Core i7 12650Hは2022年1月にリリースされたモバイル向け第12世代Intel Coreプロセッサの中でAlder Lake-Hシリーズに属するCPUです。
一応Core i7シリーズに属してはいますが、Core i7 12700H等の他のCore i7(Alder Lake-H)シリーズから見るとCore i7 12650Hは大幅に低性能だと認識する必要があります。「型番的にCore i7 12700Hより少しだけ下位」と勘違いされがちですが、実際は「Core i7 12700Hよりも大幅に下位」です。Core i7どころかCore i5 12600Hよりも劣っている面がいくつかあります。
Core i7 12650Hは汎用コアのクロック自体はCore i7 12700Hと全く同じですが、他の部分が削減されています。
Core i7 12650Hが他のAlder Lake-H Core i7シリーズと異なる部分は、E-Coreのコア数が半分, L1&L2キャッシュサイズ減少(1コアあたりのL1&L2キャッシュサイズは同じ), 内蔵グラフィックス単精度コア数の減少, vPro機能が無効化など非常に多岐にわたります。
Intel Core i7 12650Hの詳細スペックと特徴
メーカー・モデル名 | Intel Core i7-12650H |
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コア数 | 10コア16スレッド(P-Core:6コア12スレッド + E-Core:4コア4スレッド) |
P-Core周波数 | 2.3GHz~4.7GHz |
E-Core周波数 | 1.7GHz~3.5GHz |
コードネーム | Alder Lake-H45 (第12世代Intel) |
発売日 | 2022年1月 |
vProテクノロジ | 無効 |
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同時マルチスレッディング | P:有効 + E:無効 |
定格外オーバークロック | 非対応 |
TDP(≒消費電力) | 45W~115W |
L1キャッシュ | 864KB (P:480KB + E:384KB) |
L2キャッシュ | 9.5MB (P:7.5MB + E:2MB) |
L3キャッシュ | 24MB (P:18MB + E:6MB) |
最大メモリサイズ | 64GB |
メモリタイプ | DDR5-4800, DDR4-3200, LPDDR5-5200, LPDDR4-4267 |
メモリチャネル | 2 |
コンピュータの形態 | モバイル |
ソケット | BGA 1744 |
グラフィクス(iGPU) | Intel UHD Graphics |
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iGPU最大画面数 | 4 |
iGPU最大周波数 | 1,400MHz |
iGPU EU数 | 64 |
iGPU単精度コア数 | 512 |
iGPU単精度性能 | 1.4336 TFLOPS |
アーキテクチャ | Golden Cove+Gracemont |
プロセスルール | Intel 7 |
SIMD拡張命令 | Intel AVX2 |
SIMD演算器 | 256bit FMA×2 |
SIMD倍精度演算性能 | 16 FLOPs/cycle |
AI(深層学習)拡張命令 | Intel Deep Learning Boost (AVX2 VNNI), Intel GNA3.0 |
Core i7 12650Hのスペックは上表の通りです。Core i7 12700Hとの大きな違いとしてはE-Coreの数がCore i7 12650Hでは半減した4コアになっていることです。また内蔵グラフィックスの単精度コア数が減っており、Intel Iris Xe Graphicsではないことにも注意する必要があります。キャッシュサイズは、E-Coreが半減しているためCore i7 12700Hより減っていますがL1,L2キャッシュサイズに関しては1コアあたりのキャッシュサイズは変化していません。一方でL3キャッシュサイズはCore i7 12700Hと同じなので、Core i7 12650Hの1コアあたりL3キャッシュサイズはCore i7 12700Hよりも大きいことになります。あとはvProが無効化されてしまっていることにも注意です。
Core i7 12650Hの汎用コア数はE-Coreのみが半減
Core i7 12650HのP-Coreの数はCore i7 12700Hと同じ6コアです。しかしCore i7 12650HのE-Coreは4コアとなっており、Core i7 12700Hの8コアから半減しています。この汎用コア数の違いがCore i7 12650Hのスペックを特徴づける最も大きな点です。
Core i7 12650Hの動作クロックはCore i7 12700Hと全く同じ
Core i7 12650Hはコア数こそ減っていますが、動作クロックに関してはCore i7 12700Hと全く同じです。普通は下位モデルになるとコア数の削減と同時にクロックも下がるのが通例ですが、動作クロックが上位モデルのCore i7 12700Hと同じである点はCore i7 12650Hにとってプラスです。
Core i7 12650HのL1,L2キャッシュサイズはCore i7 12700Hより減っているが1コアあたりのL1,L2キャッシュサイズは同じ L3キャッシュサイズは維持
Core i7 12650HのL1,L2キャッシュサイズはCore i7 12700Hと比べて削減されています。しかしそれはE-Coreが半減していることに伴うものであり、1コアあたりのL1,L2キャッシュサイズで見ればCore i7 12700Hと全く同じです。つまりL1,L2キャッシュサイズに関しては実質的に削減されていないと見ていいです。
むしろL3キャッシュサイズに関しては1コアあたりのキャッシュサイズが増加しています。L3キャッシュサイズは、E-Coreが半減してもCore i7 12700Hと同じ容量のままであるため、1コアあたりでみればCore i7 12650HのL3キャッシュサイズはCore i7 12700Hより大きいです。
Core i7 12650Hの内蔵グラフィックスはIntel UHD Graphicsで、Iris Xeではない 単精度コア数は少ないが動作クロックはCore i7 12700Hと同じ
Core i7 12650Hに搭載されている内蔵グラフィックスはUHD Graphicsであるため単精度コアが512コアのみです。Core i7 12700H(Intel Iris Xe Graphics)の768コアと比較するとだいぶ劣ります。ただし動作クロックはCore i7 12700Hと同じなので、単にグラフィックコア数だけの違いになっています。
Core i7 12650HはAlder Lake-Hでは珍しくvProが無効化されている
以前のモバイル向けIntel Core-HシリーズではvProが無効化されているのが通例でした。一方で今回のAlder Lake-Hシリーズでは殆どのモデルでvProが有効化されています。このCore i7 12650HのようにvProが無効化されているAlder Lake-Hプロセッサは珍しいため、もしvProを使うような用途(法人等でノートPCを大量調達)を想定している場合には注意が必要です。
総合するとCore i7 12650HはCore i7 12700Hのコア数のみ削減しクロックは維持したプロセッサ
以上のことを総合すると、Core i7 12650Hは汎用コアやグラフィックコアを削減しつつもクロック周波数は下げずに維持しているCPUということになります。あとはvProを無効化しているのが特徴です。