トレーダーは知っている オプション取引で損をしない「法則」

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本当に貴重であり、著者には敬意を表さざるを得ない本です。

私は基本的に書籍には厳しく評価していますが、この本は本当の意味で有益です。

本には二種類あると思っています。

一つは著者がお金儲け目的で書いているもの。とにかく本を売ることを前提にして目を引くタイトルを付け、中身はとても薄いといった商業主義的な本です。

もう一つが真に知識を共有するために書いたもの。これは本を売ってお金儲けするというのは二の次であり、日本国内においてその分野・業界のレベルを底上げするために知識の共有として和訳書ではなく和書として出版してくれているものです。

後者のような本には、最近出版されている本の中ではほとんど巡り会えません。

Amazonでも金融機関の従業員の方が同様に絶賛するレビューを書かれていますが、私も完全に同意するものです。

この本のすごいところはいわゆる理論だけではなく、金融機関はどのようにして金融工学を用いて収益化しているか、という収益構造まで書いてあることです。

それはこの本の182ページ以降、「第6章 オプショントレーディングとは」に書かれています。

得に投資銀行の市場部門を目指す理系の人、その他一般の学生はここをしっかり読んでから就活をするべきです。

ここに書いてあることは入社して真っ先に先輩から教えてもらうところです。

金融機関の目的は相場で勝つことではありません。勝ち負け関係なく、手数料収入を手堅く積み重ねていくのが投資銀行の市場部門です。だからどの部署がどんな役割をしていて、どのような責任範囲で、どのような形の収益を得ているかどうかという全体像を知らない人が

特に個人投資家は知らないでしょう。

金融機関というのは基本的に出し惜しみの世界です。知識を教えるのは先輩の義務ではありません。市場という厳しい分野に身を置きながら知ってきたことを、たとえ同じ職場であってもそうやすやす教えるものではないのです。

ただ、もちろんそういったことが詳細にこの本に書いてあるわけではありません。ごく一部の側面しか書いていません。ですが書いてあることはまったく事実であり、非常に簡潔に記述されている一文であっても本当に奥が深い真実がさらりと書いてあります。

特に金融の実務をやってきた人が読むと、知ってる人が読めば相当深いことが書いてあるとわかるが、知らない人が読むとそうなんだ、程度で素通りしてしまうだろうと思えてくるところが多いです。

でもそれはこの本が不親切であるということではありません。

ある程度この分野を知っている人なら、知識の体系的な整理としてとても有用であり、また入社したばかりの新入社員にこの本を配って本当に理解しているか質問攻めにする教材として最適なのです。

深く理解している人ほど、この本にかいてある一つ一つの文が非常に深いことを意味しており、一文一文の重みを感じるはずです。これは本当にわかっている人にしか書けないことです。

そしてこの本を2回、3回と繰り返し読むだけで新たな発見が常にあります。

「こんな重要なところをさらりとたった一文書いてあるだけでは、専門家以外にはわからないだろうな」という部分もあります。それは難解というわけではなく、普通なら「わかったつもり」で素通りしてしまうところです。

この本を読んだ人は誰でも「わからなかった」より「わかった」になるでしょう。でもその「わかった」のレベルが普段から業務を行っている人とそうではない人で大きく差がつくものです。

この本は個人投資家にとっても有益です。ですがその有益の度合い、得られる利益の度合いは、普段からこの分野に携わっている人のほうが断然大きいです。

この本を読んで100を得た人がいるなら100万を得ている人も居ると思ったほうがいいです。簡潔に見えてそれだけ深い本だということを認識する必要があります。

この本にはいたるところにヒントがちりばめられています。

Sabrモデルの解説が書いてありますが、これと統計学でいう期待値、分散(ボラ)、歪度(スキュー)、尖度(カートシス)と結びつけて理解できているかどうかです。

またSticky Delta、Sticky Tree、Sticky Strikeの理解も必要です。

それとSabrモデルを使ったトレード例が本当にさらりと書いてありますが、このトレードが一体何をトレードしているのか理解しなければなりません。

オプションの個人投資家にありがちなのが、常に価格の空間でしか考えていないことです。バーティカルスプレッド、ダイアゴナルスプレッド、バタフライ、のようなもので分類している人は「価格」でしかオプションを見ていません。

ご存知の通り、オプションはグリークスと呼ばれる要因分解で見なければいけません。さらにはボラティリティ・スキュー、ボラティリティ・サーフィスといったものでも見なければいけません。このボラティリティサーフィスの形状の変化を、上記の期待値、分散、歪度、尖度と結びつけて理解しなければ、オプションを理解したといえません。またそれはグリークスでいうと何を取引しているかも説明できなければなりません。

そうすれば、バタフライやコンドルといった価格でみた分類が本質的でないことがわかるはずです。そしてバタフライやリスクリバーサルといった取引が、本質的には一体どんな統計量を取引しているのかを、価格という0次のモーメント以外で説明できるようになれれば脱初心者と言えます。

以上のグリークスや統計量のモーメントがオプションと一体なんの関係があるのか、まったくわからないひとはこの本を読めばヒントになりえます。ただし、この本には直接的にこのことが解説されているわけではなく、そこへたどり着くためのヒントがちりばめられています。

これは実は、一体何をもって金融時系列といえるのか、金融時系列を特徴づけているものは一体なんなのかという本質に迫る部分です。

数学の理解力と、この分野に詳しい英字論文を読む理解力も必要です。

オプションとボラティリティの関係、価格と分散とスキューの関係、そういったものに本格的に取り組みたい人には最初の一歩としてこの本は最適です。

このような優位性のある本は本来出版せずに秘密にしておくものです。それを書いた著者は私益より、日本の金融に携わる人のためにという公を重視している方だと言えます。

知識を公=publicにするのが出版=publishという本の原点のようなものを再確認させてくれる本です。最近の、優位性がなくても売れればいい、嘘を書いても売れさせすればいいといった心ない本が氾濫している中で、極めて良心的な稀有な書だと言えます。

このような本を出版していただいた金財さんにも感謝したい次第です。

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