おすすめCore i7 10700Kのベンチマーク性能比較レビュー Ryzen 9 3950Xを+10%以上の大差で打ち負かす性能

CPUにおいて、このIntel Core i7 10700Kのようなグレード700番のプロセッサというのは全てのプロセッサの尺度となる重要なモデルです。車で言うとMercedes C-Classが全ての車の基準となる中心的なベンチマークとされているのと同じ立ち位置にあります。

過去のCore i7 7700K、Core i7 8700K、Core i7 9700Kのようにこのグレード700番のプロセッサは、他のプロセッサと比較して性能が上かどうか判断する基準(ベンチマーク指標)に採用されることが多いです。多くのユーザから手の届きやすい入手コストの割に性能が高いためです。Intelもあえてその価格帯になるように毎回グレード700番のプロセッサを設計し市場に投入しています。

Core i7 10700Kの詳細カタログスペック

メーカー・モデル名Core i7-10700K (第10世代Intel)
コア数8コア16スレッド
基本動作周波数3.8GHz
最大動作周波数5.1GHz
全コア同時最大周波数4.7GHz
発売日2020年5月
セキュアブート対応
vProテクノロジ対応
同時マルチスレッディング有効
定格外オーバークロック対応
TDP(≒消費電力)125W
L1キャッシュ512KB
L2キャッシュ2MB
L3キャッシュ16MB
最大メモリサイズ128GB
メモリタイプDDR4-2933
メモリチャネル2
メモリ帯域幅45.8GB毎秒
コードネームComet Lake-S
コンピュータの形態デスクトップ
グラフィクス(iGPU)UHD Graphics 630
iGPU最大画面数3
iGPU最大ビデオメモリ64GB
iGPU基本周波数350MHz
iGPU最大周波数1,200MHz
iGPU EU数24
iGPU単精度コア数192
iGPU単精度性能0.4608TFLOPS
ソケットLGA 1200
アーキテクチャComet Lake
プロセスルールIntel14nm
SIMD拡張命令Intel AVX2, SSE
SIMD演算器256bit FMA×2
SIMD倍精度演算性能16 FLOPs/cycle
AI(深層学習)拡張命令非搭載

Core i7 10700KではCore i9 9900Kと比較してベースクロックも最大クロックも向上

Core i7 10700KはCore i7シリーズでありながらも、前世代のCore i9 9900Kよりもあらゆる面において動作クロックが向上しています。ベースクロックも3.6GHz→3.8GHzと向上しており、単コア最大クロックは5.0GHz→5.1GHzまで上昇しています。全コアが同時に達成する最大クロックは4.7GHz→4.7GHzと維持されています。Ryzen 9 3900X,Ryzen 7 3800Xの全コア同時最大クロックが4.2GHz、Ryzen 9 3950Xの全コア同時最大クロックが4.0GHzしかないのと比較すると非常に高いクロック数です。

Core i7 9700Kと比較して同時マルチスレッディング(SMT)であるハイパースレッディング有効

前世代のCore i7 9700Kは8コアプロセッサでありながら同時マルチスレッディングが無効化されていたので8コア8スレッドプロセッサでした。同時マルチスレッディングが有効化された8コア16スレッドプロセッサはCore i9 9900Kに譲られていました。それが第10世代Intel CoreではCore i7 10700Kでも同時マルチスレッディングが有効化されており8コア16スレッドプロセッサになっています。

Intel TXT(Trusted eXecution Technology)もvProも有効

UEFI(BIOS)を改竄する情報セキュリティ上の脅威から根本的に守るため、Intel TXT(トラステッド・エグゼキューション・テクノロジ)というものがCore i9 10900Kに用意されています。Core 10500のような型番500以上のグレードのIntel Coreプロセッサでは標準装備です。このIntel TXTがあると、TPMチップと組み合わせることでセキュアブートが可能になり、Cドライブ(ブートドライブ)を暗号化できるようになります。Intel TXTに対応していないと、たとえTPMチップがハードウェアとして搭載されていてもセキュアブートも出来なければCドライブ暗号化もできません。

AMD Ryzenではセキュリティ機能を意図的に無効化しているのではなく、そもそもCPUの半導体回路にセキュリティ機能が存在せず意図的にごっそり削られており、AMD RyzenはTPMチップ非対応でセキュアブートもブートドライブ暗号化も不可能です。Ryzenではセキュリティ機能にCPUの半導体チップ面積を割り当てる余裕がないためそのようになっています。

一方でIntel CoreプロセッサはCore i5 10500以上ならIntel TXTが有効化されているため、Core i9 10900Kでも当然のようにTPMチップを利用したセキュアブート&Cドライブ暗号化が可能です。

Core i7 10700Kと第3世代Ryzen(2019年~2020年発売)プロセッサの比較

Core i7 10700Kが属する第10世代Intel Coreは、2019年発売の第3世代Ryzenと第4世代Ryzenの間に位置します。Core i7 10700Kが発売された時点では第4世代Ryzenが存在せず、第3世代Ryzenが主に比較対象にされてきました。

Core i7 10700K vs. Ryzen 9 3950X

Core i7 10700KとRyzen 9 3950Xのベンチマーク比較結果は以下のようになります。

+11%も8コアのCore i7 10700Kが16コアのRyzen 9 3950Xを上回っています。

第10世代Intel Core i7 10700Kは第9世代Intel Core i9 9900Kの完全上位版

第9世代Intel Core i9 9900Kの形式的な後継モデルは第10世代Intel Core i9 10900Kですが、実質的な後継モデルは第10世代Intel Core i7 10700Kです。

第10世代Intel CoreではCore i9が10コアプロセッサになったので、8コアはCore i7シリーズのみが担当することになりました。

そのため、第9世代Intel Core i9 9900Kの立ち位置は第10世代Intel CoreではCore i7 10700Kに引き継がれています。

第9世代Intel Core i9 9900Kは同時マルチスレッディング(Intel商標名ハイパースレッディング)が有効化されており、同じく同時マルチスレッディングが有効化されていて8コアの第10世代Intel Core i7 10700Kが、Core i9 9900Kの実質的な後継CPUになります。

他方、第9世代Intel Core i7 9700Kは8コアプロセッサであるものの、同時マルチスレッディングが無効化されており8コア8スレッドプロセッサだったので、Core i7 9700Kと比較するとCore i7 10700Kはあらゆる面で改善されています。

Core i9 9900Kと比較してCore i7 10700Kは完全上位になっています。具体的には下図の通りです。

1コアのみを利用する用途から8コアを利用する用途まで、あらゆるパターンにおいてCore i9 9900KよりもCore i7 10700Kの性能が向上しています。性能比でいうと数%の上昇ですが、Core i9(第9世代)よりも下位のグレードであるCore i7(第10世代)の性能が数%上昇しています。前世代のCore i9よりも現行のCore i7のほうが高性能になっているため、世代が進んだことにより1グレード分性能が上方シフトしたことになります。

Core i7 10700Kのベースクロックが3.8GHzであり、Core i9 9900Kの3.6GHzよりも上昇したのもメリットですが、それより大きいのは定格動作の全コア同時の最大クロックがCore i7 10700Kは4.7GHzもあり、Core i9 9900Kの全コア同時最大クロック4.7GHzと同等であることです。手動でオーバークロックするとCore i9 9900Kよりも全コア同時最大クロックが上昇します。

これにより、シングルスレッドのアプリケーションでも、スレッドレベル並列性が高いアプリケーションでも共にパラレルシフトで性能向上しています。

Core i9 9900KよりもCore i7 10700Kのほうがグレードが下の分だけ価格も安くなっており、性能も高く価格も安いという完全上位になっています。