米大統領選における投資戦略 期待値・分散・歪度・尖度とオプション

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本稿では米国大統領選挙でクリントン候補が勝ってもトランプ候補が勝っても着実に利益をあげる方法について書きます。

つまりどちらが勝つか「予測」する必要がないということです。

どちらが勝つか「予測」してその方向にポジションを貼るのは博打と同じであり、洗練された方法とは言えないからです。

一応今のところ彼女は優勢を保っていますが、最近クリントン陣営がたるんでおりアンダードッグ効果でトランプが当選するという確率も十分高いため、どちらに転んでも利益を上げる投資戦略をご紹介します。

愚行1 株価の上下にかけて単に株価指数を売買したり、ブルorベア商品を買う

これは最も簡単な方法でありながら最も幼稚な方法とも言えるでしょう。

クリントン勝利なら株価が上がるだろうから株価指数を買ったり、ブルを持つ。逆にトランプ勝利なら株価が下がるだろうから株価指数先物を売ったりベアを持つ。

ですがそれは先程も言ったように単にどちらが勝利するか「予測」しているにすぎません。予測がはずれたら損を甘んじて受け入れるのでしょうか?

小学生くらいならこの方法でもいいとは思いますが、せっかく高等教育を受けて社会人になっていてもこの程度の方法では少し悲しくなります。

例えばブリッジウォーターは人気ゆえに募集がすぐ打ち切られるファンドですが、このようなファンドはこのような価格の上下の予測をして売買しているのではありません。どちらに転んでも着実に利益を上げるように作られています。

愚行2 恐怖指数のブルまたはベアをしてしまう

先程の「愚行1」よりはかなりマシです。とはいってもまだまだレベルが低い方法です。

恐怖指数とは理論的に算出される指数ですが、実際にはオプションの取引可能性という制約から、恐怖指数の先物指数が実際に取引できるものになります。これはボラティリティ指数と考えていいです。

ボラティリティを取引したいならオプションを売買すればいいじゃないかという意見もありそうですが、オプションはボラティリティの取引と一対一ではありません。ボラティリティを直接取引したいならオプションを売買するより恐怖指数先物を取引したほうが正確にアクセスできます。

さて、トランプ勝利なら恐怖指数が上昇、クリントン勝利なら恐怖指数が下落はだれでも予想できることです。ですがどちらに転ぶかは誰にもわかりません。

トランプ勝利に賭けてVIXを買うのも、クリントン勝利に賭けてVIXを売るのも同じく博打のようなものです。

正解 ボラティリティのボラティリティ(Vol of Vol)を買う

ボラティリティとは数学的には標準偏差のことです。分散の平方根です。

ではボラティリティのボラティリティについて。

本質的にはボラのボラは分散の分散と同じものを指しています。

現在の米国株価指数のボラティリティは、ボラティリティの高騰予測と低下予測の狭間で揺れ動いています。

なぜならトランプ勝利でボラティリティが上昇するか、あるいはクリントン勝利で市場が安定しボラティリティが低下するか、そのどちらに行くかわからずに行ったり来たりしているからです。

ですが先程も書いたように、ボラティリティがどちらに転ぶか「予測」することはsmartな方法ではありません。はずれたら損をするわけで、それは博打と同じです。

それでもわかっていることはあります。ボラティリティが上昇するか、ボラティリティが下落するか、方向がどちらかはわからないけれども「ボラティリティが動く」ということです。

ではボラティリティが上がるか下がるかではなく、単に動くということだけで利益を得るためにはどうしたらいいか。それはボラティリティのボラティリティ(Vol of Vol)を取引することです。

ボラティリティというのは分散ですから、これは2次のモーメントです。そしてそのボラティリティのボラティリティは4次のモーメントである尖度(Kurtosis;カートシス)と呼ばれる統計量になります。

1次のモーメントは期待値でありこれを取引することは容易です。これは単に株や株価指数を売買するだけです。愚行1で紹介した小学生でもできる方法です。

2次のモーメント、これは恐怖指数先物を売買すればいいだけです。恐怖指数先物に連動するETFでもいいでしょう。VIX連動型ETFはいくつかでています。これは愚行2で紹介したものです。

3次のモーメントは歪度(Skew;スキュー)といいます。これはボラティリティの買われすぎ、売られすぎが元にもどるのを狙って取引するときに有用です。

そして4次のモーメントである尖度です。

実はこの尖度は上場しているオプションを組み合わせることで取引することができます。どんなに失敗しても損失を限定的にできるものです。

ヒントは、ボラのボラとは何を意味しているのか、尖度とは金融市場においてはどのような意味を持つのか、そしてそれを直接金融市場で取引するためにはオプションをどのように組み合わせればよいのかを数学的に考えて理解することです。数学の部分ができないと、行使価格やポジションを閉じるタイミングが決定できません。それさえできれば一般的な証券口座で個人投資家でも簡単に取引ができてしまいます。

このような方法が未だに有効なのは、その数学的な理解というハードルがあるからです。

たとえば医師国家試験や司法試験は医学部を出たり予備試験に合格したりロースクールを出たり、そこに辿りつくまでの間に大きなハードルがあります。

逆に言うとこの大きなハードルがあるおかげで、一度このハードルを乗り越えればそのハードルの高さが自分を守ってくれるという「うまみ」のある分野になっているわけです。

これと同じで、投資銀行の自己運用部門やヘッジファンドは数学力、そしてその分野に身を置くための学歴的な大きなハードルがあるために守られているわけです。これさえ乗り越えれば株価の上下を予測するような博打のような運用から脱することができます。