AMD Radeon RX 6600 XT搭載グラボの比較

2021年8月に発売されたAMD Radeon RX 6600XTはRDNA2アーキテクチャを採用したGPUの下位グレードモデルです。2020年11月~12月にかけてRDNA2世代のフラッグシップモデル(Radeon RX 6900XT)が発売されましたが、そこから性能と価格を下げた下位版です。NVIDIAもAMDもまずは上位モデルをリリースし下位モデルは後からリリースする販売戦略を採っていますが、今回のRadeon RX 6600XTは下位モデルに相当します。

価格を安くするために相当数の単精度コアを削っており、2016~2017年当時のGeForce GTX 1070無印(1,920コア)相当の2,024コアまで減らされています。

単精度コア数が少ないことは暗号資産マイニング目的で不利であり、マイニング目的で品薄のGeForceの代替製品としてRadeon RXをゲーマーに買ってもらうためにあえてコア数を大幅に減らしたGPUになっています。

そのためこのRadeon RX 6600XTは大量に在庫が余っておりどこでも購入できる状態です。

しかし実際のところは、RayTracing Core搭載だったりTensor Coreを利用したDLSS2.0を利用できるNVIDIA製GeForceを第一志望として求めるゲーマーが多く、Radeon RX 6000シリーズを買うのは「GeForce争奪戦に破れた負け組」としての側面が強くなっているのが現状です。

AMD Radeon RX 6600 XTの詳細スペック

メーカー・モデル名AMD Radeon RX 6600 XT
SP数2,024
ブーストクロック2,589 MHz
メモリ容量8GB
共有キャッシュ3MB
単精度性能10.604544 TFLOPS
倍精度性能0.6628 TFLOPS
Tensor Core性能0 FLOPS
TDP160W
発売日2021年8月
Ray Tracing性能0 FLOPS
ベースクロック1,968 MHz
ピクセル・レート165.7 GPixel毎秒
テクスチャ・レート331.4 GTexel毎秒
メモリタイプGDDR6
メモリクロック16 GT毎秒
メモリバス幅128bit
メモリ帯域幅256 GB毎秒
接続規格PCIe 4.0
アーキテクチャRDNA 2.0 (Radeon RX 6000 series)
コードネームNavi 23
ファウンドリTSMC
プロセスルール7nm
トランジスタ密度46.7 MTr/mm²
トランジスタ数110.6億
ダイサイズ237mm²
Compute Unit数32
無効化CU数0
TMU数128
ROPユニット数64
Tensor Core数0
RayTracing Core数0
Multi GPU非対応
3DMark Speed Way(DX12)1,674
3DMark Port Royal(DX12)4,512
3DMark NightRaid(DX12)118,627
3DMark TimeSpy(DX12)9,705
3DMark Wild Life(DX12)63,381
3DMark FireStrike(DX11)28,688
PassMark GPU16,051
Userbenchmark GPU(実効)94.5
Userbenchmark DX10160

Radeon RX 6600XTの詳細スペックは上記の通りです。ポイントはCompute Unitが32基全て有効化されていることと、Radeon RX 6700XTとブーストクロックがほぼ同じだということです。つまりRadeon RX 6700XTから単精度コアを削って低価格にしつつもブーストクロックを維持したのがRadeon RX 6600XTの位置付けです。

Radeon RX 6600XTで採用されたNavi23チップのCompute Unit32基は全てが有効化されているが、Radeon RX 6700XTのNavi22と比較し20%減

Radeon RX 6600XTは、1グレード上位のRadeon RX 6700XTで採用されたNavi22チップよりもさらにチップ面積を減らしたNavi23を採用しているのが特徴です。NVIDIA GeForceのStreaming Multiprocessor(SM)に相当するCompute Unit(CU)はNavi23では32基しかありません。Radeon RX 6700XTで採用されたNavi22では40基です。Compute Unitは20%減少しています。

Radeon RX 6600XTの単精度コア(Stream Processor:SP)数は6700XTから20%減された2,024コア

Compute UnitがRadeon RX 6600XTでは32基にとどまったことにより、NVIDIAでいうところのCUDA Coreに相当するStream Processor(SP)は2,024コアになっています。Radeon RX 6700XTでは2,560コアなので、Compute Unitの減少率と同じく20%減です。

単精度コアを見るとNVIDIAで2世代前のPascal世代GeForce GTX 1070のCUDA Core1,920コア相当しか無い ただしクロックは高い

この2,024コアという単精度コア数はNVIDIAでいうとTensor CoreやRayTracing Coreを搭載する前のPascal世代(2016年)のGeForce GTX 1070と同等です。GeForce GTX 1070(TDP150W)は1,920コアであり、GeForce GTX 1070Ti(TDP180W)は2,432コアなのでその間にRadeon RX 6600XT(TDP160W)が位置すると言えます。TDP面でもちょうどその間に位置しているのがわかるでしょう。

Radeon RX 6600XTはGeForce GTX 1070のクロックを引き上げつつもGeForce GTX 1070と同程度の消費電力に抑え込んだGPU

ではPascal世代のGeForce GTXと比べてRadeon RX 6600XTのどこに新規性があるのかというと、GeForce GTX 1070ではTSMC16nmプロセスだったのがRadeon RX 6600XTでは7nmプロセスになったことによって、ブーストクロックを引き下げても消費電力がそこそこ抑えられている点に新規性があることになります。NVIDIAとAMDのアーキテクチャは2世代分の差ががあり、AMDのGPUアーキテクチャはNVIDIAよりも2世代も遅れているため、ようやくPascal世代に追いついたレベルです。

アーキテクチャではPascal世代相当でも、製造プロセスがTSMC7nmなので同じクロックなら当然Radeon RX 6600XTの方が低消費電力ですし、ブーストクロックを引き下げてもGeForce GTX 1070とGeForce GTX 1070Tiの中間のTDP(≒消費電力)で済んでいることになります。

暗号資産マイニング目的で品薄のGeForceを買えなかったゲーマーをターゲットにした当てが外れ、「GeForce第一志望」のゲーマーはRadeonに流れず

Radeon RX 6600XTが発売された2021年時点において暗号資産分野では第2次マイニングブームです。第1次マイニングブームだった2017年は、Radeon RX 500シリーズがマイニング目的で買い占められ、マイニング目的ならGeForce GTXよりも消費電力あたりの計算量(ハッシュレート)が優秀でした。

なぜRadeon RX 500シリーズがマイニング目的で優秀だったかというと、当時のRadeonは単精度コア数の多さではNVIDIA GeForceに勝っていたからです。マイニングではクロックをできる限り抑えて多数のコアが存在した方が消費電力あたりの計算量で有利なため、CUDA Core数が少なくクロックが高いGeForceよりもRadeon RX 500シリーズが好まれていました。

しかし、AMDは戦略を変更し現在ではNVIDIA GeForceよりも単精度コアを減らし、その代わりクロックを高める方向にポジションを張っています。つまり2021時点ではNVIDIA GeForceの方がRadeon RX 6000シリーズよりも暗号資産マイニングで有利です。

これらの背景によって、Ampere世代のNVIDIA GeForceはマイニング目的で買い占められ、ゲーム目的でGeForceを購入したい層に製品が行き届かない問題が発生しています。

そこを突く格好で、AMDはCompute Unitを減らしクロックを高めた「マイニング用途に不向きなGPU」をリリースし、ゲーム目的でGeForceを買いたいけど品薄で買えないゲーマーにAMD Radeon RX 6000シリーズを売りつけるマーケティング戦略に出ました。

しかし、結果は芳しくありません。Radeon RX 6000シリーズは普通にどのパソコンショップ(小売店)でも帰るほど在庫が有り余っており、「GeForceを買いたいけど買えてない層」に訴求できていません。Twitchの配信を見てもわかる通り専業ストリーマーもプロも例外なくGeForceを使っています。Radeonを買うのは「GeForceを買いたいけど買えず仕方なく妥協した負け組」のイメージが未だに強いため、なかなかゲーマーに浸透できていません。実際、Tensor Core(4×4半精度行列積和演算器)やRay Tracing Core相当の演算器を搭載していない分だけRadeon RX 6600XTが不利であるため、「大は小を兼ねる」ということでGeForceを選ぶユーザーが未だに多いのが実情です。

1位: SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC 8G GDDR6 (SAP-NITROPRX6600XTOC8GB / 11309-01-20G) VD7832

GPU AMD Radeon RX 6600 XT
型番SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 6600 XT GAMING OC 8G GDDR6 (SAP-NITROPRX 6600XTOC8GB / 11309-01-20G) VD7832
専有スロット数2.3 slot
全幅44.82 mm
全長240 mm
全高119.25 mm
ブーストクロック2,607 MHz
ベースクロック1,968 MHz
単精度性能10.678272 TFLOPS
倍精度性能0.667 TFLOPS
発売日2021年8月
深層学習コア性能0 FLOPS
メモリ容量8GB
メモリタイプGDDR6
メモリクロック16.0 GT毎秒
メモリバス幅128bit
メモリ帯域幅256 GB毎秒
補助電源8pin×1
推奨電源容量500W
冷却機構空冷
ファン数2基
最大表示モニタ数4画面
DisplayPortDisplayPort 1.4a×3
USB Type C非搭載
HDMIHDMI 2.1×1
DVI-D非搭載
D-Sub非搭載

SapphireのPLUSシリーズよりもブーストクロックが高くなっており2,600MHz台に達しています。とは言ってもPLUSシリーズとクロック差は10MHz程度でありほぼ同じです。

AMD Radeonではリファレンスモデルの時点で限界近くまでブーストクロックを引き上げてあり、オリジナルファンモデルでブーストクロックを引き上げる余地が殆どありません。

補助電源コネクタは6600XTで標準的な8pin×1。ファン×2の冷却性能しか持たないため過剰な電力供給は不要ですし8pin×1で十分です。これだけでも150W+75W(マザーボードからの供給)分の電力が得られます。他の6600XT搭載グラボでは8pin×1,6pin×1のものがありますがそこまでいくと外形サイズが大型になります。