ファイナンスのためのRプログラミング

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ファイナンスのためのRプログラミング ―証券投資理論の実践に向けて―
著者の略歴を見ると、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーの従業員で共同執筆した本のようです。おそらく、プライシングモデルの開発をしている人達が、C言語などの実装を使わなくてもRでできる部分を抜粋して本にしたのでしょう。Rの本は最近ビッグデータという用語の流行のせいもあって注目されているので、数理の書籍の中では注目されやすいからです。


さてみずほ第一フィナンシャルテクノロジーではRを使って金融商品の価格をつけたり、自己勘定売買で投資判断をしているのかと言えばそれは違うでしょう。いきなりC言語で実装したり検証するのは骨が折れるので、まずはRでやるのが普通です。Rは速度こそ遅いですが、ちょっとした実装なら完成するまでが早いので、普段はRをいじりながら仕事をしているのでしょう。
この本の分野ごとの重みを考えてみます。前半がCAPMやペアトレーディングに触れられているので、前半が投資理論。つまりバイサイド側にたった理論です。そして後半がいわゆる金融工学で、証券会社や銀行などの金融商品を組成する側の人が必要とする理論です。どちらかというと、この本では後者の方に重みがあります。これは金融機関だったら自然なことで、彼らは自ら商品を保有することはあまりせず、商品売却時の手数料で稼いでいますから、後者の理論のほうが重要なのです。
個人投資家として利用価値があるのは前半です。個人投資家は株や為替を売買することくらいしかできず、金融商品を組成してその売却差益で稼ぐことはできません。ですが問題なのは、前半で一番有用かつ重大とも言える部分、ペアトレーディングに関する部分の記述で出し惜しみをしていることです。
ここでは2つの問題提起をしています。第一に、平均回帰の平均ラインをどのように決定するか。これは、株で言えば2つの銘柄を片方買って、もう片方を売るわけですが、その売買比率をどのように決定するかという問題になります。ここがペアトレーディングのコアな部分ですから、この点を出し惜しみしているのは根本的に書籍としての価値が微妙です。第二に、どのくらいのしきい値で売買すべきかが書いてありません。ここはいろいろやり方があるのですが、せめていくつか選択肢を列挙するくらいはしても良かったのではないかと思います。ポジションを閉じるイグジットの部分についてはあまり表に出したくない、他人と差別化する重要な部分なので私も書けませんが、エントリーする部分くらいについては書いてもよかったのではないでしょうか。
これだけでは消化不良で終わると思います。肝心な知りたい部分が知れないまま問題提起だけ残って終わってしまうでしょう。後半の金融工学の部分がほしい人は買ってみてもいいと思います。

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