GeForce GT710は2016年にリリースされたGPUです。Kepler(ケプラー)アーキテクチャを採用しています。本来Keplerアーキテクチャ搭載製品は2013年~2014年にリリースされたものでした。その製造プロセスを改良して焼き直し品として2016年にリリースされたのがこのGT710です。
GT710がリリースされた2016年当時は既にMaxwell(マクスウェル)アーキテクチャどころかPascal(パスカル)アーキテクチャ採用のGPUもリリースされています。
そんな中でKeplerアーキテクチャ採用GPUの710がリリースされたのは、余っていた28nm生産ラインを再利用するためです。生産設備は製造原価の「経費」として減価償却するためできるだけ多くの製品を生産したほうが1製品あたりのコストを下げることができ有利です。
そのため古いKeplerアーキテクチャを採用しつつも1コアあたりの性能をGT720(2014年リリース)より引き上げることによってGT720よりも高性能を実現したのがGT710です。コア数はGT710もGT720も192コアで同じですが、後にリリースされたGT710のほうが動作周波数が高いため高性能になっています。
このGT710(192コア)はさすがにGT730(384コア)には勝てません。GT730の後継モデルであるPascalアーキテクチャ採用GT1030(384コア)にも当然勝てません。
あえてGT1030ではなくGT710が選択されるのは、「高さが低いロープロファイル」「ボード厚が薄い1スロット占有」「ファンレス」といった3つの要素を同時に達成できるからです。
GT1030はこの3つの要素を同時に達成できません。GT1030は「ロープロファイル」を達成できますが、「ファンレス」と「1スロット占有」を同時に達成することができずどちらか片方を選択することになってしまいます。つまりまとめると以下のようになります。
また、このGT710はゲーム用途を想定しているユーザから選択されるものではありません。
一応各ゲームでのフレームレートベンチマーク結果を載せておきます。
「とりあえず画面が映ってWindowsの作業ができればいい」といった用途です。
とりあえずディスプレイ表示ができればいいといった用途で使われます。
例えば「Xeon Scalableファミリ」や「Xeon W」のように内蔵グラフィックス(iGPU:オンボードグラフィックス)が搭載されていないCPUを使う場合です。Xeonは最も廉価な「Xeon E」を除いて内蔵グラフィックスが搭載されておらず、グラボを用意しないと画面が映りません。Xeonを使って映像処理する場合はQuadroを使う人もいるでしょうが、金融分析などの用途では純粋にXeonプロセッサの演算機能だけを使う場合が多いため、「とりあえずWindowsの管理作業ができればいい」用途でこのGT710が使われます。
さらにIntel PentiumやCeleronのように内蔵グラフィックスであるIntel UHD Graphics 610(0.201TFlops)の性能では少し物足りないといった場合にGT710(0.366TFlops)が使われることがあります。Intel Coreの場合はIntel UHD Graphics 630で0.460TFlopsの性能があるため、GT710のほうが低性能です。
またこのグラボは同時に3画面出力対応でトリプルディスプレイにできます。しかしトリプルディスプレイにすると1画面あたりのフレームレートが大幅に下がります。たとえばHDMI端子1つのみで1画面出力なら4K@60fpsのグラフィック性能がGT710にはあります。しかしこれを2画面にしたり3画面にするとHDMI端子であっても4K@60fpsは絶対に無理であり4K@30fpsも難しいです。3画面表示にするなら1画面あたりの解像度はフルHDが限界です。
192コア搭載
ベースクロック954MHz、ブースト非対応、単精度浮動小数点演算性能0.366TFlops、倍精度浮動小数点演算性能0.0153TFlops、同時3画面出力対応
1位: ELSA(エルザジャパン)
・ELSA GeForce GT 710 LP 2GB Passive GD710-2GERLP
2016年8月発売。ファンレスかつ1スロット占有かつロープロファイルに対応しています。標準搭載されているブラケットは通常サイズのブラケット。ロープロ対応にするためには付属しているロープロファイル用ブラケットに交換する必要があります。ロープロファイルブラケットに交換した場合アナログD-Sub端子は無くなり、HDMI×1、DVI-D×1の2画面表示までになります。
ファンレスに対応しつつ厚さ18mmなので1スロット(2cm)の範囲内に収まっています。高さは68.9mmなので一般的なロープロファイルグラボの69mmの範囲内に収まっています。ロープロファイルグラボのブラケット規格は8cmなので十分高さに余裕があります。全長は146mmで6インチ以内。
最もおすすめできるGT710搭載グラボです。
・ELSA GeForce GT 710 LP 2GB GD710-2GERL
2016年3月発売。1スロット占有(17.9mm厚)かつロープロファイル(高さ68.5mm)に対応。しかしファンレスではなくファンを1基搭載しています。上記モデルはファンレスのため全長が146mmありますが、こちらはファンを搭載しているため全長を短くできており130mmです。全長を130mmに抑える必要がなく全長146mmでも問題ない場合は上記のファンレスモデルのほうがおすすめです。
・ELSA GeForce GT 710 LP 1GB GD710-1GERL
上記ファン付きモデルのメモリ1GB版です。その他のスペックは同じです。
2位: ASUS
・GT710-SL-2GD5-BRK
2017年6月発売。ファンレスモデル。メモリ2GB。1スロット占有(17mm厚)。ロープロファイル対応(高さ69mm)。全長167mmで6.5インチ。ELSAのファンレスかつ1スロット占有グラボより全長が少し長い程度。
・GT710-SL-1GD5-BRK
2017年10月発売。上記モデルの1GBメモリ版。その他のスペックは同じ。
・710-2-SL-BRK
2016年11月発売。ファンレスモデル。ただし2スロット占有(33mm厚)。2017年発売のファンレスモデルより全長は少し短く137mmだが、1スロット占有の2017年モデルのほうがおすすめ。メモリ2GB。
・710-1-SL-BRK
2016年3月発売。上記モデルのメモリ1GB版。
3位: MSI
・GT 710 2GD5 LP
2017年8月発売。GDDR5の2GBメモリ搭載。2016年発売品はGDDR3メモリだったのでそれを改善したモデル。1スロット占有(19mm厚)。全長147mm。ロープロファイルタイプ(高さ69mm)。
・GT 710 2GD3H LP 2GB
ファンレス。2016年1月発売。
・GT 710 1GD3H LP 1GB
ファンレス。2016年1月発売。
4位: 玄人志向
・GF-GT710-E2GB/HS
2スロット占有(35mm厚)。全長157.9mm。ブーストクロック954MHz。ファンレス。補助電源コネクタ非搭載(補助電源不要)。出力端子HDMI×1、DVI-D×1、D-Sub(アナログ)×1