Ryzen 9 1998X Threadripperは16コア3.5~3.9GHz、12コアIntel Skylake-X Core i9 7920X超えを期待

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2017年3月、4月に発売されたRyzen 7とRyzen 5は正直残念でした。Intel Core i7,i5よりも実効性能が低く、価格が高く、TDPが高く、しかもオンボードグラフィックスが付いていないというRyzenのほぼ全敗となり、唯一勝利していた項目は”コア数”というカタログスペックだけだったからです。実効性能はIntel Coreに勝てないにしても、せめて若干価格を安くしたり、TDPを低くして欲しいものでした。

しかし2017年5月15日にリークされたRyzen 9のスペックを見る限りこれは非常に期待できます。Ryzen 9のフラッグシップモデルであるRyzen 9 1998Xの性能を意識して、IntelはSkylake-X Core i9 7920Xの動作周波数をまだ決定できていないようです。

TDPはRyzen 9 1998Xが155W、Skylake-X Core i9 7920Xが160WでRyzenの方が低いことが確定しています。また動作周波数は、Intelは当初7929Xの動作周波数を3.4GHz~4.5GHzにする予定だったと想像できます。ベース周波数3.4GHzをもう少し上げられないかということでまだ仕様をリークしていないのでしょうが、もしベースが3.4GHzのままだったらRyzen 9 1998Xのベース周波数3.5GHzの方が勝つことになります。

実効性能でRyzen 9がIntel Core i9に勝てるかどうかはわかりませんが、ほんの僅かでもいいのでRyzen 9の方が価格が安ければ、性能が少し低くても安いとして十分存在価値のあるCPUになります。

また信頼性よりも性能を重視するタイプのユーザーからすると、Broadwell-EPのXeon E5最上位モデルで60万円近くするXeon E5-2699 v4(22コア44スレッド)よりもRyzen 9の方が性能と価格両面で有利になることもあり得ます。Xeon E5-2699 v4は22コアあるもののベース周波数は2.2GHzしかないからです。

ベース周波数が3.5GHzもあるRyzen 9 1998X

コア数が増えると消費電力の問題でどうしても各コアの動作周波数は下げなければなりません。

Intel Core i9 7920Xは(おそらく)3.4GHz~4.5GHzを達成するために、12コアしか増やせなかったと考えられます。

しかしRyzen 1998Xはベース周波数3.5GHzにも関わらず16コアまで増やしました。しかもTDPは155WというIntel Core i9の160Wよりも低くなっています。

ベース周波数の向上とコア数増加を同時にやりつつTDPを155Wに抑えたのは純粋にすごいと思います。

Skylake-X Core i9 7920Xの動作周波数はRyzen 9 1998Xの出方を見て後出しジャンケンで決定か

2016年5月に発売されたBroadwell-Eの後継となるSkylake-Xのカタログスペックがリークされてきていますが、未だにフラッグシップモデルであるCore i9 7920Xの動作周波数の数字がでてきていません。おそらく当初は3.4GHz~4.5GHzの動作周波数にする予定だったのでしょう。

しかしベースクロックが3.4GHzでは、3.5GHzあるRyzen 9 1998Xに負けてしまいます。並列性を十分に活かせるアプリケーションに限れば、カタログスペックだけでなく性能でもRyzen 9の勝利は間違いありません。IntelはRyzen 9を横目に見ながら、動作周波数をいくつにすれば実効性能でも勝てるかどうかを練っているのでしょう。

TDPはRyzen 9 1998Xが155W、160WでRyzen 9の勝利

Ryzen 7が残念だったのはRyzen 7 1800XのTDPが95Wもあり、Core i7 7700Kの91Wよりも消費電力が高かったことです。それでいて性能は7700Kが勝利しており、これでは明らかにRyzen 7は優位性を出せませんでした。

Ryzen 9とIntel Skylake-Xの実効性能が拮抗しているなら、今回は消費電力が小さいRyzen 9の方に軍配が上がります。

私としては、消費電力はTDP200Wレベルで大きくなってしまっていいので、実効性能で完全にIntel Core i9 7920Xを打ち負かすCPUに仕上げて欲しかったという思いもあります。

注目点1:キャッシュ容量とレイテンシ

補助記憶(ストレージ)はHDDからSSDに置き換わりつつあり、アクセス速度は大幅に向上しました。コンピュータ界において真新しい性能向上がなかった2000年以降において、SSDというのは久々に大きなイノベーションでした。

一方で主記憶(メモリ)は全く速くなっていません。単位面積あたりの容量が増えているだけであり速度は全く向上していません。

キャッシュがどれだけ優秀なのかというところでCPUの実効性能に大きく響いてきます。この点、Ryzen 9 1998XはL3キャッシュが32MBもあり、16MBしかないSkylake-Xより優位があります。

2016年5月に発売されたBroadwell-E Core i7 6950XのL3キャッシュサイズである25MBも上回っています。あとはレイテンシさえ低ければメモリアクセスまわりはRyzen 9 1998Xの方が高速になるため実効性能向上に貢献するでしょう。

注目点2:アウトオブオーダー実行が優秀でパイプラインのスループットが高いかどうか

ここが重要です。Ryzen 7,Ryzen 5と、Core i7,Core i5の比較では、動作周波数がRyzenの方が高いにもかかわらず実効性能でIntelがことごとく勝つことになりました。これはIntelプロセッサの命令処理系が優秀なためです。

まず1命令あたりの実行にかかる必要サイクル数を削減すると高速になります。これはSIMD命令を充実させ、さらにSIMD命令を少ないサイクル数で完了させるようにすることで高速になります。

また最近のプロセッサは全て動作周波数が高いので、そのようなプロセッサではいかにスムーズに命令をパイプラインで流すかが重要です。

そのためにはどれだけ深く命令レベル並列性をReservationStationで抽出するかどうかが重要であり、深くすればするほど回路は複雑になります。この部分はIntel Coreの方が圧倒的に優れており、AMDはなかなか勝てない部分です。

そうなると対抗方法としてはコア数を増やす、処理系の力不足を動作周波数を上げるという力技で乗り切るという方法で勝つしかありません。Ryzenの方向性としては、コア数と動作周波数でなんとかIntel Coreに勝とうとしているのが見えます。

注目点3:全16コア同時に負荷をかけると最大動作周波数は何GHzまで出るのか

Ryzen 9 ThreadripperではRyzen 9 1998X(3.5GHz~3.9GHz)より動作周波数の低いRyzen 9 1998(3.2GHz~3.6GHz)がラインナップされていますが、両者のTDPは155Wで同じです。

動作周波数が上がっているのにTDPが上昇しないというのは違和感があります。

これはつまり、1998Xの16コアすべてが同時に3.9GHzにはならない仕様になっているのではないかと推察できます。16コアすべてに負荷がかかった場合、一部のコアはベース周波数で動かし、TDP155Wを超えない範囲で3.9GHzまで引き上げるコアがいくつか出て来るということです。私としてはTDP200W程度なら全く問題ないので、動作周波数が高くなるのならそれに比例して上限TDPも上げる仕様にしてくれた方が好ましかったです。

比較対象1:2016年5月に発売されたBroadwell-E Core i7 6950X Extreme Edition

Core i7 7700Kとまずは比較したいところですが、Core i7 7700Kはオンボードグラフィックスを積んでいるためフェアな比較にはなりません。

そうなると2016年5月に発売されたBroadwell-E Core i7 6950X Extreme Editionと比較するのが妥当です。このCore i7 6950Xはオンボードグラフィックスを積んでいませんし、メモリエラー訂正・検出にも対応していないので、Ryzen 9 1998Xと同じコンセプトです。

まずはこのプロセッサを超えられるかどうかです。

1年前に発売されたCore i7 6950Xといっても、これはCore i7 7700Kの実効性能を唯一負かしているCPUなので強敵です。

ただCore i7 6950Xは20万円近くするため、この価格より少しでも安ければRyzen 9 1998Xを選択する人が大多数となるでしょう。

比較対象2:2017年発売の12コア24スレッドSkylake-X Core i9 7920X

IntelがRyzen 9 1998Xのライバルとして意識して、いまだに動作周波数仕様をリークできていないCPUです。

コア数はRyzen 9 1998Xが勝つことが決定しており、TDPもRyzen 9のほうが低いことが確定していますが、動作周波数が未決定のため実効性能はどちらが上になるかわかりません。

さすがに2017年という同時期発売のIntel製品にAMDのRyzen 9が勝つことは難しいと私は思っています。実効性能では勝てない蓋然性が高いので、価格面でIntel Skylake-X Core i9 7920Xより安くなるようにAMDにおいては頑張って欲しいところです。

比較対象3:Xeon E5-2699 v4 22コア44スレッド

比較対象としてXeonも考えられます。しかしこの比較はIntel側に不利になってしまいます。Xeonプロセッサはメモリの誤り検出・誤り訂正に対応しており、性能一辺倒ではなく信頼性を担保するコンセプトのCPUだからです。Ryzen 9 1998Xはメモリエラーの誤り検出・誤り訂正に対応していませんから、その点ではフェアではないです。またXeon E5はマルチプロセッサにできることからも比較する対象としては筋が通っていません。

しかし性能重視でXeonを選択している人からすれば、1プロセッサの実効性能さえRyzen 9 1998Xの方が上回っていればXeon E5以外の選択肢に乗ってきます。

Xeon E5は1プロセッサで60万円しますし2プロセッサにすると120万円ですから、1プロセッサXeon E5で組むことを前提としている人なら、Ryzen 9 1998Xを比較対象に入れてもいいでしょう。

まとめ:まずは実勢価格を見つつ実効性能で判断
実効性能でRyzen 9が多少負けていても実勢価格が安いならRyzen 9もあり

LGA1151ソケットのIntel Coreプロセッサはオンボードグラフィックスが付いているので、付いていないRyzen 7,5がIntel Coreに価格でも性能でも負けているのはお話になりませんでしたが、今回のRyzen 9では完全に汎用プロセッサの勝負になっています。

世間一般からすると、価格が同じならほとんどの人はリーディングカンパニーであるIntel製のものを買ってしまいます。

AMDがシェアを奪うならまずはRyzen 9をSkylake-Xより安くしなければなりません。それさえ達成できていれば、多少なりとも実効性能でSkylake-Xに負けていても問題にはならないでしょう。

加えてSkylake-Xに実効性能でも勝利していれば言うことなしです。

価格と実効性能という2つの軸で、どちらを購入するか考えていこうと思います。

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