2022年9月に発売されたデスクトップ向けRyzen7000シリーズ(Raphael)はZen4マイクロアーキテクチャを採用したAMD製CPUです。
2020年発売のRyzen5000シリーズからコア数が増えなかったものの、Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xに関してはマルチスレッド性能が+45%程度上昇しています。しかしシングルスレッド性能の伸びはそこまで大きくなく、第12世代Intel Core 12900KS以下の水準になってしまいました。
8コアと6コアのRyzen 7 7700XとRyzen 5 7600Xに関してはマルチスレッド性能はわずかに伸びた程度で、マルチスレッド性能に関しては第12世代Intel Coreにも負けてしまう水準です。しかしシングルスレッド性能は大きく伸びたことで第12世代Intel Core i7とi5のシングルスレッド性能を上回ります。
このようにRyzen7000シリーズは発売時期が1年早い第12世代Intel Core相手にすら負けてしまう部分があるCPUです。
パソコン工房(iiyama)
グラボをセットにせず内蔵グラフィクスのみの製品が出ているのがパソコン工房の良い点です。
パソコン工房 iiyama PC SENSE-F0X7-LCR79W 【Ryzen 9 7950X, メモリ32GB, SSD1TB, 65.9ℓ】

商品名 | パソコン工房 iiyama PC SENSE-F0X7-LCR79W |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 9 7950X |
GPU | Radeon Graphics, NVIDIA GeForce RTX 4090 |
メモリ | 32GB |
SSD | 1TB |
OS | Windows 11 Home, Windows 11 Pro |
サイズ | 65.9ℓ |
価格 | \ 317,000(税込) |
PCケースが大型すぎる意外はいたって普通のスペックです。ただし少し割高であり、メモリを16GBすれば他社で20万円台も視野に入ります。RTX4090版よりもRadeon内蔵グラフィクス版がおすすめです。
AMD Ryzen7000シリーズの概要と発売後の状況
2022年9月にRyzen7000シリーズが発売され市場での評価が定まってきました。まとめると「第13世代Intelに負けたRyzen7000」「コスト面でもAM5用のマザーボードが必須で不利」「Ryzen7000購入予定者が仕方なくRyzen5000へ流れる」といった事態に陥っています。
CPU本体はRyzen5000より格段に良いもののAM5マザーボードで失敗
Ryzen7000はRyzen5000と比べて格段に性能向上しています。にも関わらずkakaku.comでの売れ筋は第13世代Intel(Raptor Lake)より下位です。これはRyzen7000(Zen4)ではソケットがAM5に変更され、マザーボードを新調する必要に迫られそこにコスト面で苦しんでいるユーザが多いためです。
AMD Ryzenユーザはあまりお金を持っていません。AMDはその点優しく、AM4マザーボードを長年使い回すことができました。つまり新しいRyzenが出てもCPUを買い替えるだけでよかったのです。
あえてRyzenを購入する層はもの好きが多く「Intelに負けようと関係なくあえてRyzenを買う」傾向があります。そういったユーザはほぼ毎年新しい世代のRyzenを買います。
しかしRyzen7000ではAM5対応マザーボードが非常に高額になりました。それに加えて一ヶ月後に発売された第13世代Intel Core(Raptor Lake)があまりにも強すぎたため、ベンチマーク比較結果がRyzen側にとって不利であり、「Intelに負けるとわかってるRyzen7000をわざわざ高い金払って買う気が起きない」という状況にAMDユーザが陥りました。
その結果何が起きたかというと「値下げされたRyzen5000を買う」という購買行動です。しかしAM4マザーボードは既に生産終了。AM4マザーボードが品薄となり中古マーケットでも価格が高騰してしまっています。それでもRyzen7000ではなくRyzen5000を買うAMD愛好家が多いのは「Ryzen7000を買うと第13世代Intelとタイマンを張らなければならないがRyzen5000を買えば第13世代Intelと比較されなくて済む」といったメリットがあるためです。「東工大(Ryzen7000)に行くと東大(第13世代Intel)と比べられてしまうけど電通大(Ryzen5000)に行っておけばそもそも東大(第13世代Intel)と比較されずに済む」といった逃げの行動を取るのと似ています。つまり敵前逃亡してRyzen5000に流れているAMD愛好家が多いということです。その原因は「AM5マザーボードが高価すぎたこと」「そもそも第13世代Intelに負けてしまったこと」この2点に集約されます。
Ryzen7000各種ベンチマークごとのCPU性能比較
Ryzen7000シリーズの各CPUの他にIntel製CPUや過去のRyzenを統合してベンチマーク比較していきます。比較対象として、Ryzen7000シリーズと発売時期が同時期の第13世代Intel Core, Ryzen7000シリーズよりも発売時期が1年前の第12世代Intel Core, 前世代に相当するZen3世代Ryzen5000シリーズを対象に各種ベンチマークで比較していきます。
グラデーション色になっているのがRyzen7000シリーズです。Ryzen7000シリーズ各CPUの平均スコアを計算し、その平均スコアから見てその他のCPUがどれだけ性能差があるかどうかをパーセンテージで表示しています。パーセンテージが緑色の数値の場合、Ryzen7000シリーズの平均スコアより高い性能を持つCPUであることを意味します。
Userbenchmark(Effective)
パソコンで使う実際的なアプリケーションの性能評価に近いのがUserbenchmarkのEffective(実効)スコアです。今回のRyzen7000シリーズはグラデーション色で表示しています。
CPUモデル名 | Userbenchmark(実効)のベンチマーク性能評価スコア値 |
---|---|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
前世代のRyzen 7 5800X3Dを超えていますが、1コアあたりの性能が未だに微妙なため8コア以下の性能に関してはCore i9 12900KSの方が高性能になっています。ただし以下見ていく通り、多数のスレッドを同時に走らせた場合のスレッドレベル並列性の高さに関してはRyzen7000シリーズの性能は高いです。
PassMark(Single)
PassMarkはRyzen5000シリーズにおいてはIntel Coreより有利なシングルスコアが出やすい傾向にありましたが、Ryzen7000シリーズでは逆転しておりIntel Coreの方が有利な結果が出ています。
PassMarkのシングルスレッドスコアに関してはRyzen7000シリーズの結果は芳しくありません。
CPUモデル名 | PassMark CPU(Single)のベンチマーク性能評価スコア値 |
---|---|
![]() |
+3.2% |
![]() |
+1.9% |
![]() |
+1.9% |
![]() |
+0.1% |
![]() |
+0.1% |
![]() |
+0.1% |
![]() |
-0.1% |
![]() |
-0.1% |
![]() |
-0.1% |
![]() |
-1.0% |
![]() |
-1.2% |
![]() |
-1.3% |
![]() |
-1.3% |
![]() |
-1.3% |
![]() |
-3.7% |
![]() |
-4.2% |
![]() |
-4.8% |
![]() |
-5.2% |
![]() |
-6.9% |
![]() |
-7.0% |
![]() |
-7.2% |
![]() |
-7.6% |
![]() |
-7.8% |
![]() |
-11.1% |
![]() |
-12.9% |
![]() |
-13.6% |
![]() |
-15.8% |
![]() |
-16.9% |
![]() |
-19.4% |
![]() |
-19.7% |
![]() |
-20.3% |
![]() |
-21.0% |
![]() |
-22.2% |
![]() |
-22.2% |
![]() |
-22.8% |
![]() |
-22.9% |
![]() |
-22.9% |
![]() |
-22.9% |
![]() |
-23.5% |
![]() |
-25.2% |
![]() |
-26.9% |
![]() |
-26.9% |
![]() |
-26.9% |
![]() |
-26.9% |
![]() |
-26.9% |
![]() |
-26.9% |
![]() |
-26.9% |
![]() |
-28.5% |
![]() |
-30.1% |
![]() |
-30.1% |
![]() |
-31.7% |
![]() |
-34.1% |
![]() |
-34.1% |
![]() |
-34.1% |
![]() |
-34.1% |
![]() |
-40.0% |
![]() |
-40.2% |
![]() |
-40.8% |
![]() |
-40.8% |
![]() |
-58.1% |
![]() |
-63.5% |
![]() |
-81.3% |
Ryzen7000シリーズ最高峰のRyzen 9 7950Xを使っても、1年前に発売された第12世代Intel Core i9 12900KSに勝てていない状況です。Cinebenchのシングルスレッドスコアでも同様の結果だったため、シングルコア性能に関してはようやく「1世代前のIntelに追いついてもいない」レベルだと言えます。
PassMark(Multi)
PassMarkのマルチスレッド性能評価はRyzenに有利な結果が出る傾向にあります。前世代のRyzen 9 5950XでもCore i9 12900KSを上回る結果でした。
CPUモデル名 | PassMark CPU(Multi)のベンチマーク性能評価スコア値 |
---|---|
![]() |
+47.7% |
![]() |
+47.7% |
![]() |
+18.4% |
![]() |
+18.4% |
![]() |
+18.4% |
![]() |
+5.5% |
![]() |
+5.5% |
![]() |
+2.6% |
![]() |
-4.7% |
![]() |
-4.8% |
![]() |
-10.6% |
![]() |
-16.0% |
![]() |
-18.8% |
![]() |
-18.8% |
![]() |
-18.8% |
![]() |
-20.5% |
![]() |
-25.4% |
![]() |
-26.1% |
![]() |
-35.1% |
![]() |
-38.2% |
![]() |
-38.8% |
![]() |
-52.4% |
![]() |
-52.4% |
![]() |
-52.4% |
![]() |
-53.3% |
![]() |
-53.3% |
![]() |
-54.6% |
![]() |
-56.8% |
![]() |
-58.7% |
![]() |
-63.0% |
![]() |
-63.0% |
![]() |
-63.0% |
![]() |
-77.0% |
![]() |
-77.0% |
![]() |
-92.0% |
![]() |
-98.0% |
![]() |
-98.0% |
![]() |
-98.0% |
![]() |
-98.0% |
![]() |
-102.0% |
![]() |
-105.0% |
![]() |
-114.1% |
![]() |
-119.2% |
![]() |
-119.2% |
![]() |
-119.2% |
![]() |
-119.2% |
![]() |
-119.6% |
![]() |
-122.8% |
![]() |
-123.1% |
![]() |
-148.3% |
![]() |
-155.2% |
![]() |
-162.9% |
![]() |
-189.4% |
![]() |
-203.0% |
![]() |
-203.2% |
![]() |
-234.1% |
![]() |
-234.1% |
![]() |
-238.6% |
![]() |
-544.2% |
![]() |
-639.0% |
![]() |
-889.4% |
![]() |
-980.4% |
今回のRyzen7000シリーズでも、PassMarkのマルチスレッド性能はCore i9 12900KSを大幅に上回る結果になっています。特にRyzen 9 7950Xのマルチスレッド性能は突出しています。これはUserbenchmarkのServerスコアと符合しています。
Ryzen7000各CPUモデルごとのデスクトップパソコン比較とベンチマーク性能評価
ここではRyzen7000シリーズ(Raphael)の各CPUごとのスペックと搭載デスクトップパソコン比較とベンチマーク詳細ページへのリンクをまとめています。
AMD Ryzen 9 7950X
AMD Ryzen 9 7950X搭載デスクトップパソコンと詳細ベンチマーク性能比較はこちらに掲載しています。
まとめ:Ryzen 9 7950X,7900Xのシングルスレッド性能はCore i9 12900KSより劣る
Ryzen 7 7700Xのマルチスレッド性能はCore i7 12700Kより下 第13世代Intel Coreを持ち出すまでもない結果
2022年9月に発売されたRyzen7000シリーズは、同時期に発売の第13世代Intel Core(Raptor Lake)と比較するのが妥当です。ただ一応本記事ではRyzen7000シリーズより1年前に発売された第12世代Intel Coreとも比較してきました。古いIntel Coreと比較する分にはAMD Ryzen側にとって不利はない比較です。
しかし逆に考えると、1世代前の第12世代Intel Coreに対しRyzen7000シリーズが負けるようでは第13世代Intel Coreとの比較になるとさらにRyzen側が不利になることを意味し、実際第13世代Intel Coreに対しRyzen7000は惨敗しています。
以上のベンチマーク結果から明らかになったことをまとめると以下の通りです。
第13世代Intel Core(Raptor Lake)に対しRyzen7000は完敗
第13世代Intel Coreが2022年10月に発売されて以降、AMD愛好家は嘆息しています。なぜならCore i9 13900Kを始めとする第13世代Intel Coreがあまりにも強すぎて、多くのベンチマーク対決でRyzen7000にとって芳しい結果が出なかったためです。
しかもRyzen7000はソケットが変更されたためマザーボード新調が必須でありコストばかりがかかる割にIntel Coreには勝てない。そんなようではRyzen7000の購入意欲もベンチマーク意欲も削がれるということで、Ryzen7000はkakaku.comの売り筋ランキングでもRyzen7000は第13世代Intel Coreより下位に落ち込んでいます。ベンチマークスコアのサンプル数増加も、後に発売された第13世代Intel Coreの方がRyzen7000よりも良好です。それだけRyzen7000を買い控えをしてる層が多いということです。
Ryzen7000(16~12コア)と第12世代Intel Coreとの比較においては、シングルスレッド性能はIntelが上、マルチスレッド性能はAMDが上
つまりRyzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xに関してはシングルスレッド性能が第12世代Intel Coreに負けているということです。
Ryzen7000(8~6コア)と第12世代Intel Coreとの比較においては、シングルスレッド性能はAMDが上、マルチスレッド性能はIntelが上
8コアと6コアについては以下のような結論が導出できます。
Ryzen7000シリーズでは8コアと6コアのモデルに関しては、第12世代Intel Coreを上回るシングルスレッド性能を実現しています。
しかし8コアと6コアモデルのマルチスレッド性能になると以下のような結論になります。
つまりRyzen7000シリーズは各コア数によって、1世代前の第12世代Intel Coreに対して負けたり勝ったりまちまちな結果になります。