おすすめCore i3 9350KFのベンチマーク性能比較レビュー 16コアの第3世代Ryzen 9 3950Xを上回る性能

Core i3 9350KFは2019年4月に発売された第9世代Intel Coreプロセッサです。

第9世代Intel Core i3の中では最も高性能です。4コア4スレッドで共有キャッシュは8MB。コア数が少ないものの動作クロックは4.0GHz~4.6GHzとなっており高めです。

4コアしかないCore i3 9350KFが16コアもあるRyzen 9 3950Xに勝ってしまう

ソフトウェアをCPUで実行するとき、そのソフトウェアを16分割して16個のコアに割り当ててくれるわけではありません。

ソフトウェアには基本的に1つのスレッドしかないことが多く、その場合は16個コアがあろうとそのうちたった1コアしか利用されません。

これが多コアCPUの弱点です。これは今に始まったことではなく、マルチコアプロセッサ以前のマルチプロセッサ(ソケットが複数あるタイプ)の時から指摘されている問題です。

そしてRyzen 9 3950Xは、そのマルチコア化の問題に直面してしまったプロセッサになります。

このように4コアのCore i3 9350KFがRyzen 9 3950Xに+2%だけ勝利しています。このような結果になってしまったのは、Ryzen 9 3950XのZen2マイクロアーキテクチャが劣っていること、第3世代Ryzenの動作クロックが思った以上に上がらなかったこと、そもそも多数のコアを使い切れるソフトウェアが世の中に存在しない、のように多数の要因があります。

Zen2マイクロアーキテクチャの欠点としては、4コアごとのCCX単位ごとに共有キャッシュが存在することです。16コアあるということは4基のCCXがあるわけですが、それはつまり共有キャッシュ4つに分割されていることを意味します。CCX0のキャッシュにはデータが乗っているのに、CCX1のキャッシュにはデータが乗っていないためキャッシュミスとなり多大なキャッシュミスペナルティが発生します。これによってパイプラインがストール(停止)し、IPC(クロックサイクルあたりの命令実行数)が低下してしまうのがRyzen 9 3950Xの大きな欠点です。

コアを増やしすぎるとその弊害で逆に性能が低下することがあるのは並列コンピューティング分野では常識ですが、それが綺麗に当てはまったのがこのRyzen 9 3950Xです。

コア数が3倍もあるRyzen 9 3900XとCore i3 9350KFが互角の性能

Ryzen 9 3950Xは16コアもあることから1コアのベースクロックは3.5GHzしかありませんでした。消費電力(単位時間あたりの発熱量)の制約があるためです。

そこで少しコア数を減らしたRyzen 9 3900Xと比較してみます。Ryzen 9 3900Xは2019年7月に発売されたもので、12コア24スレッドです。Ryzen 9 3950Xよりもコア数が4コア減ったことで、ベースクロックは+0.3GHzの3.8GHzとなっています。たった+0.3GHzのベースクロック上昇でも侮ることはできず、Ryzen 9 3950Xの3.5GHzから比較すると+8.6%も性能向上していることになります。その代わり4コアを失っているので(コア数は25%減)、ベースクロックを引き上げたことによる性能向上と、コア数が減ったことによる性能低下どちらが大きく効いてくるかの問題になります。

結果は+1%だけCore i3 9350KFがRyzen 9 3900Xを上回る性能です。Ryzen 9 3950Xよりも性能差が縮まっています。つまりコア数を減らした代わりに動作クロックを引き上げたことで若干性能が伸びたことになります。ちなみに8コア(Ryzen 7 3800X)や6コア(Ryzen 5 3600X)の第3世代Ryzenではそのような逆転現象は起こりません。8コアや6コアの第3世代Ryzenよりも12コアのRyzen 9 3900Xのほうが高性能です。

つまり第3世代Ryzenの半導体製造プロセスだと、消費電力(単位時間あたりの発熱量)がボトルネックにならずに済むコア数は12コアが限界だということです。それ以上コア数を引き上げると消費電力の増大が足かせとなり動作クロックが上がらず、逆に性能が下がっていくことがわかります。

コア数が2倍もあるRyzen 7 3800XにもCore i3 9350KFが勝利

2019年7月に発売されたRyzen 7 3800Xは8コア16スレッドであり、第3世代Ryzenで8コアのプロセッサの中では最も上位のモデルです。

最も上位とはいってもそれは第3世代Ryzenプロセッサ(8コア)の中だけの話であって、Intel Coreも含めて比較すると全く上位ではありません。

4コアのCore i3 9350KFが、8コアのRyzen 7 3800Xに対して+1%の性能で勝利しています。Ryzen 7 3800Xは第3世代Ryzenの中では最も動作クロックを引き上げた8コアモデルであるにもかかわらず、4コアのCore i3 9350KFに負けてしまっています。Intel Coreプロセッサは元々キャッシュ機構が優秀でIPCも高くSIMD演算命令も優秀(FLOPS/cycleが高い)ですが、加えてCore i3 9350KFはベースクロックが4.0GHzもあるため1コアあたりの性能が極めて高いため、1コアあたりの性能で大きく劣るRyzen 7 3800Xが8コアであるものの敗北してしまった格好です。単純に言えば優秀なコア4つと、無能なコア8つとの比較で、優秀なコア4つが勝ったということです。