おすすめRyzen 7 1700とIntel Coreのベンチマーク性能比較 同じ2017年発売のCore i7 8700が+20%の大差で圧勝 Core i5 8600であっても+13%も上回る

Ryzen 7 1800XやRyzen 7 1700Xは価格が高すぎるということで、第1世代Ryzen 7シリーズの中ではRyzen 7 1700が最も人気があるようです。

Ryzen 7 1700は8コアですが、それより一段階グレードが下になるとRyzen 5 1600Xの6コアになってしまいます。8コアかつ最も安いRyzenということでRyzen 7 1700が人気のようです。

以下詳細に見ていきますが、性能を重視するならRyzen 7 1700よりもRyzen 5 1600Xの方が高性能です。Ryzen 5 1600XがRyzen 7 1700に勝利した要因は、1コアあたりの動作周波数が高いというところにあります。

比較はRyzen 7 1700と同じ2017年発売の第8世代Intel Coreを対象に実施します。第8世代のIntel Coreは6コアしかないにもかかわらず、Intel CoreはSIMD演算器のFLOPS/cycle性能がRyzenの2倍で優秀でありデータレベル並列処理演算を少ないサイクル数で実行可能であるため、実際的な性能はCore i5やCore i7の方が上回っています。

Ryzen 7 1700と同じ2017年発売のCore i7 8700と比較すると+20%もCore i7の性能が上

Ryzen 7 1700は2017年発売で8コア16スレッドを実現したTDP65Wのプロセッサです。そこで同じ2017年発売でTDP65W、6コア12スレッドのCore i7 8700と比較してみます。コア数の数の点ではRyzen 7 1700が有利です。ベースクロック周波数はCore i7 8700が+0.2GHzでありRyzen 7 1700より有利です。

Core i7 8700の方が+20%も勝っています。また右下のグラフを見ると、Core i7 8700は山が一つだけある綺麗な分布になっています。分布は負のスキュー(歪度)が存在する分布形状になっていますが山が1つなので大多数の人はこの山のある部分の性能を得られることになります。

一方で左下のRyzen 7 1700側のグラフは山が2つあり綺麗な分布になっていません。どこがピークなのか判然とせず、CPUを買って組み立てたPCの構成やソフトウェア環境によって大きく得られる性能が異なってきてしまうのがRyzen 7 1700です。

Ryzen 7 1700はCore i5 8600にすら負けている
しかもRyzen 7 1700の性能は環境によって大きくばらつく傾向 環境による性能のばらつきが小さいCore i5 8600を強く推奨

次は同じ2017年発売のCore i5 8600と比較してみます。Ryzen 7 1700と同じTDP65Wで、ベースクロック周波数は+0.1GHzだけCore i5 8600が高くこれはIntel Core側が有利です。一方でCore i5 8600は同時マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が無効化されており、この点はRyzen 7 1700が有利です。またコア数についてもRyzen 7 1700は8コアであり、Core i5 8600の6コアより有利です。

しかし結果はCore i5 8600がRyzen 7 1700に+13%勝利しています。

ベースクロック周波数はたった0.1GHzの違いしかないので+13%もの性能差を生み出しません。このような差が開いてしまった要因はベースクロック周波数以外にもあります。

Core i5では256bit幅のSIMD演算器(FMA)を2基搭載しており倍精度で16FLOPS/cycleを達成しています。一方でRyzen 7 1700では128bit幅のSIMD演算器×2基であり倍精度で8FLOPS/cycleの性能しかありません。

さらにRyzen 7 1700はL3共有キャッシュが4コア用+4コア用で2つに分割されており”共有”キャッシュの役割を果たしていないことも敗因です。L3キャッシュが一元化されていないとキャッシュミス率が増加し、キャッシュミスペナルティでパイプラインがストール(停止)してしまうためIPCが大きく悪化します。

また性能以外でもCore i5 8600をおすすめできる理由があります。

上の図のRyzen 7 1700側の左下のグラフ(ヒストグラム)を見ると、2つ山ができていることがわかります。これはベンチマーク結果を申告したユーザ数を表しており、性能が低くなったユーザと高くなったユーザに二分されていることを意味しています。

一方でCore i5 8600側の図の右下のグラフを見ると、山は一つだけになっておりどこがピークなのが一目瞭然です。この一番高くなっている部分にユーザ数が集中していることを意味しており、Core i5 8600を買うとこの性能に落ち着くユーザが最も多いことを意味します。これはCore i5と組み合わせるメモリやマザーボード、OSなどの基本ソフトウェアの環境の違いによる影響を受けにくいことを意味しており、誰でも同じような性能が得られるのは好ましいことです。

買った人の環境によってCPU性能がばらつくRyzen 7 1700よりも、皆同じ性能が引き出せるCore i5 8600をおすすめします。またCore i5 8600には内蔵グラフィクスが付属しているのもメリットです。

実はRyzen 5 1600Xと性能が変わらないRyzen 7 1700
Ryzen 5 1600Xの動作周波数が高いため

Ryzen 7 1700はRyzen 5 1600Xよりも性能で負けています。

なぜこのような結果になるのかと言えば、Ryzen 7 1700はコア数を8コアと増やしている代わりにベースクロック周波数が低いためです。Ryzen 7 1700は、Ryzen 7 1700X用のチップとして不適合だったクロック周波数が上がらないチップを使っています。

一方でRyzen 5 1600Xはコア数こそ2コア無効化して6コアに抑えているものの、クロック周波数が3.6GHzと高くなる高品質なチップを用いています。

コア数を増やす手法はアプリケーションの影響を強く受けます。並列性が高いアプリケーションでないと性能を引き出せないからです。

上の画像の左下を見るとわかりますが、ベンチマークを報告した各ユーザの分布が正規分布のような釣鐘状になっていません。2つ山ができています。綺麗な釣鐘状にならず、しかも散らばり具合が大きい(分散が大きい)ということは、Ryzen 7 1700を購入したユーザそれぞれが得られるCPU性能に大きく格差が出てくるということです。

一方で画像の右下の場合はそこまで分散が大きくなく、そこそこ釣鐘状の分布になっています。Ryzen 5 1600Xの方が、誰が使ってもほとんど同じような性能が得られるCPUだということになります。

まとめ:コア数が多く安いプロセッサを求めるならRyzen 7 1700、高価だけれども+20%の性能を求めるならCore i7 8700

Ryzen 7 1700は世の中に出ている6コアCPUの中ではかなり安い部類です。しかし、性能が伴わなければ意味がありません。

Core i7 8700はRyzen 7 1700よりも大幅に高価です。その次点を狙うならCore i5 8600がおすすめです。これはRyzen 7 1700の性能を上回っている上に、しかも内蔵グラフィクスが付いているためです。