2019年7月7日に発売されたRyzen 7 3700Xは第3世代Ryzenシリーズに属する8コア16スレッドプロセッサです。8コアの第3世代Ryzenプロセッサはこれより上位にRyzen 7 3800Xが存在します。
このRyzen 7 3700XはRyzen 7 3800Xよりも性能を下げて歩留りを良くし、その代わり価格を引き下げて安く販売する目的で投入された製品です。
Ryzen 7 3700Xは2019年に発売されたプロセッサなので、2018年に発売された第9世代Intel Coreと比較すると前提条件は「後に発売されたAMD Ryzenに有利」「先に発売されたIntel Coreに不利」となります。
一方で、2020年に発売された第10世代Intel Coreと比較すると、「先に発売されたAMD Ryzenに不利」「後に発売されたIntel Coreに有利」になります。
今回はどちらのパターンでも比較してみます。
Ryzen 7 3700Xの詳細スペックと特徴
型番 | Ryzen 7 3700X (Zen2 第3世代AMD) |
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コア数 | 8コア16スレッド |
基本動作周波数 | 3.6GHz |
最大動作周波数 | 4.4GHz |
全コア同時最大周波数 | 3.9GHz |
発売日 | 2019年7月 |
セキュアブート | 非対応 |
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AMD Pro(AMD版vPro) | 非対応 |
同時マルチスレッディング | 有効 |
定格外オーバークロック | 対応 |
TDP(≒消費電力) | 65W |
L1キャッシュ | 512KB |
L2キャッシュ | 4MB |
L3キャッシュ | 32MB |
最大メモリサイズ | 128GB |
メモリタイプ | DDR4-3200 |
メモリチャネル | 2 |
メモリ帯域幅 | 47.68GB毎秒 |
コードネーム | Matisse |
コンピュータの形態 | デスクトップ |
グラフィクス(iGPU) | 非搭載 |
iGPU最大画面数 | 0 |
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iGPU最大ビデオメモリ | 0GB |
iGPU基本周波数 | 0Hz |
iGPU最大周波数 | 0Hz |
iGPU CU数 | 0基 |
iGPU単精度コア数 | 0個 |
iGPU単精度性能 | 0 FLOPS |
ソケット | Socket AM4 |
アーキテクチャ | Zen 2 |
プロセスルール | TSMC7nm |
SIMD拡張命令 | Intel AVX2, SSE |
SIMD演算器 | 256bit FMA×2 |
SIMD倍精度演算性能 | 16 FLOPs/cycle |
AI(深層学習)拡張命令 | 非搭載 |
Ryzen 7 3700Xのカタログスペックは上記の通りです。Ryzen 7 3700XはRyzen 7 3800Xの下位モデルでありつつも、Ryzen 9 3950Xとの対比において良くない意味で同等な側面もあるのでその点について記載します。
Ryzen 7 3700XはRyzen 7 3800Xの完全劣化版 全コア同時最大クロックはRyzen 9 3950Xと同じ4.0GHzで低い
このRyzen 7 3700XはRyzen 7 3800Xの完全劣化版です。Ryzen 7 3800Xと比較してベースクロックも低ければ、最大動作クロックも低く、全コア同時稼働時の最大クロックも低いです。
なぜこのような完全劣化版のCPUをラインナップしているかというと、Ryzen 7 3800Xとしては売り物として合格しなかったチップでも、動作クロックを引き下げれば正常動作する合格品として売り物にできるからです。
Ryzen 7 3800Xとして不合格だったチップを破棄してしまうと、そのコストは他の合格品の製造原価に転嫁しなければならないので製造原価が上がってしまい利益率が下がります。
一方で、Ryzen 7 3800Xとしては合格しなくても、動作クロックを引き下げて低スペックのRyzen 7 3700Xとして合格すれば一応売り物にできるので、チップを破棄せずに済み利益率を維持することができます。
このような半導体製造上の歩留まり率(良品率)の都合で、Ryzen 7 3700Xというモデルが設定されています。つまり予算に問題がなければRyzen 7 3700XよりもRyzen 7 3800Xが完全に優れているので、価格の安さ以外にRyzen 7 3700Xを選択するメリットは何もありません。
実はRyzen 9 3950XはこのRyzen 7 3700X相当のチップを2つ繋げただけのCPUです。Ryzen 7 3700Xの全コア同時最大クロックは4.0GHzであり、Ryzen 9 3950Xの全コア同時最大クロックも4.0GHzです。Ryzen 9 3900X, Ryzen 7 3800X, Ryzen 5 3600Xはいずれも全コア同時最大クロックが4.2GHzに届くにもかかわらず、Ryzen 7 3700XとRyzen 9 3950Xは4.0GHz止まりです。
つまりRyzen 9 3950Xは、Ryzen 7 3800Xの完全劣化版であるRyzen 7 3700Xのチップを2枚連結しただけのCPUだということです。劣化版のRyzen 7 3700Xを2つ繋げたところで増えるのはコア数だけで性能は伸びません。これがRyzen 9 3950XがRyzen 9 3900Xに負けてしまう根本的な要因です。
よって8コアだけ使うならRyzen 9 3950Xを使うよりもRyzen 7 3800Xを使ったほうが高い性能が出ます。
Ryzen 7 3700Xと第9世代Intel Core(2018年度発売)プロセッサを比較
Ryzen 7 3700XはIntel Core i7の対抗馬になることを意識して投入されたプロセッサなので、Ryzen愛好家はCore i7を打ち負かすことができるように比較対象のCore i7を選択します。そのため第3世代Ryzen 7 3700Xが発売された2019年7月より古い2018年に発売された第9世代Intel Coreプロセッサと比較されることが一般的です。なぜなら新しいプロセッサより古いプロセッサのほうが性能が低いので、Ryzen 7 3700Xからすれば勝ちやすいほうと比較するのが有利になるためです。そこでまずは2018年~2019年にかけて発売された第9世代Intel Coreプロセッサと比較していくことにします。
Ryzen 7 3700X vs. Core i7 9700K
Ryzen 7 3700Xはその型番からもわかる通り、Core i7 9700Kをカウンターパートとして想定して投入されたプロセッサです。とてもよく比較されるペアになります。発売時期に1年の差ががあり、1年も前に発売されたCore i7 9700Kに不利に働きそうですが結果は異なります。
Core i7 9700Kの性能がRyzen 7 3700Xを+13%も上回っています。2019年発売のRyzen 7 3700Xの性能を、2018年発売のCore i7 9700Kが+13%上回る結果です。2018年発売の8コア8スレッドCore i7 9700Kでもこの結果なのですから、2020年発売のCore i7 10700K相手だと更に差が開くことが容易に予測できます。
Ryzen 7 3700X vs. Core i5 9400
2018年発売の第9世代Intel Coreの中ではCore i7 9700KとRyzen 7 3700Xを比較すると大差でRyzen 7 3700Xが敗北することは上述した通りです。
では2018年発売の第9世代Intel Coreの中でどのプロセッサなら、2019年7月発売のRyzen 7 3700Xと対等の性能になるのか検証してみたいと思います。結論から言うとCore i5 9400と互角の性能です。
このようにRyzen 7 3700XとCore i5 9400が互角の性能です。8コアのRyzen 7 3700Xが、3グレードも下のCore i5 9400に負けてしまったのは1コアあたりの性能で第3世代Ryzenが第9世代Intel Coreよりも大幅に劣っているためです。