フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの評価

ハイイールドファンドとは米ドル建ての格付けの低い債券(ジャンク・ボンド)に投資する投資信託です。日本円建てでいうとソフトバンク社債がジャンクボンドです。このタイプの商品は、日本で言うと民主党政権下の円高・米国の金融緩和全盛期(米国の低金利)でとても高い人気を誇っていた商品です。

まず債券への投資は金利に最も影響を受けるということが重要です。

これから詳しく解説していきますが、今後米国の利上げが実施されるとこの投資信託は極めて不利です。

一方で、このファンドは米ドル建ての債券に投資する上で為替ヘッジをしていません。よって円高是正・円安が伴うと、米ドルベースではハイイールド債券が不調でも、円ベースだとよく見えてしまうところが要注意です。

この投資信託を購入している方の中には、単にドル円の上昇に賭けているだけの人が多くいます。それならばドル円を買い持ちしたり、米ドル建てのリートを買い持ちしても同じことです。為替ではなく、債券のリスクをよく理解しないとハイイールドファンドはおすすめできません。

この投資信託を単に円安に期待して選んでいるとしたらとても危険です。債券への投資は米国の金利動向がすべてを左右するため、FRBが利上げの時期を睨んで市場と神経戦を行っている現状では、まさに岐路に立たされている投資信託です。

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米国以外の債券も含まれています

USハイイールドというのは、米国の高利回り商品に投資するというものです。日本語で言う利率はクーポンといい、利回りに相当するものをイールドといいます。

よって、例えば利率が1%と大して高くなくても、100円で発行された債券価格が10円のように暴落している場合は、利回りは10%になるのでハイイールドになります。

ですが、この投資信託は米国以外の国の企業が発行した債券も含まれています。

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このように、米国の企業や公共団体が発行した債券のみならず、米国以外の国も含まれているわけです。

ですが、米国以外の国の債券であっても、米ドル建ての債券に投資されています。

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このように米ドル建てに投資されています。このような債券をヤンキー債といいます。日本以外の国が日本円で債券を発行するのはサムライ債というので、サムライ債の米国版です。なぜ米国以外も含めるのかというと、この投資信託のベンチマークがヤンキー債も許容しているからです。

なのでこの投資信託の名前にUSとありますが、米国に限ったものではなくて米ドル建てで発行されている債券、のほうがしっくりきます。

株にも投資しています

この投資信託は債券のみならず、株にも投資しています。株と債券というのは、金融業界ではわりと水と油です。債券や為替というのはフィクストインカムに分類されますが、株はまったく別の部門として動いています。なのでこの投資信託に株が混ざっているというのは特徴的です。

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この投資信託にはベンチマークがありますが、そのベンチマークのインデックスには株は含まれていません。株を混ぜることによってベンチマークを上回る超過リターンを狙うのが目的でしょう。

ベンチマークを意識して組まれています

まずはこの投資信託の概要を説明します。債券の発行体(企業など)の格付けが低いものを選んでこの投資信託は組まれていますが、下図のうちムーディーズとS&Pの格付けが一致していない場合はどうするかという問題があります。

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この投資信託にはベンチマークのインデックスがあり、そのインデックスでは、ムーディーズとS&Pで格付けが異なったときはより低い方の格付けを選ぶことが行われています。つまりネガティブに保守的に判断するということです。ベンチマークとして用いるインデックスについては目論見書に明記されています。

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つまり、この投資信託はベンチマークと全く同じ基準を使うのではなく、「ベンチマークを超えることを目標」としています。しかし、この後見ていきますが、この投資信託はこのベンチマークと極めて近い値動きをしています。このベンチマークインデックスをよく知っておくことが、この投資信託の今後を知る上で重要です。

次に債券が大きく影響を受ける金利リスクについて見ていきます。

やっぱり気にしてる金利上昇リスク

目論見書でわかるのはここまでです。あとはもう一つ、法令で義務付けられている運用報告書という文書があり、こちらにこの投資信託の見通しについて書かれています。

まずはこの投資信託の特色についてどのように言及されているか確認しましょう。

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この投資信託の特色ですが、②が重要です。債券というのは金利が上がると価格が下がるというのが普通です。ですが、ハイイールドボンド(格付けの低い高利回りな債券)は金利の影響はさほど受けませんよ、と書いてあります。金利が上がっても基準価格は下がらないことが見受けられます、ということです。

しかし、同じ運用報告書の「2.今後の運用方針」のところでは以下のように記載されています。

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「利上げの時期の検討は経済指標次第であり、かつ会合ごとに判断する姿勢が示されているものの、一部に経済の脆弱さが見られることから、早急に利上げが実施される可能性はそれほど高くないと見られます。」

と、書かれている部分が重要です。

つまり、利上げが実施される可能性はそれほど高くない→債券はまだ大丈夫という含みがあるのです。債券運用者にとって、金利が上がることを好む人はいません。債券運用は株価が低迷していて、低金利な時期が全盛期なのです。逆に、株高や高金利の時期は債券にとっては逆風です。

よって、ハイイールドボンドは金利に左右されないとは特色としてうたっていますが、やはり金利は気にせざるをえない重要ファクターなのです。

次はこの投資信託がベンチマークに負けていることをみていきます。

長期的に見るとベンチマーク(インデックス投資)に負けています

上述したように、この投資信託はバンクオブアメリカ・メリルリンチ・USハイイールド・コンストレインド・インデックスをベンチマークとし、それを上回ることを目標としています。実際はどうなっているか見てきましょう。

まずは交付目論見書に書いてあるものからです。最も読みやすいので多くの人が目を通しているでしょう。

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これを見るととても良好ですね。赤い線の基準価格はお決まりの「タコ足配当」でボロボロですが、青い線の分配金再投資は良好です。あくまでも分配金再投資なので、分配金を毎月受け取って口座から引き出している人はこの線のような伸びは得られません。

次に交付運用報告書に記載されているリターンを見てみましょう。運用報告書のうちわかりやすく抜粋し、個人投資家に交付することが投信法で義務付けられている運用報告書です。

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ここで一つの事実がわかります。グレーの線がベンチマークなので、青い線のこの投資信託はベンチマークを下回っていることがわかります。

そして最後に請求運用報告書を見てみます。

投信法で作成が義務付けられている文書のうち、最もボリュームが多く詳しいものです。目を通すべきですが、請求運用報告書になると分量も多く堅苦しく、しかも白黒なのであまり個人投資家には閲覧されないでしょう。

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この線のうち、一番高いところをいっている点線が実はベンチマークなのです。つまり単純にインデックス投資しただけのものなのにもかかわらず、プラスアルファを狙うアクティブ運用の本投資信託よりベンチマークが優っているのです。

ここで、ドル円がさらに円安にふれることを期待してこの投資信託を買っているor買おうとしている方に注意すべきことをお伝えします。リーマンショック前のドル円は125円、そして2015年でも120円ほどです。為替水準はさほどかわらないのにも関わらず、リーマンショック前の基準価格ピークは14,000。ですが、2015年では30,000円近くになっています。為替水準はリーマンショック前よりも少し悪いか同じくらいにも関わらず、なぜこれほどまで差がついているのかが本当に重要です。つまりドル円がどうであろうと、基準価格が大きく変動する要因があるのです。理由は簡単で、リーマンショック後に米国で大規模金融緩和が行われて米金利が極めて低くなったからです。金利が下がると債券価格は上昇します。債券運用というのは金利の動向が主要因です。今後米国が利上げすると債券価格に良い影響はありません。その点をよく理解した上で本投資信託を検討すべきです。

私は米金利の利上げは遅かれ早かれ実施されると予想しているので、周囲の人にはすすめてません。Dランクとしておきます。