簡易水冷一体型おすすめグラフィックボードの比較 完全水冷型から空冷ファン搭載のハイブリッド型までランキング評価

CPUのみならずGPUも世代を重ねるごとに高消費電力化&高発熱化が進んでいます。NVIDIA製GPUではPascal世代よりもTuring世代のほうが同グレードGPUのTDPが上昇しました。AMD製GPUだとNVIDIAよりもさらに性能あたりの消費電力が上昇します。

グラフィックボードは本格水冷を組んでもいいですが、簡易水冷であっても2,000MHzのオーバークロックで最高温度55℃を実現できてしまいます。空冷だと3スロット占有、全長324mm級の「ZOTAC AMP Extreme」や「MSI LIGHTNING Z」を使っても1,800MHz台のクロックで85℃に達してしまいます。簡易水冷であっても非常に強力な冷却性能です。

結果的に補助電源8ピン×3を搭載している空冷グラボ「MSI LIGHTNING Z」は、補助電源8ピン×2の簡易水冷一体型グラボよりも低い3D Mark Fire Strikeベンチマーク値しか出せません。電力供給が十分であっても冷却能力が不十分だと性能が出ない典型例です。簡単に水冷の恩恵を享受できる簡易水冷一体型のグラフィックボードはとてもおすすめです。

CPUでTDP150Wだと爆熱ですがGPUでTDP150Wだと普通です。つまりもし簡易水冷にするのなら、TDP75W級の補助電源不要GPUでもない限りは水冷化を優先すべきはまずGPUでありCPUはその後です。

RTX2080Tiで2,000MHz超のオーバークロックでも50℃台までしか温度上昇しない240mm簡易水冷

簡易水冷一体型グラフィックボードには120mmラジエータタイプ(120mmファンを片面に1基搭載可能なもの)と、240mmラジエータタイプ(120mmファンを片面に2基搭載可能なもの)が主に存在します。

120mmラジエータタイプは、大型ヒートシンクを搭載した空冷グラフィックボードと冷却性能は大差ありません。120mmラジエータタイプの簡易水冷一体型GPUのメリットは単に水冷特有のクーラント(冷却液)の比熱の大きさによる「徐々に温度が上がっていく」という特性があるのと、2スロット占有&268mm(10.5インチ)全長サイズで「3スロット占有かつ全長320mmの空冷GPU」と同じ冷却性能を実現できることです。

グラボを高負荷で使い続けたときに到達してしまう温度は120mmラジエータと、大型ヒートシンク空冷の間では大差ありません。

しかし240mmラジエータを搭載した簡易水冷一体型グラフィックボードは2,000MHzまで動作クロックを上げても最高温度55℃でピークアウトしてくれます。付属しているしょぼいラジエータファンをNoctua製に換装しなくてもこの性能を発揮してくれます。

この50℃台というのは差分温度ではありません。温度計測においては、ベンチマーク開始時のGPU温度をxとしベンチマーク中の最大温度をyとしてy-xで差分温度(delta temperature)を計測する方法があります。またxの温度としてベンチマーク開始時ではなく室温(ambient temperature)を使う流儀もあります(海外のフォーラムではこの手法が多い)。

この50℃台の温度は室温25℃程度のときに3D Markを走らせたときのGPUの絶対温度(上記のy)です。室温を差し引いた差分温度ではありません。

しかも付属品の標準ファンを用いてもこの温度なので、標準120mmファンをNoctua NF-A12x25 PWMに換装するとさらに冷却性能は向上します。Noctuaファンは風量や静音性のみならず静圧も優れているためファン回転数あたりの冷却性能と静音性をさらに高めることが可能です。

1位: EVGA

EVGAは米国企業で海外では有名ですが、日本の大手出版社系メディアは全くレビューしないことで有名なグラボメーカーです。

EVGAは2スロット占有の製品が多くラインナップされており、Dan CasesやLouque Ghost S1のような小型(SFF:small form factor)PCケースで重宝されています。

このKINGPINシリーズはEVGAの数ある簡易水冷一体型グラボの中でも最高峰の位置づけのものです。

2位: GIGABYTE AORUS GeForce RTX 2080 Ti XTREME WATERFORCE 11G (GV-N208TAORUSX W-11GC)

NVIDIA GeForce RTX 2080 Tiの240mm簡易水冷一体型グラフィックボードです。

簡易水冷ポンプはCoolerMaster製です。Asetek製ではありません。

後述するInno3Dの240mmタイプRTX2080Tiが品薄なため、事実上このGIGABYTE製がRTX2080Ti唯一の240mm簡易水冷一体型グラボです。

このグラボの欠点は全長290mmという長さです。簡易水冷一体型にしては長すぎます。高さ131.05mmは決して低いとは言えない数値ですが高いわけでもありません。

Fractal Design Define CやDefine C Miniのような奥行を短くしたPCケースのフロント部分にラジエータを設置するとこのグラボは搭載できません。実際にこのDefine Cにこのグラボを搭載しているユーザが海外のフォーラムで報告していますが、4mmほど奥行きが足りず搭載できないため、無理やりケースのマウンタをペンチで曲げて押し込む必要があるようです。

Phanteks社のEnthoo EVOLV ITXのフロント部分には搭載できます。ケースの奥行きがDefine C miniと同程度ですが搭載できます。

もし全長が10.5インチの267mmサイズならもっとおすすめできるグラボでした。なぜ290mmもの長さになってしまってるかというと、GIGABYTEから出ている他の空冷モデルのRTX2080Tiのために長い基板を用意したからです。その基板を簡易水冷一体型でも使いまわして製造原価を引き下げているため、簡易水冷一体型でも290mm基板の採用となってしまいました。

3位: Inno3D GeForce RTX 2080 Ti ICHILL BLACK C208TB-11D6X-11500004

残念ながら世界的に品薄で入手困難になっているグラボです。ラジエータの厚さが35mmもあるので25mm厚ファンを搭載すると60mm厚にもなります。

そのかわり全長272mmでありGIGABYTE製グラボの290mmよりも短いです。ボードの高さも112mmでかなり低く抑えられています。厚さは2スロット占有。

品薄でなければかなりいいグラフィックボードです。ラジエータがファン込みで60mmなのは分厚いですが、15mmファンに換装すれば50mmになるので一般的な簡易水冷の厚さ52mmよりも薄くできます。Noctuaの25mm厚120mmファンNF-A12x25 PWMを、15mm厚のNF-A12x15 PWMに換装しても最大温度が1℃下がる程度であることが海外フォーラムで報告されているので、スペースに余裕がないPCケースに設置するときはNoctuaの15mmファンがおすすめです。

最大消費電力は335W。補助電源8ピン×2を搭載していることから、マザーボード上からの供給電力75W+補助電源8ピンからの供給電力150W×2=375Wの供給電力がありますが、実際に消費する電力は335Wまでで余裕があります。

4位: Colorful iGame GeForce RTX 2080 Ti Neptune OC

一応国内正規品として売られていますが流通量が少ないのがデメリットです。

全長318mmと巨大なのも微妙でさらに補助電源が8ピン×2しかないので、せっかくの280mmラジエータの簡易水冷一体型の冷却性能を活用することができません。

5位: Inno3D GeForce RTX 2080 ICHILL BLACK C2080B-08D6X-11800004

2080Ti ICHILL BLACKの2080無印版です。グラフィックチップやVRAMや補助電源以外はほとんど2080Ti版と違いがありません。

ポンプ動作電力を含めた最大消費電力は290Wです。マザーボードからの75W+補助電源8ピン150W+補助電源6ピンからの75Wです最大消費電力300W取り出せますが、10W程度遊びを持たせています。ファン×2はマザーボード上の4ピンに挿すのでまた別途電力を消費します(12V×2.5Aが最大値)。正直ファン2基でも2.5Aなんて普通は流れませんが、Noctuaファンに換装して最大電流0.1Aのファン×2にするのがおすすめです。

6位: GIGABYTE AORUS GV-N2080AORUSX W-8GC

GIGABYTEから発売されているRTX2080Tiの240mm簡易水冷一体型のRTX2080無印版。ボードの全長サイズ等まったく同じなので、RTX2080Ti版よりもこちらのほうが冷却能力に十分な余裕がありますが、せっかくこれだけ長い290mm基板+240mmAIOを使うならRTX2080Tiのほうがおすすめです。