Ryzen 5 3500は日本国内においては2020年2月に発売された第3世代Ryzenプロセッサです。2019年7月に発売された第3世代Ryzenからかなり時間が経過してから発売されたCPUであり、性能の高さよりも価格の安さを優先したCPUです。
Ryzen 5 3500の詳細カタログスペック
型番 | Ryzen 5 3500 (Zen2 第3世代AMD) |
---|---|
コア数 | 6コア6スレッド |
基本動作周波数 | 3.6GHz |
最大動作周波数 | 4.1GHz |
全コア同時最大周波数 | 3.9GHz |
発売日 | 2020年2月 |
セキュアブート | 非対応 |
---|---|
AMD Pro(AMD版vPro) | 非対応 |
同時マルチスレッディング | 無効 |
定格外オーバークロック | 対応 |
TDP(≒消費電力) | 65W |
L1キャッシュ | 384KB |
L2キャッシュ | 3MB |
L3キャッシュ | 16MB |
最大メモリサイズ | 128GB |
メモリタイプ | DDR4-3200 |
メモリチャネル | 2 |
メモリ帯域幅 | 47.68GB毎秒 |
コードネーム | Matisse |
コンピュータの形態 | デスクトップ |
グラフィクス(iGPU) | 非搭載 |
iGPU最大画面数 | 0 |
---|---|
iGPU最大ビデオメモリ | 0GB |
iGPU基本周波数 | 0Hz |
iGPU最大周波数 | 0Hz |
iGPU CU数 | 0基 |
iGPU単精度コア数 | 0個 |
iGPU単精度性能 | 0 FLOPS |
ソケット | Socket AM4 |
アーキテクチャ | Zen 2 |
プロセスルール | TSMC7nm |
SIMD拡張命令 | Intel AVX2, SSE |
SIMD演算器 | 256bit FMA×2 |
SIMD倍精度演算性能 | 16 FLOPs/cycle |
AI(深層学習)拡張命令 | 非搭載 |
Ryzen 5 3500の詳細スペックは上記の通りです。上位モデルのRyzen 5 3500Xから変更された点はキャッシュサイズしかありません。
面積が大きいL3キャッシュサイズを大幅に削減して歩留りを向上させ製造原価の低コスト化を図り価格を安くしている
Ryzen 5 3500とRyzen 5 3500Xの違いはL3キャッシュサイズだけです。Ryzen 5 3500XのL3キャッシュサイズは32MBありますが、Ryzen 5 3500のL3キャッシュサイズは16MBです。
多くの人はCPUのスペックの中では動作クロック周波数が重要と考えており、キャッシュサイズの大きさには鈍感です。キャッシュサイズが性能に具体的にどのように作用するのか理解していないためです。
キャッシュという機構を理解するためには学術的にも広範な理解が必要になります。キャッシュにはメモリと異なりアドレスがありません。それは逆にメリットであり、キャッシュは「透過性」という好ましい性質を提供しています。
また「連想度」の理解も必要で、ダイレクトマップ, セットアソシアティブ, フルアソシアティブの違いの理解も必要になります。
そもそもなぜキャッシュが必要なのか理解するために、RISCにおけるLoadStoreアーキテクチャの理解と、パイプラインの理解も必要になります。パイプラインの理解においてはパイプライン・ハザードを具体的に図を作成して説明できるくらいの高い理解度が必要です。このLoadStoreアーキテクチャによるパイプライン・ハザードを解決するためにキャッシュが考案されたといっても過言ではありません。
さらに、キャッシュがあっても全く高速化に貢献しないこともあり得ます。なぜキャッシュが有効に作用するのか、それにはデータの「空間的局所性」「時間的局所性」「逐次的局所性」という特性を備えたアプリケーション・プログラムが多いことに起因しています。
以上はシングルコアでも必要な知識ですが、マルチコアになるとさらにキャッシュコヒーレンシを保つ仕組みも必要になります。
上記のことを全て理解する個人消費者なんて殆ど存在しません。
CPUメーカーからするとキャッシュサイズが性能向上に結びつくことを個人消費者にアピールすることは難しく、ましてやPCショップ店員が上記全てを理解しているはずもないです。販売員は単に「高速な一時的なデータ置き場」くらいの理解しかありません。
そのため、キャッシュサイズを削ることでコストカットを図るのはCPUメーカーにとって「お得」です。動作クロックを下げると個人消費者からしても「ケチってる」とバレてしまいますが、キャッシュサイズを削減するのはそこまで厳しく反応されることがありません。
実は、CPUのチップ面積の内、実際に演算を実行する演算器のチップ面積は大した広さではありません。チップ面積のほとんどを占めるのはキャッシュです。特に容量が大きいL3キャッシュのチップ面積は非常に大きく、このL3キャッシュの部分に製造上の不良が存在する確率が高くなります。
そのため、L3キャッシュサイズを半分にするだけで、大幅に歩留り(良品率)を向上させることができます。歩留りが向上すると製造原価を下げることができるため、小売店への販売価格を下げることも出来ますし、小売店に並ぶときの消費者価格も下げることができます。
つまりRyzen 5 3500は「Ryzen 5 3500Xと同じ動作クロックでもキャッシュサイズを削ることでコストカットを実現したCPU」ということになります。
Ryzen 5 3500と第8世代Intel Core(2017年発売)の比較
2020年に発売されたRyzen 5 3500ですが、2017年に発売された第8世代Intel Coreプロセッサシリーズでも十分比較対象になります。
Ryzen 5 3500 vs. Core i5 8400
2017年10月に発売されたCore i5 8400と比較します。Ryzen 5とCore i5同士の比較になりますが、Core i5 8400は型番400のグレードであり、Ryzen 5 3500の型番500のグレードよりも下位です。
Core i5 8400のほうが下位グレードにも関わらず、Ryzen 5 3500に対して+2%も性能で勝利しています。