日経平均株価連動型ETFの優劣を定量的に比較

このページを記載している時点では現在8銘柄の日経平均株価連動型のETFが上場しています。ETFは収益からのみ分配を出す=タコ足分配をしない、信託財産留保額が無いといった特徴を持つので、どの銘柄も似たり寄ったりで優劣がなさそうに見えるものです。

しかし様々な側面から比較していくとほんの僅かな差ではありますが、確かにパフォーマンスに差がでてきます。

金(ゴールド)のようなETFになると割りと大きな差がでてくる一方で、今回の日経平均株価はそこまで差がでませんが、日経平均株価に連動するETFを買うときは一番リスク量が小さいか、シャープレシオが大きい物を選んだほうが良いでしょう。

特にリスク量については、過去のリスク量が将来においても妥当するということが学問的に証明されています。日銀の職員や一橋の教員の方々が熱心に研究されています。

リスク量というのはボラティリティですが、ボラティリティというのは長期記憶性(long memory)という極めて好ましい性質があります。長期記憶性というのは、過去のボラティリティがその後将来のボラティリティに長い期間にわたって強い影響力を与えることを言います。

これは価格には無い性質です。価格というのは金融工学では公正な賭け(マルチンゲール)であるという前提にたっていますし、統計的にも、価格は幾何ブラウン運動=ランダムに従うという対立仮説を採択しています。つまり将来の価格というのは、現在や過去の価格から予測できないということが統計学的には示されています。もし将来の価格が過去の価格から予測できるのなら、テクニカル分析のような方法であっても十分通用してしまうでしょう。

一方でボラティリティ=リスク量は価格とは違い、かなりの精度で予測できることが数学的に示されています。なぜ予測できるかというと、先程も書いた通り長期記憶性という好ましい性質があるため、過去のデータを分析すると予測に役立てることができるのです。

ボラティリティは過去のデータで推定できるということがわかってから、2000年以降この金融市場分野の研究はほとんどがボラティリティ推定の研究です。価格の予測の研究をしている人はほとんどいません。

ちなみに最近オプション取引で利益をあげるという本(実践系の読み物)が多数出版されてきています。それもそのはず、オプション取引というのはボラティリティを取引するための一つの手段であり、オプションの売りはボラティリティの売り、オプションの買いはボラティリティの買いに大雑把に言えば相当するからです。オプション取引で利益を上げやすいのは、ボラティリティは理論的に予測しやすいから、という理論的な根拠がしっかりとあります。

ボラティリティの話を少し書きましたが、要はボラティリティ=リスク量は将来においても妥当する、ということが重要です。過去のリターンは将来において役に立たないことが多いですが、リスク量は有用です。なので「過去のデータからは何もわからない」と思っている方がいたら、ボラティリティ推定に関する本を読んでみることをおすすめします。木島先生の本がおすすめです。ただし大学の教養課程でやるレベルの数学力は必要です。

以下、様々な側面から優劣を比較していきますが、リスク量は年によってばらつくことが少なく、同じ状態が長く続きます。リターンは結構ばらつくので来年のことを判断するのにあまり役に立たないのですが、何か一つの基準で明確に判断したいという方は、リスク量の小ささで判断することをおすすめします。

信託報酬(手数料)で比較

ETFを含めた投資信託を比較するときに信託報酬で比較するのはお決まりですが、このETFは日経平均株価に連動するというシンプルなものなので、信託報酬で比較したものがほぼパフォーマンスの良さと一致しています。それはページの最後に記載してあります。

ですが、ある程度複雑なスキームが必要なETFは信託報酬の低さがパフォーマンスの良さに直結しません。今回は基本中の基本のような著名なアセットクラスを対象としているので、信託報酬の低さはとても良い指標になります。

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比較したグラフを見てみると、三井住友とDIAMと大和の信託報酬が低いことがわかります。一方で、日興の日経225ミニETFは信託報酬が高めであり、もう一つの日興のETFも信託報酬が高めです。野村も高い方です。

ですが、パフォーマンスでいうと野村は良い方に入ってきます。それはこれから説明していきます。一方で日興は信託報酬が高いだけあってあまり良い結果となりませんでした。三菱については大和より少し高いかなくらいですが、三菱もわりと良い結果を出しています。その結果はこのページの最後で判明します。

最低購入代金で比較

最低購入代金は2014年時点での売買単位を反映しています。どの銘柄も日経平均株価に連動しているので、似たり寄ったりの最低購入代金になっていますが、唯一日興アセットマネジメントの上場インデックスファンド日経225(ミニ)だけが低い金額になっています。グラフの一番右のものがそうです。

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この日興日経225ミニETFは通常の1/10の金額で買えるので低くなっているわけですが、その分だけ金融機関に負担がかかるので信託報酬が高めになっており、さらにそれは最終的なパフォーマンスにも影響を及ぼしています。もし低い金額で小刻みに調整して購入したいのなら、日興ETFは良い選択肢だと思います。

分配金利回りで比較

私は分配金目当てでETFや投資信託を購入することは好ましくないと考えているので、分配金利回りは参考程度に見ておいたほうがいいです。まずこのETFは日経平均株価に連動するものですから分配金はそもそも少ないです。以下のとおりグラフにしてみましたが、2014年はおよそ年間で1%を少し超えている程度です。

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この中では大和のETFがほぼすべての年においてそこそこ良い分配金利回りになっていることがわかります。異なるのは2014年、日興の日経225ミニETFが参入したことによって、分配金利回り1位に躍り出ています。ですが分配金利回りというのは分配金を基準価額で割ったものですから、分配金利回りが高いということは基準価額が低いことを意味している可能性があります。

以下、リターン、リスク量、シャープレシオと比較していきますが、実は日興の日経225ミニETFは良い結果になりません。そのことは下の方で説明してあります。ここで分配金利回りの良さで日興日経225ミニETFに飛びついてしまうと、パフォーマンス面で損をすることになります。ただし、細かくポジション調整したいとか、最低購入代金を低く抑えるメリットがあるのなら選択しても良いと思います。

リターンで比較

リターンをグラフで見るとほぼ横並びで差がわかりません。日経平均株価に忠実に連動することを目指しているので当然なのですが、若干差がついています。

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この中ではほぼすべての年において大和のETFがリターンを高くはじきだしています。つまりリターン重視なら大和のETFを買っておけば良いとなりそうですが、その分リスクが大きかったら良いとは言えません。投資はリスクあたりのリターンで考えなければならないので、まずリスクも大きさを定量的に計ることが重要です。

1日あたりの価格変動=リスク量で比較

1日あたりのリスク量は1日あたり平均してどのくらい価格が動くかを計算したものです。統計量でいうと標準偏差にあたります。

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リスク量の小ささについては、ほぼすべての年において野村が優秀です。そして近年はブラックロックが優秀です。先ほどリターンでは大和が大きかったですが、その分リスクも大きくなっており、リスク量の小ささでは大和は優秀とはいえません。

リスクあたりのリターン=シャープレシオで比較

2009年は野村と大和が優秀です。2010年はすべてがマイナスですが、野村と大和と三菱のETFがマイナス幅を小さく抑えています。また2012年は大和が最も優秀であり、2013年は野村と大和と三菱が優秀です。2014年は2013年と同じく野村、大和、三菱が優秀ですが、ブラックロックもこの年は良い実績を残しています。

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以上のことをまとめると、ほぼ毎年良い成績を残しているのは野村、大和、三菱の運用会社3社であり、特に大和のETFがすべての年において良いシャープレシオを叩きだしています。

ですが、シャープレシオというのはリターンを織り込んでいるので、これが将来も通用するかというと微妙です。上述した通り、リスク量は将来も妥当するので、リスク量が小さい=分散が小さい=ボラティリティが小さい野村やブラックロックが良いでしょう。

まだ三井住友アセットマネジメントとDIAMの実績が未知数ですが、大和の成績が良いのは信託報酬が小さいことが理由でしょう。三井住友アセットマネジメントとDIAMは大和よりも信託報酬が低いですから、この2社のETFが大和を超える蓋然性は高いです。

また、最低購入代金が最も低い日興の日経225ミニETFですが、これは最もシャープレシオが低いという結果になっています。最低買付け金額が小さいことはポジションサイズの調整がしやすく魅力的ですが、パフォーマンスという観点からは微妙と言えます。資金に余裕があるなら買付け金額が大きい方を選んだほうが良いです。