おすすめRyzen 5 2400G,Ryzen 3 2200G(Ryzen G Raven Ridge APU)とIntel Coreのベンチマーク比較 最大2画面まで、4KとWQHDが30fps、PCI Express×16が×8に制限など注意点多数

2018年2月13日に発売されたRyzen G(Raven Ridge)というAPUでは内蔵GPUがあるため、いわゆるオンボードグラフィクス搭載製品です。

第1世代Ryzen 5 1600Xのような製品では、オンボードグラフィクスを搭載せずにGPUコアを削って、その代わり汎用コアを増やすという手法で6コアまで増やしていました。

しかし、オンボードグラフィクスであるGPU内蔵型のAPUのRyzen 5 2400Gになるとごく一般的な4コア製品に逆戻りしました。

Intel Core第7世代まではオンボードグラフィクスを搭載していると最大4コアまででしたから、オンボードグラフィクスを搭載するとどうしても汎用コア数は4コア程度までになってしまうということです。

しかしRyzen Gに先立つ2017年に発売された第8世代Intel Coreでは、オンボードグラフィクス(内蔵GPU)を搭載しながら汎用コアはCore i5でさえも6コアまで増やせていました。

その6コアのCoffee Lakeより後に発売されるRyzen Gならば6コアのAPUを発売するものだと思っていましたが、実際は4コアに落ち着いたので実質第7世代Intel Coreレベル相当ということになります。

AMDの技術ではまだ汎用6コアとグラフィクスをチップ(ダイ)載せるまで集積度を上げることができないということになります。

ベンチマーク性能比較ではRyzen 5 2400G,Ryzen 3 2200Gが発売された2018年と同じ年に発売された第9世代Intel Coreプロセッサと比較するのが当然なので第一にその比較を実施します。ただし、第2世代Ryzen GのマイクロアーキテクチャはZen世代であり中身は第1世代Ryzenプロセッサです。そこで2017年に発売された第1世代Ryzenプロセッサと比較すべき2017年発売の第8世代Intel Coreプロセッサと、第2世代Ryzen Gプロセッサを比較することも実施してみます。

同じ第2世代であってもRyzen 7 2700Xプロセッサは内蔵グラフィクスを搭載しておらず、一方でIntel Coreは内蔵グラフィクスを搭載しているためIntel Core側にハンデがありましたが今回はRyzen側にも内蔵グラフィクスがあるためIntel Core側にハンデはなく対等な比較になります。

Ryzen APU 2400G,2200Gを使うとCPU管理のPCI Express×16スロットのレーン数が×8に制限される

Ryzen APUの欠点として、このAPUを使うとマザーボードのCPU管理PCI Express×16のレーン数が×8に制限されます。

PCI Expressのレーン数が制限されるのはゲーマーにとっては痛い点でしょう。

特にPCI Express×16スロットが1つしかないMini ITXにおいては致命的です。

唯一存在するPCI Express×16スロットのレーン数が8になってしまうからです。

PCI ExpressにはCPUが管理しているレーンと、チップセットが管理しているレーンの2つが存在します。

チップセットが管理しているレーンはチップセットを親としてぶら下がっている構造ですが、CPUが管理しているレーンはチップセットを介さずにCPUと直接通信できるため帯域幅が広く高速でありレイテンシも少ないです。

グラフィックボードはCPUが管理しているレーンのPCI Expressスロットに差込むのが通常です。数あるPCI Expressスロットの中でも最も高速であるCPU管理のPCI Expressスロットが×8に制限されてしまうことは大きなボトルネックになります。

そもそもAPU内蔵グラフィクスのようなIntegrated GPU(オンボードグラフィクス)を使用するだけでCPU管理のPCI Expressスロットのレーン数が減ること自体おかしな話です。Intel版のオンボードグラフィクスであるIntel HD GraphicsではPCI Expressスロットのレーン数が減る現象なんて起こりません。

グラボ2枚挿しのSLIやCrossFireX構成ではさらに致命的

このPCI Expressレーン数の問題はMini ITXだけにとどまりません。

Micro ATX、ATXマザーボードでSLIやCrossFireXでグラボ2枚挿しにする場合にはさらに致命的になります。

Ryzen APUを使うことにより×8のレーン数に制限され、2枚挿しすると2枚のグラボで分け合うことになるのでグラボ1枚あたりの帯域幅が×4になります。

グラボとCPUの接続が×4のレーン数だけだと大きなボトルネック要因になります。×4のレーン数ではチップセット管理のPCI Expressと大差ありません。SSD接続用なら×4程度のレーン数で十分ですが、グラボで×4はさすがに厳しいです。

これは外付けGPUをThunderbolt3(最大40Gbps)で接続したときにボトルネックになるのと同じです。40Gbpsでもボトルネックになってしまうのに、PCIe3.0でレーン数4では32Gbpsしか達成できないためさらに厳しいボトルネックになることを意味します。

Ryzen APU内蔵のオンボードグラフィクスのみで動作させる予定で、「今後絶対にグラフィックボードを挿す予定がない」というのならRyzen APUでOKでしょうが、「もしかしたら後々グラフィックボードを別途購入して使うかもしれない」という用途では要注意です。

グラフィックボードを別途購入して挿すことを前提とするなら、オンボードグラフィクス非搭載の第1世代Ryzenにするか、または第2世代Ryzen(オンボードグラフィクス非搭載)発売を待ったほうがいいでしょう。

これはPCI Expressスロットが1つしか搭載されていないフォームファクタMini ITXマザーボードにおいて致命的になることは前述しましたが、この点については後で詳述します。

同時出力画面数は2つまで つまりトリプルディスプレイ不可

Ryzen APU Raven Ridgeのコンセプトは「低予算」でそれなりの性能のPCが手に入るという点にあります。「別途グラフィックボードを買うほどゲーマーでもないし、オンボードグラフィクスで十分」といった用途です。

これは今までIntel CoreがCPUチップ上にIntel HD Graphicsを搭載してきた理由と同じで、Word・Excelなどの事務作業用途ならグラフィックボードは不要でオンボードグラフィクスで十分だからです。

しかしRyzen APU Raven Ridgeは2画面のデュアルディスプレイまでになり、3画面のトリプルディスプレイには対応しませんでした。

これはマザーボードの所為ではありません。DisplayportとHDMI出力端子を合計して3つ以上あるマザーボードはX370、B350、A320チップセットでも多数発売されています。

しかしRyzen APU Raven Ridgeでは2画面までとなりました。

マザーボード側は対応できているのにAPU側が対応していないために2画面止まりということです。

1画面シングルディスプレイを2画面デュアルディスプレイにするだけでも相当作業効率が上がります。さらに3画面すると、4Kディスプレイを1枚使うよりも横の解像度を高くすることができます。本記事の一番最後の項目で言及しますが、Excelなどのカラムが多い表を扱うときは横の解像度が高いと非常に便利になります。

2018年現在において内蔵GPU(オンボードグラフィクス)が3画面に対応していないのは相当遅れていると言えます。

調べてみたところIntel Coreでは第4世代Haswellプロセッサ(2013年発売)で既に3画面のオンボードグラフィクス出力が可能だったようです。

また2012年発売のIntel第3世代Ivy Bridge Coreプロセッサでも、Displayportが2つ以上搭載されているマザーボードなら3画面トリプルディスプレイにできたようです。ただしそのようなマザーボードはほとんど存在しなかったようで、第3世代Ivy Bridgeでは事実上2画面だったようです。

つまりRyzen APUの画面表示数は2012年のIvy Bridge世代レベルです。

トリプルディスプレイの便利なところは主に使用するディスプレイを中央に配置して、サブディスプレイを左右に対称に設置できるところです。これについてもこの記事の最後で詳述しています。

Ryzen 5 2400GとIntel Core i5のベンチマーク比較 カウンターパートのCore i5 8400が+20%の大差を付けて圧勝

内蔵GPU(integrated GPU:iGPU)が搭載されたRyzen APU Raven Ridgeの1つ、Ryzen 5 2400GとIntel Coreプロセッサをベンチマーク比較してみます。

Ryzen 5 2400Gはその型番からもわかる通りCore i5 8400をカウンターパートとして意識して投入されたCPUです。そこでCore i5 8400と比較してみます。

このように+21%もCore i5 8400がRyzen 5 2400Gに勝利してしまいます。これはRyzen側が内蔵グラフィクスを搭載したことにより汎用コアにチップ上のリソースをまわす余力がなくなったためです。内蔵グラフィクスを搭載してしまうとRyzenは圧倒的に低性能になってしまいます。

しかしCore i5 8400は6コアであるため、Ryzen 5 2400Gの4コアとはフェアではありません。

そこで同じ4コアであるCore i3を持ち出して次は比較してみます。

Ryzen 5 2400GとIntel Core i3 8100のベンチマーク比較 Core i5を持ち出すまでもなくCore i3 8100が勝利

第1世代Ryzenプロセッサは2017年にリリースされたため、同じ2017年にリリースされた第8世代Intel Coreと比較することになりました。

そして今回2018年2月に発売されたRyzen 5 2400Gは型番が2xxxGとなっていることからわかる通り第2世代製品です。よってこれは2018月に発売された第9世代Intel Coreを比較することが妥当ということになります。しかし第2世代Ryzen Gは中身は第1世代Ryzen(Summit Ridge)と同じZenマイクロアーキテクチャ採用のため、第1世代Ryzen(Summit Ridge)と比較すべき2017年発売の第8世代Intel Coreと比較することにしました。2018年発売のRyzen Gと2017年発売のIntel Coreを比較するとIntel Core側にはハンデがあることになります。そのハンデがありながらもどのような結果になるか見ていきましょう。

Ryzen 5 2400Gと、Intel Coreシリーズの中で最も低性能なCore i3 8100を比較してみます。

このように+5%もCore i3 8100が勝利しています。

これは本来、後に発売されたRyzen 5 2400Gが勝利すべきものです。

発売時期の3ヶ月の差はどの程度の性能の差を生むかというと、1年で22%の性能向上は性能が1年で1.22倍になることを意味するので、1.22の4乗根で3ヶ月あたりの性能向上率が計算できます。

1.22の4乗根は1.05なので、3ヶ月の発売時期の差は5%の性能向上に匹敵することになります。また、単純に22%という数字を4で割るのは正しくありません。4で割るのは相加平均であり、CPUの性能向上というのは率で変化する(幾何的に変化する)ので、相乗平均(幾何平均)で求めなければなりません。

つまり2018年2月に発売されたRyzen 5 2400Gは、3ヶ月早い2017年11月に発売されたIntel Core i3 8100に5%ほど本来は勝たなければならないことになります。

しかし実際の結果は全く逆で、+8%もIntel Core i3 8100側が勝利しました。これは集積度、アーキテクチャといった半導体の製造と設計技術においてIntelが上を行っていることから出てきた差です。

この差は研究開発と製造設備への投資額の差から出てくるので、Intelの方が資金力が大きい以上仕方ないとも言えます。半導体は特にこの投資額の差が性能に直結してくる分野です。

このようにCore i5を持ち出すまでもなく、Intel Coreシリーズの中で最も低性能なCore i3 8100でもIntel Coreが性能で勝利しました。

Ryzen 3 2200GとIntel Core i3のベンチマーク比較

Ryzen APUとしてRyzen 5 2400Gと同時に発売されたもう一つのRaven Ridge APU、Ryzen 3 2200GとIntel Coreプロセッサを比較してみます。

Ryzen 3 2200GにもCPUチップ内部に内蔵GPUが搭載されているのでオンボードグラフィクス対応のCPUです。

これは本来Intel Core i3 8200と比較するべきものですが、Core i3 8200は発表も発売もされていないのでCore i3 8100と比較することにします。あえて性能が低めの製品を選択しておく分にはIntel Core側が不利になるだけなので問題ないでしょう。

このようにRyzen 3 2200GよりもCore i3 8100の方が+2%も性能が高くなっています。本来Ryzen 3 2200Gとは同じ2018年発売の第9世代プロセッサと比較すべきものですが、あえて1年古い2017年のCore i3 8100でも+2%勝利しているのは大きいです。

Ryzen 3 2200GとCore i3 8100ともに4コア4スレッドです。Ryzen 3 2200Gのベース動作周波数は3.5GHzであり、3.6GHzであるCore i3 8100の方がベース動作周波数が0.1GHz高くなっています。

このクロック周波数差がそのまま性能差になっているとみることができます。コア数が両プロセッサともに4コアなので、これは単純に1コアあたりの性能でCore i3 8100のほうが勝っていることを意味しています。コア数が異なると並列性が多い少ないといったアプリケーションごとに差がでるので比較が難しいのですが、このようにコア数が同じなら単純に比較できます。

ただRyzen 5 2400Gとは違い、こちらのRyzen 3 2200GはIntel Core i3 8100よりも価格が若干安いというメリットがあります。性能ではCore i 3 8100に負けていても、価格でRyzen 3 2200Gのほうが安いなら十分選択肢になります。

別途グラフィックボードを購入する予定なら、間違いなくCore i3 8100の方がいいです。Ryzen 3 2200Gはグラフィックボードを挿すPCI Express×16スロットが×8レーンに減少してしまうので、別途グラフィックボードを購入するメリットがほとんどありません。

オンボードグラフィクスのみで使うなら安いRyzen 3 2200Gの選択はありだと思います。

メモリの相性が非常にシビア

これは第一世代Ryzenの発売日(2017年3月)から言われていましたが、「Ryzenはメモリ相性がひどい」という点です。よくこのメモリ相性の悪さのことを擁護して「これは相性問題ではなく仕様です」と言っている人がいますが、これはシステムトラブルで追い詰められているSEが「このバグは仕様です」と言い訳してるのと同じです。

Ryzen第1世代の頃から、「メモリの動作周波数が落ちる」「そもそも起動すらしない」といった報告が多数あり、”Ryzen起動保証”を謳ったメモリがG.SKILLから販売されたりもしました。

このメモリ相性問題についてはRyzen APUにおいても引き継がれているようです。

起動する確かな報告があるメモリに絞って購入するか、相性問題の場合の交換保証を付けて購入した方がいいでしょう。

Ryzenとの相性が良いのはCL17、PC4-19200(DDR4-2400)です。

PC4-19200(DDR4-2400),CL17のメモリ一覧

以下のメモリはRyzen APUプロセッサ(第一世代Ryzenも同様)と相性が良いとされるCL17かつPC4-19200(DDR4-2400)のものです。Non-ECCタイプです。

CFD(CrucialブランドMicron社製モジュール)

CFDは様々なRAM供給元から供給を受けていますが、その中でもCrucialブランド(Micron社製)のものがおすすめです。

・Q4U2400CM-16G DDR4 PC4-19200 16GB 4枚組

・W4U2400CM-16G DDR4 PC4-19200 16GB 2枚組

・Q4U2400CM-8G DDR4 PC4-19200 8GB 4枚組

・W4U2400CM-8G DDR4 PC4-19200 8GB 2枚組

・Q4U2400CM-4G DDR4 PC4-19200 4GB 4枚組

・W4U2400CM-4G DDR4 PC4-19200 4GB 2枚組

サンマックス(CrucialブランドMicron社製モジュール)

これもCrucialブランドを提供しているMicron社製のものなのでおすすめです。

・SMD4-U32G48M-24R-D 16GB 2枚組

・SMD4-U16G48M-24R-D 8GB 2枚組

・SMD4-U8GM-24R 8GB 1枚組

Kingston

キングストンのメモリは私はあまりおすすめしていません。Memcheckでエラーが検出されたことがあり、価格は安い部類ですが品質もそれなりです。

・KVR24N17D8/16 DDR4 PC4-19200 16GB

・KVR24N17S8K2/16 DDR4 PC4-19200 8GB 2枚組

・KVR24N17S8/8 DDR4 PC4-19200 8GB

60fpsでWQHD(2560×1440)4K(3840×2160)表示に対応するマザーボードが非常に限られている

次は逆にRyzen APUの問題でもなくチップセットの問題でもなく、マザーボード側の仕様の問題です。

Ryzen APU自体は60fpsで4K解像度やWQHD解像度(2560×1440)を描画する能力を持っていますが、60fps出力に対応していないマザーボードが非常に多いです。

X370,B350,A320チップセットいずれも60fpsでの描画に対応していますが、マザーボードの仕様で対応していないパターンが多いということです。

以下紹介しますが、今のところ4K@60fpsに対応しているマザーボードは数個程度しかありません。

30fpsになるとちらつきが目立つようになります。せっかく液晶ディスプレイがフリッカーフリーに対応していてもリフレッシュレート30ではちらつきで目が疲れやすくなります。ゲーム以外の用途であっても60fps以上ないとパソコンの映像出力としては使い物になりません。

Ryzen APU対応で映像出力コネクタ搭載のマザーボード

Ryzen Raven Ridge APUを内蔵GPUだけで映像出力するためにはマザーボード自体に映像出力コネクタが搭載されてなければなりません。

しかしこのコネクタが搭載されていないマザーボードが多数あります。

その理由としては2017第1世代Ryzenはオンボードグラフィクスを搭載しない汎用コアのみのCPUだったため、グラフィックボードを別途購入することが必須だったからです。

マザーボードに映像出力コネクタを装備するくらいなら、かなり先に発売されるAPUを意識するよりも、目先の第一世代Ryzenに特化して安く製造したほうがいいという考えだったのでしょう。

上の項目でも指摘しましたが、Ryzen APUはPCI Express×16スロットの×16レーン数が×8に減少してしまう仕様があります。

これはMini ITXのようにスロットを1つしか搭載していないマザーボードにとって致命的な問題です。Mini ITXマザーボードはPCI Express×16スロットを1つだけ搭載していますが、これが×8になってしまうことを意味します。

これではグラフィックボードの性能を十分。一体何のためにわざわざRyzen APUを。PCI Expressの転送帯域を制限するためにRyzen APUを買ってしまうようなものです。

それならRyzen 3を買ったほうがいいレベルでしょう。

よって内蔵GPUを使いたい場合はMini ITXマザーボードを選ぶことが必須です。逆にグラフィックボードを別途購入してMini ITXに挿したい場合は、Ryzen Raven Ridge APUではなく2017年に発売された第1世代Ryzen(オンボードグラフィクス非搭載)の方が合理的です。

Ryzen APU対応のMini ITXマザーボード

・GA-AB350N-Gaming WIFI

DisplayportとHDMI端子を1つずつ搭載したマザーボードです。Ryzen APUは2画面までしか表示できないので2つも出力端子があれば十分でしょう。

Displayportは4096×2304解像度で60Hzに対応しています。つまり4Kでも60Hzです。

しかしHDMIは4096×2160解像度で24Hzまでです。これはさすがにリフレッシュレートが小さすぎます。

WiFi+Bluetoothアンテナ端子も内蔵しています。ただし光デジタル音声出力のためのS/PDIF端子は付いていません。

USB端子はUSB 3.1 gen2が2つです。赤いUSB端子が該当します。他にはUSB 3.1 gen1が2つです。これは黒いUSB端子です。さらに4つのUSB 2.0端子があります。これは青い端子です。

USB 2.0が4つもある点は残念です。良いマザーボードはすべてUSB 3.1で統一されているので、2.0が4つもあるので安いマザーボードという印象が拭えません。

・ASRock Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac

Displayportこそ付いていないもののHDMI端子が2つあるためデュアルディスプレイが可能です。最大共有メモリは2GBです。

リフレッシュレートは4096×2160解像度だと24Hzまで、3840×2160解像度だと30Hzまでです。高解像度で使わずフルHD程度の解像度での利用なら60Hzでます。

WiFi+Bluetoothモジュール内蔵です。光デジタル音声出力S/PDIF端子も付いています。

USB Type C(USB 3.1 gen1)端子が付いているのが大きな特徴です。USB 3.1 Type Aは3つあります。USB 2.0は2つです。

・ASRock Fatal1ty AB350 Gaming-ITX/ac

上記のマザーボードとスペックはほとんど同じです。USB個数、SATAポート数、映像出力解像度などまるっきり同じです。

異なるのはWiFiの帯域が上記モデルの方が2倍ある点です。

あとはチップセットの違いですが、X370とB350も差はグラボ2枚差し時の速度に違いがでてくるだけであり、Mini ITXのように1枚差しのマザーボードではX370もB350も大した差はありません。またM.2スロットが2つあればX370はオンボードRAID可能ですが、このマザーボードは両方ともM.2スロットは1つのみです。

よってB350のこちらのモデルで十分だということになります。

・BIOSTAR X370GTN

ASRockのマザボと異なるのは、こちらのBIOSTAR製品はHDMI端子が1つのみであり、他はDVI-D端子のみだということです。ASRockではHDMI端子が2つありました。

この製品のHDMI出力は4096×2160解像度では24Hz、3840×2160解像度では30Hzであり、HDMIの解像度とリフレッシュレートはASRockマザボと同じスペックです。

しかし当然ですがDVI-Dの場合は1920×1200解像度で60Hzまでの対応になります。よってこの点においてASRockマザーボードの方が上です。

USB Type C端子も搭載しておりUSB 3.1 gen2規格なので優秀です。

他にはUSB 3.1 gen2 Type Aポートが1つ、USB 3.1 gen1ポートが4つリアパネルにあるので比較的充実してます。USB 2.0端子が無い点は評価できます。

M.2スロットは1つ搭載されておりPCI Express接続でもSATA接続でも可能です。

S/PDI光デジタル音声出力端子も付属しています。

しかしWiFi+Bluetoothモジュールは内蔵していません。この点もASRockマザーボードより劣っている点です。

・BIOSTAR B350GTN

上記モデルのB350チップセット版です。Mini ITXマザーボードなのでPCI Express×16スロットが1つしかありませんし、X370チップセットならではのグラボ2枚差しがそもそもできないので、B350チップセットのこちらのマザーボードで十分だと思います。チップセット以外のスペックは全て同じです。

Ryzen APU対応のMicro ATXマザーボード

バックパネルに映像出力コネクタ非搭載でグラフィックボード別途購入必須のマザーボード一覧

Ryzen APUにとってほぼ意味をなさないタイプのグラボです。Ryzen APU内蔵グラフィクスを利用した画面出力ができません。別途グラフィックボードを購入してPCI Expressスロットに挿す必要があります。その場合×16スロットであってもレーン数が×8に制限されます。

Extended ATX(EATX)で画面出力非搭載のマザーボード

・ROG CROSSHAIR VI EXTREME

EATXサイズのためグラボを挿すことを前提としてるためか、オンボードグラフィクスのためのディスプレイ出力端子が一つも付いていません。

MicroATXで画面出力非搭載のマザーボード

Mini ITXで画面出力非搭載のマザーボード

・ROG STRIX X370-I GAMING

ASUSでも上位モデルの部類に入るROG STRIX GAMINGシリーズにおいてディスプレイ出力端子が1つも付いていないのはかなり残念な点です。

・ROG STRIX B350-I GAMING

上記モデルと同様、こちらのROG STRIX GAMINGにもディスプレイ出力端子が一つも付いていません。グラフィックボードを挿すにしてもPCI Express×8レーンでの動作になります。こちらはB350チップセットですが、Mini ITXはそもそもグラボ一枚挿ししか対応してないので大差ありません。

なぜRyzen APUのようにオンボードグラフィクスを搭載したプロセッサを発売する必要があるか

ゲームをやる人は別途グラフィックボードも保有しているものです。

ゲームを目的としているならオンボードグラフィクスは不要で、その部分を削って汎用コアに割り当てて汎用プロセッサ部分の性能向上をした方が得です。グラフィック部分の計算処理はグラフィックボードに任せればいいからです。

しかしオンボードグラフィクスを搭載したRyzen APUが設計され発売されたということは、グラフィックボードを別途購入せずオンチップのグラフィックで済ませたいというニーズが確かにあるからです。

このようなニーズがあるのは企業や官公庁などの法人採用です。

実際に法人採用(企業や官公庁)においてはグラフィックボードを搭載せずに、Intel HD Graphicsオンボードグラフィクスで済ませているパターンがほとんどです。

しかもマザーボードにDisplayportやHDMIなどの映像出力端子が3つ以上あればトリプルディスプレイにできます。

金融機関でもそうですが、中央にメインディスプレイを置いて左右に一枚ずつディスプレイを設置するパターンが多いです。理由は簡単で事務作業効率が上がるからです。

ディスプレイを横にならべると縦の解像度こそ伸びないものの、横の解像度が伸びます。実はこれはExcelなどの事務作業において重宝されます。

Excelはカラムとして多数の列が横に並びます。横の解像度が高いとわざわざ横スクロールせずにすべてのカラムを一覧できます。

多数の列が存在する表を扱っている場合、トリプルディスプレイだと全てのカラムを見ながら下の行を見ていくことができます。実際問題としてこのような多カラムの表は実務上非常に多く発生します。

またWordにしても中央のディスプレイに編集用のWordを表示して、左のディスプレイには情報源としてPDFを表示したり、もう片方のディスプレイにはExcelを表示したりもできます。インターネットに接続されている端末ならば、3つのディスプレイのうち1枚はウェブ検索用のブラウザを表示していることも多いでしょう。

このような用途では別途ゲーム用の高性能なグラフィックボード用意する必要はなく、Intel HD Graphicsのようなオンボードグラフィクスで十分であり、かつトリプルディスプレイのように複数の画面表示が必要とされます。

なぜ法人採用が重要か

このような法人採用が別に重要でなければオンボードグラフィクスを搭載したプロセッサは不要でしょう。しかし実際は法人というのはPC購入において大口です。リテール(個人向け)PCだとゲーマーが大口ですが、Word・Excelのような事務作業用途になると法人が大口です。

現在は自宅にPCがなくスマホで済ませている人も多いですが、そういった人でも大学を卒業して就職すれば職場の自席に必ずPCが用意されています。

さらには国税庁のようにイントラネットとインターネットで物理的に端末を分け、ネットワークを物理的に分離させるといった方法でセキュリティ対策をとっている組織もあります。

そうなると1人の職員・従業員でも複数のPCが必要になります。このような理由から法人では大量にPCを購入することになります。

サーバーではXeonが一強ですが、従業員や職員のデスクに設置するようなクライアント端末ではIntel Coreプロセッサが一強です。理由はIntel HD Graphicsで十分なので、オンボードグラフィクスでディスプレイ出力をしてPC調達コストを下げられるからです。

そのようなニーズに食い込むためには、別途グラフィックボードを用意してくださいといった第1世代Ryzenのような”gaming cpu”コンセプトでは受け入れられません。

CPUチップ上に汎用コアとグラフィックコアをセットで提供し、マザーボード上の映像出力端子のみで完結するPCが法人採用では好まれます。

業務では27インチWQHD(2560×1440)でWord・Excelを編集するニーズがあるので、2560×1440でリフレッシュレート60Hz表示できないRyzen APUは問題外です。

なぜ事務作業で60Hzも必要かというと、30Hzではちらつきが目立つからです。事務仕事ではフリッカーフリー対応の液晶ディスプレイでも60Hzと30Hzでは目への負担が全然違います。

またトリプルディスプレイで横の解像度を高くするニーズもあります。Ryzen APUのように2画面では足りません。

Ryzen APUが法人採用に食い込むにはまだまだ至らない点が多数あるという印象です。