Coreにどのような用途でも性能で負ける結果となってしまいます。

Core i9 9900Kは高価なプロセッサとなったことが安いRyzenにとっては唯一の救いとなりました。しかしこれは従来の「性能が高くて高価なIntel、性能が低くて安価なAMD」といった構図に逆戻りしてしまったことを意味します。予算があるならCore i9 9900K、予算がないならRyzen 7 2700Xという選択になるということです。