AMD Radeon RX 6900 XT搭載グラボの性能比較

2020年12月発売のRadeon RX 6900 XTはRDNA2アーキテクチャを採用したNavi21チップを搭載したGPUです。

Navi21チップの80基のCompute Unit(NVIDIA製GPUで言うところのStreaming Multiprocessor)が全て有効化されており、AMD Radeon RX 6000シリーズの中ではフラッグシップモデルの位置づけです。

Radeon RX 6900 XTは型番だけみるとRadeon RX 6800 XTよりも大幅に高性能に一見思えます。

しかし、実際は「Radeon RX 6800 XTとRadeon RX 6800の性能差」に比べると微々たる差であり、Radeon RX 6800 XTから見たRadeon RX 6900 XTの性能は大した違いがありません。

Radeon RX 6900 XTとRadeon RX 6800 XTもベースクロック動作時の消費電力が300Wであり、しかもベースクロックは1,825MHzで同じです(ブーストクロックも2,250MHzで同じ)。

つまり単精度コア数が多い分だけ、Radeon RX 6900 XTの1コアあたりの性能はRadeon RX 6800 XTより後退しています。

Radeon RX 6900 XTの詳細スペック

メーカー・モデル名AMD Radeon RX 6900 XT
SP数5,120
ブーストクロック2,250 MHz
メモリ容量16GB
共有キャッシュ4MB
単精度性能23.040 TFLOPS
倍精度性能1.440 TFLOPS
Tensor Core性能0 FLOPS
TDP300W
発売日2020年12月
Ray Tracing性能0 FLOPS
ベースクロック1,825 MHz
ピクセル・レート288.0 GPixel毎秒
テクスチャ・レート720.0 GTexel毎秒
メモリタイプGDDR6
メモリクロック16 GT毎秒
メモリバス幅256bit
メモリ帯域幅512 GB毎秒
接続規格PCIe 4.0
アーキテクチャRDNA 2.0 (Radeon RX 6000 series)
コードネームNavi 21
ファウンドリTSMC
プロセスルール7nm
トランジスタ密度51.5 MTr/mm²
トランジスタ数268億
ダイサイズ519.8mm²
Compute Unit数80
無効化CU数0
TMU数320
ROPユニット数128
Tensor Core数0
RayTracing Core数0
Multi GPU非対応
3DMark Speed Way(DX12)3,890
3DMark Port Royal(DX12)10,393
3DMark NightRaid(DX12)159,221
3DMark TimeSpy(DX12)20,538
3DMark Wild Life(DX12)107,501
3DMark FireStrike(DX11)57,022
PassMark GPU26,115
Userbenchmark GPU(実効)183
Userbenchmark DX10291

上記の表はRadeon RX 6900 XTの詳細スペックです。

Navi21チップが有する80基のCompute Unitが全て有効化されており、無効化されたCompute Unitが0基であるところが特徴的です。さらに製造プロセスはTSMC7nmであり、2019年に発売されたRadeon RX 5000シリーズ(Navi10)から変化していません。

これらのことからRadeon RX 6900 XTは歩留まりが非常に悪くなる悪条件下でも、NVIDIA GeForce RTXに太刀打ちするために仕方なく設定されたモデルだとわかります。

非常に少ない単精度コア数にとどまったAMD Radeon RX 6900 XT コア数はNVIDIA GeForce RTX 3070より少ない

Radeon RX 6900 XTはフラッグシップモデルなので、単精度コア数(Stream Processor数)は多くなるのが通例です。しかしそれでもたった5,120コアしか用意することができませんでした。

これはNVIDIA GeForce RTX 3070の5,888コアよりも遥かに少ない数字です。

当たり前ですが、GeForce RTX 3070はフラッグシップモデルでも何でもありません。Ampere世代のNVIDIA GeForce RTXの中では単なる下位モデルに過ぎません。

にもかかわらず、「AMDの中では」フラッグシップモデルであるRadeon RX 6900 XTはたったの5,120コアしか提供できなかったことになります。

これはRDNAアーキテクチャとTSMC7nmの組合せがボトルネックになっており、先代のRadeon RX 5000シリーズでもRDNAアーキテクチャとTSMC7nmの組合せだったためコア数を増やすのに限界があったためです。

このRadeon RX 6900 XTで採用されているNavi21チップは本来80基のCompute Unitを搭載しており、Radeon RX 6900 XTでは80基全てが有効化されています。つまり、Radeon RX 6900 XTはRadeon RX 6000シリーズの中では最も背伸びしたモデルです。もともとNavi21チップには80基のCompute Unitしか存在しないため、これ以上Compute Unitを増やしようがないためです。

GeForceGTX1080Ti(3,584コア)→RTX2080Ti(4,352コア)の単精度コア増加率は+21%

AMDは常にNVIDIA GeForceのラインナップを横目で見ながらGPUのカタログスペックを決めて次期チップの設計をしています。実際のフレームレート性能はAMDの方が遅い結果となっても、カタログスペックだけでもNVIDIAより上なら、PCパーツに詳しくないユーザーは間違えて購入してくれるためです。車で言えば実燃費は非常に悪くても、カタログ燃費だけは盛って掲載すればある程度売れてしまうのと同じです。

しかし、今回AMD Radeon RX 6900 CTはそのカタログスペックでもNVIDIA GeForceに負けることになってしまいました。

2017年に発売されたNVIDIA Pascal世代のGeForce GTX 1080Tiは3,584コアの単精度コア(CUDA Core)を搭載していました。そして2018年に発売されたNVIDIA Turing世代のGeForce RTX 2080Tiは4,352コア搭載していました。単精度コア数の伸び率は約21%です。

GeForce RTX 3000シリーズでも+21%の増加で5,200コア程度とAMDが想定していたところ、蓋を開けてみたらRTX3070でも5,888コア、RTX3090に至っては1万コア超を達成されてしまう誤算

その増加率が続けば次のAmpere世代のGeForce RTXフラッグシップモデルは約5,200コア程度になり、5,120コアのRadeon RX 6900 XTとカタログスペック上はほぼ互角の競争に持ち込めると踏んでいたわけです。

そしたら2020年9月発表のGPUでNVIDIAはTSMCではなくSamsung10nmプロセスを使い、大幅にトランジスタ密度を向上させGeForce RTX 3090では初の1万コア超の10,496コアの大台に乗せ、下位モデルのGeForce RTX 3070でも5,888コアを達成されてしまい、AMD Radeon RX 6900 XTの真打ちになるはずだった「5,120コア」がかき消されて埋没してしまう結果となってしまいました。

Radeon RX 6900 XTは下位モデルの6800 XTと動作クロック値が同じ

Radeon RX 6800XT(2,015MHz~2,250MHz)はRadeon RX 6800(1,815MHz~2,105MHz)と比較して大幅に動作クロックが向上していますが、Radeon RX 6900 XTは全く向上していません。

Radeon RX 6900 XT(2,015MHz~2,250MHz)の動作クロックはRadeon RX 6800 XT(2,015MHz~2,250MHz)と全く同じです。

Radeon RX 6900 XTは下位モデルの6800XTとレンダリング出力ユニット(ROP)数が同じ

Radeon RX 6900 XTのピクセルフィルレート(Pixcel/秒)はRadeon RX 6800 XTの288GPixel/秒と全く同じ性能です。なぜなら、レンダリング出力ユニット(ROP)の数がRadeon RX 6900 XTでもRX 6800 XTでも同じ128基だからです。

Radeon RX 6900 XTと下位モデルの6800XTは定格消費電力は同じ Radeon RX 6900XTでは1コアあたりの性能が下がることを意味する

Radeon RX 6900 XTは下手すると、Radeon RX 6800 XTよりフレームレート性能が下がります。その理由は、双方とも定格消費電力が300Wだからです。

Radeon RX 6900 XTとRadeon RX 6800 XTは動作クロックが同じなので、単精度コア数(StreamProcessor数)が多いほど消費電力は増えるはずです。にもかかわらず両者の定格(保証の範囲内の)消費電力は300Wにとどまっています。

そのようになってしまった理由は、TSMC7nmプロセスで製造されたNavi20チップ発熱量の問題です。

消費電力は単位時間あたりの発熱量とほぼ同義です。Radeon RX 6900 XTもRadeon RX 6800 XTも定格消費電力が300Wになってしまったのは、GPUとして300Wという発熱量が限界であることを意味しており、それ以上消費電力を増やすと熱によって半導体のスイッチング性能が落ちてしまい、それがGPUのフレームレート性能低下に直結するためです。

本来なら、Radeon RX 6900 XTをフラッグシップGPUにするなら定格消費電力を350Wまで高めるべきでした。しかしTSMC7nmの技術力ではリーク電流の増大により技術的に困難だったということです。

300Wの定格消費電力をRadeon RX 6900 XTの5,120コアに割り振るのと、300WをRadeon RX 6800 XTの4,608コアに割り振るのとでは、後者のRadeon RX 6800 XT(4,608)に割り振る方が1コアあたりの性能が高くなります。

逆に言えば、定格消費電力が同じである限り単精度コア数が多いRadeon RX 6900 XTの方が1コアあたりの性能が下がるということです。

AMD恒例の型番によるミスリード Radeon RX 6900 XTと6800 XTは殆ど性能差が無い

以上のことから、Radeon RX 6900 XTはRadeon RX 6800 XTよりも高性能どころか、むしろゲームによってはフレームレート性能が下がることがあります。

たとえRadeon RX 6900 XTがRadeon RX 6800 XTよりも単精度コア数が多いと言っても、Compute Unitたった8基分です。さらにレンダリング出力ユニットの数は同じであり、定格消費電力(単位時間あたりの発熱量)300Wの壁もあります。

型番だけみるとRadeon RX 6900 XTはRadeon RX 6800 XTより大幅に高性能に見えてしまいますが、「NVIDIAには実性能では負けるけど表面的なカタログスペックだけはAMDの方が良く見えるようにする」というAMDの恒例ミスリードです。

1位: MSI Radeon RX 6900 XT GAMING X TRIO 16G (VD7547)

GPU AMD Radeon RX 6900 XT
型番MSI Radeon RX 6900 XT GAMING X TRIO 16G
(VD7547)
専有スロット数2.8 slot
全幅55 mm
全長324 mm
全高141 mm
ブーストクロック2,340 MHz
ベースクロック2,015 MHz
単精度性能23.9616 TFLOPS
倍精度性能1.498 TFLOPS
発売日2021年2月
深層学習コア性能0 FLOPS
メモリ容量16GB
メモリタイプGDDR6
メモリクロック16.0 GT毎秒
メモリバス幅256bit
メモリ帯域幅512 GB毎秒
補助電源8pin×3
推奨電源容量850W
冷却機構空冷
ファン数3基
最大表示モニタ数4画面
DisplayPortDisplayPort 1.4×3
USB Type C非搭載
HDMIHDMI 2.1×1
DVI-D非搭載
D-Sub非搭載

AMD Radeonオリジナルファンモデルの中で比較基準として使われるSAPPHIRE製グラボのブーストクロック2,285MHzよりも大幅に高いクロックを実現している代わりに、補助電源コネクタ8ピンが1つ増えて8ピン×3になっています。厚さは3スロット占有まで行かないもののそれに準じる全厚であり、全長や全高は市販のPCケースに搭載可能なサイズの限界まで大きく取られています。

MSI Radeon RX 6900
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2位: ASUS TUF-RX6900XT-O16G-GAMING

GPU AMD Radeon RX 6900 XT
型番ASUS TUF-RX6900XT-O16G-GAMING
専有スロット数2.9 slot
全幅57.8 mm
全長320 mm
全高140.2 mm
ブーストクロック2,340 MHz
ベースクロック2,015 MHz
単精度性能23.9616 TFLOPS
倍精度性能1.498 TFLOPS
発売日2021年2月
深層学習コア性能0 FLOPS
メモリ容量16GB
メモリタイプGDDR6
メモリクロック16.0 GT毎秒
メモリバス幅256bit
メモリ帯域幅512 GB毎秒
補助電源8pin×2
推奨電源容量850W
冷却機構空冷
ファン数3基
最大表示モニタ数4画面
DisplayPortDisplayPort 1.4a×3
USB Type C非搭載
HDMIHDMI 2.1×1
DVI-D非搭載
D-Sub非搭載

このグラボは「MSI Radeon RX 6900 XT GAMING X TRIO 16G (VD7547)」と全く同じブーストクロック2,340MHzを実現しています。全厚は「MSI Radeon RX 6900 XT GAMING X TRIO 16G (VD7547)」が55mmなのでこのグラボの方が厚いです。また「MSI Radeon RX 6900 XT GAMING X TRIO 16G (VD7547)」は補助電源コネクタ8ピン×3に対し、こちらは8ピン×2です。手動でオーバークロックせず工場出荷時のブーストクロックのままで使うならこちらのASUS製でいいでしょう。手動でオーバークロックするなら電力供給能力が高い「MSI Radeon RX 6900 XT GAMING X TRIO 16G (VD7547)」がおすすめです。

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