おすすめRadeon RX 5500 XT搭載グラボの比較 2016年発売のRX580を上回る性能だが、2016年発売のNVIDIA GeForce GTX 1060には勝てず

AMD Radeon RX 5500 XTは2019年12月に発売されたGPUです。2020年1月に発売された上位モデルのRadeon RX 5600 XTよりも1ヶ月先に発売されました。

性能面については結論から書くと、長らくAMD Radeonの主戦力だった先代のRadeon RX 580の性能は上回っています。

しかし、仮想通貨マイニング需要の崩壊で大量に余ったRadeon RX 580の焼き直しとして発売されたRadeon RX 590の性能には勝てておらず、Radeon RX 5500XTは「Radeon RX 580やRX590よりも価格と消費電力を抑えつつRX580とRX590と同程度の性能」といった位置づけです。性能重視よりも価格の安さ優先のモデルです。

他社製品との比較としてはNVIDIA GeForce GTX 1060には全く勝てておらず、ゲーム用途としてはRadeon RX 5500XTは微妙です。

NVIDIA GeForceの場合「補助電源不要のGeForce GTX 1050Tiはゲーム向きではなく,ゲーム用を想定するなら最低でもGeForceGTX1060から」とされています。Radeon RX 5500XTはそのGeForce GTX 1060を下回る性能なわけですから、Radeon RX 5500XTはゲーム用としてはかなり致命的な性能の低さです。

AMD製のGPUの中におけるRadeon RX 5500XTの位置づけについて、どのような文脈でこのRadeon RX 5500XTが発売されたのか解説しておきます。

AMDは台湾TSMC社の7nmプロセスで製造するGPUを設計する際にアーキテクチャも抜本的に刷新しました。そのアーキテクチャはRDNAアーキテクチャと名付けられています。このRDNAアーキテクチャを採用した第一弾のGPUは2019年7月にRadeon RX 5700XT,5700無印のリファレンスモデルとして発売されました。2019年7月7日に発売するというスケージュールありきの発売だったため、発売と同時にオリジナルファンモデルが発売できないほどの突貫で勇み足の発売となり、RDNAアーキテクチャを採用したRadeon RX 5000シリーズは未完な状態でのスタートでした。

そして2019年後半には下位モデルのRadeon RX 5600XTとRadeon RX 5500XTが発売されることが発表され、Radeon RX 5700XTや5700無印と同じ「Navi10」チップを用いたRadeon RX 5600XTは2020年1月に発売され、さらに性能を落とした「Navi14」チップを用いた今回のRadeon RX 5500XTは2019年12月に発売されました。

さらに下位モデルとしてRadeon RX 5000シリーズとしては一番下位のRadeon RX 5500という5500無印モデルがあるのですが、これはOEM供給のみとなっており単品で販売されていません。

Radeon RX 5000シリーズのうち、Radeon RX 5700XT,5700,5600XTについては「Navi10」という上位のチップが使われているのですが、今回紹介するRadeon RX 5500XTでは「Navi14」という下位のチップが使われています。付番は「Navi14」のほうが上の数字ですが性能は下です。「Navi14」チップのブロック図は以下のようになります。

「Navi10」のブロック図も後述しますが、この「Navi14」は「Navi10」と比較しかなりスリム化されており、チップ面積が158m㎡しかありません。「Navi10」では251m㎡もあります。

チップ面積を小さくすることで歩留まり(良品率)を向上させて製造原価を下げて販売価格も下げるためにわざわざNavi14という安いチップを用意したことになります。

赤いブロックがCompute Unit(CU)2基分になります。赤いブロックが合計12基あるので、CUは合計24基あることになるわけですが、Radeon RX 5500XTでは歩留り向上のために24基のCUのうち2基が無効化されており、24-2=22基のCUが有効化されています。

メモリコントローラは上図の左右にある「64bit Memory Controller」が2基のみです。Navi10では4基のメモリコントローラがあり、全て有効化するとメモリ帯域幅は448GB毎秒で、1基無効化すると336GB毎秒でしたが、Navi14ではもともと2基のメモリコントローラしかないのでメモリ帯域幅は224GB毎秒です。

以下のブロック図はRadeon RX 5600XTのものですが、CUの数だけでなく、無効化されているメモリコントローラが右下の1基だけのため、3基のメモリコントローラが有効化されており336GB毎秒のメモリ帯域幅を有しています。

Radeon RX 5500XTは「メモリ帯域幅はRadeon RX 5600XTの336GB毎秒から224GB毎秒まで減少し2/3」「コア数(Compute Unit数)はRadeon RX 5600XTの32基から22基まで減少し約2/3」となっています。

以上見てきたように、Radeon RX 5000シリーズはRadeon RX 5700XT,5700,5600XTで一つのグループです。5500XTだけは採用チップが異なるため別のグループに属するモデルであり、大幅に性能が見劣りします。予算があるならRadeon RX 5600XT以上を購入するか、NVIDIA GeForceを購入することをおすすめします。

1位: SAPPHIRE NITRO+ RADEON RX 5500 XT 8G GDDR6 DUAL HDMI/DUAL DP OC W/BP (UEFI) SPECIAL EDITION (SAP-RX5500XTNITRO+8GSP) 11295-05-20G (VD7149)

2019年12月発売。2.2スロット占有(厚さ44.2mm)。全長257mm。高さ132.8mm。ブーストクロック1,845MHz。ファン×2。補助電源8ピン×1

 

出力端子Displayport1.4×3、HDMI2.0b×2

Quick Connectファンに対応しており、簡単にファンを取り外してメンテナンスすることができます。デュアルBIOS(UEFI)にも対応しているので、出力端子側の基盤上部にある「BIOS SWITCH」でパフォーマンスモードと静音モードを切り替えることができます。