東証リート指数ETFの優劣を定量的に比較する

今回の東証リート指数ETFは、分配金利回りが高い銘柄のリスク量が低くシャープレシオも良いという変わった結果となりました。

分配金利回りが高いETFなどの投資信託は基準価額が低いことを意味するので、全体としてのパフォーマンスの観点からは分配金利回りが高いことは好ましくないことが普通です。

しかし今回は分配金利回りも良く、リスク量も小さく、シャープレシオも高いというすべてを兼ね備えた銘柄がありました。

東証リート指数に連動したETFは2014年後半から2015年にかけて新規に4銘柄も上場しています。

少し前まではJ-REITは40銘柄程度でしたが、現在は50銘柄を超えています。このくらいの銘柄数であれば、ETFなどの投資信託を買って信託報酬という手数料を支払うより、直接J-REITを買い付けたほうが有利だと言えます。

ですが今後100銘柄を超えてくると、銘柄のマネジメントが難しくなってきますのでETFという選択肢も有りだとは思います。

東証リート指数は時価総額平均なので簡単にポートフォリオが組めますから、すべての銘柄を時価総額で重み付けして買い付けられる資金力があるなら、ETFを買わずにJ-REITを直接買い付ければETFを上回るパフォーマンスが得られます。

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信託報酬(手数料)で比較

信託報酬の水準はまさに家電量販店の低価格競争の様相を呈しています。このグラフの信託報酬は、左から順に上場した時期が早いものから並べています。

早い時期に上場したものほど信託報酬が高くて、最近上場したものほど信託報酬が安いことがわかります。

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この下で純資産額を比較しますが、やはり野村が圧倒的に1位です。その牙城を切り崩すためには信託報酬の低さで勝負するのが投資家にとって最も明瞭ですから、後から上場した銘柄ほど信託報酬を切り下げて来ています。

とくにブラックロックが一番安いというのが、国内の日系運用会社の不甲斐なさを感じさせます。外資の金融機関というのは、Amazonなどのように「支店」としての位置づけを許されておらず、日本法人としての株式会社をわざわざ設立して日本国内の居住者に対して金融サービスを提供するという非常にコストのかかることをさせられています。日本国内の投資家を保護するために、金融庁が厳しい規制をしているためです。にもかかわらずこの手数料の安さですから、日本の運用会社がお膝元の日本国内での業務でここまで手数料をかけているようでは、日本のアセットマネジメント業界の競争力のなさを感じずにはいられません。

これから各項目について定量的に比較していきますが、農林中金やブラックロックのETFはまだ上場したばかりなので、実績が十分に溜まってきている野村と日興のETFについて比較していきます。

純資産額で比較

まずは純資産額で比較していきます。純資産額は東証での売買代金に直結するので、純資産額が大きいほど流動性も大きくなる傾向があると考えて良いでしょう。純資産額が大きいETFなら好きなときに買えて好きなときに売れます。

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このグラフを見て分かるとおり、野村が日興を5割ほど引き離していますが、日興もまずまずの純資産額です。これなら日興を購入しても流動性について大した問題はないでしょう。今後は2015年10月20日に上場したばかりのブラックロックの売買代金がどのくらい増えていき、純資産額がどれほどまで成長していくかが楽しみです。

購入代金で比較

野村としてはめずらしく、東証リート指数ETFについては非常に低い購入代金で提供しています。逆に日興の方が高いです。先日比較した日経平均株価連動型のETFでは全く逆でした。

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このように最低売買単位を引き下げたのが、野村のETFが今回あまり良くないパフォーマンスになった要因だと思います。特に日興のETFは最低でも17万円近く必要になるせいか、板があまり厚くないです。

分配金利回りで比較

多くの人が気にしている分配金利回りで比較してみます。各年ごとにばらつきはありますが、ある程度の傾向が見て取れると思います。

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2013年を除いて日興のETFの方が野村を上回っていることがわかります。しかも野村は年4回の四半期ごとの分配なのに比べて、日興は隔月分配型ですから、2ヶ月に1回分配金が出る上に分配金利回りが野村より良いのなら、私なら迷わず日興を選択します。

これはファンドに資金を滞留させないほうがトータルパフォーマンスが良いという一般論と親和的です。

SPCに入ってきた賃料をそのまま投資家へ配当する仕組みをパススルーと言いますが、このパススルーの方が資金効率が良いということがわかっています。

東証リート指数ETFに組み込まれている各J-REITの配当金支払月を見るとわかりますが、各社によってまちまちです。よって野村ETFのように年4回というのは分配回数としては少なく、J-REITから配当金が入ったらそれをそのまま分配ということをすれば、もっと分配回数が増えるはずなのです。

日興の隔月の方がよりETFに資金が滞留せず、J-REITからファンドに入ってきた配当をそのまま分配金として素通りさせている率が高いために、トータルとしてパフォーマンスが良くなっていると考えられます。

リターンで比較

リターンを比較してみると2010年までは日興の方が良いリターンを叩きだしていますが、2012年以降は野村のほうが高いリターンになっています。

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このリターンをみると野村の方がよく見えてしまいますが、投資というのはリスクあたりのリターンで考えますから、リスクあたりのリターンが小さければそれは割にあわない投資となります。リスクあたりのリターンを計算するためにまずはリスク量から求めます。

1日あたりのリスク量で比較

1日あたりのリスク量をグラフにまとめました。これをみると特に2013年はとても大きいです。2013年はアベノミクス相場まっただ中ですから、東証リート指数も大幅に上昇し、それに影響されて1日で2%以上も基準価額が変動していることがわかります。

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このグラフを見ると、2011年以降は日興の方が野村よりもリスク量が小さいことがわかります。先ほどリターンを比較したときは野村のほうがリターンが大きかったですが、その分リスク量も大きかったということです。

では次にリスクあたりのリターンを比較していきます。

シャープレシオで比較

リスクあたりのリターンをグラフにまとめましたが、2013年のシャープレシオがとても低くなっていることがわかります。2013年はリスク量のところでも書きましたが、アベノミクス相場で大きく基準価額が動いた年だったので、リスク量がとても大きかったです。そのためにシャープレシオは小さくなっています。つまり、アベノミクス相場は結果を見れば大きく上昇したので好ましいものでしたが、リスク量という観点からみると下がったときの影響も大きくなる危険な年だったとわかります。結果論としては手を出した人が勝ちでしたが、堅実に行くならば相場が比較的安定していた2014年が好ましいということがわかります。

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このリスクあたりのリターンを表すシャープレシオを見ると、2011年だけ日興の方が悪いですが、その他の年では日興が野村を少し上回っていることがわかります。つまり東証リート指数連動型のETFとしては、分配金利回りもリスク量の小ささもシャープレシオの大きさもすべて日興が野村に勝っている結果になりました。これは信託報酬の低さと最低売買単位が日興の方が大きいことによるでしょう。

結論としては日興がベストでしたが、今後はさらに信託報酬が安い三菱や農中、ブラックロックのETFを比較していきます。