ダイワ・グローバルREIT・オープン(毎月分配型) の評価

今回は海外リートの投資信託について評価していきます。

海外リートは私が一番好きな投資対象でして、私自身も海外リートと国内リートは多数保有しています。

特に海外リートは「iシェアーズ 米国不動産 ETF」が東証に上場したため、非常に低い手数料で米国リートに手が出せるようになりました。これはとても良いことで、今まではマネックス証券の米国株口座を作った上で、数千円の高い買い付け手数料を支払わなければ買えなかったものが、通常の日本株の安い手数料(約0.1%)で買えるようになったわけです。

今回はこのETFと比較する形で、この投資信託を評価していきます。もしETFと同じだったら手数料が安いETFの方が良いですし、ETFの方が成績が良かったとしたら、ますますETFを選択すべきだからです。

この投資信託は米国以外にも目を向けるのがコンセプト

この投資信託が投資する海外リートは米国に限らず、まんべんなく日本以外のリートに投資するものです。

リート型の投資信託の中には分配金を多く見せかけるために、ありとあらゆる小細工をしているものがとても多いのですが、この投資信託は海外リートの中でも比較的まともな方です。

この投資信託のコンセプトは米国以外の海外リートにも投資するということです。リートというのは米国が主戦場なので、本来なら米国オンリーのリートでも良いわけです。実際に「ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型) Bコース(為替ヘッジなし)」という投資信託があり、こちらが米国に絞った投資信託です。

なので米国オンリーはそちらに任せるとして、この投資信託は米国以外にも投資してみるというのが主題です。

不利なことも書いてあるものを読みます

では目論見書を解読していきます。目論見書は客観的であり無味乾燥であり、解説者がいないと退屈なものですが、だからこそ目論見書を解読するメリットがあります。法令で強制されている目論見書とは別に作成される、販売促進用の資料は読むのが楽で楽しいように作られています。ですが都合の良いことばかり書いてあるのです。

一方で、目論見書は「金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第13条の規定に基づく目論見書」とあるように、金融庁が書かせている公的側面の強い文書なのです。広告としての、つまり宣伝としての販売促進をするための文書ではないのです。不利なこともしっかり書くように!と法律で定められた文書なので、金融機関にとって都合の悪いことも書いてあるわけです。その分だけお堅くなり読むのが難しくなります。でも難しいからこそ、しっかり読みこなせば投資信託を選ぶ上で優位に立てるわけです。

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リスク量とシャープレシオ

リスク量というのは、1日あたり何%基準価格が動くかを数字で表したものです。

価格の上下というのは予測が難しいですが、価格の振れ幅はかなりの精度で参考になります。

リスク量が2014年賀0.7%というのは、2014年は平均して1日あたり0.7%基準価格が動いたことになります。これはかなり安定している相場だと言えます。リスク量が大きいと恐怖指数が高く、相場が荒れており、ボラティリティが高い状態にあります。

そしてシャープレシオも重要です。シャープレシオはシャープさんが考えた指標だからそういう名称なのですが、このシャープレシオはリターンをリスク量で割ったものです。

ということはつまり、この投資信託のリターンが大きければシャープレシオは大きくなります。

そして重要なことがもう一つあり、リスク量で割っているということは、リスク量は分母にくるということ。つまりリスク量が小さいとシャープレシオは大きくなります。

まとめると、シャープレシオが大きいほどその投資信託は優秀であるということになります。

例えば2014年のシャープレシオは3.51であり、過去5年で一番大きいです。これは2014年のリターンが大きく、かつ、リスク量が小さかったことを表します。

例えば年間+70%とリターンが大きくても、「1日に10%も価格も動くような投資信託は怖くて買えない」という考え方をシャープレシオは持っています。仮に1日に1%しか価格が動かない投資信託が年間70%も利益をだしたら、1日に10%も乱高下している投資信託より優秀だという考え方です。

このシャープレシオは、他の同類の投資信託と比較するときに力を発揮します。他には例えばラサールリートというリートがありますが、それと比較するときに有効なのです。

海外の不動産に投資して賃料を配当金として毎月受け取る商品です

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まずは商品分類からみていきます。

投資対象地域が海外とあるので、日本国内には投資しません。そして収益の源泉は不動産投信(リート)とあるので、この投資信託は不動産に投資して、その不動産賃料を源泉とした分配金を受け取るということになります。

何段もはさんで、間接的に投資します

属性区分をみていきます。ここで気になる人は気になるであろう投資対象資産です。リートに投資するのなら、投資対象資産にリートと書けば良いのですが、そう書いてありません。

リートというのは厳密にいうと、「阪急リート投資法人」のように名前の最後に「投資法人」がつく会社が発行する株のことです。阪急リート法人は不動産を保有しており、賃料を受け取ります。そして阪急リート法人の株主の人たちに、その賃料を源泉として、配当金を支払うわけです。

この阪急リート法人は日本国内のリートであり、J-REIT(ジェイリート)と呼ばれるものですが、海外リートであっても仕組みは同じです。

実はこの投資信託は、このようなリート(株)に直接投資しません。この投資信託を購入した人によるお金を集めて、そのお金でまた別の投資信託を買っているのです。そして、その別の投資信託が、最終的に「阪急リート投資法人」のようなところが発行しているリートを買い付けるわけです。

つまりは間接投資ということです。直接リートを買い付けるわけではなく、何段も途中をはさんで買うので、「その他資産」となっているわけです。

分配金は受け取りコースと再投資コースがある

この投資信託には、配当金受け取りコースと再投資コースというのがあります。ほとんどの人が分配金受取コースを選択しているはずです。なぜなら目先の分配金を誰もが欲しがるからです。後述しますが、実は分配金再投資コースの方が遥かにリターンが大きくなります。

分配金は年12回でますが、再投資コースにしていると投資信託口座には分配金は入ってきません。分配金はそのまま投資信託の元本を大きくするために用いられます。毎月受け取るのを楽しみにしている人は受け取りコースにしておきましょう。

為替ヘッジなしはプラスに捉える

為替ヘッジなしは良いことです。なぜならドル高円安の恩恵を受けられる上に、余計なヘッジコストがかからないぶんだけ基準価格が下がらないからです。ヘッジは無料ではありません。意外とヘッジというのは、個人投資家よりも手数料が極めて安い大手金融機関であっても、とても多額のヘッジ手数料がかかるのです。

最近、IMFは円安は日本にメリットはないと報告書を出しましたが、嘘です。IMFは国際連合の文脈で作られた機関であり、国際連合(United Nations)とは連合国(United Nations)のことですから、日本にとって得のあることは言いません。円安は日本にとって正義です。円安でメリットが受けられるのは輸出に商機がある製造業だけではありません。金融商品でも同じなのです。特に日本は海外から借金をしてない国なので、金融分野では円安だとありえないくらい儲かります。逆に円高だと金融機関でさえ苦しくなります。めずらしく、個人投資家と金融機関の利害が一致する分野です。迷わず為替ヘッジ無しの投資信託を選んでおくべきです。

リートの概要

まずリートとは何かということも解説しておきます。私たちが不動産に投資しようとした場合、一番単純なのは、マンションやら戸建てなどを買って、他人に貸すという方法です。

ですが、この方法にもデメリットがあります。まず管理が面倒だということです。民法を勉強したことのある人ならわかると思いますが、賃貸借契約というのは複雑で大家にとても不利です。しかも事件でもおこされたら価値が下がってしまいます。

また、住居くらいならいいですが、丸の内の再開発をして商業ビルを経営してみたいと思っても、そんなの個人には難しいわけです。丸の内は三菱地所ががっちり握っていますし、金額も膨大です。

そこでREITという方法で、非常に高額な不動産を小口にわけることによって、1万円や1000円からでも大規模な不動産に投資できるようになります。しかも管理はリート法人がやってくれるので、投資家は自分の投資信託口座だけ見ていればいいのです。

以下の図はそれを説明しています。

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私たち個人投資家が一番左側です。個人投資家がリートを買うことにより、お金はリート法人に入ります。そしてリート法人はそのお金で不動産を所有するわけです。

そしてその不動産に入居している企業のオフィスだったり、商業施設だったらテナントを借りているアパレルの企業なんかが賃料を支払うわけです。リート法人で働いている人もいますし、管理費がかかりますから、その人達の給料などを差っ引いたあとに、残ったものを分配金として投資家が受け取るわけです。実際には、途中で運用会社(ここでは大和証券投資信託委託)、販売会社(投資信託を買った銀行や証券会社の営業員)などが手数料をさらに差っ引きます。

手数料を引かれても自分で不動産を管理するよりは楽だし、しかも1万円という低額からできるというメリットがあるので、REITという投資手段が楽なのです。

この投資信託はベビーファンドです

この投資信託を1万円買ったとしましょう。そして他の人も投資信託を購入しているわけですから、その金額を全部集めて1000億円になったとします。そのお金で直接リート銘柄を買っているのかというと、実は違います。

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この図のように、投資信託を購入したお金はベビーファンドに一旦集められて、そこでさらにマザーファンドに投資する形をとります。そしてマザーファンドがやっとリートに投資するわけです。

なぜこう何段にも分けているかというと、分配金の調整をするためです。

実はリートというのは、毎月分配型というのはほぼ皆無です。ほとんどが1年に1回、半年に1回、四半期(3ヶ月)ごとに1回という頻度です。それもそのはずで、企業というのは信用がありますから、オフィスの使用料は毎月賃料として支払っていないのです。四半期に1回くらいのペースでも、延滞されることなんてほとんどないのです。

ですが、個人が住む賃貸マンションやアパートはたいてい毎月払いです。それは信用がないからです。リートが投資するのは商業施設だったりオフィスビルですから、信用ある企業が入居しています。すると毎月賃料が入ってこないわけです。

ですがそれだと投資信託を購入する投資家さんは待ってくれません。せっかちなので毎月分配金が欲しいわけです。そこでどうするか。

ここで、ベビーファンドとマザーファンドに分けるという方法が出てきます。まずマザーファンドはリートに直接投資しますから、3ヶ月に1回くらいのペースで配当金(賃料)がマザーファンドに入ってきます。

一方で、ベビーファンドは毎月、分配金を投資家に支払わなければなりません。そこで、ベビーファンドに預けられたお金の一部をタコ足配当として分配したり、信託報酬として個人投資家から受け取った手数料の一部を分配金として差し戻す形で分配しているのです。

こういった分配金の小細工をベビーファンドで行っています。だからマザーファンドに入ってくるお金は毎月じゃなくても、ベビーファンドでは毎月になるわけです。

実際に、ETFではこういった小細工が許されないので、毎月分配型のETFなんてほとんどないです。分配金(配当金)が入るのが2ヶ月に1回だったり、半年に1回だったり、1年に1回だったりします。それだと個人投資家が見向きしてくれないから、あの手この手で分配金を毎月出そうと、様々はテクニックを使っているわけです。

分配金は非課税であるべきですが、二重課税されています

まず株やETFや投資信託の税というのは2割です。これは金額に関係なく、100万円利益がでたら20万円が税、10億円利益がでたら2億円が税、のようになります。

この2割という税率が低すぎるというのはほんと大昔から言われているようです。「株というのはお金に余裕がある裕福な人しか買えないから、金持ち優遇だ」というのが本当のよく聞く批判の仕方です。

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ですが、この図を見れば2割というのが税率が低くないことがわかります。

まず株の配当金というのは、企業の利益が源泉になります。この利益というのは、その企業で働く従業員の給料や、福利厚生などを全部差っ引いたあとで残ったものです。この利益に法人税が課税されるわけです。

たとえば1兆円の利益のうち40%課税されて6000億円が純利益として残ったとしましょう。配当金はこの6000億円の中から支払われます。仮に1000億円配当したとしましょう。

1000億円の配当金を、個人投資家や機関投資家が受け取るわけです。そして税率は20%。つまり200億円は税金として徴収されることになります。

ここでおかしなことがおこります。日本の税法では「二重課税の禁止」という概念があります。税は一度しか賦課してはならず、何重にも税をとってはいけないということです。

ですが先ほど1兆円の利益のうち4000億円が法人税として取られています。そしてその残った4000億円を使って配当が行われているわけです。そしてまた配当金に税金がかけられたということは、二重に徴税されているわけです。

実は、本来配当金に税はかからないのが普通です。ですが、それだと選挙で有権者の理解が得られないということで、二重課税の原則を破って、配当金にも税をかけています。

つまり本来、分配金や配当金に税なんてかからないのが普通なんです。それを2割も徴収しているわけです。

だから、「なぜ株の配当金はたった2割しか税を取っていないんだ!」という批判はまったくの逆で、「なぜ配当金に税をかけるんだ!二重課税じゃないか!」という批判のほうが財政学的にも、法的にも正当なのです。

しかし、株を買っている人はどちらかというと1億人の有権者のうち少数派ですから、選挙で不評をかわないように、配当金には2割徴税しているということです。

しかしリートでは二重課税されていません

ですがリートでは二重課税はされていません。なぜかというとリート法人は法人税を免除されているからです。つまり投資家が受け取る配当金にかかる2割の税だけということです。

途中で法人税というものを差っ引かれていないぶんだけ、リートの方が普通の株よりも配当金の財源が豊かになります。

リート法人が不調だったらそもそも配当金も少ないでしょうが、もし仮に全く同じ業績のリート法人と一般企業があったとしたら、配当金はリート法人の方が多く受け取れる可能性が高いと言えます。

2重化税の批判は企業の株の配当金には言えますが、リートは二重課税されていないのでそういった批判も言えないということです。

元本を切り崩すタコ足配当が行われます

投資信託を評価する上で、定番中の定番の論点です。本サイトは投資信託についてほとんど何もわからないという、初心者・入門者に投資信託の実態をより広く知っていただくために書いているので、このような有名な投資信託のトリックについても省略せずに書いていきます。

例えば100万円分の投資信託を買っているとしましょう。そして本日は待ちに待った分配金の受け取り日です。毎月1%の分配金がでるということで、1万円を受け取りました。これはとってもハッピーな気分になります。なぜなら100万円+1万円で101万円に増えたということですからね。

ですが現実はそう甘くないです。ほとんどの投資信託はタコ足配当というものを行っています。今の例でいうと、1万円分配金が出たものの、元本が99万円に減ってしまうということが、タコ足配当にあたります。

それだと1万円受け取ったものの、元本が99万円になってしまっては全体としては1+99万円で100万円。最初と変わってないわけです。これでは何もうまみがないどころか、保有期間に応じて信託報酬がかかるので、長く持っていればもっているほど投資信託が99万円、98万円と目減りしていくことになるわけです。

タコ足配当というのは空腹のタコが自分の足を食べて満足することから名付けられています。結局、分配金が出るにしても、元本を切り崩していては意味が無いということです。

以下の図はこのことを表しているわけです。

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このタコ足配当は金融庁もとても危惧していて、このタコ足配当が規制されると報道されていました。要は「元本を切り崩してまで配当するな」ということです。

ですが、結局うやむやになって現時点でも規制されていません。このような投資家にとって不利なタコ足配当を規制するよりも、金融庁の使命である「貯蓄から投資」を推進するためには投資信託の活性化が不可欠と見たからでしょう。

とはいっても金融庁は割りとまともな官庁ですので、そのうち規制されてるとは思います。とりあえず今はこのタコ足配当が黙認されているということです。ただし、「しっかり目論見書にタコ足配当について記載しなさいよ!」と金融庁がきつく言ってくれているので、どの投資信託でも目論見書には上の図のような、わかりやすい図が掲載されているのです。

さきほど書いた例だと、1万円の分配金がまるまるタコ足配当でしたが、中には5000円はまともな分配金だけど、残り5000円はタコ足配当というものもあります。

つまり、正当な分配金(例えば不動産の賃料収入)5000円+5000円(タコ足!)+99万5000円(タコ足配当の5000円だけ元本が減っている)=100万5千円というものです。

これだと先ほどよりまともですね。全体で100万5千円になっていますから、5000円だけ本当に得したわけです。

「それなら最初からタコ足配当なんてやめて、5000円だけ正当な分配金を出せばいいじゃないか」と思う人は真っ当な考えを持っています。本当はそうあるべきなんですが、投資信託というのは分配金だけ見て選んでる人がとても多いので、分配金を多く見せかけるためにわざわざタコ足配当という小細工をしているわけです。

銀行も証券会社も、そして投資信託を設定している運用会社(~アセットマネジメントや、~投資信託委託、投資顧問という名前が付いている会社を運用会社といいます)も、とにかく投資信託を多く売ってなんぼの世界で生きてますから、分配金をよく見せかけるためならあの手この手を使っているわけです。私はこの状況が改善して欲しいとずっと思っています。

投資家に不利で販売店に有利すぎる手数料

買い付け手数料は販売店によって異なります。キャンペーンなどで0%のところもあるでしょう。

ここではどこで購入しても必ずかかる信託報酬についてみていきます。

以下の表によると、信託報酬は税抜きで年率1.48%です。消費税が上がると信託報酬も上がるので注意しましょう。

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そして、ここにとんでもない手数料体系があります。

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この図は信託報酬1.48%のうち、販売会社(銀行や証券会社)と運用会社(大和証券投資信託委託)と受託会社(三井住友信託銀行)との間で、どのくらいの割合で分け合うかという取り決めです。

注目すべきは販売会社のところです。まず一番上の「200億円以下の部分」というところを見ます。そこでは販売会社が年率0.58%とあります。これはつまり、例えばとある銀行の営業員が頑張って営業して、総額180億円分の投資信託を売ったとしたら、この0.58%の分だけご褒美として手数料をもらえるわけです。同時に、受託会社である三井住友信託銀行も手数料を年率0.1%受け取ると書いてありますから、残る手数料は1.48%-0.58%-0.1%=0.8%となります。この0.8%を委託会社である大和証券投資信託委託が貰うわけです。

次に一番下の行の1,000億円超の部分を見ます。これはとある銀行の営業員がさらに頑張って、1,000億円を超えるレベルまでこの投資信託を売りまくったという水準です。すると販売会社が0.70%と増えてます。実は、売れば売るほど販売会社の取り分が増えていくのがとんでもない手数料体系なのです。

これはつまり、「売れば売るほど俺たち販売会社の取り分が増えるから、あの手この手で押してどんどん売ってこい!」となるわけです。逆に受託会社の手数料は0.05%と下がっています。これは当然でして、小さなお金を細切れに預かるよりも、でかいお金をどかんと1つ預ったほうが信託銀行としては楽なので、その分手数料が安いのです。

ではこの1,000億円水準での、大和証券投資信託委託の取り分を計算してみます。1.48%-0.70%-0.05%=0.73%となり、先ほどの0.8%より減っています。つまり、投資信託を売ればうるほど販売会社は儲かり、委託会社である大和証券投資信託委託は取り分が減っていく仕組みです。

「どちらにしろ投資家は1.48%の信託報酬を支払うんだから、金融機関同士の取り分比率なんか関係ないじゃないか」ということをよく聞きますが、大いに関係あります。

実は信託報酬は、基準価格を上げたり、分配金を多くするための財源になっているのです。でもこれは、委託会社である大和証券投資信託委託が受け取る信託報酬からのみ可能です。販売会社が信託報酬をいくらもらっても、基準価格が上がったり分配金が上がったりなんてしません。要は委託会社である大和証券投資信託委託の取り分が多ければ多いほど、投資信託の基準価格や分配金にとってはプラスなのです。

ですが、先ほど計算した通り、この投資信託が売れれれば売れるほど大和証券投資信託委託の取り分は減ります。つまりこの手数料体系は、投資信託をひたすら売り込む銀行や証券会社の営業員のやる気を出させるためには有効ですが、投資信託を買った個人投資家が基準価格や分配金をメリットを受けるためにはマイナスなのです。

どうしてこういう手数料体系にしているかというと、やはり数を売ってくれないと儲からないというのがあるからでしょう。とにかく売れない分には金融機関は儲かりませんから、売ってくれる営業員にとってメリットのある手数料体系でやる気を出させる、インセンティブを働かせるということを重視しているのでしょう。投資信託を買う投資家からすると良いことではな

いです。

投資対象の国の中で米国の比率が低い

この投資信託は米国だけではなく、米国以外の海外にも投資するものだと説明しました。そこで気になるのは、どのくらいの比率で海外の各国に分散しているか、です。

実はこの比率こそが海外リート投資信託の核心なので、これを意識しないと海外リートの評価はできません。

そういう意味では、米国のみに投資するという投資信託はシンプルで判断しやすいので私は好きです。

さて以下の図で海外リート市場の大きさを数字で見ていきます。

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この図に載っていないリート市場もあります。それを含めると全世界でリートの時価総額は123.7兆円になります。時価総額という言葉に慣れない方に説明しておきますと、例えば1000円の株が100株発行されていたら時価総額は10万円です。

全世界のリートの時価総額が123兆円ということは、単純に言えば1,230円のリートが1000億口発行されているようなものです。

そのうち日本の10.2兆円を差し引くと、日本を除いた海外リートの時価総額は113.5兆円となります。

そこで、各国のリート市場が113.5兆円のうちどのくらいを占めているか、大きさの比率を求めてみます。たとえば米国が一番大きいといっても、世界の何%を占めているのか数字で見るわけです。計算してみたものが以下のものです。ちなみに第二位は日本国の10兆円ですが、今回は海外リートなので省いています。

国名 時価総額(兆円) 比率
米国 88.8 78.2%
オーストラリア 9.8 8.6%
イギリス 8.2 7.2%
フランス 6.2 5.5%
シンガポール 4 3.5%
カナダ 2.7 2.4%
香港 2.3 2.0%
オランダ 0.7 0.6%
ニュージーランド 0.6 0.5%
ベルギー 0.6 0.5%

これを見ると、海外リート市場のうち米国が占める割合が圧倒的であるということが明白です。実に78.2%も占めています。この数字を踏まえた上で、「それでこの投資信託の比率はどうなってるの?」というところを次に見ていきます。

米国軽視、イギリス・オーストラリア重視

以下の図は、この投資信託が組み入れている海外リートの比率です。上で計算したものは、この投資信託とは関係なく、純粋に海外の比率を計算したものです。

一方で今から見る比率は、「この投資信託はいったいどのくらいの比率でリートを買い付けているのか?」という疑問に答えるものです。

それを比較すれば、この投資信託がどの国をひいきしていて、どの国を冷遇しているのかわかるわけです。

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とはいえこれでも、この投資信託の比率は大きく変化してきました。以前は組み入れ比率第二位はオーストラリアだったのです。それが第二位にイギリスになっています。

オーストラリアは、高金利の国なので、リートも当然利回りが高いです。つまりオーストラリアの組み入れ比率を高めると、分配金利回りを高くできます。

ですが、オーストラリアの失速により、より手堅いイギリスの比率を増やしてきたのでしょう。ですが、手堅い分だけ利回りは低いです。

また、米国の組み入れ比率が半分を割っているので、どんなに米国のリートが絶好調でもその恩恵はあまり受けられません。

2016年の金融市場のキーワードは米ドル高、米金利の利上げ、そして欧州失速です。米国は今後確実に金利を上げてきますから、ドル高円安になれば、為替ヘッジ無しのこの投資信託は円安の恩恵をうけることができます。さらに、資金が米国に流入するので米国の金融資産の価格は上がるでしょう。

これから金融市場で盛り上がる米国の比率が低く、中国が失速しているのにもかかわらず中国依存のオーストラリアの組入比率が高く、また欧州のイギリスの比率も高いとなると、この投資信託については慎重にならざるを得ません。

イギリスの比率を高めたことで高利回りのオーストラリアの足をひっぱっている

先ほど米国のリートの方が良いと書きましたが、なぜわざわざ米国以外に投資しようとしているか?について考える必要があります。

それは米国よりも高い利回りが欲しいから、に尽きます。

ですが、以下の図を見ると、この投資信託の利回りは米国と同程度です。ならば米国のみに投資する投資信託を買ってもいいのではないかと思います。

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この投資信託は、以前は米国オンリーの投資信託より利回りが良かったのです、ですがオーストラリアの比率を下げてイギリスの比率を上げたことによって、結局米国リートと同じ水準まで下がってしまっています。

この図の左を見ると、フランスやカナダなど、オーストラリア以外でも高い利回りのリート国があることがわかります。ならそのような高い利回りのリートを大量に組み入れれば良いではないかと思いますが、そのようなことはできません。

上で説明した通り、フランスやカナダのリート市場は時価総額が小さいのです。

時価総額が小さいと、リートを買い付けたくても、買い付けるだけのリートがそもそも存在しないのです。

たとえば100兆円の年金資産を運用するのに、トヨタ自動車に突っ込みたいと判断したとします。ですがトヨタ自動車の時価総額は25兆円。100兆円ぶんも買えるわけがないです。

このように、金融商品というのは資金を消化できるかどうかという観点がとても重要です。

オーストラリアの比率を下げたのは、中国経済の原則とオーストラリアの原則があります。オーストラリアはトヨタの工場でさえ撤退しましたし、海外の大手製鉄も撤退しました。オーストラリアドルも対円で下がっていますし、先行きは暗いでしょう。

オーストラリアの比率を下げるとすると、必然的にリート市場が大きいイギリスを上げざるを得ないのです。

この投資信託はETFに負けている

ここが私が一番イイタイコトです。まずこの投資信託の説明書に書いてある基準価格の上昇っぷりを見てみましょう。

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まず基準価格から見ていきます。基準価格は青線です。基準価格はリーマン・ショックのせいで2009年には底値をうっています。そしてそこからずっと横ばいです。不動産価格は上がっているのになぜ基準価格がそれに連れて上がってないかというと、それはこの投資信託は元本を切り崩すタコ足配当を行っているからです。

ですが次に緑色の線を見てみましょう。これはとてつもなく上昇しています。2009年に4,000円で底をうってから、2015年には18,000円まで上がっていますね。これを見ると、とてつもなく優良投資信託に見えてしまいますが、トリックがあります。

以下の図はこの投資信託の基準価格と分配金込みの基準価格を示したものです。

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赤い線は分配金を含まない基準価格です。先ほどのグラフの、ずっと横ばいの青い線と同じだとわかると思います。ですが分配金込みの青い線が先ほどのグラフの緑の線と全く違います。ここに一つのトリックがあります。以下それについて解説していきます。

一番上の、とんでもなく基準価格が上がっているグラフは、分配金を再投資して元本にプラスしているのです。例えば100万円の投資信託で分配金が100万円でたとします。そして基準価格が2倍に上がったとします。この分配金をそのまま放置していたら、総額は元本の100万円が2倍の200万円、加えて分配金の100万円で合計300万円になります。

ですが分配金100万円を再投資すると、元本が200万円になり、それが2倍に上がるわけですから、400万円になります。再投資しないものより,100万円さらに増えました。

このように再投資した方がよく見せるためには有利なんです。だから一番上の図はそのようにしてよく見せているわけです。

ですが、分配金再投資コースを選択している人はほとんどいなくて、分配金受け取りコースを選択している人がほとんどです。そういう人は、2番めのグラフの青い線を見なくてはいけないんです。これを見ると、リーマンショック前の水準を全然取り戻していません。

参考までに、米国リートに投資するETFをみてみましょう。これは東証に上場しています。

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これを見ると、基準価格がリーマン・ショック前の水準のほぼ手前まで戻ってきています。さらにこのグラフは、受け取った分配金を含めていません。つまり分配金を含めればもっと良いグラフになります。

なぜこのETFがそんなに良いのか。それは簡単で、元本を切り崩すタコ足配当をしていないこと、信託報酬を販売会社にキックバックしていないこと、無理な毎月分配をせず年4回に抑えていること、が挙げられます。

結局は無欲の勝利ということです。目先の分配金にとらわれない、かつ手数料が安いETFが最終的に勝つという結果を数字でも表しています。

よってこの投資信託はDランクです。Bランク以上になるためには、このETFに勝つくらいの実力が必要です。