iシェアーズ 米国不動産 ETFの評価

最初に評価ランクから言及してしまいますが、久々にAランクの投資信託を評価します。投資信託といっても上場している投資信託なのでETFです。

この投資信託を設定しているのはブラックロック社なのですが、私は先日も同社が設定している最小分散ETFでAランクをつけて高く評価しています。

これはブラックロック社のひいきをしているのではなく、個別商品ごとにみるとブラックロック社の商品にまともなものが多いだけなのです。

個人向け投資信託の世界ではブラックロック社というのはマイナーですが、機関投資家にとっては大口です。機関投資家の運用部は自ら債券を買ったりもしますが、特にヘッジファンド投資やオルタナティブ投資といったものは投資信託を購入して運用することもしており、そういったところでは機関投資家ごとに、つまり顧客ごとにオーダーメイドの丁寧なレポートが送られてきたりしているものです。

こういった良心的なアセットマネジメント会社が、外資ではなく国内企業でも出てきて欲しいところなのですが、分配金を多く見せて半ば騙しつつ販売量を増やすという手法は、残念ながらまだ続きそうです。金融庁の規制再検討に期待しています。

まず、この米国不動産ETFは純粋なREITではなく、サブプライムローンを組み込んでいるモーゲージにも投資していることをみていきます。

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不動産≠REIT このETFはREIT以外にも投資します

さてこのETFの名称は米国不動産ですが、あえてリートと書いていないところがポイントです。i-Shares US Real Estate ETFが正式名称ですが、REITという文字はどこにもありません。

実は、このETFにはモーゲージが含まれています。

Dow Jones U.S. Real Estate
このインデックは、ダウ・ジョーンズUS株式指数における不動産(スーパーセクター)に分類される銘柄で構成されています。その中には株式、モーゲージREIT、ハイブリッドREIT、上場不動産事業会社(REOCs)、不動産投資会社、不動産サービス会社が含まれます。

上記の文の中で株式と書いてあるのがリートです。日本のJ-REITでは投資法人という株式会社に代わるものを用いて法人税を回避しているため、株式ではなく投資口といったり投資証券になるわけですが、要はリートとは株なわけです。

この中にモーゲージREITとも書いてあるので、モーゲージを組み込んだリートにも投資するということになります。

では組み入れ比率を確認します。

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個々にある通り、モーゲージが6%近く入っています。REITの代名詞といえるオフィス系REITが1割ですから、モーゲージの比率は決して少なくありません。

ですが、モーゲージというのは債券なので満期まで持っていれば元本確保型な上に、発行しているジニーメイとファニーメイは政府機関なので格付けは極めて高いのです。

つまりモーゲージREITの部分は信用リスクが極めて高いREITと見なして差し支えないので、むしろプラス要因だと言えます。

印象で語るのはナンセンスのモーゲージ

モーゲージとはサブプライムローンなどを組み込んだ資産担保証券(MBS)のことですが、サブプライムやモーゲージときいてどのような印象を持つでしょうか?

仮にモーゲージを大量に組み込んだ投資信託があるとしても、あまり買いたくないという感想が多いです。

実はモーゲージというのは最も格付けが高い商品です。なぜなら、いざとなったら米政府が税金を投じることが担保されているからです。

日本でもモーゲージは存在します。フラット35という住宅ローンがありますが、あれは住宅金融支援機構という国土交通省の独立行政法人が銀行から住宅ローンを買い取っています。それを元に毎月発行しているのが日本のモーゲージなのです。独立行政法人は国庫で運営されている執行機関なので、いざとなったら住宅金融支援機構が救済してくれるということで、格付けが高くAAA格を持っています。

このようにモーゲージというのは米国でも日本でもトップの格付けを持っている商品ですし、実際にサブプライムローンを組み込んだモーゲージ自体は破綻していません。

モーゲージで損失を被ったのは、借り入れを行ってその資金でモーゲージに投資していた投資銀行です。借り入れを行うということはすなわちレバレッジをかけた投資ですが、レバレッジをかけずに余剰資産で保有していれば一時的な価格下落を乗り越えるのは容易かったのに、レバレッジをかけていたせいで保有主が破綻しただけで、モーゲージそのものはしっかり存続し続けています。

私は、もし買えるなら日本のモーゲージを買いたいところですが、これは今のところ機関投資家から人気のため個人投資家に回ってくる余地のない商品です。表面利率(クーポン)が1%を余裕で超えてる上に、いざとなったら政府が助けるAAAの格付けですから、こんなにうまみのある商品は政府の保証があるという離れ業がないかぎり実現できません。

つまりモーゲージを組み込んでいるこのETFは、住宅ローン以外のリートオンリーのものより手堅いです。

毎月分配型にこだわらない人ならこのETF

このETFは四半期ごとに分配金がでます。もちろんタコ足配当は無しです。しっかりと賃料に裏付けされた収入から配当金が支払われます。

東証の上場審査を通過しているので、タコ足配当は無い上に、販売店へのキックバックもありません。よって信託報酬はとても安いわけです。

ですがやはり毎月分配型をどうしても選びたいという声は聞きますので、今後もETFではない毎月分配型の投資信託を評価していきます。

次に金利上昇リスクについてみていきます。

債券(ハイイールドボンド)と同じく金利上昇リスクあり

このETFはリーマン・ショック後好調ですが、これもはやり低金利による恩恵が大きいことは確かです。

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このETFの運用報告書より引用します。

REITグループは、当会計年度開始から8ヵ月間は値下がりしましたが、年度末に向けての4ヵ月間に反発し、当会計年度期首時点の価格水準にまで持ち直しました。REITグループの値下がりの主な要因は、金利の上昇でした。これは主に、Fedが2013年5月に量的緩和措置の縮小に向けて議論したことに起因しています。

このように、金利の上昇には弱いということは明確に書かれています。こういうところがブラックロック社はしっかりしています。日本国内の運用会社は遠回しに言うか、ポジショントークの側面が強くあまり不利なことも書かないのです。こう直球で不利なことも書いてくれるのは率直に褒めたいところです。

またリートと米財務省の国債の対比についても明確に言及されています。

REITsは配当利回りが高いため、投資家の多くはREITsを債券のオルタナティブ投資として捉えており、REITsも通常、米国財務省証券と比較して魅力的な利回りの優位性を提供します。財務省証券の金利が上昇すると、REITsの利回りの優位性が薄れます。そのため多くの投資家がREITsへの投資を手控え、長期米国債等のより安定した固定利付き商品を選択しました。

このように、米国財務省証券=国債の利回りが上昇するとリートの優位性が薄れて、みんな国債を買うようになうため、需給の問題でリートの価格が下がりますと書いてあるのです。

ここにも書いてある通り、リートとは債券の代替投資としての位置づけなので、リートは株、ハイイールドボンドは債券ですが、非常に似通った価格推移になります。リートは配当金、債券はクーポンで運用という点もアナロジーです。

ですが、上の運用報告書に記載されているように「長期米国債等のより安定した固定利付き商品を選択しました」とあります。リートというのは配当金が一定額ではないため、分配金も一定ではありません。それを無理やり揃えているのが上場していない投資信託です。

債券は年2回の固定利率のものがほとんどなので、リートのように配当金が不規則なものより、国債などの将来のクーポン収入(利息収入)が確実に見積もれるものが好まれたと書いてあります。

FRBが金融緩和を縮小し利上げに踏み切ると当然リートは下がります。これは、前回評価したUSハイイールドボンド(債券)と同じです。

リートとハイイールドボンド(債券)の違いは、債券は満期があるのでローリング効果という時間が経つにつれて利回りが低下するという現象が起こります。ハイイールドボンドでは償還前1年を切るとインデックスから外されますが、その頃には利回りはとても低くなっているのです。そこでどうするかというと次々に新規にデュレーション(平均年限)の長いものをファンドに組み込んでいくのです。そのため債券投資というのは常に金利リスクに晒されているわけです。100円でスタートして100円でゴールのような基準価格にならないのは、そうするとローリング効果で時間が経つほど利回りが低下してしまうからです。ローリング効果で利回りが下がらないように、デュレーションを常に長いままに保っていることによって、結局リートのように満期のない株=エクイティと同じような基準価格推移になってしまうわけです。

よって今後の米国の利上げが実施されると、このETFを含めて米国のリートを組み込んだものは不利だということは運用報告書に書いてある通り正しいので念頭に置くべきです。