おすすめRyzen 7 1800Xのベンチマーク性能比較レビュー 2017年発売のCore i5 8400に対し11%の大差で敗北

2017年に第1世代のRyzenプロセッサが発売されました。その中でもフラッグシップモデルと位置づけられる最高峰の性能を持つのがRyzen 7 1800Xです。

そうなると当然「Intelプロセッサと比較してどうなのか」というところが気になってきます。

CPUの比較においてはカタログスペックやピーク性能ではなく、実効性能(effective flops performance)が重要です。これについてはCPUの選び方の冒頭に書いておきましたので参照してください。

2017年に発売されたRyzenシリーズのフラッグシップモデルであるRyzen 1800Xですが、これは同じく2017年に発売された第8世代Intel Core i7 8700KどころかCore i5 8600Kにも敗北し、Core i3 8350K相手でやっと互角の性能です。

本来比較すべき8コアのCore i7 7820X相手にRyzen 7 1800Xは14%の大差で敗北

2017年発売のRyzen 7 1800Xは8コア16スレッドプロセッサですが、同じ2017年にIntelからも8コア16スレッドプロセッサが出ています。しかもベースクロック周波数が同じで、内蔵グラフィクスを搭載していない点でも同じです。発売年もコア数もベースクロックも内蔵グラフィクス非搭載も同じという綺麗な条件の一致はめったにありません。

そのような対等な条件で比較すると、Core i7 7820XがRyzen 7 1800Xに+14%の大差で勝利してしまいます。この+14%という差はどこから来るかというと、まずCore i7 7820Xは8コア全てで1つのL3キャッシュを共有しています。一方でRyzenは4コアで1つのL3キャッシュを共有し、L3キャッシュが2つに分割されてしまっています。この4コア&L3キャッシュの塊をAMD用語でCCXと呼ぶのですが、CCX0とCCX1という2つのCCXで合計8コアを実現しています。このうちCCX0のL3キャッシュにはデータが載っているのに、CCX1からそのデータへアクセスしようとするとキャッシュミスになってしまいます。これがRyzenが遅い理由です。

一方でCore i7 7820XはL3キャッシュを8コアで共有しているため、キャッシュに載っているデータは8コアのうちどのコアからアクセスしてもキャッシュヒットとなります。ここが決定的な差です。

あとはCore i7 7820Xは512bit幅のSIMD演算器(FMA)を2基搭載しており倍精度で32FLOPS/cycleのデータレベル並列処理が可能です。一方でRyzen 7 1800Xは倍精度で8FLOPS/cycleです。

このような要因が重なって、同じ2017年発売にもかかわらず1コアあたりの性能で+14%もIntel Coreが勝つことになりました。

6コアのCore i7 8700Kに8コアのRyzen 7 1800Xが惨敗

先程のCore i7 7820XはSkylake-Xというシリーズで、Skylakeマイクロアーキテクチャを元にしたXeonプロセッサからエラー検出・エラー訂正機能を削減して実現されたプロセッサであるため高級品です。そこで次はそれよりは廉価なCPUと比較してみます。廉価とはいってもIntel CoreなのでRyzenよりは高価です。

2017年に発売された第8世代Coffee Lakeマイクロアーキテクチャを採用したCore i7 8700Kと比較してみます。Core i7 8700Kは6コアプロセッサなので、コア数では明らかにRyzen 7 1800と比較して不利です。

さらにはCore i7 8700Kには内蔵グラフィクスが搭載されている一方で、Ryzen 7 1800Xは内蔵グラフィクスを非搭載であるという点もIntel Core側にとって不利な条件です。なぜなら内蔵グラフィクスを搭載せずに「グラボを別途用意してください」というCPUのほうが内蔵グラフィクスを搭載しなくていい分だけ汎用コアの性能向上に注力できるためです。しかし結果は真逆になります。

このように+16%もCore i7 8700KがRyzen 7 1800Xに勝利する結果となってしまいました。

この勝因はベースクロック周波数がIntel Coreのほうが0.1GHzだけ高いことと、同じくキャッシュでの優位性があるためです。さらにCore i7 8700Kであっても256bit幅のSIMD演算命令(FMA)を2基搭載しているため倍精度で16FLOPS/cycleの性能があります。一方でRyzen 7 1800Xは8FLOPS/cycleの性能しか無いのは前述した通りです。これはZenアーキテクチャに搭載する予定だったAMD独自仕様のFMA4命令を土壇場で削除する憂き目にあってしまったからです。IntelはFMA3命令の仕様を採用して、x86命令セットアーキテクチャに2つのFMA命令仕様が存在する二重仕様状態になっていたわけですがAMDがZenアーキテクチャからFMA4を削除しIntelのFMA3に一本化されることになりました。それがRyzenでSIMD演算器の性能が乏しい遠因になっています。

Core i5 8600KにもRyzen 7 1800Xは勝てず

Core i7との比較ではRyzen 7 1800XはCore i7に勝てなかったので、同じ2017年に発売されたCore i5とも比較してみます。6コア6スレッドでベースクロック周波数3.6GHzのCore i5 8600Kです。Ryzen 7 1800Xのベースクロック周波数も3.6GHzなので、単純に+2コアのRyzen 7 1800Xがカタログスペック上は勝てるように見えます。

しかし結果はCore i5 8600KがRyzen 7 1800Xに+9%勝っています。コア数が少ないCore i5 8600Kが8コアのRyzenに勝ってしまったのは、Intel Coreは共有キャッシュのコヒーレンシアルゴリズムが優秀なのとアウトオブオーダー実行の分岐予測が優秀なためパイプラインをスムーズに流せること、また命令レベル並列並列処理の並列抽出度が高いことと、SIMD演算命令のFLOPS/cycle性能が高いためです。つまり1コアあたりの性能の高さがIntel Core側が勝っているためこのような結果になってしまいます。

第8世代Intel Core i5で最も性能が低いTDP65WのCore i5 8400にもRyzen 7 1800Xが敗北

2017年10月に発売された6コアのCore i5 8400と、8コアのRyzen 7 1800Xを比較してみます。

Core i5 8400は第8世代Intel Core i5の中で最も低性能なモデルです。これより下になるとCore i3シリーズになります。TDP65Wであり動作クロックは低めです。

このように+11%もCore i5 8400がRyzen 7 1800Xに勝利しています。

まとめ:

Core i7相手ならまだしも、Core i5 8600KにもRyzen 7 1800Xが性能で負けてしまうのは私も驚きました。

しかもCore i5 8600Kは性能も高くグラフィックボードも不要とメリットが多いです。

Ryzen 7 1800Xの敗因はコア数を増やしすぎたせいで1コアあたりの性能があまりに低すぎることと、内蔵グラフィクスが付いていないために事務作業用途重視の大口の企業向けに採用されにくいことです。またマルチコアは並列性がないと宝の持ち腐れとは以前から言われていますが、まさにそれが当てはまる実例となってしまいました。