第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)プロセッサのベンチマーク性能比較

第11世代Intel Core(Rocke Lake-S)の各プロセッサをまとめています。

2015年以降Intel Coreで採用され続けてきたSkylakeマイクロアーキテクチャは第10世代Intel Core(Comet Lake-S)までとなり、今回のデスクトップ向け第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)ではモバイル向けTiger Lakeでも採用されたWillow Coveマイクロアーキテクチャを元にしたCypressCoveマイクロアーキテクチャが用いられています。

2015年に第6世代Intel Core(Skylake)がフルモデルチェンジとして登場して以降、第7世代Kaby Lake,第8世代Coffee Lake, 第9世代Coffee Lake Refresh, 第10世代Comet Lakeはマイナーチェンジに該当するものでしたが、今回の第11世代Rocket Lakeは5年半ぶりのフルモデルチェンジです。

内蔵グラフィックスが新たにIntel Xeアーキテクチャ採用になったため、一般消費者向けの通常CPUにも関わらずグラボ無しで十分な描画性能を確保しています。キャッシュについてもL1とL2キャッシュサイズが大幅に増えています。

第12世代Alder Lakeでは、内蔵グラフィックスXeの性能が向上する他、L3キャッシュが大幅に大容量化され、DDR5メモリ対応、PCI Express5.0対応とこれまたフルモデルチェンジになります。

第11世代Intel Coreは、第12世代Intel Core(Alder Lake)で大幅な改良が実施されるまでの中継ぎとしての位置づけになります。

第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)のベンチマーク性能比較

Core i9 11900Kのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i9-11900K
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック3.5 GHz
最大クロック5.3 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ対応
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)125W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 750
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数32
iGPU単精度コア数256
iGPU単精度性能0.6656TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i9 11900Kは11900KFと並んでAdaptive Boostが有効化されているCPUです。Adaptive Boostが有効化されているため、全コア同時最大周波数が5.1GHzに達しています。

Core i9 11900Kのベンチマーク性能比較の結果はこちらに掲載しています。

Core i9 11900KFのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i9-11900KF
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック3.5 GHz
最大クロック5.3 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ非対応
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)125W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)無効
iGPU最大画面数0
iGPU最大周波数0Hz
iGPU EU数0基
iGPU単精度コア数0個
iGPU単精度性能0 FLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i9 11900Kをベースとし、内蔵グラフィクス(Intel UHD Graphics 750)を無効化し、vProとIntel Trusted Execution Technologyも無効化したのがCore i9 11900KFです。グラボを別途用意することが必須となります。

Core i9 11900のベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i9-11900
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック2.5 GHz
最大クロック5.2 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 750
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数32
iGPU単精度コア数256
iGPU単精度性能0.6656TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i9 11900は第11世代Intel Core最も特異となる位置づけのCPUです。

Core i7 11700Kでは無効化されているThermal Velocity BoostがCore i9 11900では有効化されています。つまりある側面ではCore i7 11700Kよりも上位です。

Core i9 11900のIntel公称TDPは65Wですが、場合によってはCore i7 11700Kと同レベルまで単位時間あたりの発熱量(TDP)が増えます。NoctuaのCPUクーラーの適合を見てもわかりますが、ローエンドのCPUクーラーではCore i9 11900を冷やしきれません。

総合的に高クロック耐性が高いのはCore i7 11700Kであるため、常時高いクロックを必要とするならCore i7 11700Kを選ぶべきです。他方、普段は低いクロックしか必要としない用途で、たまにゲーム等で必要な時に、自動的に高いクロックに一時的に上がってくれる対応で十分ならCore i9 11900が向いています。

Core i9 11900のベンチマーク性能比較の結果はこちらに掲載しています。

Core i9 11900Fのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i9-11900F
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック2.5 GHz
最大クロック5.2 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ非対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)無効
iGPU最大画面数0
iGPU最大周波数0Hz
iGPU EU数0基
iGPU単精度コア数0基
iGPU単精度性能0 FLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i7 11700Kのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i7-11700K
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック3.6 GHz
最大クロック5.0 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ対応
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)125W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 750
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数32
iGPU単精度コア数256
iGPU単精度性能0.6656TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i7 11700KではAdaptive BoostとThermal Velocity Boostが無効化されているため全コア同時周波数が5.0GHzの大台には達していません。それでもTurboBoost3.0は有効化されているためCore i9 11900Kと遜色ない性能であり、特にこだわりが無い限りはCore i7 11700Kで十分です。

Core i7 11700Kのベンチマーク性能比較の結果はこちらに掲載しています。

Core i7 11700KFのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i7-11700KF
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック3.6 GHz
最大クロック5.0 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ非対応
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)125W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)無効
iGPU最大画面数0
iGPU最大周波数0Hz
iGPU EU数0基
iGPU単精度コア数0基
iGPU単精度性能0 FLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i7 11700のベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i7-11700
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック2.5 GHz
最大クロック4.9 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 750
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数32
iGPU単精度コア数256
iGPU単精度性能0.6656TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i7 11700Fのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i7-11700F
合計コア数8コア16スレッド
基本クロック2.5 GHz
最大クロック4.9 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ非対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ640KB
L2キャッシュ4MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)無効
iGPU最大画面数0
iGPU最大周波数0Hz
iGPU EU数0基
iGPU単精度コア数0基
iGPU単精度性能0 FLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i5 11600Kのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i5-11600K
合計コア数6コア12スレッド
基本クロック3.9 GHz
最大クロック4.9 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ対応
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)125W
L1キャッシュ480KB
L2キャッシュ3MB
L3キャッシュ12MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 750
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数32
iGPU単精度コア数256
iGPU単精度性能0.6656TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i5 11600Kは第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)の6コアCPUの中では最高峰のモデルです。バックグラウンドタスクが殆どなく、ゲーム単独で動作させるようだったらCore i5 11600Kでも十分です。

Core i5 11600Kはクロックが高い上にコア数が少ないため、一つのコアあたりに割り当てることのできる電力量に余裕があります。ゲームをしない文書作業やブラウザ閲覧の用途でも、ブラウザで一つのタブに大きな負荷がかかった時は長時間高いブーストクロックを維持できます。

Core i5 11600Kのベンチマーク性能比較の結果はこちらに掲載しています。

Core i5 11600KFのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i5-11600KF
合計コア数6コア12スレッド
基本クロック3.9 GHz
最大クロック4.9 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ非対応
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)125W
L1キャッシュ480KB
L2キャッシュ3MB
L3キャッシュ12MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)無効
iGPU最大画面数0
iGPU最大周波数0Hz
iGPU EU数0基
iGPU単精度コア数0基
iGPU単精度性能0 FLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i5 11600のベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i5-11600
合計コア数6コア12スレッド
基本クロック2.8 GHz
最大クロック4.8 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ480KB
L2キャッシュ3MB
L3キャッシュ12MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 750
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数32
iGPU単精度コア数256
iGPU単精度性能0.6656TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i5 11500のベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i5-11500
合計コア数6コア12スレッド
基本クロック2.7 GHz
最大クロック4.6 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ480KB
L2キャッシュ3MB
L3キャッシュ12MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 750
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数32
iGPU単精度コア数256
iGPU単精度性能0.6656TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

6コアCPUのCore i5 11600K,11600,11500の中で3番手に位置するCPUです。これより下にCore i5 11400がありますが、Core i5 11400ではvProが無効化されている上に内蔵グラフィクスが一段下のUHD Graphics 730のため別枠になります。

Core i5 11600Kと比べてCore i5 11500は下のグレードとはいっても、第4世代Ryzen 5 5600Xに完勝しているのみならず、Ryzen 7 5800Xにも勝っていることは特筆すべき点です。さらにはRyzen 9 5950XとRyzen 9 5900Xと互角の性能をCore i5 11500は持っています。

Core i5 11500のベンチマーク性能比較の結果はこちらに掲載しています。

Core i5 11400のベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i5-11400
合計コア数6コア12スレッド
基本クロック2.6 GHz
最大クロック4.4 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ非対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ480KB
L2キャッシュ3MB
L3キャッシュ12MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 730
iGPU最大画面数3
iGPU最大周波数1,300MHz
iGPU EU数24
iGPU単精度コア数192
iGPU単精度性能0.4992TFLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i5 11400は、Core i5 11500よりもさらに汎用コアのクロックを引き下げつつ、iGPUの単精度コア数を192コアまで減らし内蔵グラフィクスも低コスト化したモデルです。vProとIntel Trusted Execution Technologyも無効化されており法人用途には向きません。6コアモデルの中ではCore i5 11400Fと並んで最も低コストなCPUです。

Core i5 11400のベンチマーク性能比較の結果はこちらに掲載しています。

Core i5 11400Fのベンチマーク性能比較

メーカー・モデル名Intel Core i5-11400F
合計コア数6コア12スレッド
基本クロック2.6 GHz
最大クロック4.4 GHz
コードネームRocket Lake-S (第11世代Intel Core)
発売日2021年3月
vProテクノロジ非対応
定格外オーバークロック非対応
TDP(≒消費電力)65W
L1キャッシュ480KB
L2キャッシュ3MB
L3キャッシュ12MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-3200
メモリチャネル2
メモリ帯域幅50 GB毎秒
コンピュータの形態デスクトップ
ソケットLGA 1200
グラフィクス(iGPU)無効
iGPU最大画面数0
iGPU最大周波数0Hz
iGPU EU数0基
iGPU単精度コア数0基
iGPU単精度性能0 FLOPS
アーキテクチャCypress Cove
プロセスルールIntel14nm

Core i5 11400FはCore i5 11400の内蔵グラフィクス(Intel UHD Graphics 730)を無効化したモデルです。2021年3月に発売された第11世代Intel Core(Rocket Lake)プロセッサシリーズの中では最もグレードが低く低コストなCPUです。

Core i5 11400Fのベンチマーク性能比較の結果はこちらに掲載しています。

★インテル Core i5 11400F BOX 【CPU】【送料無料】
ディーライズ2号店
¥ 27,350(2025/04/02 12:27時点)

Intel第11世代Rocket Lakeプロセッサの特徴

第11世代Intel Core(Rocket Lake)で採用されたCypressCoveマイクロアーキテクチャは、従来のSkylakeマイクロアーキテクチャとWillowCoveマイクロアーキテクチャの中間に位置するものです。

Rocket Lakeで採用されたCypress CoveマイクロアーキテクチャはWillow Coveを14nmプロセスに適合させたもの

第11世代Intel Core(Rocket Lake)プロセッサは、Intel 14nmプロセスで製造されるIntel Coreプロセッサとしては最後の世代になります。

命令レベル並列性抽出の命令ウィンドウ(Reservation Station,リザベーション・ステーション)サイズの拡大で、1サイクルあたりの実行命令数(IPC)が増加

Rocket Lakeでは命令レベル並列処理が大幅に強化されており、1クロックサイクルあたりの実行命令数(IPC, Instructions per cycle)が+20%程度向上しています。

現在のCPUでは命令をプログラムされた順番通り律儀に実行することはしません。実行できる命令から実行するため、順番を無視して実行します。しかし、各命令にはオペランドの依存関係があるため、やみくもに順番を無視すると実行結果の正しさを保証できなくなります。そこで順番を入れ替えても大丈夫かどうかを判断するハードウェアが必要です。そのハードウェアが命令ウインドウ(Reservation Station)というものです。

Reservation Stationは演算器ごとに用意されています。Reservation Stationにはウインドウサイズがあり、例えばウインドウサイズ1024だったら1024個の命令の中から「順番を入れ替えて実行できる命令」を抽出します。当然ながらこのウインドウサイズが大きければ大きいほど順番を入れ替えて実行できる命令を抽出しやすくなるため、結果的に命令レベル並列性を高く抽出できることになります。

Rocket Lakeで採用されたCypress Coveマイクロアーキテクチャではこのウインドウサイズを拡大させ、命令レベル並列性を高く抽出してIPCを向上させています。命令の依存関係を確認するためのハードウェアはウインドウサイズの二乗に比例して面積が拡大するため、本来ウインドウサイズの拡大は難しいところですがそれをクリアしたのがRocket Lakeプロセッサです。

AVX-512(VNNI)命令に対応したことで、IPCだけでなく1命令あたりの演算数も向上

上述したIPCは実は非常に古い性能指標であり、2000年代以前に学部(大学)に入った高齢世代が好んで使っている指標です。

古い文献ではIPCでコンピュータの性能を比較していますが、その後FLOPS性能でコンピュータの性能を計測する手法に変わりました。

IPCは1クロックサイクルあたりいくつの命令を実行できるかどうかを表す指標ですが、このIPCは「1命令あたりいくつの演算を実行できるか」という部分を反映できていません。

古いコンピュータを見てきた人達は「1つの命令で実行できるのは演算1回のみ」というのが頭に染み付いていますが、その後SIMD演算命令が主流になり「1つの命令で複数の演算を同時に実行可能」になりました。

そのため今ではFLOPS値でコンピュータの性能を計測しており、日米のスパコンもFLOPS性能で競い合っています。

特にAMD Ryzenは1コアあたりのFLOPS性能を高めるのが苦手であり、AMD愛好家が「RyzenのIPCが上がった」と古い指標のIPCをことさら強調しているのはAMDはFLOPS性能を上げるのが不得意だという苦しい事情があります。FLOPS性能を上げるためにはSIMD演算命令の高速化が不可欠であり、SIMD演算器の高速化はAMD Ryzenが長年不得意としてきた分野です。2015年には既にIntel Coreが達成していたSIMD演算性能に、AMDは2019年の第3世代Ryzenでようやく追いついたレベルでした。

今回のRocket LakeではSIMD演算命令の一種であるAVX-512(VNNI)命令に対応しました。深層学習に特化したSIMD演算命令です。これにより、Rocket Lakeでは1クロックサイクルあたりの演算数(FLOPS/cycle)も増加しています。

1クロックサイクルあたりの実行命令数(IPC)の向上と、1命令あたりの演算数(FLOPS/cycle)を同時に双方とも向上させたため、全体として大幅に性能向上しています。

第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)と第12世代Intel Core(Alder Lake-S)の発売時期の差は9ヶ月しかない
そのため上の型番のCore i9 11900Kから下の型番のCore i5 11400まで同時発売

2021年3月に発売された第11世代Intel Core(Rocket Lake-S)では、上位のCore i9 11900Kから下位のCore i5 11400で同時に発売されました。今までのIntel Coreではまず上位モデルから先に発売し、下位のモデルになるほど発売時期を後にずらしていました。これはNVIDIAのGeForceシリーズでも同じ販売手法です。特にNVIDIA GeForceでは2年に1回しか世代が交代しないため、わざと下位モデルを遅れて発売させることによって新製品不在の時期を作らないようにしています。

しかし、今回のIntel Coreでは2021年3月発売から9ヶ月後には新しい世代の第12世代Intel Core(Alder Lake-S)が発売されてしまうため発売間隔が非常に狭く、わざわざ下位のモデルの発売時期を遅らせる必要がありませんでした。よって同時に下位モデルも発売されています。

次の第12世代Intel Core(Alder Lake)ではシングルコア性能(FLOPS, IPC)が+20%性能向上するだけでなくマルチコア性能が+100%も向上しまい、AMD愛好家にとってのさらなる「悪夢」到来

そして第11世代Intel Core(Rocket Lake)発売からたった9ヶ月にはさらなる「悪夢」が待ち構えています。

Rocket Lake(Cypress Cove)からAlder Lake(Golden Cove)にかけてシングルコア性能向上率+20%を達成してしまうのは多くの人が既に念頭に置いているところです。

しかし、AMDの存在意義そのものであり絶対に譲れない一線は「1コアあたりの性能で負けてもコア数を増やしてマルチスレッド性能だけは勝つ」という部分です。実際にはコア数を増やしてもそれを使い切れるだけのアプリケーションが世の中にほとんど無いため多コア化には意味がないのですが、AMDとしてはそのような「隙間産業」を狙うしかない事情があります。AMDからしてみたら売上高は10倍&純利益も10倍のIntelに対して勝つために、Intelと同じ土俵に立ってしまっては勝ち目がないからです。

だからこそメニーコアプロセッサで高い性能指標が出るCINEBENCHのようなベンチマークをAMD愛好家は好みます。CINEBENCHのような処理を行うアプリケーションは現実で皆無に等しく、机上の空論ベンチマークでしかないのですが、その「机上の空論ベンチマーク」でもAMD Ryzenが勝てなくなってしまったらRyzenの存在意義そのものが疑われる事態になります。

そんな中、第12世代Intel Core(Alder Lake-S)では16コアプロセッサになることが既に確定しています。もしかしたらCore i3でも最低6コアになってしまうかもしれません。第12世代Intel Coreでコア数が増えてしまうとなると、AMD Ryzenの「コア数のカタログスペックだけはIntelに勝つ」優位性すらなくなってしまいます。第12世代Intel Core(Alder Lake-S)では1コアあたりの性能向上のみならずコア数も増やして、Ryzenの精神的支柱そのものを破壊しに来てると言っていいでしょう。

まとめ:第4世代Ryzen 9 5950X,5900Xは第11世代Intel Core i5 11500にも勝てないレベル

第11世代Intel Core(Rocket Lake)の位置づけを簡単に見るためには、最も発売日が近い第4世代Ryzenと比較するのが手っ取り早いです。

第4世代Ryzenプロセッサの最高峰であるRyzen 9 5950XとRyzen 9 5900Xが、第11世代Intel Core i5 11500に対して敗北しているのが全てです。

これだけの情報で、「Core i5 11500>Ryzen 9 5950X, Ryzen 9 5900X」となるので、Core i5 11500より速いCore i9 11900K,Core i7 11700K,Core i5 11600Kからしてみたら、第4世代Ryzenなんてとてつもなく低速なCPUです。

Core i5 11400相手ならRyzen 9 5950X,5900Xは勝てるが、Ryzen 7 5800X,Ryzen 5 5600XはCore i5 11400にすら勝てない

第4世代Ryzenが唯一まともに勝てるのはCore i5-11400くらいです。しかもCore i5-11400は内蔵グラフィクス(Intel UHD Graphics 730)を搭載しています。

内蔵グラフィクスを削ってまでして、空いたチップ面積と電力量を必死にコア数の増加とクロック増加に費やした第4世代Ryzenが、内蔵グラフィクスを搭載しているCore i5-11400に対して負けてしまったのは、AMD史に残る「国恥記念日」レベルの屈辱です。